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2011/01/29(土)に投稿された記事
くすぐりの塔R -第20話- 『塔内遊技場』
キャンサーさんが執筆された「くすぐりの塔R」の第20話です。
5階を攻略して以降、キーンの塔内における状況は大きく変化した。
特に6階にて遭遇、激闘の末に倒したミラーから託された全身鎧のおかげで、雑魚モンスターとの接触が極端に激減したのである。
もちろん希に、キーンの気配を察して姿を現すモンスターもいたが、キーンの姿を見るなり『ミラー』と勘違いして、萎縮したように引き下がって行くのである。
ミラーの施しを純然なる物と信用しきっていなかったキーンも、雑魚達の反応を見る限り、本物と信じざるを得なかった。
だが問題が全くないわけでもなかった。
モンスターの大半が『ミラー』の存在を恐れてか、あるいは身分の差を理由にしてか、その姿を現さず、会話の相手が存在しない状況に陥り、塔内の情報が得られなくなったのである。たとえ敵として現れた存在でも、知能があり会話が交わされれば、その内容から情報を得る事は出来るのだが、現状はそれすらも困難なものとなっていた。
変装して内部調査を行う時は『騎士』より『衛兵』あたりが丁度良い場合もある・・・
とある地方で聞かされた何気ない格言が、この時ばかりはキーンの身にしみた。
全く戦闘も無いまま、7階を通り越し8階へと到達したキーンは、階段ホールに上がるなり大きな広間に出て、何げに前方を見て思わず身を固くした。
進行方向に大きな扉が設えており、その左右に妙に風格の良いオーガー系のモンスターが仁王像の様に立ち、キーンの方に視線を向けていたのである。
(迂闊な反応は疑惑を招くな・・・)
そう判断したキーンは、狂いそうだった歩調を辛うじて整え、威風堂々と・・・・した感じで扉の方へと近づいて行く。他に道も扉もない以上、そこに近づく以外に自然と見える行動が存在しないわけだが、場合によっては一戦して突破するしかない状況でもある。
幸い顔の方も、兜のガードが顔の半分近くを覆っているため、表情の変化を悟られる事も無かった。
キーンは努めて平静を装い、扉の前まで行くと、その正面で立ち止まり、左右に控えるオーガーを無言のまま見上げた。
「これはこれはミラー様、御無沙汰ですね。今日は息抜きですか?」
最初に声を放ったのはオーガー達の方であった。妙に機嫌の良さそうな口調は、その凶悪な体格とは正反対のイメージを抱かせる。
「そんな所だ。中の様子がどれくらい変わったか、直に見るのも面白いと思ってな。アレの相手ばかりでは私でも気が滅入る」
キーンは予め考えていた台詞を状況に合わせてアレンジし、気さくに声をかけてきたオーガーに向かって言った。
「はっはははは。ミラー様でもそう思いますか?さぞや大変なのでしょうな」
四六時中あの魔獣の管理という話が事実であれば、そうだろうと思う。そうしたキーンとしての意見を口に出さないように呑み込み、彼は会話の流れを合わせた。
「だからこうしてここに来た。入れてもらえるかな?」
「何をおっしゃいますか。わざわざこちらから来なくとも、専用通路を使っていただければ良かったんです」
自分の知らない知識が語られ、内心緊張するキーンであったが、オーガーは特にその点を重要視しなかった。
「それこそ息抜きだ。こちらからならひょっとすると、例の潜入者にも遭遇できるかと思ってたんだが、やはりそこまで都合は良くないようだ」
「貴方らしい」
「5階の闘技場以降の情報はまだないようですし、ひょっとすれば今頃、ミラー様の異空間で迷っているやもしれませんな」
さしあたって害のない言葉を選んで答えると、2匹のオーガーは軽く笑って応じた。まだまだこの手の連中には、キーンに対する危機的情報は届いてないようだった。
「そうだな・・・・」
(あのまま放置されていれば確実に迷っていただろうな)
心の中でその意見に同意するキーン。もちろん読心術の能力を持たないオーガー達がその心情を見抜けるはずもなく、上機嫌のままその体躯を使って正面の扉を左右から開けた。
「さ、どうぞ」
オーガーに促されるまま中に入ったキーンは、周囲の様子を見て思わず愕然とした。
中はかなり広大な広間となっており、その中ではモンスター達による盛大な宴が催されていたのである。
「こ、こりゃ何とも・・・・・」
まさかこの様な光景が繰り広げられているとは夢にも思わなかったキーンは、しばしの間、呆然とその場に佇んでいた。
飲み食いによる狂乱などは当たり前の現象であったが、よくよく注意して見ると、モンスター達は幾つかのグループに分かれるようにして、寄り集まって何かに興じている様であった。
その集まり方に統一性や種族性がない事から、個人的な好みによる集まりである事が予想されたが、一同が何に集まっているか皆目見当がつかなかった。
周囲全てが敵という状況的危機の中にあっても、好奇心が失われなかったキーンは、手近な集まりの中に偽りの身分を利用して混じって行った。
「おい貴様、ぬけぬけと割り込むとは・・・・」
その巨体故に集団の後方に追いやられていたオーガー系のモンスターが、その不満を小さき存在に八つ当たり気味にぶつけようとしたが、その小さき相手の姿を見た途端、魂を凍らせた。
「こ、こ、こ、これは、ミラー様・・・・し、知らないとは言え、とんだごぶっ、御無礼を・・・・」
その存在だけで大半のモンスターを威圧できるはずの大型モンスターが、その身を震わせ三歩下がった。混雑の中の出来事であったため、周囲のモンスターの何匹かが突き飛ばされる形となったが、そんな事は彼には気にもとまらなかった。
ミラーが、モンスター達の中で明らかに上位に位置していることが改めて判断できる一件だった。
「かまわんよ。こちらも好奇心に負けてしまってルールを破ってしまったんだ・・・・それより、ここでは何をしているんだ?」
「へ、へへっ・・・・たわいないゲームですよ」
モンスターは、ミラーが自分の無礼を気にしていない事にほっと胸をなで下ろすと、すぐさま彼の疑問に下品な笑いで答えた。
「御存知ないでしょうね。最近考案された遊びですから・・・・見てみますかい?」
「ああ、頼む」
巨体のモンスターはゆっくりと片膝をついて姿勢を低くすると、肩をミラー(キーン)の方へと向ける。
その意図を察したキーンは、軽い歩調でその肩に乗り、それを確認したモンスターは再び立ち上がり、視点を遙か上へと移動させた。
このモンスターの視界からすれば、たむろしている集団も障害とは成り得ず、キーンの見たかったモノを簡単に視界へと導いた。
「おうっ」
それを見て、キーンは思わず声を漏らしそうになった。そこでは、じつにキーンの趣味に合ったお遊びが展開されていたのである。
そこには四人の少女が人文字で十字を形成する形で拘束されていた。全員、パンティ一枚という姿で手足を伸ばしきった状態で寝かされ、身動きできない状態になっている上に、目隠しと猿ぐつわのギャグボールを噛まされている。
そんな無防備な裸体の上を、ゴキブリに似た虫らしき物が数匹、縦横無尽に這い回っていた。それも単に這い回っている訳ではなかった。単なる虫でない事を証明するかの様に、女体が感じる部分を的確に這っていたのである。
首筋、乳房の周囲、乳首、腰のライン、臍の回り、内股、脇腹・・・・・と、虫達が身体の上で軌跡を描く度に、拘束された女体はピクピクと跳ね、首を振り乱して身悶えていた。
口からも悲鳴が上がるが、ギャグボールを噛まされているために、まともな言葉を放つ事は出来なかった。
そして、それを取り囲むモンスター達は、箸のような物を手に持ち、女体を這い回る虫達を捕まえる事に興じていたのだ。
もっとも、モンスター達に本気で虫を捕らえる意志は無い。
捕まえるふりをしては箸の先端で女体を微妙な力加減で突っつき、追いかけるふりをしては虫のたどったコースをなぞって、少女達を責めていたのである。
虫とモンスターの同時攻撃、その上視覚を奪われているため、どこを責められるかの事前情報も得られず、その感覚は余計に敏感となり、加えられる刺激に過度とも思える反応を示す事となる。
「うううううううううんんん~~~~~~」
少女達は必至に身体を捩り、身悶え、身体を這う虫を振り払おうと懸命な努力をした。
だが、拘束されている身がそれ程の動きを成すはずもなく、時折、虫を振り払うことが出来ても、虫はすぐにもとの場所、即ち女体に戻り、何の解決にもならなかった。
モンスターと虫達にいいように弄ばれるだけの少女達は、懸命に耐えているつもりではあったが、その反応は相手の欲情を誘い、汗だくになり、肌を上気させ、涎を流す有様は被虐心を煽る。
「他の催しに比べれば陳腐ですが、これはこれなりに一興ですぜ」
キーンの脇で、視界確保の役割を負ってくれたモンスターが言った。
(他?他があるのか・・・・・)
そう、キーンは塔内最大の娯楽施設の真っ只中に突入したのである。
自分が娯楽施設にいる事を知ったキーンは、フロア捜索を口実として辺りを見回る事を瞬時に決断した。
個人行動のため、誰に断る事も、言い訳を論ずる事も必要ではなかったが、やはり僅かな良心が咎めたのだろ。それを納得させるために、彼には『捜索』という口実が必要だったのである。
まず最初に、案内板を見て興味をそそられる物が無いかと確認しようとしたキーンであったが、書かれている文字が自分の知識外の物である事を知り、彼は人だかり(モンスターだかり)を目安に適当にぶらつくことにした。
そして先程同様のパターンで、最も手近な集団の催しをのぞき込んだ。
彼がここを最初に選んだのには近かったという理由もあったが、それにも増して目立ちすぎていたのである。
人だかりは他と同様であったが、全裸の女性が2人、ロープで宙づり状態となっており、少し離れた距離からでもその姿が見えていたのである。
もちろんこの場において、処刑などはあり得ないと察するキーンは、アレにも理由があると悟り、その正体を確認したいという好奇心からその場へ向かったのであった。
キーンは例のごとく現在の身分『ミラー』を利用して、最後尾から前列へと赴くと、この催しの全貌を把握した。
ここは円形の囲いの中に4人の少女が全裸の状態で、二人一組となって一本のロープを握っている。そのロープは頭上に伸び、滑車を介して、ここを知るきっかけとなった、吊られている二人の少女へと至っていた。が、正確に言うと少女達は吊されているのではなく、自らの意志でロープにぶら下がっていた。
そして吊されている少女達の真下には簡素な作りの檻が設置されており、その檻の上部には、スライム状の物体がクッションの様に設置され、上の少女達の安全を確保する準備が整っていた。
そのスライムにも何らかの特質があるだろうと思い至るキーンであったが、それ以上に注目したのはその檻の中の蠢く物体で、キーンが更に注意して見ると、それは『手』である事が判明する。
彼は知らなかったが、この『手』は無念のうちに死んでいったモンスター達の怨念が呪術によって具現化した物で、それらが持つ本能は死に際によって異なるが、ここの『手』は全て女体をくすぐり回す事だけを本能としたものとなっていた。
製造方法・本能を知り得ないキーンではあったが、檻の中で蠢き、すぐ近くでロープを支える4人の少女達に今にも襲いかからんとする様子から、だいたいの想像はついていた。
(つまりは、下の娘がロープを支えきれなくなるか、上の娘が力尽きて落ちると下で待機していた『くすぐりハンド』(仮名)が開放されて彼女達に襲いかかる・・・・と、言う事だな。一人の脱落が6人全員の運命に繋がっている訳だ・・・・)
考えて、意地の悪い内容だとキーンは思った。
とは言え、そうして相手が力尽きるのをただ待つだけというのも面白みがない。そうした思いは、この場にいるモンスター達の共通した意見でもあったため、余興の本命として、ロープを支え抵抗のままならない下の少女達4人に対し客席(囲いの外)からの悪戯が行われていた。
悪戯は極単純な物で、長い棒の先に鳥の羽を結びつけて無防備かつ抵抗できない裸体をくすぐるという物であった。
柵越であるため、必然的に棒の長さが長くなっているため、羽の操作率はかなり悪いものの、いきなり強烈なくすぐったさでロープを放されてしまうのも面白味がないという事情もあり、この位が見て楽しむ分には丁度良かったと言えた。
実際、周囲から伸びる何本もの羽に、身体を無秩序に撫でられ身悶えする少女達の様子は男を徐々に興奮させる雰囲気があった。
少女達は無遠慮に身体を這う羽にくすぐったさを感じはしているものの、爆笑には至らず、どちらかと言えばもどかしさの残るソフトタッチにピクピクと身体を反応させていた。
彼女達を縛っている物、それは自分達が今握っているロープだけであった。出来ればそれを手放し、自分の身体にまとわりつく羽を振り払い、ガードしたいところであったが、仲間を落とすわけにはいかないという連帯感と、それ以上に、そうした行為の結果に生じる事態を恐れ、その選択を選べないでいたのだ。
結局、手によるガードが出来ないまま、彼女達は身体を悩ましげに振り、羽付棒の範囲から逃れようと柵内をぐるぐると移動するしか手段はない。そんな様相がモンスター達の娯楽の材料と化していたのである。
周囲の柵を取り囲むように陣取ったモンスター達は、自分達の近くに少女達が逃げてくると嬉しそうな声を上げ、手持ちの羽付棒で裸体を撫で回すのである。
その都度、少女達は身を震わせ、時には喘ぎ声をもらして手から力が抜けるのを堪えるのである。無論この状況下で、責められる側には反撃の手段などありはしない。四肢が拘束されていなくても彼女達に自由は存在せず、籠の中の鳥と何ら変わりはなかった。
「ミラー様もどうぞ・・・」
進行係なのか、一匹のオークがキーンに気づき、気を利かせて羽付棒を差し出した。
「悪いな」
キーンはミラーの立場としてそう答えると、差し出しされた羽付棒を受け取り、柵の方へと移動した。中を覗き込むと、少女が一人、手頃な位置で背を向けている状態だったため、早速とばかりに手に持った羽付棒を突き出し、無防備な少女の尻の割れ目からうなじへと、羽先を器用に這わせた。
「はっ!?はぁぁぁぁん!!」
今までになかった的確な責めを受けた少女が悲鳴を上げ仰け反った。ほとんど反射的とも言える反応のため、仰け反った彼女自身のバランスが崩れ、両膝を床に着けたが辛うじて手のロープは放さずに済んだ。
「おおっ、さすがはミラー様!」
少女に極端な反応に、周囲のモンスター達から感嘆の声が上がる。実際、少女達までの距離はそこそこあり、羽付棒で触れることは出来ても狙ったポイントに触れる事は意外に難しいものであった。
だが、キーンの戦闘における主武器は槍であったため、長い獲物の扱いには慣れていたのである。多少長さは違うものの、槍に比べれば格段に軽い羽付棒を操ることはそう難しい事ではなかった。
そんなわけで、キーンの羽使いは周囲の期待に応えるのに十分な動きを見せていた。
羽の一挙一動が女体を激しく反応させ、まるで磁石の反発とも思えるような動きを見せる。羽の腹が少女の右腰から右脇の下付近まで這うと、女体は激しく「く」の字に折り曲がって左へと逃げようとする。だが、それよりも早く羽が左側に回り込み、同様に撫で回し鏡に映したような反応を見せる。
「あひっ!はぁん・・・あっ・・・・やはぁっ・・・・あっ・・ああぁぁぁ」
不運にもキーンのターゲットとなった少女は涙目になりながら身悶え、身体をくねらせ淫靡なダンスを踊り続けた。
それでも使命感あるいは恐怖心からか、手にしたロープだけはしっかりと握って離さないでいる。
「ふん、意外にしぶとい・・・・・」
「手を離した結果は初めての者でも容易に察しがつきますからな。必死にもなります。ですが、それだからこそ我々も楽しめるのですがね」
キーンの呟きに、先程羽付棒を手渡したオークが応えた。
「確かにな・・・・だが、それと相反して、『結果』が早く訪れるのも待っている・・・・と言った面もあるだろ」
「左様で・・・・・」
期待を込めた眼差しがキーンに向けられた。
「なら、少し責める趣向を変えてみるか」
「と言いますと?」
「この棒、もう一本あるか?」
キーンは手に持った羽付棒をひらひら動かして、オークに問いかけた。
「え、ええ・・・」
笑みを浮かべて言うキーンに対し、オークはその真意を見抜けないでいた。
「どうぞ、これを・・・」
キーンの要望はすぐにかなえられ、全く同じ羽付棒が届けられた。
「OK。それじゃ、そこのミイラ男・・・」
キーンは受け取った棒を軽く確認すると、今度は周囲のモンスターの中から全身を包帯に包まれたミイラ男(本名不明)を指名した。
「・・・・・・・・・・・」
ミイラ男はしゃべれないらしく、少し大げさなゼスチャーで自分の人差し指を自信の顔に向け、私ですか!?という意思表示を行った。
「ああ、だが正確には君ではなく、その身につけている物を分けて欲しい」
・・・・という訳で、ミイラ男からある程度の包帯をもらったキーンは、それで二本の棒を結び、そのリーチを約二倍にした羽付棒を即席に作り出した。
「それで一体何を?」
怪訝そうに問いかけるオーク。その場で四人の少女全員に届かせるための工夫かとも思えたが、そんな事をせずとも、円形となっている柵の周囲を移動すれば済むだけの事である。
そんなオークの疑問をよそに、キーンはロング羽付棒を突き出す。しかしそれは四人の少女達の方ではなく、その頭上で吊されている二人の少女の方であった。
「ちょっ・・・まさか・・・いやぁっ!」
吊された方の少女は、下から迫り来る羽を見て、その意図を理解した。だが出来るのはそこまでで、彼女には逃げる手段がない。
「く、来るな!来ないでぇ!」
上の彼女も拘束はされてはいなかったが、吊された身では移動など出来るはずもない。
身を振り、足をばたつかせて羽を追い払おうともしたが、暴れれば暴れるほど、彼女の掴まっているロープを支える、下の少女達に加わる負担が大きくなるため、存分な抵抗も出来るはずもなく、ついに羽の先が振り回される脚をかいくぐって少女の腹に触れる事に成功した。
「あひぃぃぃ!」
腹周りを羽の柔らかい感触が襲い、少女が身悶えた。移動という選択すらない彼女にとって現状は最悪としか言いようがない。
「あはっ、やははははははははははははは!」
抵抗できないことを良いことに、キーンの操る羽は各所をくすぐり、その身体がくねる度に別のポイントへ移動しては彼女に強制的なダンスを踊らせた。
そうして暴れる彼女のせいで、下でロープを支える二人の少女の負担は大きくなったが、それ以上に上の少女の負担の方が大きかった。何しろ彼女は自分自身の体重を、自分のか細い腕のみで支えるしかないのである。
それが己の過敏さによって引き起こされるダンスによって急速に消耗して行き、ついには限界が訪れた。
「あっははははははは・・・ああっ!」
身悶えていた少女が手を滑らせ、絶望の悲鳴を小さく上げた。
ほぼ同時にモンスター達からは、ようやく次の見せ物が始まる期待に歓声が起き、下の少女達は揃って表情を強張らせた。
落下し始めた少女を担当していた二人は慌てて受け止めようと動いたが、それも既に遅く、彼女はクッションスライムで保護されていた檻の上に落下し、もともと頑丈でもなかったそれを破壊して中で蠢く飢えた『手』=『くすぐりハンド』を開放してしまう。
「いやぁああああ!」
少女達が一斉に悲鳴を上げた。それに呼応するかのように、『手』が活動を活発化させ、指を器用に動かし床を這い進み始める。ロープ担当であった少女は後ずさって柵に背をつけ、落下した少女も急いで立ち上がり逃げようとしたが、檻の真っ直中に落ちたのでは脱出できるはずもなく、立ち上がるより先に『手』に足首を捕まれて転倒してしまい、あっという間に無数の『手』に集られてしまった。
「きゃあっははははははははは!あ~っはははははははは!いや、いやっいやっっははははははははっははははは!」
少女は身悶えながら床を転がり、まとわりつく『手』を振り払ったが、追い払うより集まる数の方が圧倒的に多く、その抵抗は無意味な物となり、笑い悶えながら床を転がるしかなかった。
「きゃああああ!!」
その時、集られた少女のすぐ近くに、もう一人の少女が落ちてきた。『手』の開放と、仲間がくすぐり襲われるのを目の当たりにして身の危険を感じたもう一組の少女が、思わずロープを手放してしまい、上にいたもう一人が落ちてきたという訳である。
群がっている『手』とクッションスライムの上に落ちた彼女には、立ち上がる諸動作すら得る事は出来なかった。
ほとんど落ちた瞬間に『手』が獲物を認知して襲いかかり、彼女の全身を覆い尽くすように群がったのだ。
「ああ~~~っっははははははははっは!あっっははははははは、ひゃっははははあっはははははは」
彼女も笑い悶えながら死にものぐるいで抵抗したが、こうなっては逃げられるわけもなく、その様相は蟻の大群に襲われる虫そのものであった。
周囲にいた四人は助けるどころか、近づけば自分も同じ運命である事を知っており、更にはこの場にいる事自体がそうである事を認識していた。
四人の少女達は限られた空間を各々逃げ、中にはモンスターの好奇の目も気にせず柵をよじ登ろうと試みた者もいたが、モンスター達がそれを許さず、突き飛ばすなどの妨害を行い結局全員、『手』に取り囲まれて集られる事となった。
「いや、いや、ひゃっっははははははは!そ、そこだめぇ~あああああっっはははははははっははははは」
全身にまとわりついてくすぐってくる『手』に笑い悶え、立つことすらままならなくなった少女達は床の上で魚のようにのたうち回った。
『手』はモンスターのくすぐれなかったという怨念が具現化した物であったが、女性をくすぐれたからと言って成仏し、消滅する事はない。その怨念は本能として定着するため、一度くすぐり始めると、対象がどうなろうとくすぐる続けるのである。
自力もしくは他者が引き剥がし、隔離するか処分しない限り、捕らわれた者に対するくすぐり地獄に終わりはないのである。
「やめ、やめぇ~、やっ・・・ぎゃははははははあははははははははははは!いひゃぁははははははは・・・く、くるしっくひゃははははははははははははは!!」
ある者は左右に転がり、ある者はエビの様に仰け反りを繰り返し、ある者は身体を丸めて痙攣を起こし、ある者は俯せになったまま引きつった笑いをもらし、ある者はあまりに多くの『手』に集られたため、身動きも出来ず、いいようにくすぐり回されてたりもする。
そんな多種多様の様子を、モンスター達は実に嬉しそうに眺めていた。
「いや、さすがはミラー様、着眼点が違いますな」
不必要となった羽付棒を受け取り、オークが言った。太古持ち的な態度が見え隠れしていたが、その視線は少女達が気になるのか、時折、柵の方を向いていた。
「直接手を出すことは出来ないが、それなりに楽しめた。次はこれを応用したらどうだ?」
嘘ではなく、彼はそう思った。
「そうですね。彼女達が気絶して次のグループの番になったら、やってみましょう」
その言葉を背に、キーンはその場を後にした。
次に彼が訪れた催しは、長方形の形状をしたステージとなっていた。
その半分が敷居板で隠され、その中央に開けられた小さな穴から、五本のロープが伸びていたが、まだ催しは始まっておらず、ステージにはモンスターも少女も誰一人いなかった。
「おお、ミラー様・・・来られていたのですか」
ステージ中央で準備をしていたのだと思われるワードックが目ざとくキーンに気づき、声をかけてきた。
「ああ。ところでこれはどんな趣向なんだ?」
床に伸びている五本のロープを指さし、問いかけるキーンに対し、モンスターはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「綱引きですよ」
「綱引き?」
もちろんキーンも単語自体の意味は知っていた、だが、それの意味する所が分からず、思わず問い返していた。
「ええ、こちら側は女達が立つ側で、この五本のロープから一本を選ばせます。各ロープにはそれぞれ『担当者』が存在し、反対側・・・・敷居で隠されている部分で待機しており、女はそいつと綱引き勝負を行うわけです」
「勝てば放免。負ければ慰み物・・・・という条件だな」
確信したようにキーンが言い、それにワードックは頷いて見せた。
「さすがキーン様・・・・お察しの通りです。ただ、観客サービスの意味も含め、内容は多少工夫がされております」
「というと?」
「まず、あの敷居ですが、実はあれは1メートル程の間合いに近づくと相手をくすぐり責めにするトラップを流用して作った物です」
「つまりは、敗者は慰み物になる前にくすぐり責めに遭うと・・・・」
「はい。この間合いにまで引きずられた相手は、この時点で負けが確定しますが、ちょっとした意地悪・・・・と言った感じですな」
「意地悪・・・か、それでも女側が勝ってしまっては興ざめだぞ」
「その点は御心配なく。確かに力では人間の女にも劣る仲間もいますが、そう言った連中は複数で参加します。それを隠すための敷居でもあるんです」
「なるほどな・・・・・」
公平に見えてその実はイカサマという内容に、キーンは感心する・・・というより、これが勝者側の特権だなと笑んで見せた。
「やはりやられ役はやられてこそ、客受けがあるという事ですな。じきに始めますが、ミラー様も参加されますか?よければ優先させますが」
キーンはこの身分は、こう言った状況では役得だなと思いつつも首を左右に振った。
「待っている連中に悪い。見る方で楽しませてももらう」
参加して、もし自分が対戦者となって勝利し、役得を得ても、くすぐり方が違うなどという指摘を受けては元も子もないという事情もあった。
「わかりました」
そんな心理を知り得ないワードックはそそくさと戻り、自分の担当する催しを見に来た最高幹部の一人のために、早々に準備を再開するのであった。
もともと諸準備が簡単に済むため、『綱引き』は早々に開催・・・あるいは再開された。
既に順番が決まっていた事もあり、モンスター側のスペースにはそれぞれがたむろし、これから訪れる生贄が、自分達の担当するロープを引いてくれる事を誰もが心待ちにしていた。
キーンは、ワーウルフが気を利かせて用意した席に座り、現場を眺めていた。会場よりやや高い位置にあるため、一目で全体が見下ろす事が出来るベストポジションだった。
「確かに、これじゃ女には勝ち目はないな」
意気揚々とするモンスター側のメンバーを見て、キーンは思った。一目で勝敗が分かる大型モンスターのサイクロプスを始め、大柄なワータイガーにワースパイダー、以前闘った正式名称不明のタコヘッドに空間跳躍という特殊能力を持ったカエルみたいな生物も五匹一組というハンデで待ち構えている。
やられ役はやられてこそ、客にうける・・・・とは、先程のワードックの言葉であるが、確かにと、キーンは納得した。彼も又、ここに座った時点でまだ見ぬ女の敗北を望んでいたのである。
ややして客席から歓声が起きた。キーンが視線を移動させると、両手を手錠で繋がれた二人の少女が押し出されるようにして舞台となるステージに姿を現した。
彼女達は全裸でも露出の高い着衣でもなかったものの、薄地のボディスーツの様な物を纏っており、ぴったりとフィットしたそれはそのボディラインを露わにし、ある意味では全裸よりいやらしい雰囲気を見せていた。
その自覚は彼女達にもあるらしく、二人は頬を紅く染めもじもじした様相で身体を不自由な両手で覆っていた。
進行役のワードックはそんな事はお構いなく、彼女達を急き立てると五本のロープが置かれている場所へと連行し、この中から一本を選ぶように言い放った。
少女達もここのルールを知っているのだろう。ロープを選ぶ仕草には戸惑いがあり、軽々しく決定する事を躊躇わしていた。いや、ただ一つ彼女達が知らない事があった。それは、どのロープを選ぼうとも、彼女達に勝利はあり得ないという点である。
実力が十分なら、どれも選ばず周囲のモンスターを打ち倒すという選択もあったが、それを実行できる者は限られており、間違っても彼女達が実行できる手法ではなかった。
どのモンスターが選ばれ、その様な結果に至るか?キーンがそんな事を考えているうちに、少女達は遂に一本のロープを選択した。
ワードックはそれを持ち上げると、ロープに備え付けられていた鎖を少女達の両腕の手錠に繋げ、途中放棄すら出来ないようにした。それが終わった後、軽くロープを引かせ、対戦相手を確認する。
客席から失笑とどよめきとが複雑に混じった声が漏れた。今回、あの二人の少女と勝負をする栄光を受けたのが、五匹一組のハンデを受けているカエル型のモンスターであったからである。
「狙ったのか偶然か、微妙な勝負だな」
キーンは呟いたものの、彼は少女達の敗北を確信していた。先程、微妙な勝負と言ったのはあくまで体力的な面であり、実際に勝負が始まればまず勝てないだろう事は予想できた。これは、直接あの種と闘った事のある彼の実感だった。
勝負は彼の予想通りに進んだ。
当初単純な力比べで始まった綱引きは、均衡した状態が続いた。やがて持続力で徐々にではあるが少女達が優勢になるものの、それを頃合いと見たモンスター側の一匹が例の特殊能力、空間跳躍を使って自分の腕を少女達の背後に出現させ、綱引きに夢中になって無防備になっていた脇腹をくすぐったのであった。
この不意打ちに少女達は身悶えたが、両手は綱に繋がれているため抵抗することも逃げることも出来ず、激しく身を捩りながら笑い悶え、力を失った綱は徐々にモンスター側に引きずられて行った。
こうなると彼女達の勝機は全くなくなり、さして抵抗も出来ないまま、敗北宣言と同意である敷居の前まで引きずられ、敷居に仕掛けられたくすぐりトラップを作動させられ、無数の手によるくすぐり責めを受ける事となる。
後は綱引きを行う余裕を全く失った彼女達を完全に引き込み、所有権を得ればゲームはおしまいであったが、辛辣な事に、カエル型モンスター達は綱を引くのを止めて現状維持を行い、しばらくの間、彼女達がトラップにより容赦ないくすぐりを受けて悶える様を見て楽しんだ。
それを観賞して楽しんだのは彼等だけでは無い。観客にも包み隠さず観賞できるため、自然と観客のテンションは上がっていった。
「成る程、前座って意味合いもあるって事か」
冷静さを装いながらもキーンは自分自信の血もかなり滾りだしている事を自覚するのであった。
少女達はトラップに散々くすぐられて悶笑し、体力の大半を使い果たしてしまって後、ようやくにして開放される事になる。
だがそれは休息を意味する物ではなく、勝者であるモンスター達の手による新たな責めが始まる事を意味している。
勝者であるカエル型モンスター達は、自分達の能力を惜しげもなく利用した。
今、地面には二人の少女が、両腕を肩口から、両脚を付け根近くから消失させて、横たわっている。
両手足をモンスターの特殊能力である空間転移によって異空間に移動させ、この空間から消失させたのである。これにより彼女達は手足を切断されてしまったのと大差ない状態に陥ったばかりか、自分達の身体に群がり、好き勝手にくすぐるモンスター達に対し、何らの抵抗手段を持たなかった。
「やめ・・・やめてよぉぉぉぉ~!!ああっはっははっはぁぁっはっは~!!」
「やだぁぁぁぁもうや・・・・やぁああっはっはあはぁっはっははっは~!!」
少女達はこの空間に残る顔と身体をくねらせ、笑いながらその手から逃れようと必至になった。実のところ、手足もこれ以上ないくらい振り乱していたのだが、異空間にあっては何の意味も成さず、肝心の弱点を覆い隠す事さえ為し得ないでいた。
「だから・・・だからあああああっはああはっははははっはあははは~!!」
モンスターは容赦なくくすぐりを続ける。手足がない状態というものは、少々視覚的に気味の悪い物ではあったが、空間跳躍のできる彼等の目には異空間の手足も見えるのかも知れない。
(あの能力、そう言う使い方もあるか・・・・なかなかに興味深い)
どんな能力も発想次第であるという事を再認識しつつ、キーンは真剣な眼差しで繰り広げられているくすぐりショーを楽しむ。
そんなおり、一匹のモンスターが異空間の穴を作り、そこへ手を突っ込むと、中から人間の右足首を引っ張り出してきた。それが今、くすぐられている少女達のどちらかの物であろう事は明白であり、モンスターが嬉しそうにその足の裏に指先を添えると、一方の少女の身体が跳ねる。
「ああぁぁぁっ!!だ、ダメぇぇ~!!!ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ~!!」
これから何が起きるか、その感触で悟った少女が悲鳴を上げて懇願するが、その要求は無惨にも却下され、足の裏全体をモンスターの指が這い回りだした。
「いっ・・・いやぁ!・・・・っく・・きゃは!!きゃはははははははっははははぁぁぁぁぁああ~!!」
足裏を責められた少女が狂ったようにのたうち回ったが、異空間の出入り口によって出ている足首はクネクネと悶える事は出来ても、位置そのものを変える事は出来なかった。それでいて、責められる側は思いっきり暴れているのにも関わらず・・・・・なのである。本人に手足はしっかりと存在し、なんの拘束も受けてはいない。ただ同一空間に位置していないため、どんなに暴れても干渉する事が出来ないのである。これはある意味、拘束されてのくすぐり以上に質が悪いと言えた。
「あははははははははは!あ~っっははははははははは!ひゃあっっははははははははははははははは!!」
「あひっ、あひっ、あひゃっははははははははははははっはは!あああああああっっははははははははははは!」
手足の感覚があっても幽体と変わりなく、抵抗にも防御にも役立たない少女等は、その女体の弱点をさらけ出したまま、いいように嬲られ笑い狂った。
やがて彼女達はモンスターの巧みなくすぐりに全身汗まみれとなり、ただでさえ薄手で透けていた着衣を更に透けさせた挙げ句、激しく痙攣して気絶した。
歓声と共に今回の見せ物が終わり、ワードック達が後片づけを開始し始める。そして数刻の後、また新たな少女が勝ちようのない綱引きに挑戦させられるのであった。
次の回まで間があるため、退出していくモンスター達の集団の中に、キーンの姿もあった。
多くのモンスターの退出する流れに不必要に逆らっては目立つと考えたキーンは、とにかくその流れが緩慢になるまで、縁日の様な状況に沿って歩いた。
やがてモンスター達が方々の催しへと散って行き、キーンの周囲のモンスターの数も少なくなってくると、彼は周囲を見回し気づかれないよう手近な部屋へと入った。
さすがに使い慣れない全身鎧の長時間着用に息苦しくなり、一休みしようと思っての行動だったか、その部屋には既に先客がいた。
『誰?』
「っ?すまない、空き部屋と勘違いした」
キーンは解放していた鎧のフェイスガードを慌てて戻し、声のした方向に向かって振り向くと、そこには限りなく人間に近いシルエットがそこに在った。
「あら、ミラー様。珍しいですね」
声の主はゆっくりと歩んで、キーンに近づく。室内灯代わりの松明の光の範囲に入った相手の顔が浮かび上がると、彼は思わず飛び退きそうなった。
「!!?」
そこにいたのは、蛇の髪を持つメデューサと呼ばれるかなり希少な女型モンスターだったのだ。
絶対数が少ないとされるモンスターではあったが、蛇の髪という他に見間違えようのない特徴が、初見であっても容易に判別できる高名な存在で、その最も知れ渡っている能力が、視線による石化能力であった。
無論、冒険者であるキーンも、視線を合わせるだけで石化させてしまうその能力を知っていたため、つい反射的に身体が動きかけたのだ。
「あ、ああ、そう言って来る連中全員に言っている台詞だが、息抜きだ」
「そうでしたか・・・・」
髪が蛇である以外は十分に上品さを漂わせる美女といえるメデューサはその言葉を疑う事もなく納得すると、手にしていたグラスを傾け、残っていたワインを一気に飲み干した。
「こちらこそ、くつろぎの時間を邪魔して悪かったな」
そう言って早々にこの場を後にしようと背を向けたキーンに、メデューサが声をかける。
「ミラー様、今よろしければ、少し私とおつき合いして下さいませんか?」
(何っ!?)
キーンは慌てた。彼の仮の姿であるミラーとメデューサとの間柄が親密な物なのかと思い、自分の正体を知られる可能性に思わず緊張した。
「いっいやっ・・・・俺では君の相手は務まらないだろ・・・」
兜の中で必要以上に汗を流しつつキーンが言うとメデューサは怪訝そうな表情をした。
「ミラー様、酔ってるんですか?私が殿方を相手にするはずがありませんわ。お相手はこ・ち・ら・・・・」
そう言ってメデューサは、最初に出てきた部屋の奥、カーテンで仕切られた部屋を促した。
「?」
どうやらメデューサは、男嫌いあるいは同性愛趣向者らしく、その発言でそれを察したキーンは、ほっと胸を撫で下ろし、彼女が誘った部屋を覗き込んだ。
その部屋も広くない小部屋で、調度品は小綺麗なベットと小さなテーブルだけの、上品な寝室っぽい雰囲気の部屋であったが、彼が注目したのは、部屋の中央に設置された女性の裸体石像であった。
ポーズこそ両手を腰のやや下にあて、両脚を肩幅に開いた仁王立ち姿という何の捻りもない物だったが、身体のラインや表情は、創作者の妄想など一片も関与していない見事なまでの自然な裸体を造形していたのである。
「どうです?」
自分の作品なのか、自慢げに疲労するメデューサに促され、キーンは石像に近づきじっくりとそれを眺めた。
光源の少なさ故に、近づくと事で更にその技巧の精密さがはっきりと認識できる状況になったキーンは、その細部をじっくりと観察する。
「良いな・・・・」
気の利いた評論家の様な台詞でも言いたいキーンであったが、そうした知識と表現に乏しいため、最も簡素な一言のみをくちにする。
(と言うより、見事すぎるな・・・髪や皺、ヘアまでしっかりと刻まれてる・・・・これは、ひょっとすると・・・・)
「楽しめる素材か?」
湧き上がった疑問を解消すべく、キーンは問いかける。万が一、この質問が的外れであっても、言い訳がつくように言葉を濁したものだったが、会話は上手く成立する事となる。
「ええ、とっても・・・・美人局みたいに引き込まれましたけど、これが意外に大当たり」
そう言ってメデューサは、石像の首を両手で絞めるような形で軽く触れ、その手を上へと滑らせる。すると、石像の首から上が徐々に変化を見せ、生物としての姿を取り戻した。
(やはり石化した人間か・・・しかし、部分解除とは変わった能力を・・・・・こいつも特種か・・・・)
「・・・・・ぅ・・・ぁ?」
本人の望んではいないだろう、石化状態からの帰還。それはどの様な感覚なのだろうと、興味を抱きつつも体験したいとは思わないキーンの前で、無機物から有機物へと戻った少女は寝起き直後の様な表情で瞼を数回上下させる。そして、身体を動かそうとしてそれが出来ない事を把握すると同時に、視界内にメデューサとキーンの存在を認め、思わず息を呑んだ。
「ひぁっ!」
驚愕と供に霧中にあった記憶が蘇り、石化以前の出来事を思い出した少女が表情を強張らせる。
「ミラー様、ご紹介しますわ。彼女はイレーネ。あの国の弓兵で、例の結界構築時の攻防戦で捕獲されたのだそうです・・・・」
メデューサは妖しい笑みを浮かべて、首から上以外を動かす事の出来ない少女の背後に回ると、知人を紹介するかのように彼女の素性を説明しだす。
「・・・・そして、と・く・に、関節部関連を責められるのが特に弱いのよねぇ」
「はひぃっ・・はぁっっっっはははははははははいやっっははははははははあぁ、ぁっ、あはははははははっっっ!!」
メデューサの確認するかのような説明に、当事者たるイレーネは、いきなり吹き出すという形で答えた。
「や、やめっ、いやっはははははははははははっ!やっやははははははははははは!!」
その笑いが何によって引き起こされているか瞬時に理解したキーンは、視線を彼女の顔から身体へと向けると、当然のごとくメデューサによるくすぐり行為が行われていた。
基本的行為はこの塔の各所で行われている行為と何ら違いはない。だが、状況は今までと異なる様相となっていた。
メデューサは、イレーネの脇の下だけ石化を解除し、そこをしなやかな指で執拗にまさぐっていたのである。部分解除でも、神経などは繋がっている様で、脇の下で行われる指のダンスに、イレーネは大声で笑い続けていた。
「あはっあぁはははははははははは!ひっっははははははははっっ!あっあっぁっ~~~~~っっっはははははは!!」
イレーネは首を前後左右に目一杯不規則に振り乱して笑い悶える。今、彼女はその苦しみの元凶たる脇の下を閉じ、一瞬でも逃れたい想いでいっぱいであっただろうが、全身のほとんどが石化状態である中でそうした動きが出来るはずもなく、ただただ笑い狂うしかなかった。
「良い反応ねぇ、嬉しいわ」
苦しそうに笑い続けるイレーネを満足そうに眺め、メデューサはミラーに視線を向けた。
「ミラー様もどうぞ。楽しいですわよ」
言われるままにキーンはメデューサの元へと赴き、彼女と場所を変わってもらう形でイレーネの背後へ回ると、石の中に含まれる僅かな生身である両脇の下を引っ掻くようにして刺激した。
「!!っふぁっっっははははっはははははははは!!いやぁっっはははははは!!」
交替の合間の僅かな間隙で息を整えようとしていたイレーネは、前振りもなく行われたくすぐりに、面白いように反応した。
脇の下という責めるポイントは変わらなかったが、指の腹で撫で回すようにしていたメデューサと、指先の爪を利用した巧みな引っ掻き責めのキーンとでは、その刺激は大きく異なり、慣れ始めていた感覚も役にはたたず、新たな刺激に激しい笑い声で応じた。
「あはははは、あぁっっはははははは!いやっぁっははははははは!もうやめっっっっっっははははあぁぁっ!ひぃぁっっははははははは!あ、ぁ、あ、あぁ~~っっっっははははははははっっ!!」
責めるポイントが限定されているため、急な位置変更による不意打ちが出来ない以上、キーンは脇の下に対する責め方の変化のみで相手を翻弄し、慣れを起こさせない必要があった。
彼は指先で引っ掻く行為の他、指先で何重もの円を描き、時には逆回転させたり、つついたり、突き立てた人差し指と中指を揃えて脇の下をこね回したり、メデューサの様に指の腹で撫でたりとした責めをランダムに行った。
「あひっあひひひいひぁっっはあははははははっ!いやっいやぁっはははは、そ、それ、そぉぉっっっほぁぁっっはははははっははははははは!!」
仁王立ちの姿勢で固定されているイレーネは、あと僅かに腕が動かせれば、責められている脇の下を閉じてガードできるのに・・・・・と、現状を呪った。
堪らないくすぐったさは脳に直結したかのような激しい刺激を絶え間なく送り続け。本来なら狂ったように跳ねるだろう身体は石化によって微動だにせず、身動きできないそのもどかしさが苦しさを増長させているようでもあった。
キーンの指先はそうした状況を良いことに、本来であれば、暴れる事で生じる責めポイントの僅かばかりのずれさえも気にすることなく、執拗に弱点をまさぐり続けた。
そうした脇の下の一点責めで、特に彼女が顕著な反応を示したのが、引っ掻き責めであった。特に人差し指と中指で砂に、穴を掘るようにして二本の指を交互に蠢かすと、彼女は狂ったような反応を示した。
「ふぁっははははははははははは!ひぃっひっひひぁぁぁぁ~~~~~っっははははははははあはははははふぁぁ~~~っっっははははははははははっ!!ほぉぁ、ほぁはぁああああっっはははははははははは!!」
悲鳴同様の笑い声と共に首が激しく暴れるのを見て、これが通常の拘束状態であればどんな反応であっただろうと、キーンは興味を抱いた。そうした反応に思わず夢中になったのだろう、彼は少しの間、メデューサの声が届かない状態になっていた。
「ミラー様っ」
「おっ、あぁ、な、何だ?」
メデューサの数回目の呼びかけで、ようやく我に返ったキーンは、思わず姿勢を正した。
「いかがですか?お気に召しまして?」
「あぁ、良いな」
先程と同様の台詞で答えるキーン。
「ふふ、良かったわねイレーネちゃん。ミラー様にも気に入って貰えたわよ。これから私と二人で可愛がってあげるわ」
「いっ、いやっ!いらないぃぃっ!!」
イレーネは本心から拒絶した。だが、発言の権利はあっても拒否権が無いのが彼女の現状であり、S傾向の者がここで温情的になって彼女を解放するなどという事はまずありえない。逆にそうした反応が加虐心を大いに煽る結果となるのだった。
「本当にイヤならお逃げなさい。見逃してあげるから・・・・あなたの意志は尊重するわ」
(よく言う・・・・)
身体の自由を束縛したままで意志を尊重しても、この場合は無意味である。逃げようと欲する意志を実行に移す為の肉体は石化したまま動かず、逃げるなどという事は不可能であると、無関係者でも理解できる状況で、あえてそう発言したメデューサに、キーンは彼女のS性を垣間見た気がした。
助けるべきだろうが、まだ命に関わる事態ではなさそうでもある。もう少し状況を楽しんでみたい・・・などとキーンが思っている間に、メデューサはイレーネに正面から近づき、ゆっくりと肌を重ねた。
肌を重ねるとは言っても、石化した相手とのそれは、石像に身をすり寄せる一種の自慰的行為にも見えた。メデューサの髪が蛇としてのたうってなければ欲情的な光景となっていた事だろう。
彼女は石化したイレーネの身体の色々な箇所を、愛おしそうに撫でながら任意の部分の石化を解除していった。
胸の両脇の付け根、脇腹周辺、背骨一帯、脚の付け根のライン、両膝の裏・・・・・その特定の箇所の石化解除を見て、キーンはメデューサの趣向を理解し、想像通りであった事を悟った。
もちろんその意図は被害者になるイレーネにも理解されていた。
「ぅぁ・・・ひっ・・ぃ・・ぃや・・・」
くすぐり責めに有効な箇所のみの石化解除。否応なしに始まるだろう当事者にとっての地獄を前に、彼女は渾身の力を込めて身体を突き動かそうと試み、そして願ったが、復帰した生身はまだまだ僅かであり、その欲求を適えることは不可能であった。
しかし責める側にすれば、その僅かな箇所が実に有効なポイントであった。
「さぁ、楽しみましょう」
妖しい口調で囁き、メデューサの指が彼女の乳房の両サイドの付け根部分に触れた。
「はぅっ!」
それだけでイレーネは息を詰まらせ、生じた感覚に息を詰まらせる。
メデューサはそこから一気に息を吹き出させようと、露出した付け根をソフトに引っ掻きだす。
「ふぅっっ・・くっ・・・・うくっ・・・ぅぅぅっっっ!」
イレーネは見る間に顔を紅潮させ、歯を食いしばってその刺激を堪えた。
全体的には身動きのない身体ではあったが、不規則に詰まる息と、激しく揺れる頭部がその刺激の有効性を示し、メデューサはそうした様子を眺めながら、乳房の付け根のラインを優しく撫で、時には軽く指先で突っついた。
「うぅっ・・・・・ぅ・・・っ・・・くぅっ!」
メデューサの指がしなる度、イレーネの脳にムズムズとした快感ともくすぐったさともつかない感覚が駆け抜けた。耐えられない程でもないが、無表情でもいられない。そうした中途半端な刺激に、懸命に耐えていた彼女であったが、その時、予期しなかった刺激が彼女に襲いかかった。
「はぁぁぅぅぅ~~~」
背後のキーンが無言のまま、自分の眼前に位置していた彼女の背筋を上から下へと撫でたのである。
胸の方ばかりに集中していた彼女にとってそれはまさしく不意打ちであり、本来ならばエビ反り状態になったであろう反応を、首を仰け反らせる事で示した。
通常の拘束では暴れることで意外に位置が変化する背筋も、石化という拘束の前では微塵も動けず、良いようにキーンの指先の蹂躙を許し続けた。彼は一度上から下、下から上への指先の往復運動を済ませると、今度は引っ掻き行為を行いながらゆっくりと背筋を責めにかかった。
「ふひぃっ・・・・はぁ・・・・・・あぁくぅっ!」
虫刺されを優しく掻くような刺激が背筋にそってゆっくりと下がってくる感覚に、イレーネは頭を仰け反らしたまま必死になって堪え続けたが、今度はそちらに意識が集中しすぎる結果となった。
「と・ど・め・・・・」
小さく囁くと同時に、メデューサはおもむろに胸から両脇腹へと指を移動させると、抵抗の術を持たないそこを遠慮無しに揉み回した。
「!!~~~ぶぁっあっはははははははははあはははははは!いやぁ~~~~~っっっはははははは!!!」
度重なる不意打ち、しかも手加減無しに行われては耐えられるはずもなく。イレーネはついに激しく吹き出した。
「だめっ!だめぇ!だめっっっふひゃっっぁっはははははははっははは!あ~~~~っっっははははっはははは!い、い、ぃひゃっっっははははははははははは!!」
頭だけを激しく振り乱して彼女は笑い続ける。その激しさたるや、今まで堪えていた反動がでたのかとも思える程であった。
「いひひひひひひひっっ!あっはははははは!ああぁぁああぁ~~~~~~っっっっ!」
このまま続ければ気が狂うのではと思える様相でありながらも、メデューサは脇腹を責める指先の勢いを衰えさせる事はなかった。それどころかキーンも、ソフトな刺激であった背筋責めから一転、膝裏に指を回して有無を言わさずこちょこちょとまさぐり始める。
「くぁぁぁぁっっっはははははははは!ぁぁぁぁぁひゃっっははははははは!!!」
これまた視界になかったポイントであったため不意打ちとなり、彼女は新たな刺激に対する反応を如実に表した。
「あひっあひっ、はぁっっっははははっはははははは!もぅいやぁ~!!」
身動き出来ない分を代行するかのように激しく暴れるイレーネの頭。だが、それでもキーンとメデューサはお構いなしに要所要所のくすぐりを続ける。
全く身体の反応が見られないというのはある意味残念な面があったが、イレーネの苦しそうな笑い声と表情は、その不足分を補うに足る物であった。
メデューサはキーンの膝裏責めの反応がやや降着したと判断するや、自分があてがっていた脇腹の指を、今度は脚の付け根に回してその弱点を引っ掻くように刺激し始める。
「きぃやぁぁぁぁっっっっはははははははははっはははだめっっっっっっっひゃっはっはっはっはっはっはっはっはっははははぁっ~~~~~!!」
これにも敏感に反応したイレーネが、新たな笑い声を上げて苦しむと、またキーンがタイミングを見計らって脇の下を責め始める。
こうして二人は、申し合わせしていたかのような絶妙なタイミングと連携でイレーネの放浪し続け、最高潮状態のくすぐったさを持続させる。
「ぁぁぁあ~~~~~~っっっくっひっひっひっひっっ・・・・・」
それからイレーネにとって地獄のような時間が延々と続いた。そのままであれば、果てて気絶という最も遅いゴールに辿り着ける可能性もあったかもしれない。だが、彼女が激しいくすぐったさによる苦しみの中、夢中になって放った言葉は、確定していたはずの平和的帰着点を消し去った。
「あひゃっっはははははっ、あ、なたはぁくひひひ、貴女はやっぱり、見た目通りの鬼よぉほぁっっっははははははははっっ!!」
(!?)
直後、キーンは周囲の気配が変化した事を悟る。
何事かとイレーネ越しにメデューサを見ると、彼女は不意にくすぐりの手を止め俯いていた。
「おい・・・・?」
その方が僅かに震えているのを見て、キーンが声をかけるが、それと同時に顔を上げた彼女を見て、かける声を失った。
メデューサの表情に、今までにない妖しい・・・いや、怪しいというべきだろう、引きつった笑みが浮かんでいた。その様相にキーンも思わずくすぐりの指を止めて、彼女の動向を注視した。
「お嬢ちゃん・・・・なんて言ったのかしら」
メデューサが笑みを浮かべたまま、イレーネに顔を近づける。
問われた彼女は答えない。ようやくにしてくすぐりから開放され、呼吸を整えるのに手一杯だったのである。
「鬼?見た目通り?・・・・・この美しい私が?」
髪の問題がなければ十分に美女・・・と、言うのはキーンの内心の評価ではあったが、口にするという自殺行為は行わない。
当人も意識していた欠点なのか、それとも自尊心が高いのか、ともかくもその発言がメデューサの機嫌を害した事を把握したキーンは、彼女が感情を殺意に転化させないかを見守り、その事態に備えた。
「そんないけない口をきく子猫ちゃんは、きついお仕置きをしてあげるわ」
まるで微妙な年齢の女性に「おばさん」と声をかけた時のような、自分でも認知はしているが認めたくないというような、一種の逆鱗に触れたような笑みで語ると、メデューサはその視線をイレーネの背後のキーンに向ける。
「そうですよね!」
「お、おぅ」
無理に同意を求めるメデューサの勢いに負け、反射的に首を縦に振るキーン。
「それじゃぁ、お仕置きモード・・・と・つ・にゅ・う~」
メデューサの目が紅い輝きを放つ。
「!?」
石化能力かと思ったキーンが思わず視線を背けたが、そうではなかった。彼女の目の発行は魔力の発現を意味していたが、それは外部ではなく内部に影響を与えるもので、それは外からの観察でも容易に判別できる現象となって現れる。
見る間にメデューサの最大の特徴とも言える蛇の髪がその長さを伸ばし、当初セミロング程度の長さであったそれが、見る間に腰にも届くロングへと変化した。
そして長さを増した蛇が次々にイレーネの身体へと巻きつき始める。
「はぅっっく・・・んふぁぁっ!」
程なくしてイレーネの口から悩ましい声がもれた。絡みついた蛇の一部が、石化解除されている彼女の弱点を、細い舌で舐め始めたのである。
脇の下、胸の付け根、背筋、脇腹、膝裏、脚の付け根・・・・
指で刺激すれば間違いなく笑い悶えるだろうポイントも、細い蛇の舌での刺激では激しいくすぐったさには至らず、くすぐったさ一歩手前の微妙な刺激に快感に近い感覚を受けていた。
「んん~~~~~~ぅくっ・・・!」
こみ上げる笑いとは異なる声を、イレーネは懸命に耐えた。蛇の舌は絶え間なくチロチロと蠢き、各所をソフトに責め続け、彼女のそうした精神的防御をそぎ落とそうとする。
当初、これなら耐えられると思ったその刺激も、丹念に続けられる事により徐々に大きくなっていくような感覚を彼女は感じていた。
(変に意識しては駄目)
そう自分に言い聞かせるイレーネであったが、元来くすぐったく感じる箇所は性感帯とも言えるポイントであり、微妙な力加減でその差が出ることが多い。したがって蛇の舌のソフトな責めは、彼女の自覚とは無関係にその性感を増大させていく傾向となっていた。
特に背筋、胸と脚の付け根を刺激されると、脳が痺れるような感覚に襲われ、落ち着き始めたいた呼吸が再び乱れ、頬も艶やかに紅潮していった。
「そろそろ感じてきちゃった?」
イレーネの表情の変化を目敏く察したメデューサが、意地悪っぽく問いかけた。
「そ、そんな・・・くふぅん、わけ・・・ない」
そう否定してみせたものの、その様子を見る以上、信じる者はまずいない。
「う・そ・つ・き」
もちろんメデューサもその言葉をはなっから信じてはいない。そうした虚勢を頃合いと見た彼女は、更なる責めを開始する。
待機していた他の蛇が活動を開始し、頭の左右、胸と股間周辺に移動する。
そして、さほどの間も開けずに石化状態であった胸の先端と股間一帯を舐め始めると、蛇の舌が触れた部分の石化が徐々に解除され、生身へと戻って行った。
「はくぅ・・くっ・・・あぁん」
両乳首の先端に感覚が戻った途端、蛇の舌による甘美な快感を受け、イレーネは堪えることも出来ず悩ましい声をあげた。
舌による刺激もあっただろうが、既に他のポイントの性感責めによりできあがりつつあった彼女の身体は素直に反応し、その両先端を隆起させてしまった。
「ほぉ~ら、やっぱり、身体は感じてる~って、言ってるわよ」
「はぁぁぁん!」
そう言ってメデューサは隆起した乳首を指でつまんで軽い刺激を与えると、イレーネの表情がビクッと震え快感に歪んだ。
「良い声ねぇ、もっと感じなさい」
満足そうに笑むと、メデューサは指を離し、再び蛇を3匹づつ差し向けると、刺激を欲するように起つ乳首を3本の舌で責め立てた。
「あぁ、いぃ・・・・はぁぁ~~~~!」
三方向から襲いかかる細い舌の刺激に、イレーネが熱い吐息を吐く。人の舌や並の触手などでは体験できないソフトな刺激が彼女の乳首を伝わり官能を刺激する。
そうした人外の刺激に翻弄されている間に、更なる刺激が別所から生まれた。
それは股間周辺に殺到していた舌による刺激であった。こちらも舌が触れる事によって石化が解除され、その最も敏感な箇所をさらけ出し、抵抗や逃亡の術のないそこを、細い舌が容赦なくなめ回したのである。
「あっあぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~!!」
自在に蠢く筆先が絡みつく様な快感が、股間の敏感な部分を駆けめぐり、たまらずイレーネが悲鳴を上げた。
意志に関係なく跳ね上がるだろう股間への快楽による反射反応も、石化の為に押さえ込まれほとんど目立った反応を見せなかったが、のたうつ頭と激しい喘ぎ声がその全てを代行していた。
股間に生じた快楽は尽きることなく、まるで掘り当てられたばかりの井戸の様に溢れ続けた。
「ふぁぁぁぁぁ・・・・あぁん・・・・あはぁ・・・」
止めようのない快楽は見る間にイレーネの女の性を浸食し、止めたくない快楽へと変貌させる。股間のみならず、乳首、脇の下、脇腹、背筋、足の付け根、膝裏を責める舌先の感覚までもがそれに同調し、快感は爆発的に増大し膨れあがる。
「うふふ・・・・はしたない涎がい~ぱぁい」
「ふぅっっくぁぁ・・・」
メデューサが全ての蛇を下がらせ、晒された股間を指先でそっと撫でると、イレーネは顕著な反応を見せる。触れた指先を後ろから前へとそっと動かすだけで、彼女の股間から溢れた蜜が指を伝わって床に滴った。
一度決壊した蜜は止めようもなく溢れ、石化した彼女の太股を伝わり足下に泉を作り出す。
その源泉となる彼女の秘所は、新たな刺激を求めヒクヒクと震え、新たな蜜を滴らせた。
「はぁ・・・あうぅぅ・・・・」
快楽の余韻と新たなる快楽に打ち震えるイレーネの潤んだ瞳でメデューサを見据えた。
更なる快楽を求める本能と、相手に屈服する事を許さない理性がせめぎ合い、言い様のない感情が彼女を襲っていた。
だがそれは決して均衡ではない。あとほんの僅かな快楽によって理性は一気に崩壊することは本人すらも自覚している事であった。
「もうそろそろ限界よねぇ」
わざわざ確認するように囁くと、その返事を待たずに蛇を差し向けるメデューサ。再び蛇がイレーネの身体に巻き付き、各所への刺激を再開すると彼女の官能は一気に再燃した。
「んぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」
燻っていた火に油を注がれ、落ち着きかけていた本能が手のつけようもなく暴れだし、僅かな理性を押し流した。
「あぅ・・・あぁん・・・・も、もう・・・・んぁ?い、いやぁっっはははははははははははっははははははや~っっはははははははははは!!」
イレーネが欲望に敗北し、快楽を自ら欲しようとしたその瞬間、彼女は全く予期しなかった刺激を受け、たまらず噴き出し、大きな笑い声を上げた。
メデューサの指が脇腹を激しく揉みくすぐり、脇の下と膝裏に位置していた蛇が、舌ではなく頭全体を利用してグリグリと責め立てたのである。
今し方まで快楽はたちまち押しやられ、蘇ったくすぐったさに彼女は翻弄される。
「いやぁっいやっっははははははははははは!!もう、くすぐりだめぇ~~~ひぁっっははははは!!」
「そう、駄目なの?だったら笑い疲れたら、また気持ちよくしてあげるわ。そ・し・て、イキそうになったらくすぐってぇ、それを繰り返して、くすぐりでイっちゃうまで続けてあげるから覚悟なさい」
一旦くすぐりの手を止め、喘ぐその姿を眺めて、悪魔的な笑みを浮かべてメデューサは言った。
それはイレーネにとって、気の遠くなるような地獄の行程の開始を意味した。
「いやっ・・・・いやぁ・・・」
彼女は首を振って拒絶したが、それを受け入れる寛大さをメデューサは持ち合わせてはいない。逆に怯える彼女の表情を見て、恍惚とした笑みを見せた。
「あら、怖がらずに安心して。気が狂わないように最低限の手加減はしてあげるから・・・・」
指と蛇をクネクネと蠢かせつつ、メデューサはイレーネに近づいていった。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
フロア一角の小部屋に、イレーネの絶望した悲鳴が響き、その直後、蚊帳の外になって忘れられた存在となったキーンが、名残惜しそうに部屋から出て行った。
メデューサとイレーネの、いわゆるレズ・くすぐり悶絶ショーを拝見し終えたキーンは、それから暫くの間、辺りを放浪しては目にとまった催しを見て楽しんだ。
催しは数多くあり、ジャンケンやくじで、賞品の少女をくすぐる権利を奪い合う単純な物から、がっしりと拘束した全裸少女の身体に絵筆を用いて絵を描く様なマニアックな物や、特別に作られた迷路内に数人の少女を放ち、それを『ローパー』と呼ばれているイソギンチャクの親戚のような形状をした人造生物数匹を宝珠でコントロールし、追いつめ・捕らえ・『ローパー』の特徴でもある触手でくすぐり嬲ると言った、手の込んだ趣向も存在した。
それらを一通り見て回り、気に入った催しには自らも参加しながら、キーンは自称『フロアの調査』をし続けた。
そして全てを見回るつもりであった彼は、必然的にあるスペースに辿り着いた。
そこは、周囲の盛況さに反して何の催しもなく、開いたスペースに小柄なモンスター人間型のモンスターが数匹座り込んでいただけだった。
「ん?何なんだここは?」
周囲に比べれば確実に浮いている区画に足を踏み入れ、キーンはそこの担当であろうモンスター達に声をかけた。
「あぁ?」
モンスターは不機嫌そうに唸った。
「ここでは何をしているんだ?」
改めて問いかけるキーン。
「何を・・・だぁ?見てわかんねぇのか?何もしちゃいないよ!」
面白く無さそうに唸ってモンスターは相手を睨みつけたが、相手の姿を見た途端、敵意丸出しであった表情は瞬時に凍り付いた。
「かっ・・・あ、ミ、ミラー・・・・様」
「し、失礼いたしましたっ!」
いきなりモンスター達は頭を下げた。
「知らなかったとは言え、不機嫌さに任せとんだ御無礼を・・・・も、申し訳有りません」
ここに来て、もう何度も行われている行為である。
「もういい、で、何故何もしていない?」
つき合っていては長ったらしい社交辞令となる事を、経験から知り得ているキーンは、先手を取ってそれ以上の言葉を遮って、本題へと入った。
「そ、それが、恥ずかしい話しなのですが、ネタが思いつかなくて・・・・」
「ネタ?」
「はい。ここではどんな趣向の催しも良いとされていたため、それならばと、凝った趣向を考えようとしたのですが思い至らず、他のチームに先を越されてしまい、今更ありきたりの事も出来ず、途方にくれておりました・・・・・」
「成る程な・・・・」
メンバーを結成したはいいが、発想に富んだ者がいなかったという訳である。
「ミラー様、何か良い趣向はお持ちでは無いでしょうか?願わくばお知恵をお借りしたいと存じます」
「ふ~ん・・・・・」
いきなり現れた自分に対し、いきなり助力を乞う以上、かなりせっぱ詰まっている事がうかがえた。
キーンは腕組みをして本気で考え込む。別に拒否する権利もあったのだが、自分のアイディアが実施できるチャンスに思わず考え込んだのである。
彼は今まで見て回った催しを思い出し、それらには無かった点を模索する。そして頼んだモンスター側が申し訳なく思いだして、結構ですという言葉を言おうとした直前、キーンの脳裏に閃きが走った。
「思いついた!」
「えっ!?」
モンスターの目が期待に輝いた。
が、キーンはすぐに案を語ろうとせず、ちょいちょいと手招きをして、モンスターの一匹を呼び寄せた。
「は?」
「まず、確認したい事がある」
近づいてきたモンスターに、そっと耳打ちした。
「・・・・・・・・・・・・・・・と、言う物は存在するか?そして・・・・・・・という物と・・・・・・という物、あるいはそれに類似する物を揃えられるか?」
キーンに耳打ちされたモンスターはしばし考え、記憶の奥底を検索した。
「おそらくは・・・・・・スライムの方は御要望の種が調整された話を記憶しておりますが、薬品に関しては確認をしてきます・・・・・あるいは専門士に調合を依頼しますが、用途が一向に読めませんが?」
「いいから、揃えられるのなら揃えてくれ」
「承知しました・・・・・」
そして待つこと数刻・・・・戻ってきたモンスターから朗報がもたらされ、キーンの求める物の全てが揃う事となり、早速企画の準備に入るのだった。
キーンの参加による結果か、士気の上がったモンスター達はその小柄な体型にも関わらずパワフルに動き、準備はあっという間に完了した。
早々に組み上がったステージ自体は他と大差なく、円形の観客席の中央に、見せ場となる舞台が設置されており、観客も入り始めていた。特に大々的な宣伝は行ってはいなかったが、新しい催しという存在が客の期待感を刺激した事実もあった。
そして舞台には既に餌食となる五人の少女達が訪れる運命を待たされていた。その五人のうち一人が拘束用ベットに全裸でX字に拘束されており、その周囲を四人の少女達が床に転がっている。両手は後ろ手に縛られ、両脚も揃える形で縛られており、ろくに動くことも出来なかったが、X字拘束されている少女と異なり、彼女達には通常の衣服が着せられたままになっていた。
この状況で何が行われるか予測できる者はいなかったが、五人という人数と、この状況に、観客の期待は否応無しに上がっていった。
「一体何を見せてくれるんだぁ?」
ここの事情を知る者からの声が、観客席から放たれた。
「それは見てのお楽しみ!」
それに対し、負けじと主催者側のモンスターが叫んだ。
キーンは舞台の角で目立たぬように客席の様子をうかがい、席が満杯になる頃合いを見計らって照明の光量を低めに調整し、対照的にステージへの光量を高くした。単純な演出効果ではあるが、もともとテンションの高かったモンスター達にはこれだけで十分だった。
「さて、お集まりの皆様、今回、初公開となるこの催し、残念なことにまだ正式名称がありません・・・・・・ですが、基本テーマは『自己と友情』とも言うべき物で、理性の強さが問われるものです。それでは、早速始めましょう」
その言葉を合図に、ベットに拘束されていた少女の周囲に四匹のモンスターが歩み寄り、周囲を取り囲んだ。彼等は左手に小さな缶バケツを持っており、その中からは刷毛の柄が突き出していた。
「ちょっと・・・何よ・・・・」
少女・・・・かつては騎士団長という身分を誇っていたレイラは、首を左右に振って周囲を見回し、四匹全員の手にそれが握られているのを知って小さく身震いした。この塔内に捕らわれている女性で、彼等の好む趣向を知らない者はいない。これから行われるだろう事を想像しただけで彼女の身体はムズムズとした感覚を覚えるのであった。
「では、始めてくれ」
その命令を聞き、待ってましたとばかりに四匹のモンスターが一斉に、缶の中に入っていた液体を刷毛に含ませ、彼女の全身に塗りたくった。
「きゃ!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!あっあっあひゃっははははははははははははははははははははははははははは!」
もともと、そういう人選をしたのではあるが、レイラはかなりのくすぐったがりやであった。特にポイントを狙ったわけでもなく、無造作に刷毛が触れただけなのにも関わらず、彼女はいきなり吹き出し、拘束された身体をガクガクと激しく揺さぶった。
「きゃ~っはははははははははははは!あっははははははああはははは、や、やめ、ひょははははははははははは!や~っっははははははっはははあははははは!」
堪えることの出来ないくすぐったさに、まともに言葉の出ないレイラは激しく首を振って拒絶の意志を示したが、そんな反応を見せられると、基本的に責め側は興奮するものであり、自然と刷毛の動きは意地の悪い物となっていった。
腰から脇腹を何度も往復する者、腹周りで何度も円を描くようにして刷毛を動かす者、足の裏から指の間にまで丹念に、まんべんなく液体を塗り込む者、ピクピクと反応し身体を捩る事によって体がピンと張りつめた部分に刷毛を這わす者、それぞれが辛辣に女体を責め嬲る。
ハケの感触と、塗り込まれる液体の滑りによって生じる絶え間ないくすぐったさに、レイラは気が狂わんばかりに笑い悶え続けた。
「いやぁぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはーーー!!だ、だめぇーーー!!きゃっはっはははははははははーー!!ひゃははははは!きゃはははははは!あっはははははははは!た、たす、ぷっひゃひゃはははははは!たす、たすけっい~っっひひひひひひひひひひひ!助けて、はひゃ、みんな助けてぇー!きゃはははははは!!」
助けを求めても、そして仲間内の身分を利用した命令であっても、その場にいる仲間達も身動きが出来ず、助けに行けるはずもなく、無力にも上司の笑い狂う声を聞き、次は自分ではないかと恐怖を抱く以外に出来ることはなかった。
それからどの位の時間が経過したか・・・・
刷毛責めを受けたレイラは、休むことも出来ずに勝手に身体が反応する事で延々と悶え続け、意識が朦朧として何も考えられなくなった頃に、ようやく開放された。
これは慈悲などではなく、単に用意していた液体が彼女の全身に塗り終わった結果であった。
レイラは荒々しく大きな呼吸を続け、酸欠状態になっていた身体を落ち着かせるため大きな呼吸を続けている。最初は全裸で拘束されていた事に恥じらいを見せていた彼女であったが、今はそんな事も忘れ、第一に乱れた呼吸を唱える事に手一杯の様子であった。
そんな彼女の身体は、モンスター達の塗りつけた液体によって色っぽい光沢を放っていた。
「さて、彼女の方はこれで準備終了です。では、いよいよ本命に登場していただきましょう」
モンスターのアナウンスに合わせ、刷毛と缶を持っていたモンスターが舞台裏に消え、スイカ程のサイズの陶器製の坪を持ったモンスターが入れ替わりに現れ、先程と同じように中央でX字に拘束されたレイラを取り囲むように配置に付いた。
配置に付いた四匹が司会役に視線を向け、それを受けた司会もアイコンタクトで頷き合図を送ると、四匹も頷いて手に持った坪を床に落とし、自分達は早々に引き上げていった。
何が入っている?
少女達だけではなく、観客のモンスター達もそれに注目した。
砕けた坪の破片の影から、何かが蠢いた。青く、淡い光を自ら放つ不定形の物体。そう、スライムの一種が、坪から開放され、活動を始めたのである。
「おお、スライムとの絡みか!」
これから何が起きるかが想像でき、にわかに客席が色めき立った。
だが、客の予想とキーンの考案にはまだ若干の差が存在していた。
「さて皆さんもお察しの通り、ここに蠢く不定形生物はスライム系の生物ではありますが、これはスライムマスターの手によって調整された特殊なスライムであり、その性質は生意気にも女好き・・・・であり、女体に取りついては弱点を探り、くすぐりを行い、女性を笑い悶えさす『くすぐりスライム・ブルーバージョン』であります。ここまで言えば分かりますね?では、しばし彼女達の運命を御覧頂くことにしましょう」
そう言い残して司会役のモンスターは舞台の角へ移動し、客に視界を譲り渡した。
そこでは、目ざとく目標を見つけた四匹のスライムが、最も手近にいるそれぞれの少女達ににじり寄っていく様子が繰り広げられていた。
「いや、いやぁ!!」
説明を聞いていた少女達は悲鳴を上げて逃げようと試みたが、両手は後ろ手に両足首も揃えて拘束されている状態では、思うように逃げられるわけもない。
芋虫のように不慣れな態勢で這う少女に対し、這って移動する事に慣れているスライムとでは、移動手段は同じでもそのスピードが違い、いとも容易く追いつかれてしまう。
スライムは衣服に貼り付きながら捕らえた獲物の弱点を探るべく、体中を這い回った。
「くっくっくううう~!!やめ・・あぁ~そん・・そんな・・・・服が・・」
人の指とは異なる感触が身体を通過する度に少女は身体を身震いさせ、スライムを振り落とそうとのたうち回った。だが、粘性のある身体はぴったりと貼り付き、その上、分泌される粘液は徐々に少女の衣服を溶かしていたのである。
「あはぁああ~!!・・そんな・・・いや・・・いやああぁ~!!」
徐々に肌を露わにされる恥ずかしさと、徐々に激しくなるくすぐったさに少女は顔を真っ赤に染めて身悶え続ける。
やがて着衣全てが溶かされれば、スライムの感心はくすぐりのみとなる。それが分かっているだけに少女達の心は焦ったが、今、彼女が出来るどの様な抵抗もスライムを引き剥がすには至らず、スライムもそれを嘲笑うかのように、着実に各所を溶かし、弱点の捜索を続けている。
放たれた四匹のスライムのうち、三匹は床に転がっている少女達を捕らえたが、あと一匹は発想が他と異なっていたのか、拘束ベットをよじ登り、X字にされているレイラを狙う選択をした。
「ほ、スライムにも型破りがいるのか」
キーンが妙なところに関心を持ったが、このスライムの目的地到達は、達成される事はなかった。
スライムはベットの上まで這い上がると、相手が完全に拘束されているのを知っているのか、伸ばした身体の一部をいきなり脇腹へと差し向けた。
観客も、先程の過剰な反応を思い出し、虚ろな状態で呆ける少女がどの様に反応するかを想像し、それが実現するのを心待ちにしたが、スライムは身体の一部が僅かに少女に触れた途端、ビクリと震え、まるで塩に触れたナメクジの様に縮こまり、いそいそとベットから降り、結局は残っていたもう一人の少女へと向かって行ったのである。
このスライム、今度は何事もなく相手に接触したのだが、観客達には何が起きたかまるで理解できないでいた。
床に転がっていた四人の少女達は、それぞれがスライムに接触され、その不定型な身体全体による蹂躙を受けなければならない状態になっていた。
「あ、あ、ああ、あああっ、・・・やはははははははははっ!い~~~っひひひひひひ!!あはっ、あはっ、あ~~~~~っはははははははははは!」
「はぁっ!!あひっ!!きゃっはははははははははははははははははははは!はあっ・・ああああっあははははははははははははははは!!」
「ぎゃはははははは!だめ~~~きゃはははは!よして、よし・・・っひひひ!くひゃははははははははは、あ~っっはははははははは!」
「あひゃっ・・あひゃひゃはっははははははははははははははははは!!!そこだめぇ・・・やははははははははははは!」
少女達は陸に上がった魚のように身体を弾かせ、今、我が身に起きている感触の苦しさを体現して見せた。
だが、彼女達が悶え、身体を跳ね上がらせれば跳ね上がらせる程、見ている観客にとっては興奮の材料となるのである。
「きゃははははは!!やめてぇー!!あっはははははーーーー!!」
「お願い・・お願いだからもうやめてぇーー!!きゃっははは!!あっはっははは!!」
「きゃっはっはっはっは!!やめてぇーーー!!やめてぇーーー!!」
「だめぇーーー!!苦しぃーーーー!!や、やめ・・・きゃはははははーーー!!」
ややすると彼女達の服は、スライムの粘液によりほとんど溶け落ち、全裸状態となった。
遮る物のなくなった柔肌にスライムの不定型な身体がまとわりつき、その上、衣服以外には全く反応を示さない粘液が、ヌルヌルとした感触となって襲いかかり、くすぐったさを増大させる結果となる。
少女達は身体が激しく反応しながらも、そして無駄と知りつつも、少しでも刺激が緩和できないかと儚い抵抗を続ける。
あれから更に時間が経過し、一向に衰えないスライムの責めを受け、このままでは気が変になると、彼女達の誰もが思いだした時、それを見抜いたかのように司会役が彼女達に向かって言った。
「どうです?お嬢さん方、苦しいですか?止めて欲しいですか?」
「おね、おねがいぃ~!やめ、やめ・・・・や~っっはははははははははは」
「くる、くるしっ・・・ひゃっははははははははは!くるしぃ~ひはははっはははははははは!止めて~!!!!」
少女二人がのたうち回りながら懇願する。その傍らではもう二人も必至に首を縦に振っていた。
「そうですか。それではあなた達にチャンスを与えましょう」
意味ありげな笑みを浮かべ、司会役は中央の拘束ベットの所へと移動した。
「さて君達、現状を振り返って何か疑問に思いませんか?」
司会役はX字拘束されている少女の脇腹を指先でスッと撫でながら、今尚、笑い悶えている四人の少女に向かって言った。
「ここにいる彼女は何故、スライムに選ばれなかったか?一度、スライムの一匹が彼女を狙ったのに何故、放棄したか?疑問ではありませんか?」
その答えを司会者役は待ってはいない。会話に軽く間をあけると、彼は話を続けた。
「ひょっとすると、察しもついているかとは思いますが・・・・・・そう、最初にたっぷりと塗らせてもらった液体、あれが、このスライムにとっては忌避剤となっている訳です」
(やっぱり)
仲間が身悶える姿を見て、自分も身体がムズムズとするのを実感しながら拘束ベットの上にいるレイラは自身に対して持っていた疑惑に納得した。
だが、一方の疑問が解消すると、新たな疑問が浮き上がるもので、何故自分にだけこの様な処置を行ったのか・・・・・が、気がかりとなった。
しかしその疑問も、司会者の進行によって、本人の全く望まぬ形として判明する事になる。
「さて、今尚スライムの責めに喘いでいる少女達・・・・君達に選択肢だ」
一人一人の苦悶の表情を嬉しそうに眺めつつ、司会役は言った。
「ベットに拘束されている彼女に塗った忌避剤だが、これは塗って効果を発揮するだけの物ではない。実は塗るという行為は非効率的で、本来は服用して使う物なのだよ。その液体を服用すると、忌避成分が『汗』という形で全身から発散され、その身を覆い、スライムを近づけなくするという訳だ。・・・・・分かるかな?君達がその、くすぐりスライムの呪縛から解き放たれる方法。それは、ベットに拘束されている彼女の身体に塗りつけられている忌避剤を服用するという事だ」
「ひっ!」
その言葉にベットに拘束されたレイラが小さな悲鳴を上げた。服用・・・・と言えば言葉は良いが、四人の少女達は手を後ろ手に、足首も揃えて縛られているため、彼女の身体に塗られている忌避剤を服用するなど、御世辞にもまともには出来るはずもなく、その実体は『舐める』しかないのである。
ただでさえ敏感な自分が、拘束されたままの状態で四人の仲間に全身を舐められようものなら・・・・それを想像しただけで彼女は身悶えそうになった。
「さぁ、選ぶのは君達の自由だ。仲間のためにスライムの責めに耐え続けるか?それとも我が身可愛さに身動きの出来ない彼女から忌避剤を舐めて助かるか?無論その場合、行き場を失ったスライムは、忌避剤の無くなった彼女の身体へと移動するが、好きな方を選びたまえ」
「そんな、そんなぁ~っっはははははははっはははは、だめ!そんな!ゆるしてぇ~やっっははははははっっはっははあっははあはは!」
にわかに即答できる訳のない選択に少女達は絶望感を感じた。他の責め苦であれば自己犠牲の精神も発揮されたであろうが、くすぐりだけは別だった。こんな苦しい刺激に対しては何の訓練も受けた事がなく、無慈悲とも言える選択肢さえ突きつけられなければ、すぐに屈服していてもおかしくはなかった。
そうした追いつめられた状況の中にある少女達ではあったが、それでも仲間は裏切れないという僅かな理性によって、自己犠牲の道を選択した。
当事者である少女達にはかなり深刻な事態も、それを眺める観客から見れば沸き立つシチュエーションでしかなかった。
早々に各所で賭が始まり、どの位持ち堪えるか、どの様な結果になるか、どの娘がどの位耐えるかなどの予想が飛び交い、それぞれの思惑の込められた罵声・声援があちこちで巻き起こった。
(良かった、受けた・・・・)
ステージの隅で観客の様子を見て、発案者のキーンは安堵の息を漏らす。もともとテンションが高かった事もあったであろうが、ともかく彼は相談を持ちかけてきたモンスター達との義理を果たしたことになる。
「あはっ、あははっ、あ~っっっっっはははははっはははあははははやっははははははっはあはっははははは」
床の上で少女達は激しくのたうち回り、笑い続けた。必至に外道的な選択を選ばないように堪えていたが、くすぐり責めに対する『逃げ道』は、精神的に追い込まれている少女に緊急避難の選択を選ばせようとする。
「ああああああ~!!!はあぁっっっっはははははあはははははあはっっひゃっひひひはひゃあははははははは!!」
誰もが開放という誘惑に耐えていた。自分だけが仲間を裏切るわけにはいかない。自分が自由を得た結果、上司であるレイラがどうなるかを十分知り得る・・・というより、いまその身で体感している少女達は、気が狂わんばかりに笑い悶えながらも、辛うじて理性を保持させ続けた。
だが、無限に続く責め苦に対し、彼女達の精神力には限界がある。
どのみち避けられない結果ではあったが、遂に少女一人が限界に達し、悶えのたうちながらではあるが、その身体をゆっくりとベット拘束されたレイラの方へと移動させた。
「ひっっひひひひひっひひひひゃははあはっはははははあ、ごめ、ごめ、きゃはははははは、レイラさん・・ご、ごめんなさい・・・くひひひひひひひ」
レイラの手前まで躙り寄った少女は、表情を汗と涙と涎とでぐしゃぐしゃにしながら、相手に謝罪の言葉をもらした。
「だ、だめ、お願いキャシー、堪えて・・・わ、私があんな事されたら狂っちゃう。ねぇ、お願いぃ!」
目の前で身悶える少女キャシーの心情も分かるレイラではあったが、彼女が自覚する身体の過敏さを考えると、仲間達が受けている責めは自分には致命的にも感じられるのである。
拒絶の意志と相反して、逃げる事の適わないレイラの身体に近づいたキャシーは、拘束用のベルトで抑えつけられながらも懸命に藻掻く、彼女の右足の膝頭に軽く噛みついた。
「はうぅっ!」
噛みつきという未経験な刺激を受け、レイラが息を止めて仰け反り、膝がピクリと震えた。本来は大きく弾けたのだが、拘束具がその大きな動きを制したのである。
それでも不意に起きた動きは、キャシーの噛みつきから脱する結果となり、獲物を逃した彼女は、今度は露骨に膝頭を舐め、舌先を太股の方へと移動させて、そこに付着している液体をすすり始めた。
「やはっぁ・・・・やぁ・・・・ああっ!」
仲間の一心不乱な舌技にレイラは思わず反応した。必至で歯を食いしばり堪えようとするが、彼女の敏感な体質はそれを許そうとはせず、甘美な感覚を徐々に全身に広めつつあった。
キャシーは身悶えるレイラなどお構いなしに忌避剤の塗りたくられている太股を舐め続ける。その様子は喉を乾かした犬が、ようやく得た水に貪りついているのに酷似している。それは彼女の、スライムによるくすがり責めから開放されたい思いを如実に現していると言える。
解放を求めて一心不乱に舐め続けるキャシー。その度にレイラは身体を駆けめぐる刺激に吐息をもらし続けたが、彼女にとっての地獄は、まだ始まりにも至っていなかった。
もともと『仲間達』という連帯感で耐えていたはずの四人の少女達は、一人の脱落によって、雪崩式に崩れる事となる。
彼女でさえ耐えきれなかったのだから・・・彼女に耐えられない物が自分に耐えられるわけがない・・・そんな自己弁護的な思考が彼女達の心を生じ始め、目の前に用意された解放の手段が、彼女達の精神的防壁を浸食し、崩壊させていく事となる。
一旦そうした思いが生じると、今なお続くくすぐったさという苦しみから脱する事を望む自己保身が優先してしまい、結局彼女達はこぞって床を這い、レイラの肢体に塗りつけられている自由への鍵を求めた。
「はぁぁぁぁん・・み、みんな・・・やめ、やめて!」
レイラの懇願も無意味な物だった。我が身を優先した少女達には、上司としての、そして仲間としての悲痛な声も、全く届かなかったのである。
「あっ・・・あっ・・・ああぁ~~~~~!!!や、やめ、はぁぁあん!」
四つの舌は全裸であるレイラの身体を思い思いに舐め回した。今まで出来うる限り声を噛み殺していた彼女も、四倍になった刺激には全く耐えきれず、大きく仰け反った。
「やはぁぁ~ん、あっ、あはははぁ・・・く、くすぐったい・・・やぁ~~~ん」
忌避剤を求める舌が無遠慮に脇腹・脇の下に達し、そのくすぐったさにレイラは身悶えたが、単純なくすぐったさのみによる反応だけではなかった。
仲間達の自由に動けないぎこちなさから来る刺激が、過敏体質のレイラには、くすぐったさより快感として感じ始めたのである。
絶え間なく各所から送り込まれる甘美な刺激は彼女の感性を翻弄し、ある方向へと強制的に導いていく。
流されては駄目だと思ってはいるものの、レイラにそれを抑える術はない。身体が大きく仰け反り、腰が自然と浮き、乳首が固くなり、ほんの僅かな理性も限界に達する寸前となった時、それを見計らったように、四人の少女達にまとわりついて刺激を与えていたスライムが急に活動を停止し、いそいそと身体から離れていった。
忌避剤の服用の効果が現れ、彼女達の身体から流れる汗に混じって忌避成分が滲み出てきたのである。
スライム達は体内に取り込んでしまった忌避剤を吐き出すかのような苦しげな動きを見せた後、やがて落ち着きを取り戻し、気を取り直して再び少女達に襲いかかろうとしたが、もはや彼女達はスライム達の触れられる存在ではなかった。
スライムにとっては死活問題となる成分を含んだ汗が少女達の全身を覆い、例えうっすらとした発汗であっても触れる事は適わなかったのだ。
結局、接触を諦めたスライムであったが、すぐに新たな獲物を見つける事となる。ベットに拘束された敏感少女レイラである。
スライムは競争するかのように、こぞって移動を始める。ただ単純に相手に取りつき、くすぐる事だけが本能であるスライムに、それ以外の行動はあり得なかった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!いやぁ!」
ベットに這い上がってくるスライムを見て、レイラが悲鳴を上げた。これに対する唯一の防壁も、仲間達の舌によって殆どが失われ、もはや彼女をスライムから守ってくれる物は無かった。一分後の状況が容易に予想され、事実となりつつある現実に彼女は恐怖した。
「お願い、もう止めて!な、何でもする、するから、くすぐりだけはもうやめてぇ~!」
彼女は自分を助ける事の出来る最後の存在、すなわちモンスターに懇願した。四人の仲間はあてには出来ない。彼女達も囚われの身である上、自分が今、必至でそう願っているように、くすぐりから逃れるために自分の身体から忌避剤を舐め取ったのである。
だが、モンスター達にもレイラを助ける義理はない。それどころか、これから起きる彼女にとっての悲劇の到来を望んでいるとも言えた。
もちろんこれは彼女に限ったことではない。この塔内にて囚われの身となっている少女達に紳士的な取り扱いなどあるはずもなく、このフロアでは娯楽のための存在であり、他のフロアでは更に非人道的ともいえる処遇となっている。
そんなわけで当然、この懇願が特別に受け入れられるはずもなく、レイラにとっては無慈悲な現実が訪れた。
「あっ!ああぁぁぁぁ!!!」
レイラが艶やかさを含めた悲鳴を発した。
遂にスライムが身体に達し、まるで浸透するかのように身体に広がり、貼り付いて行ったのである。その接触面ではスライムの身体が脈動し、人間の指では到底再現不可能な刺激を与え続けている。
「ぎゃっははははははは!!!!きゃああっははははははははははははは!!あははははははははは!きゃははははははははは!!あっ!あっ!ああっ!!ああああっ~~~!!いやっははははははははは!!だ、だめ、きゃはははははははは!」
少女は狂ったように笑い悶え、身を激しく捩り続ける。その間に二匹目、三匹目が辿り着き、遠慮なく貼り付き同様にくすぐりだし、四匹目の到達によって、彼女はほぼ全身がスライムに覆われてしまった。
「だめ!!あっあはぁ・・・くひひひひひひひひひ・・・!!いやっ!いやっ!っひ!ひひゃっっはははははははははははは!!あきゃはあっはははっははははははっはは!」
拘束具が切れるのではないかと思われるほどの勢いでレイラは悶え狂った。全身を覆い、一体化したかにも見えるスライムであったが、一匹一匹によってくすぐり方が異なり、決してパターン化した動きを見せなかった。
貼り付く事により、どんなに藻掻こうと全く隙を見せないくすぐりは、まさに地獄であり、レイラの精神力をあっという間に消耗させていく。
「もうだめぇ!!本当に!!あっははははは!!ひゃはははははは!!本当に死んじゃうってぇ~っっっっ!きゃははははっはーーー!!あっあっあっあっ・・・あああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
激しい悲鳴と共に、大きく身を仰け反らせてレイラは気を失った。それでもスライムの動きは止まることを知らず、少女の身体は脈動に反応するかのように不規則に震え続けていた。
司会役はレイラが完全に気を失ったことを確認し、その視線を周囲の少女達に向けた。
我が身の安全を優先し、仲間を裏切ってしまった罪悪感からか、彼女達は俯き、あるいは背けて、上司を正視してはいなかった。
司会役はそんな心情を理解していた。と、言うより、この見せ物の発案者であるキーンが事態を想定し、何通りのかの予想を伝えており、それは見事、想定範囲内に納まっていたのである。
「さすがはミラー様、大したものだ」
司会役は事が発案者の計画通りに進んだ事に感心した。あとは、この結果を口実に、最後の観客サービスを行うのみであった。
「さて皆さん、如何でしたでしょうか?大義名分・自己犠牲を口にしている彼女達も、こうなると結局は我が身を優先する物である事を目の当たりにし、楽しんでもらえたと思います」
辛辣な言葉であった。ほとんど選択の余地のない状況に追い込んでの結果ではあったが、実際にレイラを見捨ててしまったのは彼女達である以上、強気な反論が出来るはずもなかった。
「次のグループを準備するまで若干の時間を要するため、皆様には退場していただきますが、退場ルートには仲間を見捨てた彼女達を吊しておきますので、お客様の手で仲間を見捨てた『お仕置き』を与えてやって下さい」
「「「「!!?」」」」
「おおおおぉっ!」
この司会役の予期せぬ発言に、少女達は目を見開き、観客達は喜びの呻き声を上げた。「その方がそちらの罪悪感も薄れるというものだろ」
勝手な解釈を少女達に押し付けながら、更に司会役は言葉を続けた。
「それと言い忘れたんだが、さっきの忌避剤だが、服用するのが本来の使用法とは言ったが、その場合、副作用もあってな、忌避成分が皮膚から汗となって流れる過程で皮膚を過敏にしてしまってな。そろそろその効果が現れだして・・・・だいたい二日間は風が軽く吹き付けるだけでもかなりのくすぐったさを感じてしまうんだ」
これを聞いた少女達は、これ以上ないくらい仰天した。そんな状態で観客の『お仕置き』を受けては、場合によっては発狂しかねない。
もちろん、こんな大事な事を司会役が言い忘れるなどあり得なかった。全ては仕組まれてであり、絶対に助かる術を与えないという、このフロアの催しに沿っての企画であった。 少女達はこれからの事に恐怖し、無駄に足掻いた。
だが、黒子役のモンスターにあっさりと取り押さえられ、それでも暴れる者は身体を軽く撫でて躾を行った。
副作用が現れだした彼女等は、そんな僅かな刺激だけで激しく反応し、以降の抵抗を諦めてしまう。
結局の所、抵抗してもしなくても行きつく結果は同じである。彼女達は程なくして、帰路に沿う位置に順に吊され、退場していく全てのモンスターに、くすぐられて行く事となる。
一匹一匹の所要時間は、通り間際の僅かな物で、些細ではあるが、全体の数と身体の状態が並ではないため、言いようのない地獄を味わう事は目に見えていた。
その後、彼女達の性感がどの様に変化するか、見送るキーンの最も興味深い点だった。
「・・・・・ま、こんな物だな」
最後にもう一イベントあるとは言え、事実上終了となった催しを、そんな一言で自己評価するキーン。
「お見事です」
役目の終わった司会役が戻ってきて、端的な評価を述べた。
「いきなりの企画だったが、そこそこ上手く行ったな」
「御謙遜を・・・後発の催しとしては好評です。それに内容も斬新な物でした」
「そう言ってもらえると助かる。内心は不評だったらどうしようかと心配していたんだが、これで、企画者としての義務は果たせたな」
「有り難うございます」
司会役は深々と頭を下げた。一度成功すればあとはキーンの立ち会いは不要であった。
彼はモンスターに軽く別れを告げると、その場を満たされた表情で去って行くのであった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、満たされてどうするぅ!!!!」
唐突に事態を振り返ったキーンの、自己批判が通路に響き渡った。
特に6階にて遭遇、激闘の末に倒したミラーから託された全身鎧のおかげで、雑魚モンスターとの接触が極端に激減したのである。
もちろん希に、キーンの気配を察して姿を現すモンスターもいたが、キーンの姿を見るなり『ミラー』と勘違いして、萎縮したように引き下がって行くのである。
ミラーの施しを純然なる物と信用しきっていなかったキーンも、雑魚達の反応を見る限り、本物と信じざるを得なかった。
だが問題が全くないわけでもなかった。
モンスターの大半が『ミラー』の存在を恐れてか、あるいは身分の差を理由にしてか、その姿を現さず、会話の相手が存在しない状況に陥り、塔内の情報が得られなくなったのである。たとえ敵として現れた存在でも、知能があり会話が交わされれば、その内容から情報を得る事は出来るのだが、現状はそれすらも困難なものとなっていた。
変装して内部調査を行う時は『騎士』より『衛兵』あたりが丁度良い場合もある・・・
とある地方で聞かされた何気ない格言が、この時ばかりはキーンの身にしみた。
全く戦闘も無いまま、7階を通り越し8階へと到達したキーンは、階段ホールに上がるなり大きな広間に出て、何げに前方を見て思わず身を固くした。
進行方向に大きな扉が設えており、その左右に妙に風格の良いオーガー系のモンスターが仁王像の様に立ち、キーンの方に視線を向けていたのである。
(迂闊な反応は疑惑を招くな・・・)
そう判断したキーンは、狂いそうだった歩調を辛うじて整え、威風堂々と・・・・した感じで扉の方へと近づいて行く。他に道も扉もない以上、そこに近づく以外に自然と見える行動が存在しないわけだが、場合によっては一戦して突破するしかない状況でもある。
幸い顔の方も、兜のガードが顔の半分近くを覆っているため、表情の変化を悟られる事も無かった。
キーンは努めて平静を装い、扉の前まで行くと、その正面で立ち止まり、左右に控えるオーガーを無言のまま見上げた。
「これはこれはミラー様、御無沙汰ですね。今日は息抜きですか?」
最初に声を放ったのはオーガー達の方であった。妙に機嫌の良さそうな口調は、その凶悪な体格とは正反対のイメージを抱かせる。
「そんな所だ。中の様子がどれくらい変わったか、直に見るのも面白いと思ってな。アレの相手ばかりでは私でも気が滅入る」
キーンは予め考えていた台詞を状況に合わせてアレンジし、気さくに声をかけてきたオーガーに向かって言った。
「はっはははは。ミラー様でもそう思いますか?さぞや大変なのでしょうな」
四六時中あの魔獣の管理という話が事実であれば、そうだろうと思う。そうしたキーンとしての意見を口に出さないように呑み込み、彼は会話の流れを合わせた。
「だからこうしてここに来た。入れてもらえるかな?」
「何をおっしゃいますか。わざわざこちらから来なくとも、専用通路を使っていただければ良かったんです」
自分の知らない知識が語られ、内心緊張するキーンであったが、オーガーは特にその点を重要視しなかった。
「それこそ息抜きだ。こちらからならひょっとすると、例の潜入者にも遭遇できるかと思ってたんだが、やはりそこまで都合は良くないようだ」
「貴方らしい」
「5階の闘技場以降の情報はまだないようですし、ひょっとすれば今頃、ミラー様の異空間で迷っているやもしれませんな」
さしあたって害のない言葉を選んで答えると、2匹のオーガーは軽く笑って応じた。まだまだこの手の連中には、キーンに対する危機的情報は届いてないようだった。
「そうだな・・・・」
(あのまま放置されていれば確実に迷っていただろうな)
心の中でその意見に同意するキーン。もちろん読心術の能力を持たないオーガー達がその心情を見抜けるはずもなく、上機嫌のままその体躯を使って正面の扉を左右から開けた。
「さ、どうぞ」
オーガーに促されるまま中に入ったキーンは、周囲の様子を見て思わず愕然とした。
中はかなり広大な広間となっており、その中ではモンスター達による盛大な宴が催されていたのである。
「こ、こりゃ何とも・・・・・」
まさかこの様な光景が繰り広げられているとは夢にも思わなかったキーンは、しばしの間、呆然とその場に佇んでいた。
飲み食いによる狂乱などは当たり前の現象であったが、よくよく注意して見ると、モンスター達は幾つかのグループに分かれるようにして、寄り集まって何かに興じている様であった。
その集まり方に統一性や種族性がない事から、個人的な好みによる集まりである事が予想されたが、一同が何に集まっているか皆目見当がつかなかった。
周囲全てが敵という状況的危機の中にあっても、好奇心が失われなかったキーンは、手近な集まりの中に偽りの身分を利用して混じって行った。
「おい貴様、ぬけぬけと割り込むとは・・・・」
その巨体故に集団の後方に追いやられていたオーガー系のモンスターが、その不満を小さき存在に八つ当たり気味にぶつけようとしたが、その小さき相手の姿を見た途端、魂を凍らせた。
「こ、こ、こ、これは、ミラー様・・・・し、知らないとは言え、とんだごぶっ、御無礼を・・・・」
その存在だけで大半のモンスターを威圧できるはずの大型モンスターが、その身を震わせ三歩下がった。混雑の中の出来事であったため、周囲のモンスターの何匹かが突き飛ばされる形となったが、そんな事は彼には気にもとまらなかった。
ミラーが、モンスター達の中で明らかに上位に位置していることが改めて判断できる一件だった。
「かまわんよ。こちらも好奇心に負けてしまってルールを破ってしまったんだ・・・・それより、ここでは何をしているんだ?」
「へ、へへっ・・・・たわいないゲームですよ」
モンスターは、ミラーが自分の無礼を気にしていない事にほっと胸をなで下ろすと、すぐさま彼の疑問に下品な笑いで答えた。
「御存知ないでしょうね。最近考案された遊びですから・・・・見てみますかい?」
「ああ、頼む」
巨体のモンスターはゆっくりと片膝をついて姿勢を低くすると、肩をミラー(キーン)の方へと向ける。
その意図を察したキーンは、軽い歩調でその肩に乗り、それを確認したモンスターは再び立ち上がり、視点を遙か上へと移動させた。
このモンスターの視界からすれば、たむろしている集団も障害とは成り得ず、キーンの見たかったモノを簡単に視界へと導いた。
「おうっ」
それを見て、キーンは思わず声を漏らしそうになった。そこでは、じつにキーンの趣味に合ったお遊びが展開されていたのである。
そこには四人の少女が人文字で十字を形成する形で拘束されていた。全員、パンティ一枚という姿で手足を伸ばしきった状態で寝かされ、身動きできない状態になっている上に、目隠しと猿ぐつわのギャグボールを噛まされている。
そんな無防備な裸体の上を、ゴキブリに似た虫らしき物が数匹、縦横無尽に這い回っていた。それも単に這い回っている訳ではなかった。単なる虫でない事を証明するかの様に、女体が感じる部分を的確に這っていたのである。
首筋、乳房の周囲、乳首、腰のライン、臍の回り、内股、脇腹・・・・・と、虫達が身体の上で軌跡を描く度に、拘束された女体はピクピクと跳ね、首を振り乱して身悶えていた。
口からも悲鳴が上がるが、ギャグボールを噛まされているために、まともな言葉を放つ事は出来なかった。
そして、それを取り囲むモンスター達は、箸のような物を手に持ち、女体を這い回る虫達を捕まえる事に興じていたのだ。
もっとも、モンスター達に本気で虫を捕らえる意志は無い。
捕まえるふりをしては箸の先端で女体を微妙な力加減で突っつき、追いかけるふりをしては虫のたどったコースをなぞって、少女達を責めていたのである。
虫とモンスターの同時攻撃、その上視覚を奪われているため、どこを責められるかの事前情報も得られず、その感覚は余計に敏感となり、加えられる刺激に過度とも思える反応を示す事となる。
「うううううううううんんん~~~~~~」
少女達は必至に身体を捩り、身悶え、身体を這う虫を振り払おうと懸命な努力をした。
だが、拘束されている身がそれ程の動きを成すはずもなく、時折、虫を振り払うことが出来ても、虫はすぐにもとの場所、即ち女体に戻り、何の解決にもならなかった。
モンスターと虫達にいいように弄ばれるだけの少女達は、懸命に耐えているつもりではあったが、その反応は相手の欲情を誘い、汗だくになり、肌を上気させ、涎を流す有様は被虐心を煽る。
「他の催しに比べれば陳腐ですが、これはこれなりに一興ですぜ」
キーンの脇で、視界確保の役割を負ってくれたモンスターが言った。
(他?他があるのか・・・・・)
そう、キーンは塔内最大の娯楽施設の真っ只中に突入したのである。
自分が娯楽施設にいる事を知ったキーンは、フロア捜索を口実として辺りを見回る事を瞬時に決断した。
個人行動のため、誰に断る事も、言い訳を論ずる事も必要ではなかったが、やはり僅かな良心が咎めたのだろ。それを納得させるために、彼には『捜索』という口実が必要だったのである。
まず最初に、案内板を見て興味をそそられる物が無いかと確認しようとしたキーンであったが、書かれている文字が自分の知識外の物である事を知り、彼は人だかり(モンスターだかり)を目安に適当にぶらつくことにした。
そして先程同様のパターンで、最も手近な集団の催しをのぞき込んだ。
彼がここを最初に選んだのには近かったという理由もあったが、それにも増して目立ちすぎていたのである。
人だかりは他と同様であったが、全裸の女性が2人、ロープで宙づり状態となっており、少し離れた距離からでもその姿が見えていたのである。
もちろんこの場において、処刑などはあり得ないと察するキーンは、アレにも理由があると悟り、その正体を確認したいという好奇心からその場へ向かったのであった。
キーンは例のごとく現在の身分『ミラー』を利用して、最後尾から前列へと赴くと、この催しの全貌を把握した。
ここは円形の囲いの中に4人の少女が全裸の状態で、二人一組となって一本のロープを握っている。そのロープは頭上に伸び、滑車を介して、ここを知るきっかけとなった、吊られている二人の少女へと至っていた。が、正確に言うと少女達は吊されているのではなく、自らの意志でロープにぶら下がっていた。
そして吊されている少女達の真下には簡素な作りの檻が設置されており、その檻の上部には、スライム状の物体がクッションの様に設置され、上の少女達の安全を確保する準備が整っていた。
そのスライムにも何らかの特質があるだろうと思い至るキーンであったが、それ以上に注目したのはその檻の中の蠢く物体で、キーンが更に注意して見ると、それは『手』である事が判明する。
彼は知らなかったが、この『手』は無念のうちに死んでいったモンスター達の怨念が呪術によって具現化した物で、それらが持つ本能は死に際によって異なるが、ここの『手』は全て女体をくすぐり回す事だけを本能としたものとなっていた。
製造方法・本能を知り得ないキーンではあったが、檻の中で蠢き、すぐ近くでロープを支える4人の少女達に今にも襲いかからんとする様子から、だいたいの想像はついていた。
(つまりは、下の娘がロープを支えきれなくなるか、上の娘が力尽きて落ちると下で待機していた『くすぐりハンド』(仮名)が開放されて彼女達に襲いかかる・・・・と、言う事だな。一人の脱落が6人全員の運命に繋がっている訳だ・・・・)
考えて、意地の悪い内容だとキーンは思った。
とは言え、そうして相手が力尽きるのをただ待つだけというのも面白みがない。そうした思いは、この場にいるモンスター達の共通した意見でもあったため、余興の本命として、ロープを支え抵抗のままならない下の少女達4人に対し客席(囲いの外)からの悪戯が行われていた。
悪戯は極単純な物で、長い棒の先に鳥の羽を結びつけて無防備かつ抵抗できない裸体をくすぐるという物であった。
柵越であるため、必然的に棒の長さが長くなっているため、羽の操作率はかなり悪いものの、いきなり強烈なくすぐったさでロープを放されてしまうのも面白味がないという事情もあり、この位が見て楽しむ分には丁度良かったと言えた。
実際、周囲から伸びる何本もの羽に、身体を無秩序に撫でられ身悶えする少女達の様子は男を徐々に興奮させる雰囲気があった。
少女達は無遠慮に身体を這う羽にくすぐったさを感じはしているものの、爆笑には至らず、どちらかと言えばもどかしさの残るソフトタッチにピクピクと身体を反応させていた。
彼女達を縛っている物、それは自分達が今握っているロープだけであった。出来ればそれを手放し、自分の身体にまとわりつく羽を振り払い、ガードしたいところであったが、仲間を落とすわけにはいかないという連帯感と、それ以上に、そうした行為の結果に生じる事態を恐れ、その選択を選べないでいたのだ。
結局、手によるガードが出来ないまま、彼女達は身体を悩ましげに振り、羽付棒の範囲から逃れようと柵内をぐるぐると移動するしか手段はない。そんな様相がモンスター達の娯楽の材料と化していたのである。
周囲の柵を取り囲むように陣取ったモンスター達は、自分達の近くに少女達が逃げてくると嬉しそうな声を上げ、手持ちの羽付棒で裸体を撫で回すのである。
その都度、少女達は身を震わせ、時には喘ぎ声をもらして手から力が抜けるのを堪えるのである。無論この状況下で、責められる側には反撃の手段などありはしない。四肢が拘束されていなくても彼女達に自由は存在せず、籠の中の鳥と何ら変わりはなかった。
「ミラー様もどうぞ・・・」
進行係なのか、一匹のオークがキーンに気づき、気を利かせて羽付棒を差し出した。
「悪いな」
キーンはミラーの立場としてそう答えると、差し出しされた羽付棒を受け取り、柵の方へと移動した。中を覗き込むと、少女が一人、手頃な位置で背を向けている状態だったため、早速とばかりに手に持った羽付棒を突き出し、無防備な少女の尻の割れ目からうなじへと、羽先を器用に這わせた。
「はっ!?はぁぁぁぁん!!」
今までになかった的確な責めを受けた少女が悲鳴を上げ仰け反った。ほとんど反射的とも言える反応のため、仰け反った彼女自身のバランスが崩れ、両膝を床に着けたが辛うじて手のロープは放さずに済んだ。
「おおっ、さすがはミラー様!」
少女に極端な反応に、周囲のモンスター達から感嘆の声が上がる。実際、少女達までの距離はそこそこあり、羽付棒で触れることは出来ても狙ったポイントに触れる事は意外に難しいものであった。
だが、キーンの戦闘における主武器は槍であったため、長い獲物の扱いには慣れていたのである。多少長さは違うものの、槍に比べれば格段に軽い羽付棒を操ることはそう難しい事ではなかった。
そんなわけで、キーンの羽使いは周囲の期待に応えるのに十分な動きを見せていた。
羽の一挙一動が女体を激しく反応させ、まるで磁石の反発とも思えるような動きを見せる。羽の腹が少女の右腰から右脇の下付近まで這うと、女体は激しく「く」の字に折り曲がって左へと逃げようとする。だが、それよりも早く羽が左側に回り込み、同様に撫で回し鏡に映したような反応を見せる。
「あひっ!はぁん・・・あっ・・・・やはぁっ・・・・あっ・・ああぁぁぁ」
不運にもキーンのターゲットとなった少女は涙目になりながら身悶え、身体をくねらせ淫靡なダンスを踊り続けた。
それでも使命感あるいは恐怖心からか、手にしたロープだけはしっかりと握って離さないでいる。
「ふん、意外にしぶとい・・・・・」
「手を離した結果は初めての者でも容易に察しがつきますからな。必死にもなります。ですが、それだからこそ我々も楽しめるのですがね」
キーンの呟きに、先程羽付棒を手渡したオークが応えた。
「確かにな・・・・だが、それと相反して、『結果』が早く訪れるのも待っている・・・・と言った面もあるだろ」
「左様で・・・・・」
期待を込めた眼差しがキーンに向けられた。
「なら、少し責める趣向を変えてみるか」
「と言いますと?」
「この棒、もう一本あるか?」
キーンは手に持った羽付棒をひらひら動かして、オークに問いかけた。
「え、ええ・・・」
笑みを浮かべて言うキーンに対し、オークはその真意を見抜けないでいた。
「どうぞ、これを・・・」
キーンの要望はすぐにかなえられ、全く同じ羽付棒が届けられた。
「OK。それじゃ、そこのミイラ男・・・」
キーンは受け取った棒を軽く確認すると、今度は周囲のモンスターの中から全身を包帯に包まれたミイラ男(本名不明)を指名した。
「・・・・・・・・・・・」
ミイラ男はしゃべれないらしく、少し大げさなゼスチャーで自分の人差し指を自信の顔に向け、私ですか!?という意思表示を行った。
「ああ、だが正確には君ではなく、その身につけている物を分けて欲しい」
・・・・という訳で、ミイラ男からある程度の包帯をもらったキーンは、それで二本の棒を結び、そのリーチを約二倍にした羽付棒を即席に作り出した。
「それで一体何を?」
怪訝そうに問いかけるオーク。その場で四人の少女全員に届かせるための工夫かとも思えたが、そんな事をせずとも、円形となっている柵の周囲を移動すれば済むだけの事である。
そんなオークの疑問をよそに、キーンはロング羽付棒を突き出す。しかしそれは四人の少女達の方ではなく、その頭上で吊されている二人の少女の方であった。
「ちょっ・・・まさか・・・いやぁっ!」
吊された方の少女は、下から迫り来る羽を見て、その意図を理解した。だが出来るのはそこまでで、彼女には逃げる手段がない。
「く、来るな!来ないでぇ!」
上の彼女も拘束はされてはいなかったが、吊された身では移動など出来るはずもない。
身を振り、足をばたつかせて羽を追い払おうともしたが、暴れれば暴れるほど、彼女の掴まっているロープを支える、下の少女達に加わる負担が大きくなるため、存分な抵抗も出来るはずもなく、ついに羽の先が振り回される脚をかいくぐって少女の腹に触れる事に成功した。
「あひぃぃぃ!」
腹周りを羽の柔らかい感触が襲い、少女が身悶えた。移動という選択すらない彼女にとって現状は最悪としか言いようがない。
「あはっ、やははははははははははははは!」
抵抗できないことを良いことに、キーンの操る羽は各所をくすぐり、その身体がくねる度に別のポイントへ移動しては彼女に強制的なダンスを踊らせた。
そうして暴れる彼女のせいで、下でロープを支える二人の少女の負担は大きくなったが、それ以上に上の少女の負担の方が大きかった。何しろ彼女は自分自身の体重を、自分のか細い腕のみで支えるしかないのである。
それが己の過敏さによって引き起こされるダンスによって急速に消耗して行き、ついには限界が訪れた。
「あっははははははは・・・ああっ!」
身悶えていた少女が手を滑らせ、絶望の悲鳴を小さく上げた。
ほぼ同時にモンスター達からは、ようやく次の見せ物が始まる期待に歓声が起き、下の少女達は揃って表情を強張らせた。
落下し始めた少女を担当していた二人は慌てて受け止めようと動いたが、それも既に遅く、彼女はクッションスライムで保護されていた檻の上に落下し、もともと頑丈でもなかったそれを破壊して中で蠢く飢えた『手』=『くすぐりハンド』を開放してしまう。
「いやぁああああ!」
少女達が一斉に悲鳴を上げた。それに呼応するかのように、『手』が活動を活発化させ、指を器用に動かし床を這い進み始める。ロープ担当であった少女は後ずさって柵に背をつけ、落下した少女も急いで立ち上がり逃げようとしたが、檻の真っ直中に落ちたのでは脱出できるはずもなく、立ち上がるより先に『手』に足首を捕まれて転倒してしまい、あっという間に無数の『手』に集られてしまった。
「きゃあっははははははははは!あ~っはははははははは!いや、いやっいやっっははははははははっははははは!」
少女は身悶えながら床を転がり、まとわりつく『手』を振り払ったが、追い払うより集まる数の方が圧倒的に多く、その抵抗は無意味な物となり、笑い悶えながら床を転がるしかなかった。
「きゃああああ!!」
その時、集られた少女のすぐ近くに、もう一人の少女が落ちてきた。『手』の開放と、仲間がくすぐり襲われるのを目の当たりにして身の危険を感じたもう一組の少女が、思わずロープを手放してしまい、上にいたもう一人が落ちてきたという訳である。
群がっている『手』とクッションスライムの上に落ちた彼女には、立ち上がる諸動作すら得る事は出来なかった。
ほとんど落ちた瞬間に『手』が獲物を認知して襲いかかり、彼女の全身を覆い尽くすように群がったのだ。
「ああ~~~っっははははははははっは!あっっははははははは、ひゃっははははあっはははははは」
彼女も笑い悶えながら死にものぐるいで抵抗したが、こうなっては逃げられるわけもなく、その様相は蟻の大群に襲われる虫そのものであった。
周囲にいた四人は助けるどころか、近づけば自分も同じ運命である事を知っており、更にはこの場にいる事自体がそうである事を認識していた。
四人の少女達は限られた空間を各々逃げ、中にはモンスターの好奇の目も気にせず柵をよじ登ろうと試みた者もいたが、モンスター達がそれを許さず、突き飛ばすなどの妨害を行い結局全員、『手』に取り囲まれて集られる事となった。
「いや、いや、ひゃっっははははははは!そ、そこだめぇ~あああああっっはははははははっははははは」
全身にまとわりついてくすぐってくる『手』に笑い悶え、立つことすらままならなくなった少女達は床の上で魚のようにのたうち回った。
『手』はモンスターのくすぐれなかったという怨念が具現化した物であったが、女性をくすぐれたからと言って成仏し、消滅する事はない。その怨念は本能として定着するため、一度くすぐり始めると、対象がどうなろうとくすぐる続けるのである。
自力もしくは他者が引き剥がし、隔離するか処分しない限り、捕らわれた者に対するくすぐり地獄に終わりはないのである。
「やめ、やめぇ~、やっ・・・ぎゃははははははあははははははははははは!いひゃぁははははははは・・・く、くるしっくひゃははははははははははははは!!」
ある者は左右に転がり、ある者はエビの様に仰け反りを繰り返し、ある者は身体を丸めて痙攣を起こし、ある者は俯せになったまま引きつった笑いをもらし、ある者はあまりに多くの『手』に集られたため、身動きも出来ず、いいようにくすぐり回されてたりもする。
そんな多種多様の様子を、モンスター達は実に嬉しそうに眺めていた。
「いや、さすがはミラー様、着眼点が違いますな」
不必要となった羽付棒を受け取り、オークが言った。太古持ち的な態度が見え隠れしていたが、その視線は少女達が気になるのか、時折、柵の方を向いていた。
「直接手を出すことは出来ないが、それなりに楽しめた。次はこれを応用したらどうだ?」
嘘ではなく、彼はそう思った。
「そうですね。彼女達が気絶して次のグループの番になったら、やってみましょう」
その言葉を背に、キーンはその場を後にした。
次に彼が訪れた催しは、長方形の形状をしたステージとなっていた。
その半分が敷居板で隠され、その中央に開けられた小さな穴から、五本のロープが伸びていたが、まだ催しは始まっておらず、ステージにはモンスターも少女も誰一人いなかった。
「おお、ミラー様・・・来られていたのですか」
ステージ中央で準備をしていたのだと思われるワードックが目ざとくキーンに気づき、声をかけてきた。
「ああ。ところでこれはどんな趣向なんだ?」
床に伸びている五本のロープを指さし、問いかけるキーンに対し、モンスターはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「綱引きですよ」
「綱引き?」
もちろんキーンも単語自体の意味は知っていた、だが、それの意味する所が分からず、思わず問い返していた。
「ええ、こちら側は女達が立つ側で、この五本のロープから一本を選ばせます。各ロープにはそれぞれ『担当者』が存在し、反対側・・・・敷居で隠されている部分で待機しており、女はそいつと綱引き勝負を行うわけです」
「勝てば放免。負ければ慰み物・・・・という条件だな」
確信したようにキーンが言い、それにワードックは頷いて見せた。
「さすがキーン様・・・・お察しの通りです。ただ、観客サービスの意味も含め、内容は多少工夫がされております」
「というと?」
「まず、あの敷居ですが、実はあれは1メートル程の間合いに近づくと相手をくすぐり責めにするトラップを流用して作った物です」
「つまりは、敗者は慰み物になる前にくすぐり責めに遭うと・・・・」
「はい。この間合いにまで引きずられた相手は、この時点で負けが確定しますが、ちょっとした意地悪・・・・と言った感じですな」
「意地悪・・・か、それでも女側が勝ってしまっては興ざめだぞ」
「その点は御心配なく。確かに力では人間の女にも劣る仲間もいますが、そう言った連中は複数で参加します。それを隠すための敷居でもあるんです」
「なるほどな・・・・・」
公平に見えてその実はイカサマという内容に、キーンは感心する・・・というより、これが勝者側の特権だなと笑んで見せた。
「やはりやられ役はやられてこそ、客受けがあるという事ですな。じきに始めますが、ミラー様も参加されますか?よければ優先させますが」
キーンはこの身分は、こう言った状況では役得だなと思いつつも首を左右に振った。
「待っている連中に悪い。見る方で楽しませてももらう」
参加して、もし自分が対戦者となって勝利し、役得を得ても、くすぐり方が違うなどという指摘を受けては元も子もないという事情もあった。
「わかりました」
そんな心理を知り得ないワードックはそそくさと戻り、自分の担当する催しを見に来た最高幹部の一人のために、早々に準備を再開するのであった。
もともと諸準備が簡単に済むため、『綱引き』は早々に開催・・・あるいは再開された。
既に順番が決まっていた事もあり、モンスター側のスペースにはそれぞれがたむろし、これから訪れる生贄が、自分達の担当するロープを引いてくれる事を誰もが心待ちにしていた。
キーンは、ワーウルフが気を利かせて用意した席に座り、現場を眺めていた。会場よりやや高い位置にあるため、一目で全体が見下ろす事が出来るベストポジションだった。
「確かに、これじゃ女には勝ち目はないな」
意気揚々とするモンスター側のメンバーを見て、キーンは思った。一目で勝敗が分かる大型モンスターのサイクロプスを始め、大柄なワータイガーにワースパイダー、以前闘った正式名称不明のタコヘッドに空間跳躍という特殊能力を持ったカエルみたいな生物も五匹一組というハンデで待ち構えている。
やられ役はやられてこそ、客にうける・・・・とは、先程のワードックの言葉であるが、確かにと、キーンは納得した。彼も又、ここに座った時点でまだ見ぬ女の敗北を望んでいたのである。
ややして客席から歓声が起きた。キーンが視線を移動させると、両手を手錠で繋がれた二人の少女が押し出されるようにして舞台となるステージに姿を現した。
彼女達は全裸でも露出の高い着衣でもなかったものの、薄地のボディスーツの様な物を纏っており、ぴったりとフィットしたそれはそのボディラインを露わにし、ある意味では全裸よりいやらしい雰囲気を見せていた。
その自覚は彼女達にもあるらしく、二人は頬を紅く染めもじもじした様相で身体を不自由な両手で覆っていた。
進行役のワードックはそんな事はお構いなく、彼女達を急き立てると五本のロープが置かれている場所へと連行し、この中から一本を選ぶように言い放った。
少女達もここのルールを知っているのだろう。ロープを選ぶ仕草には戸惑いがあり、軽々しく決定する事を躊躇わしていた。いや、ただ一つ彼女達が知らない事があった。それは、どのロープを選ぼうとも、彼女達に勝利はあり得ないという点である。
実力が十分なら、どれも選ばず周囲のモンスターを打ち倒すという選択もあったが、それを実行できる者は限られており、間違っても彼女達が実行できる手法ではなかった。
どのモンスターが選ばれ、その様な結果に至るか?キーンがそんな事を考えているうちに、少女達は遂に一本のロープを選択した。
ワードックはそれを持ち上げると、ロープに備え付けられていた鎖を少女達の両腕の手錠に繋げ、途中放棄すら出来ないようにした。それが終わった後、軽くロープを引かせ、対戦相手を確認する。
客席から失笑とどよめきとが複雑に混じった声が漏れた。今回、あの二人の少女と勝負をする栄光を受けたのが、五匹一組のハンデを受けているカエル型のモンスターであったからである。
「狙ったのか偶然か、微妙な勝負だな」
キーンは呟いたものの、彼は少女達の敗北を確信していた。先程、微妙な勝負と言ったのはあくまで体力的な面であり、実際に勝負が始まればまず勝てないだろう事は予想できた。これは、直接あの種と闘った事のある彼の実感だった。
勝負は彼の予想通りに進んだ。
当初単純な力比べで始まった綱引きは、均衡した状態が続いた。やがて持続力で徐々にではあるが少女達が優勢になるものの、それを頃合いと見たモンスター側の一匹が例の特殊能力、空間跳躍を使って自分の腕を少女達の背後に出現させ、綱引きに夢中になって無防備になっていた脇腹をくすぐったのであった。
この不意打ちに少女達は身悶えたが、両手は綱に繋がれているため抵抗することも逃げることも出来ず、激しく身を捩りながら笑い悶え、力を失った綱は徐々にモンスター側に引きずられて行った。
こうなると彼女達の勝機は全くなくなり、さして抵抗も出来ないまま、敗北宣言と同意である敷居の前まで引きずられ、敷居に仕掛けられたくすぐりトラップを作動させられ、無数の手によるくすぐり責めを受ける事となる。
後は綱引きを行う余裕を全く失った彼女達を完全に引き込み、所有権を得ればゲームはおしまいであったが、辛辣な事に、カエル型モンスター達は綱を引くのを止めて現状維持を行い、しばらくの間、彼女達がトラップにより容赦ないくすぐりを受けて悶える様を見て楽しんだ。
それを観賞して楽しんだのは彼等だけでは無い。観客にも包み隠さず観賞できるため、自然と観客のテンションは上がっていった。
「成る程、前座って意味合いもあるって事か」
冷静さを装いながらもキーンは自分自信の血もかなり滾りだしている事を自覚するのであった。
少女達はトラップに散々くすぐられて悶笑し、体力の大半を使い果たしてしまって後、ようやくにして開放される事になる。
だがそれは休息を意味する物ではなく、勝者であるモンスター達の手による新たな責めが始まる事を意味している。
勝者であるカエル型モンスター達は、自分達の能力を惜しげもなく利用した。
今、地面には二人の少女が、両腕を肩口から、両脚を付け根近くから消失させて、横たわっている。
両手足をモンスターの特殊能力である空間転移によって異空間に移動させ、この空間から消失させたのである。これにより彼女達は手足を切断されてしまったのと大差ない状態に陥ったばかりか、自分達の身体に群がり、好き勝手にくすぐるモンスター達に対し、何らの抵抗手段を持たなかった。
「やめ・・・やめてよぉぉぉぉ~!!ああっはっははっはぁぁっはっは~!!」
「やだぁぁぁぁもうや・・・・やぁああっはっはあはぁっはっははっは~!!」
少女達はこの空間に残る顔と身体をくねらせ、笑いながらその手から逃れようと必至になった。実のところ、手足もこれ以上ないくらい振り乱していたのだが、異空間にあっては何の意味も成さず、肝心の弱点を覆い隠す事さえ為し得ないでいた。
「だから・・・だからあああああっはああはっははははっはあははは~!!」
モンスターは容赦なくくすぐりを続ける。手足がない状態というものは、少々視覚的に気味の悪い物ではあったが、空間跳躍のできる彼等の目には異空間の手足も見えるのかも知れない。
(あの能力、そう言う使い方もあるか・・・・なかなかに興味深い)
どんな能力も発想次第であるという事を再認識しつつ、キーンは真剣な眼差しで繰り広げられているくすぐりショーを楽しむ。
そんなおり、一匹のモンスターが異空間の穴を作り、そこへ手を突っ込むと、中から人間の右足首を引っ張り出してきた。それが今、くすぐられている少女達のどちらかの物であろう事は明白であり、モンスターが嬉しそうにその足の裏に指先を添えると、一方の少女の身体が跳ねる。
「ああぁぁぁっ!!だ、ダメぇぇ~!!!ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ~!!」
これから何が起きるか、その感触で悟った少女が悲鳴を上げて懇願するが、その要求は無惨にも却下され、足の裏全体をモンスターの指が這い回りだした。
「いっ・・・いやぁ!・・・・っく・・きゃは!!きゃはははははははっははははぁぁぁぁぁああ~!!」
足裏を責められた少女が狂ったようにのたうち回ったが、異空間の出入り口によって出ている足首はクネクネと悶える事は出来ても、位置そのものを変える事は出来なかった。それでいて、責められる側は思いっきり暴れているのにも関わらず・・・・・なのである。本人に手足はしっかりと存在し、なんの拘束も受けてはいない。ただ同一空間に位置していないため、どんなに暴れても干渉する事が出来ないのである。これはある意味、拘束されてのくすぐり以上に質が悪いと言えた。
「あははははははははは!あ~っっははははははははは!ひゃあっっははははははははははははははは!!」
「あひっ、あひっ、あひゃっははははははははははははっはは!あああああああっっははははははははははは!」
手足の感覚があっても幽体と変わりなく、抵抗にも防御にも役立たない少女等は、その女体の弱点をさらけ出したまま、いいように嬲られ笑い狂った。
やがて彼女達はモンスターの巧みなくすぐりに全身汗まみれとなり、ただでさえ薄手で透けていた着衣を更に透けさせた挙げ句、激しく痙攣して気絶した。
歓声と共に今回の見せ物が終わり、ワードック達が後片づけを開始し始める。そして数刻の後、また新たな少女が勝ちようのない綱引きに挑戦させられるのであった。
次の回まで間があるため、退出していくモンスター達の集団の中に、キーンの姿もあった。
多くのモンスターの退出する流れに不必要に逆らっては目立つと考えたキーンは、とにかくその流れが緩慢になるまで、縁日の様な状況に沿って歩いた。
やがてモンスター達が方々の催しへと散って行き、キーンの周囲のモンスターの数も少なくなってくると、彼は周囲を見回し気づかれないよう手近な部屋へと入った。
さすがに使い慣れない全身鎧の長時間着用に息苦しくなり、一休みしようと思っての行動だったか、その部屋には既に先客がいた。
『誰?』
「っ?すまない、空き部屋と勘違いした」
キーンは解放していた鎧のフェイスガードを慌てて戻し、声のした方向に向かって振り向くと、そこには限りなく人間に近いシルエットがそこに在った。
「あら、ミラー様。珍しいですね」
声の主はゆっくりと歩んで、キーンに近づく。室内灯代わりの松明の光の範囲に入った相手の顔が浮かび上がると、彼は思わず飛び退きそうなった。
「!!?」
そこにいたのは、蛇の髪を持つメデューサと呼ばれるかなり希少な女型モンスターだったのだ。
絶対数が少ないとされるモンスターではあったが、蛇の髪という他に見間違えようのない特徴が、初見であっても容易に判別できる高名な存在で、その最も知れ渡っている能力が、視線による石化能力であった。
無論、冒険者であるキーンも、視線を合わせるだけで石化させてしまうその能力を知っていたため、つい反射的に身体が動きかけたのだ。
「あ、ああ、そう言って来る連中全員に言っている台詞だが、息抜きだ」
「そうでしたか・・・・」
髪が蛇である以外は十分に上品さを漂わせる美女といえるメデューサはその言葉を疑う事もなく納得すると、手にしていたグラスを傾け、残っていたワインを一気に飲み干した。
「こちらこそ、くつろぎの時間を邪魔して悪かったな」
そう言って早々にこの場を後にしようと背を向けたキーンに、メデューサが声をかける。
「ミラー様、今よろしければ、少し私とおつき合いして下さいませんか?」
(何っ!?)
キーンは慌てた。彼の仮の姿であるミラーとメデューサとの間柄が親密な物なのかと思い、自分の正体を知られる可能性に思わず緊張した。
「いっいやっ・・・・俺では君の相手は務まらないだろ・・・」
兜の中で必要以上に汗を流しつつキーンが言うとメデューサは怪訝そうな表情をした。
「ミラー様、酔ってるんですか?私が殿方を相手にするはずがありませんわ。お相手はこ・ち・ら・・・・」
そう言ってメデューサは、最初に出てきた部屋の奥、カーテンで仕切られた部屋を促した。
「?」
どうやらメデューサは、男嫌いあるいは同性愛趣向者らしく、その発言でそれを察したキーンは、ほっと胸を撫で下ろし、彼女が誘った部屋を覗き込んだ。
その部屋も広くない小部屋で、調度品は小綺麗なベットと小さなテーブルだけの、上品な寝室っぽい雰囲気の部屋であったが、彼が注目したのは、部屋の中央に設置された女性の裸体石像であった。
ポーズこそ両手を腰のやや下にあて、両脚を肩幅に開いた仁王立ち姿という何の捻りもない物だったが、身体のラインや表情は、創作者の妄想など一片も関与していない見事なまでの自然な裸体を造形していたのである。
「どうです?」
自分の作品なのか、自慢げに疲労するメデューサに促され、キーンは石像に近づきじっくりとそれを眺めた。
光源の少なさ故に、近づくと事で更にその技巧の精密さがはっきりと認識できる状況になったキーンは、その細部をじっくりと観察する。
「良いな・・・・」
気の利いた評論家の様な台詞でも言いたいキーンであったが、そうした知識と表現に乏しいため、最も簡素な一言のみをくちにする。
(と言うより、見事すぎるな・・・髪や皺、ヘアまでしっかりと刻まれてる・・・・これは、ひょっとすると・・・・)
「楽しめる素材か?」
湧き上がった疑問を解消すべく、キーンは問いかける。万が一、この質問が的外れであっても、言い訳がつくように言葉を濁したものだったが、会話は上手く成立する事となる。
「ええ、とっても・・・・美人局みたいに引き込まれましたけど、これが意外に大当たり」
そう言ってメデューサは、石像の首を両手で絞めるような形で軽く触れ、その手を上へと滑らせる。すると、石像の首から上が徐々に変化を見せ、生物としての姿を取り戻した。
(やはり石化した人間か・・・しかし、部分解除とは変わった能力を・・・・・こいつも特種か・・・・)
「・・・・・ぅ・・・ぁ?」
本人の望んではいないだろう、石化状態からの帰還。それはどの様な感覚なのだろうと、興味を抱きつつも体験したいとは思わないキーンの前で、無機物から有機物へと戻った少女は寝起き直後の様な表情で瞼を数回上下させる。そして、身体を動かそうとしてそれが出来ない事を把握すると同時に、視界内にメデューサとキーンの存在を認め、思わず息を呑んだ。
「ひぁっ!」
驚愕と供に霧中にあった記憶が蘇り、石化以前の出来事を思い出した少女が表情を強張らせる。
「ミラー様、ご紹介しますわ。彼女はイレーネ。あの国の弓兵で、例の結界構築時の攻防戦で捕獲されたのだそうです・・・・」
メデューサは妖しい笑みを浮かべて、首から上以外を動かす事の出来ない少女の背後に回ると、知人を紹介するかのように彼女の素性を説明しだす。
「・・・・そして、と・く・に、関節部関連を責められるのが特に弱いのよねぇ」
「はひぃっ・・はぁっっっっはははははははははいやっっははははははははあぁ、ぁっ、あはははははははっっっ!!」
メデューサの確認するかのような説明に、当事者たるイレーネは、いきなり吹き出すという形で答えた。
「や、やめっ、いやっはははははははははははっ!やっやははははははははははは!!」
その笑いが何によって引き起こされているか瞬時に理解したキーンは、視線を彼女の顔から身体へと向けると、当然のごとくメデューサによるくすぐり行為が行われていた。
基本的行為はこの塔の各所で行われている行為と何ら違いはない。だが、状況は今までと異なる様相となっていた。
メデューサは、イレーネの脇の下だけ石化を解除し、そこをしなやかな指で執拗にまさぐっていたのである。部分解除でも、神経などは繋がっている様で、脇の下で行われる指のダンスに、イレーネは大声で笑い続けていた。
「あはっあぁはははははははははは!ひっっははははははははっっ!あっあっぁっ~~~~~っっっはははははは!!」
イレーネは首を前後左右に目一杯不規則に振り乱して笑い悶える。今、彼女はその苦しみの元凶たる脇の下を閉じ、一瞬でも逃れたい想いでいっぱいであっただろうが、全身のほとんどが石化状態である中でそうした動きが出来るはずもなく、ただただ笑い狂うしかなかった。
「良い反応ねぇ、嬉しいわ」
苦しそうに笑い続けるイレーネを満足そうに眺め、メデューサはミラーに視線を向けた。
「ミラー様もどうぞ。楽しいですわよ」
言われるままにキーンはメデューサの元へと赴き、彼女と場所を変わってもらう形でイレーネの背後へ回ると、石の中に含まれる僅かな生身である両脇の下を引っ掻くようにして刺激した。
「!!っふぁっっっははははっはははははははは!!いやぁっっはははははは!!」
交替の合間の僅かな間隙で息を整えようとしていたイレーネは、前振りもなく行われたくすぐりに、面白いように反応した。
脇の下という責めるポイントは変わらなかったが、指の腹で撫で回すようにしていたメデューサと、指先の爪を利用した巧みな引っ掻き責めのキーンとでは、その刺激は大きく異なり、慣れ始めていた感覚も役にはたたず、新たな刺激に激しい笑い声で応じた。
「あはははは、あぁっっはははははは!いやっぁっははははははは!もうやめっっっっっっははははあぁぁっ!ひぃぁっっははははははは!あ、ぁ、あ、あぁ~~っっっっははははははははっっ!!」
責めるポイントが限定されているため、急な位置変更による不意打ちが出来ない以上、キーンは脇の下に対する責め方の変化のみで相手を翻弄し、慣れを起こさせない必要があった。
彼は指先で引っ掻く行為の他、指先で何重もの円を描き、時には逆回転させたり、つついたり、突き立てた人差し指と中指を揃えて脇の下をこね回したり、メデューサの様に指の腹で撫でたりとした責めをランダムに行った。
「あひっあひひひいひぁっっはあははははははっ!いやっいやぁっはははは、そ、それ、そぉぉっっっほぁぁっっはははははっははははははは!!」
仁王立ちの姿勢で固定されているイレーネは、あと僅かに腕が動かせれば、責められている脇の下を閉じてガードできるのに・・・・・と、現状を呪った。
堪らないくすぐったさは脳に直結したかのような激しい刺激を絶え間なく送り続け。本来なら狂ったように跳ねるだろう身体は石化によって微動だにせず、身動きできないそのもどかしさが苦しさを増長させているようでもあった。
キーンの指先はそうした状況を良いことに、本来であれば、暴れる事で生じる責めポイントの僅かばかりのずれさえも気にすることなく、執拗に弱点をまさぐり続けた。
そうした脇の下の一点責めで、特に彼女が顕著な反応を示したのが、引っ掻き責めであった。特に人差し指と中指で砂に、穴を掘るようにして二本の指を交互に蠢かすと、彼女は狂ったような反応を示した。
「ふぁっははははははははははは!ひぃっひっひひぁぁぁぁ~~~~~っっははははははははあはははははふぁぁ~~~っっっははははははははははっ!!ほぉぁ、ほぁはぁああああっっはははははははははは!!」
悲鳴同様の笑い声と共に首が激しく暴れるのを見て、これが通常の拘束状態であればどんな反応であっただろうと、キーンは興味を抱いた。そうした反応に思わず夢中になったのだろう、彼は少しの間、メデューサの声が届かない状態になっていた。
「ミラー様っ」
「おっ、あぁ、な、何だ?」
メデューサの数回目の呼びかけで、ようやく我に返ったキーンは、思わず姿勢を正した。
「いかがですか?お気に召しまして?」
「あぁ、良いな」
先程と同様の台詞で答えるキーン。
「ふふ、良かったわねイレーネちゃん。ミラー様にも気に入って貰えたわよ。これから私と二人で可愛がってあげるわ」
「いっ、いやっ!いらないぃぃっ!!」
イレーネは本心から拒絶した。だが、発言の権利はあっても拒否権が無いのが彼女の現状であり、S傾向の者がここで温情的になって彼女を解放するなどという事はまずありえない。逆にそうした反応が加虐心を大いに煽る結果となるのだった。
「本当にイヤならお逃げなさい。見逃してあげるから・・・・あなたの意志は尊重するわ」
(よく言う・・・・)
身体の自由を束縛したままで意志を尊重しても、この場合は無意味である。逃げようと欲する意志を実行に移す為の肉体は石化したまま動かず、逃げるなどという事は不可能であると、無関係者でも理解できる状況で、あえてそう発言したメデューサに、キーンは彼女のS性を垣間見た気がした。
助けるべきだろうが、まだ命に関わる事態ではなさそうでもある。もう少し状況を楽しんでみたい・・・などとキーンが思っている間に、メデューサはイレーネに正面から近づき、ゆっくりと肌を重ねた。
肌を重ねるとは言っても、石化した相手とのそれは、石像に身をすり寄せる一種の自慰的行為にも見えた。メデューサの髪が蛇としてのたうってなければ欲情的な光景となっていた事だろう。
彼女は石化したイレーネの身体の色々な箇所を、愛おしそうに撫でながら任意の部分の石化を解除していった。
胸の両脇の付け根、脇腹周辺、背骨一帯、脚の付け根のライン、両膝の裏・・・・・その特定の箇所の石化解除を見て、キーンはメデューサの趣向を理解し、想像通りであった事を悟った。
もちろんその意図は被害者になるイレーネにも理解されていた。
「ぅぁ・・・ひっ・・ぃ・・ぃや・・・」
くすぐり責めに有効な箇所のみの石化解除。否応なしに始まるだろう当事者にとっての地獄を前に、彼女は渾身の力を込めて身体を突き動かそうと試み、そして願ったが、復帰した生身はまだまだ僅かであり、その欲求を適えることは不可能であった。
しかし責める側にすれば、その僅かな箇所が実に有効なポイントであった。
「さぁ、楽しみましょう」
妖しい口調で囁き、メデューサの指が彼女の乳房の両サイドの付け根部分に触れた。
「はぅっ!」
それだけでイレーネは息を詰まらせ、生じた感覚に息を詰まらせる。
メデューサはそこから一気に息を吹き出させようと、露出した付け根をソフトに引っ掻きだす。
「ふぅっっ・・くっ・・・・うくっ・・・ぅぅぅっっっ!」
イレーネは見る間に顔を紅潮させ、歯を食いしばってその刺激を堪えた。
全体的には身動きのない身体ではあったが、不規則に詰まる息と、激しく揺れる頭部がその刺激の有効性を示し、メデューサはそうした様子を眺めながら、乳房の付け根のラインを優しく撫で、時には軽く指先で突っついた。
「うぅっ・・・・・ぅ・・・っ・・・くぅっ!」
メデューサの指がしなる度、イレーネの脳にムズムズとした快感ともくすぐったさともつかない感覚が駆け抜けた。耐えられない程でもないが、無表情でもいられない。そうした中途半端な刺激に、懸命に耐えていた彼女であったが、その時、予期しなかった刺激が彼女に襲いかかった。
「はぁぁぅぅぅ~~~」
背後のキーンが無言のまま、自分の眼前に位置していた彼女の背筋を上から下へと撫でたのである。
胸の方ばかりに集中していた彼女にとってそれはまさしく不意打ちであり、本来ならばエビ反り状態になったであろう反応を、首を仰け反らせる事で示した。
通常の拘束では暴れることで意外に位置が変化する背筋も、石化という拘束の前では微塵も動けず、良いようにキーンの指先の蹂躙を許し続けた。彼は一度上から下、下から上への指先の往復運動を済ませると、今度は引っ掻き行為を行いながらゆっくりと背筋を責めにかかった。
「ふひぃっ・・・・はぁ・・・・・・あぁくぅっ!」
虫刺されを優しく掻くような刺激が背筋にそってゆっくりと下がってくる感覚に、イレーネは頭を仰け反らしたまま必死になって堪え続けたが、今度はそちらに意識が集中しすぎる結果となった。
「と・ど・め・・・・」
小さく囁くと同時に、メデューサはおもむろに胸から両脇腹へと指を移動させると、抵抗の術を持たないそこを遠慮無しに揉み回した。
「!!~~~ぶぁっあっはははははははははあはははははは!いやぁ~~~~~っっっはははははは!!!」
度重なる不意打ち、しかも手加減無しに行われては耐えられるはずもなく。イレーネはついに激しく吹き出した。
「だめっ!だめぇ!だめっっっふひゃっっぁっはははははははっははは!あ~~~~っっっははははっはははは!い、い、ぃひゃっっっははははははははははは!!」
頭だけを激しく振り乱して彼女は笑い続ける。その激しさたるや、今まで堪えていた反動がでたのかとも思える程であった。
「いひひひひひひひっっ!あっはははははは!ああぁぁああぁ~~~~~~っっっっ!」
このまま続ければ気が狂うのではと思える様相でありながらも、メデューサは脇腹を責める指先の勢いを衰えさせる事はなかった。それどころかキーンも、ソフトな刺激であった背筋責めから一転、膝裏に指を回して有無を言わさずこちょこちょとまさぐり始める。
「くぁぁぁぁっっっはははははははは!ぁぁぁぁぁひゃっっははははははは!!!」
これまた視界になかったポイントであったため不意打ちとなり、彼女は新たな刺激に対する反応を如実に表した。
「あひっあひっ、はぁっっっははははっはははははは!もぅいやぁ~!!」
身動き出来ない分を代行するかのように激しく暴れるイレーネの頭。だが、それでもキーンとメデューサはお構いなしに要所要所のくすぐりを続ける。
全く身体の反応が見られないというのはある意味残念な面があったが、イレーネの苦しそうな笑い声と表情は、その不足分を補うに足る物であった。
メデューサはキーンの膝裏責めの反応がやや降着したと判断するや、自分があてがっていた脇腹の指を、今度は脚の付け根に回してその弱点を引っ掻くように刺激し始める。
「きぃやぁぁぁぁっっっっはははははははははっはははだめっっっっっっっひゃっはっはっはっはっはっはっはっはっははははぁっ~~~~~!!」
これにも敏感に反応したイレーネが、新たな笑い声を上げて苦しむと、またキーンがタイミングを見計らって脇の下を責め始める。
こうして二人は、申し合わせしていたかのような絶妙なタイミングと連携でイレーネの放浪し続け、最高潮状態のくすぐったさを持続させる。
「ぁぁぁあ~~~~~~っっっくっひっひっひっひっっ・・・・・」
それからイレーネにとって地獄のような時間が延々と続いた。そのままであれば、果てて気絶という最も遅いゴールに辿り着ける可能性もあったかもしれない。だが、彼女が激しいくすぐったさによる苦しみの中、夢中になって放った言葉は、確定していたはずの平和的帰着点を消し去った。
「あひゃっっはははははっ、あ、なたはぁくひひひ、貴女はやっぱり、見た目通りの鬼よぉほぁっっっははははははははっっ!!」
(!?)
直後、キーンは周囲の気配が変化した事を悟る。
何事かとイレーネ越しにメデューサを見ると、彼女は不意にくすぐりの手を止め俯いていた。
「おい・・・・?」
その方が僅かに震えているのを見て、キーンが声をかけるが、それと同時に顔を上げた彼女を見て、かける声を失った。
メデューサの表情に、今までにない妖しい・・・いや、怪しいというべきだろう、引きつった笑みが浮かんでいた。その様相にキーンも思わずくすぐりの指を止めて、彼女の動向を注視した。
「お嬢ちゃん・・・・なんて言ったのかしら」
メデューサが笑みを浮かべたまま、イレーネに顔を近づける。
問われた彼女は答えない。ようやくにしてくすぐりから開放され、呼吸を整えるのに手一杯だったのである。
「鬼?見た目通り?・・・・・この美しい私が?」
髪の問題がなければ十分に美女・・・と、言うのはキーンの内心の評価ではあったが、口にするという自殺行為は行わない。
当人も意識していた欠点なのか、それとも自尊心が高いのか、ともかくもその発言がメデューサの機嫌を害した事を把握したキーンは、彼女が感情を殺意に転化させないかを見守り、その事態に備えた。
「そんないけない口をきく子猫ちゃんは、きついお仕置きをしてあげるわ」
まるで微妙な年齢の女性に「おばさん」と声をかけた時のような、自分でも認知はしているが認めたくないというような、一種の逆鱗に触れたような笑みで語ると、メデューサはその視線をイレーネの背後のキーンに向ける。
「そうですよね!」
「お、おぅ」
無理に同意を求めるメデューサの勢いに負け、反射的に首を縦に振るキーン。
「それじゃぁ、お仕置きモード・・・と・つ・にゅ・う~」
メデューサの目が紅い輝きを放つ。
「!?」
石化能力かと思ったキーンが思わず視線を背けたが、そうではなかった。彼女の目の発行は魔力の発現を意味していたが、それは外部ではなく内部に影響を与えるもので、それは外からの観察でも容易に判別できる現象となって現れる。
見る間にメデューサの最大の特徴とも言える蛇の髪がその長さを伸ばし、当初セミロング程度の長さであったそれが、見る間に腰にも届くロングへと変化した。
そして長さを増した蛇が次々にイレーネの身体へと巻きつき始める。
「はぅっっく・・・んふぁぁっ!」
程なくしてイレーネの口から悩ましい声がもれた。絡みついた蛇の一部が、石化解除されている彼女の弱点を、細い舌で舐め始めたのである。
脇の下、胸の付け根、背筋、脇腹、膝裏、脚の付け根・・・・
指で刺激すれば間違いなく笑い悶えるだろうポイントも、細い蛇の舌での刺激では激しいくすぐったさには至らず、くすぐったさ一歩手前の微妙な刺激に快感に近い感覚を受けていた。
「んん~~~~~~ぅくっ・・・!」
こみ上げる笑いとは異なる声を、イレーネは懸命に耐えた。蛇の舌は絶え間なくチロチロと蠢き、各所をソフトに責め続け、彼女のそうした精神的防御をそぎ落とそうとする。
当初、これなら耐えられると思ったその刺激も、丹念に続けられる事により徐々に大きくなっていくような感覚を彼女は感じていた。
(変に意識しては駄目)
そう自分に言い聞かせるイレーネであったが、元来くすぐったく感じる箇所は性感帯とも言えるポイントであり、微妙な力加減でその差が出ることが多い。したがって蛇の舌のソフトな責めは、彼女の自覚とは無関係にその性感を増大させていく傾向となっていた。
特に背筋、胸と脚の付け根を刺激されると、脳が痺れるような感覚に襲われ、落ち着き始めたいた呼吸が再び乱れ、頬も艶やかに紅潮していった。
「そろそろ感じてきちゃった?」
イレーネの表情の変化を目敏く察したメデューサが、意地悪っぽく問いかけた。
「そ、そんな・・・くふぅん、わけ・・・ない」
そう否定してみせたものの、その様子を見る以上、信じる者はまずいない。
「う・そ・つ・き」
もちろんメデューサもその言葉をはなっから信じてはいない。そうした虚勢を頃合いと見た彼女は、更なる責めを開始する。
待機していた他の蛇が活動を開始し、頭の左右、胸と股間周辺に移動する。
そして、さほどの間も開けずに石化状態であった胸の先端と股間一帯を舐め始めると、蛇の舌が触れた部分の石化が徐々に解除され、生身へと戻って行った。
「はくぅ・・くっ・・・あぁん」
両乳首の先端に感覚が戻った途端、蛇の舌による甘美な快感を受け、イレーネは堪えることも出来ず悩ましい声をあげた。
舌による刺激もあっただろうが、既に他のポイントの性感責めによりできあがりつつあった彼女の身体は素直に反応し、その両先端を隆起させてしまった。
「ほぉ~ら、やっぱり、身体は感じてる~って、言ってるわよ」
「はぁぁぁん!」
そう言ってメデューサは隆起した乳首を指でつまんで軽い刺激を与えると、イレーネの表情がビクッと震え快感に歪んだ。
「良い声ねぇ、もっと感じなさい」
満足そうに笑むと、メデューサは指を離し、再び蛇を3匹づつ差し向けると、刺激を欲するように起つ乳首を3本の舌で責め立てた。
「あぁ、いぃ・・・・はぁぁ~~~~!」
三方向から襲いかかる細い舌の刺激に、イレーネが熱い吐息を吐く。人の舌や並の触手などでは体験できないソフトな刺激が彼女の乳首を伝わり官能を刺激する。
そうした人外の刺激に翻弄されている間に、更なる刺激が別所から生まれた。
それは股間周辺に殺到していた舌による刺激であった。こちらも舌が触れる事によって石化が解除され、その最も敏感な箇所をさらけ出し、抵抗や逃亡の術のないそこを、細い舌が容赦なくなめ回したのである。
「あっあぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~!!」
自在に蠢く筆先が絡みつく様な快感が、股間の敏感な部分を駆けめぐり、たまらずイレーネが悲鳴を上げた。
意志に関係なく跳ね上がるだろう股間への快楽による反射反応も、石化の為に押さえ込まれほとんど目立った反応を見せなかったが、のたうつ頭と激しい喘ぎ声がその全てを代行していた。
股間に生じた快楽は尽きることなく、まるで掘り当てられたばかりの井戸の様に溢れ続けた。
「ふぁぁぁぁぁ・・・・あぁん・・・・あはぁ・・・」
止めようのない快楽は見る間にイレーネの女の性を浸食し、止めたくない快楽へと変貌させる。股間のみならず、乳首、脇の下、脇腹、背筋、足の付け根、膝裏を責める舌先の感覚までもがそれに同調し、快感は爆発的に増大し膨れあがる。
「うふふ・・・・はしたない涎がい~ぱぁい」
「ふぅっっくぁぁ・・・」
メデューサが全ての蛇を下がらせ、晒された股間を指先でそっと撫でると、イレーネは顕著な反応を見せる。触れた指先を後ろから前へとそっと動かすだけで、彼女の股間から溢れた蜜が指を伝わって床に滴った。
一度決壊した蜜は止めようもなく溢れ、石化した彼女の太股を伝わり足下に泉を作り出す。
その源泉となる彼女の秘所は、新たな刺激を求めヒクヒクと震え、新たな蜜を滴らせた。
「はぁ・・・あうぅぅ・・・・」
快楽の余韻と新たなる快楽に打ち震えるイレーネの潤んだ瞳でメデューサを見据えた。
更なる快楽を求める本能と、相手に屈服する事を許さない理性がせめぎ合い、言い様のない感情が彼女を襲っていた。
だがそれは決して均衡ではない。あとほんの僅かな快楽によって理性は一気に崩壊することは本人すらも自覚している事であった。
「もうそろそろ限界よねぇ」
わざわざ確認するように囁くと、その返事を待たずに蛇を差し向けるメデューサ。再び蛇がイレーネの身体に巻き付き、各所への刺激を再開すると彼女の官能は一気に再燃した。
「んぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」
燻っていた火に油を注がれ、落ち着きかけていた本能が手のつけようもなく暴れだし、僅かな理性を押し流した。
「あぅ・・・あぁん・・・・も、もう・・・・んぁ?い、いやぁっっはははははははははははっははははははや~っっはははははははははは!!」
イレーネが欲望に敗北し、快楽を自ら欲しようとしたその瞬間、彼女は全く予期しなかった刺激を受け、たまらず噴き出し、大きな笑い声を上げた。
メデューサの指が脇腹を激しく揉みくすぐり、脇の下と膝裏に位置していた蛇が、舌ではなく頭全体を利用してグリグリと責め立てたのである。
今し方まで快楽はたちまち押しやられ、蘇ったくすぐったさに彼女は翻弄される。
「いやぁっいやっっははははははははははは!!もう、くすぐりだめぇ~~~ひぁっっははははは!!」
「そう、駄目なの?だったら笑い疲れたら、また気持ちよくしてあげるわ。そ・し・て、イキそうになったらくすぐってぇ、それを繰り返して、くすぐりでイっちゃうまで続けてあげるから覚悟なさい」
一旦くすぐりの手を止め、喘ぐその姿を眺めて、悪魔的な笑みを浮かべてメデューサは言った。
それはイレーネにとって、気の遠くなるような地獄の行程の開始を意味した。
「いやっ・・・・いやぁ・・・」
彼女は首を振って拒絶したが、それを受け入れる寛大さをメデューサは持ち合わせてはいない。逆に怯える彼女の表情を見て、恍惚とした笑みを見せた。
「あら、怖がらずに安心して。気が狂わないように最低限の手加減はしてあげるから・・・・」
指と蛇をクネクネと蠢かせつつ、メデューサはイレーネに近づいていった。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
フロア一角の小部屋に、イレーネの絶望した悲鳴が響き、その直後、蚊帳の外になって忘れられた存在となったキーンが、名残惜しそうに部屋から出て行った。
メデューサとイレーネの、いわゆるレズ・くすぐり悶絶ショーを拝見し終えたキーンは、それから暫くの間、辺りを放浪しては目にとまった催しを見て楽しんだ。
催しは数多くあり、ジャンケンやくじで、賞品の少女をくすぐる権利を奪い合う単純な物から、がっしりと拘束した全裸少女の身体に絵筆を用いて絵を描く様なマニアックな物や、特別に作られた迷路内に数人の少女を放ち、それを『ローパー』と呼ばれているイソギンチャクの親戚のような形状をした人造生物数匹を宝珠でコントロールし、追いつめ・捕らえ・『ローパー』の特徴でもある触手でくすぐり嬲ると言った、手の込んだ趣向も存在した。
それらを一通り見て回り、気に入った催しには自らも参加しながら、キーンは自称『フロアの調査』をし続けた。
そして全てを見回るつもりであった彼は、必然的にあるスペースに辿り着いた。
そこは、周囲の盛況さに反して何の催しもなく、開いたスペースに小柄なモンスター人間型のモンスターが数匹座り込んでいただけだった。
「ん?何なんだここは?」
周囲に比べれば確実に浮いている区画に足を踏み入れ、キーンはそこの担当であろうモンスター達に声をかけた。
「あぁ?」
モンスターは不機嫌そうに唸った。
「ここでは何をしているんだ?」
改めて問いかけるキーン。
「何を・・・だぁ?見てわかんねぇのか?何もしちゃいないよ!」
面白く無さそうに唸ってモンスターは相手を睨みつけたが、相手の姿を見た途端、敵意丸出しであった表情は瞬時に凍り付いた。
「かっ・・・あ、ミ、ミラー・・・・様」
「し、失礼いたしましたっ!」
いきなりモンスター達は頭を下げた。
「知らなかったとは言え、不機嫌さに任せとんだ御無礼を・・・・も、申し訳有りません」
ここに来て、もう何度も行われている行為である。
「もういい、で、何故何もしていない?」
つき合っていては長ったらしい社交辞令となる事を、経験から知り得ているキーンは、先手を取ってそれ以上の言葉を遮って、本題へと入った。
「そ、それが、恥ずかしい話しなのですが、ネタが思いつかなくて・・・・」
「ネタ?」
「はい。ここではどんな趣向の催しも良いとされていたため、それならばと、凝った趣向を考えようとしたのですが思い至らず、他のチームに先を越されてしまい、今更ありきたりの事も出来ず、途方にくれておりました・・・・・」
「成る程な・・・・」
メンバーを結成したはいいが、発想に富んだ者がいなかったという訳である。
「ミラー様、何か良い趣向はお持ちでは無いでしょうか?願わくばお知恵をお借りしたいと存じます」
「ふ~ん・・・・・」
いきなり現れた自分に対し、いきなり助力を乞う以上、かなりせっぱ詰まっている事がうかがえた。
キーンは腕組みをして本気で考え込む。別に拒否する権利もあったのだが、自分のアイディアが実施できるチャンスに思わず考え込んだのである。
彼は今まで見て回った催しを思い出し、それらには無かった点を模索する。そして頼んだモンスター側が申し訳なく思いだして、結構ですという言葉を言おうとした直前、キーンの脳裏に閃きが走った。
「思いついた!」
「えっ!?」
モンスターの目が期待に輝いた。
が、キーンはすぐに案を語ろうとせず、ちょいちょいと手招きをして、モンスターの一匹を呼び寄せた。
「は?」
「まず、確認したい事がある」
近づいてきたモンスターに、そっと耳打ちした。
「・・・・・・・・・・・・・・・と、言う物は存在するか?そして・・・・・・・という物と・・・・・・という物、あるいはそれに類似する物を揃えられるか?」
キーンに耳打ちされたモンスターはしばし考え、記憶の奥底を検索した。
「おそらくは・・・・・・スライムの方は御要望の種が調整された話を記憶しておりますが、薬品に関しては確認をしてきます・・・・・あるいは専門士に調合を依頼しますが、用途が一向に読めませんが?」
「いいから、揃えられるのなら揃えてくれ」
「承知しました・・・・・」
そして待つこと数刻・・・・戻ってきたモンスターから朗報がもたらされ、キーンの求める物の全てが揃う事となり、早速企画の準備に入るのだった。
キーンの参加による結果か、士気の上がったモンスター達はその小柄な体型にも関わらずパワフルに動き、準備はあっという間に完了した。
早々に組み上がったステージ自体は他と大差なく、円形の観客席の中央に、見せ場となる舞台が設置されており、観客も入り始めていた。特に大々的な宣伝は行ってはいなかったが、新しい催しという存在が客の期待感を刺激した事実もあった。
そして舞台には既に餌食となる五人の少女達が訪れる運命を待たされていた。その五人のうち一人が拘束用ベットに全裸でX字に拘束されており、その周囲を四人の少女達が床に転がっている。両手は後ろ手に縛られ、両脚も揃える形で縛られており、ろくに動くことも出来なかったが、X字拘束されている少女と異なり、彼女達には通常の衣服が着せられたままになっていた。
この状況で何が行われるか予測できる者はいなかったが、五人という人数と、この状況に、観客の期待は否応無しに上がっていった。
「一体何を見せてくれるんだぁ?」
ここの事情を知る者からの声が、観客席から放たれた。
「それは見てのお楽しみ!」
それに対し、負けじと主催者側のモンスターが叫んだ。
キーンは舞台の角で目立たぬように客席の様子をうかがい、席が満杯になる頃合いを見計らって照明の光量を低めに調整し、対照的にステージへの光量を高くした。単純な演出効果ではあるが、もともとテンションの高かったモンスター達にはこれだけで十分だった。
「さて、お集まりの皆様、今回、初公開となるこの催し、残念なことにまだ正式名称がありません・・・・・・ですが、基本テーマは『自己と友情』とも言うべき物で、理性の強さが問われるものです。それでは、早速始めましょう」
その言葉を合図に、ベットに拘束されていた少女の周囲に四匹のモンスターが歩み寄り、周囲を取り囲んだ。彼等は左手に小さな缶バケツを持っており、その中からは刷毛の柄が突き出していた。
「ちょっと・・・何よ・・・・」
少女・・・・かつては騎士団長という身分を誇っていたレイラは、首を左右に振って周囲を見回し、四匹全員の手にそれが握られているのを知って小さく身震いした。この塔内に捕らわれている女性で、彼等の好む趣向を知らない者はいない。これから行われるだろう事を想像しただけで彼女の身体はムズムズとした感覚を覚えるのであった。
「では、始めてくれ」
その命令を聞き、待ってましたとばかりに四匹のモンスターが一斉に、缶の中に入っていた液体を刷毛に含ませ、彼女の全身に塗りたくった。
「きゃ!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!あっあっあひゃっははははははははははははははははははははははははははは!」
もともと、そういう人選をしたのではあるが、レイラはかなりのくすぐったがりやであった。特にポイントを狙ったわけでもなく、無造作に刷毛が触れただけなのにも関わらず、彼女はいきなり吹き出し、拘束された身体をガクガクと激しく揺さぶった。
「きゃ~っはははははははははははは!あっははははははああはははは、や、やめ、ひょははははははははははは!や~っっははははははっはははあははははは!」
堪えることの出来ないくすぐったさに、まともに言葉の出ないレイラは激しく首を振って拒絶の意志を示したが、そんな反応を見せられると、基本的に責め側は興奮するものであり、自然と刷毛の動きは意地の悪い物となっていった。
腰から脇腹を何度も往復する者、腹周りで何度も円を描くようにして刷毛を動かす者、足の裏から指の間にまで丹念に、まんべんなく液体を塗り込む者、ピクピクと反応し身体を捩る事によって体がピンと張りつめた部分に刷毛を這わす者、それぞれが辛辣に女体を責め嬲る。
ハケの感触と、塗り込まれる液体の滑りによって生じる絶え間ないくすぐったさに、レイラは気が狂わんばかりに笑い悶え続けた。
「いやぁぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはーーー!!だ、だめぇーーー!!きゃっはっはははははははははーー!!ひゃははははは!きゃはははははは!あっはははははははは!た、たす、ぷっひゃひゃはははははは!たす、たすけっい~っっひひひひひひひひひひひ!助けて、はひゃ、みんな助けてぇー!きゃはははははは!!」
助けを求めても、そして仲間内の身分を利用した命令であっても、その場にいる仲間達も身動きが出来ず、助けに行けるはずもなく、無力にも上司の笑い狂う声を聞き、次は自分ではないかと恐怖を抱く以外に出来ることはなかった。
それからどの位の時間が経過したか・・・・
刷毛責めを受けたレイラは、休むことも出来ずに勝手に身体が反応する事で延々と悶え続け、意識が朦朧として何も考えられなくなった頃に、ようやく開放された。
これは慈悲などではなく、単に用意していた液体が彼女の全身に塗り終わった結果であった。
レイラは荒々しく大きな呼吸を続け、酸欠状態になっていた身体を落ち着かせるため大きな呼吸を続けている。最初は全裸で拘束されていた事に恥じらいを見せていた彼女であったが、今はそんな事も忘れ、第一に乱れた呼吸を唱える事に手一杯の様子であった。
そんな彼女の身体は、モンスター達の塗りつけた液体によって色っぽい光沢を放っていた。
「さて、彼女の方はこれで準備終了です。では、いよいよ本命に登場していただきましょう」
モンスターのアナウンスに合わせ、刷毛と缶を持っていたモンスターが舞台裏に消え、スイカ程のサイズの陶器製の坪を持ったモンスターが入れ替わりに現れ、先程と同じように中央でX字に拘束されたレイラを取り囲むように配置に付いた。
配置に付いた四匹が司会役に視線を向け、それを受けた司会もアイコンタクトで頷き合図を送ると、四匹も頷いて手に持った坪を床に落とし、自分達は早々に引き上げていった。
何が入っている?
少女達だけではなく、観客のモンスター達もそれに注目した。
砕けた坪の破片の影から、何かが蠢いた。青く、淡い光を自ら放つ不定形の物体。そう、スライムの一種が、坪から開放され、活動を始めたのである。
「おお、スライムとの絡みか!」
これから何が起きるかが想像でき、にわかに客席が色めき立った。
だが、客の予想とキーンの考案にはまだ若干の差が存在していた。
「さて皆さんもお察しの通り、ここに蠢く不定形生物はスライム系の生物ではありますが、これはスライムマスターの手によって調整された特殊なスライムであり、その性質は生意気にも女好き・・・・であり、女体に取りついては弱点を探り、くすぐりを行い、女性を笑い悶えさす『くすぐりスライム・ブルーバージョン』であります。ここまで言えば分かりますね?では、しばし彼女達の運命を御覧頂くことにしましょう」
そう言い残して司会役のモンスターは舞台の角へ移動し、客に視界を譲り渡した。
そこでは、目ざとく目標を見つけた四匹のスライムが、最も手近にいるそれぞれの少女達ににじり寄っていく様子が繰り広げられていた。
「いや、いやぁ!!」
説明を聞いていた少女達は悲鳴を上げて逃げようと試みたが、両手は後ろ手に両足首も揃えて拘束されている状態では、思うように逃げられるわけもない。
芋虫のように不慣れな態勢で這う少女に対し、這って移動する事に慣れているスライムとでは、移動手段は同じでもそのスピードが違い、いとも容易く追いつかれてしまう。
スライムは衣服に貼り付きながら捕らえた獲物の弱点を探るべく、体中を這い回った。
「くっくっくううう~!!やめ・・あぁ~そん・・そんな・・・・服が・・」
人の指とは異なる感触が身体を通過する度に少女は身体を身震いさせ、スライムを振り落とそうとのたうち回った。だが、粘性のある身体はぴったりと貼り付き、その上、分泌される粘液は徐々に少女の衣服を溶かしていたのである。
「あはぁああ~!!・・そんな・・・いや・・・いやああぁ~!!」
徐々に肌を露わにされる恥ずかしさと、徐々に激しくなるくすぐったさに少女は顔を真っ赤に染めて身悶え続ける。
やがて着衣全てが溶かされれば、スライムの感心はくすぐりのみとなる。それが分かっているだけに少女達の心は焦ったが、今、彼女が出来るどの様な抵抗もスライムを引き剥がすには至らず、スライムもそれを嘲笑うかのように、着実に各所を溶かし、弱点の捜索を続けている。
放たれた四匹のスライムのうち、三匹は床に転がっている少女達を捕らえたが、あと一匹は発想が他と異なっていたのか、拘束ベットをよじ登り、X字にされているレイラを狙う選択をした。
「ほ、スライムにも型破りがいるのか」
キーンが妙なところに関心を持ったが、このスライムの目的地到達は、達成される事はなかった。
スライムはベットの上まで這い上がると、相手が完全に拘束されているのを知っているのか、伸ばした身体の一部をいきなり脇腹へと差し向けた。
観客も、先程の過剰な反応を思い出し、虚ろな状態で呆ける少女がどの様に反応するかを想像し、それが実現するのを心待ちにしたが、スライムは身体の一部が僅かに少女に触れた途端、ビクリと震え、まるで塩に触れたナメクジの様に縮こまり、いそいそとベットから降り、結局は残っていたもう一人の少女へと向かって行ったのである。
このスライム、今度は何事もなく相手に接触したのだが、観客達には何が起きたかまるで理解できないでいた。
床に転がっていた四人の少女達は、それぞれがスライムに接触され、その不定型な身体全体による蹂躙を受けなければならない状態になっていた。
「あ、あ、ああ、あああっ、・・・やはははははははははっ!い~~~っひひひひひひ!!あはっ、あはっ、あ~~~~~っはははははははははは!」
「はぁっ!!あひっ!!きゃっはははははははははははははははははははは!はあっ・・ああああっあははははははははははははははは!!」
「ぎゃはははははは!だめ~~~きゃはははは!よして、よし・・・っひひひ!くひゃははははははははは、あ~っっはははははははは!」
「あひゃっ・・あひゃひゃはっははははははははははははははははは!!!そこだめぇ・・・やははははははははははは!」
少女達は陸に上がった魚のように身体を弾かせ、今、我が身に起きている感触の苦しさを体現して見せた。
だが、彼女達が悶え、身体を跳ね上がらせれば跳ね上がらせる程、見ている観客にとっては興奮の材料となるのである。
「きゃははははは!!やめてぇー!!あっはははははーーーー!!」
「お願い・・お願いだからもうやめてぇーー!!きゃっははは!!あっはっははは!!」
「きゃっはっはっはっは!!やめてぇーーー!!やめてぇーーー!!」
「だめぇーーー!!苦しぃーーーー!!や、やめ・・・きゃはははははーーー!!」
ややすると彼女達の服は、スライムの粘液によりほとんど溶け落ち、全裸状態となった。
遮る物のなくなった柔肌にスライムの不定型な身体がまとわりつき、その上、衣服以外には全く反応を示さない粘液が、ヌルヌルとした感触となって襲いかかり、くすぐったさを増大させる結果となる。
少女達は身体が激しく反応しながらも、そして無駄と知りつつも、少しでも刺激が緩和できないかと儚い抵抗を続ける。
あれから更に時間が経過し、一向に衰えないスライムの責めを受け、このままでは気が変になると、彼女達の誰もが思いだした時、それを見抜いたかのように司会役が彼女達に向かって言った。
「どうです?お嬢さん方、苦しいですか?止めて欲しいですか?」
「おね、おねがいぃ~!やめ、やめ・・・・や~っっはははははははははは」
「くる、くるしっ・・・ひゃっははははははははは!くるしぃ~ひはははっはははははははは!止めて~!!!!」
少女二人がのたうち回りながら懇願する。その傍らではもう二人も必至に首を縦に振っていた。
「そうですか。それではあなた達にチャンスを与えましょう」
意味ありげな笑みを浮かべ、司会役は中央の拘束ベットの所へと移動した。
「さて君達、現状を振り返って何か疑問に思いませんか?」
司会役はX字拘束されている少女の脇腹を指先でスッと撫でながら、今尚、笑い悶えている四人の少女に向かって言った。
「ここにいる彼女は何故、スライムに選ばれなかったか?一度、スライムの一匹が彼女を狙ったのに何故、放棄したか?疑問ではありませんか?」
その答えを司会者役は待ってはいない。会話に軽く間をあけると、彼は話を続けた。
「ひょっとすると、察しもついているかとは思いますが・・・・・・そう、最初にたっぷりと塗らせてもらった液体、あれが、このスライムにとっては忌避剤となっている訳です」
(やっぱり)
仲間が身悶える姿を見て、自分も身体がムズムズとするのを実感しながら拘束ベットの上にいるレイラは自身に対して持っていた疑惑に納得した。
だが、一方の疑問が解消すると、新たな疑問が浮き上がるもので、何故自分にだけこの様な処置を行ったのか・・・・・が、気がかりとなった。
しかしその疑問も、司会者の進行によって、本人の全く望まぬ形として判明する事になる。
「さて、今尚スライムの責めに喘いでいる少女達・・・・君達に選択肢だ」
一人一人の苦悶の表情を嬉しそうに眺めつつ、司会役は言った。
「ベットに拘束されている彼女に塗った忌避剤だが、これは塗って効果を発揮するだけの物ではない。実は塗るという行為は非効率的で、本来は服用して使う物なのだよ。その液体を服用すると、忌避成分が『汗』という形で全身から発散され、その身を覆い、スライムを近づけなくするという訳だ。・・・・・分かるかな?君達がその、くすぐりスライムの呪縛から解き放たれる方法。それは、ベットに拘束されている彼女の身体に塗りつけられている忌避剤を服用するという事だ」
「ひっ!」
その言葉にベットに拘束されたレイラが小さな悲鳴を上げた。服用・・・・と言えば言葉は良いが、四人の少女達は手を後ろ手に、足首も揃えて縛られているため、彼女の身体に塗られている忌避剤を服用するなど、御世辞にもまともには出来るはずもなく、その実体は『舐める』しかないのである。
ただでさえ敏感な自分が、拘束されたままの状態で四人の仲間に全身を舐められようものなら・・・・それを想像しただけで彼女は身悶えそうになった。
「さぁ、選ぶのは君達の自由だ。仲間のためにスライムの責めに耐え続けるか?それとも我が身可愛さに身動きの出来ない彼女から忌避剤を舐めて助かるか?無論その場合、行き場を失ったスライムは、忌避剤の無くなった彼女の身体へと移動するが、好きな方を選びたまえ」
「そんな、そんなぁ~っっはははははははっはははは、だめ!そんな!ゆるしてぇ~やっっははははははっっはっははあっははあはは!」
にわかに即答できる訳のない選択に少女達は絶望感を感じた。他の責め苦であれば自己犠牲の精神も発揮されたであろうが、くすぐりだけは別だった。こんな苦しい刺激に対しては何の訓練も受けた事がなく、無慈悲とも言える選択肢さえ突きつけられなければ、すぐに屈服していてもおかしくはなかった。
そうした追いつめられた状況の中にある少女達ではあったが、それでも仲間は裏切れないという僅かな理性によって、自己犠牲の道を選択した。
当事者である少女達にはかなり深刻な事態も、それを眺める観客から見れば沸き立つシチュエーションでしかなかった。
早々に各所で賭が始まり、どの位持ち堪えるか、どの様な結果になるか、どの娘がどの位耐えるかなどの予想が飛び交い、それぞれの思惑の込められた罵声・声援があちこちで巻き起こった。
(良かった、受けた・・・・)
ステージの隅で観客の様子を見て、発案者のキーンは安堵の息を漏らす。もともとテンションが高かった事もあったであろうが、ともかく彼は相談を持ちかけてきたモンスター達との義理を果たしたことになる。
「あはっ、あははっ、あ~っっっっっはははははっはははあははははやっははははははっはあはっははははは」
床の上で少女達は激しくのたうち回り、笑い続けた。必至に外道的な選択を選ばないように堪えていたが、くすぐり責めに対する『逃げ道』は、精神的に追い込まれている少女に緊急避難の選択を選ばせようとする。
「ああああああ~!!!はあぁっっっっはははははあはははははあはっっひゃっひひひはひゃあははははははは!!」
誰もが開放という誘惑に耐えていた。自分だけが仲間を裏切るわけにはいかない。自分が自由を得た結果、上司であるレイラがどうなるかを十分知り得る・・・というより、いまその身で体感している少女達は、気が狂わんばかりに笑い悶えながらも、辛うじて理性を保持させ続けた。
だが、無限に続く責め苦に対し、彼女達の精神力には限界がある。
どのみち避けられない結果ではあったが、遂に少女一人が限界に達し、悶えのたうちながらではあるが、その身体をゆっくりとベット拘束されたレイラの方へと移動させた。
「ひっっひひひひひっひひひひゃははあはっはははははあ、ごめ、ごめ、きゃはははははは、レイラさん・・ご、ごめんなさい・・・くひひひひひひひ」
レイラの手前まで躙り寄った少女は、表情を汗と涙と涎とでぐしゃぐしゃにしながら、相手に謝罪の言葉をもらした。
「だ、だめ、お願いキャシー、堪えて・・・わ、私があんな事されたら狂っちゃう。ねぇ、お願いぃ!」
目の前で身悶える少女キャシーの心情も分かるレイラではあったが、彼女が自覚する身体の過敏さを考えると、仲間達が受けている責めは自分には致命的にも感じられるのである。
拒絶の意志と相反して、逃げる事の適わないレイラの身体に近づいたキャシーは、拘束用のベルトで抑えつけられながらも懸命に藻掻く、彼女の右足の膝頭に軽く噛みついた。
「はうぅっ!」
噛みつきという未経験な刺激を受け、レイラが息を止めて仰け反り、膝がピクリと震えた。本来は大きく弾けたのだが、拘束具がその大きな動きを制したのである。
それでも不意に起きた動きは、キャシーの噛みつきから脱する結果となり、獲物を逃した彼女は、今度は露骨に膝頭を舐め、舌先を太股の方へと移動させて、そこに付着している液体をすすり始めた。
「やはっぁ・・・・やぁ・・・・ああっ!」
仲間の一心不乱な舌技にレイラは思わず反応した。必至で歯を食いしばり堪えようとするが、彼女の敏感な体質はそれを許そうとはせず、甘美な感覚を徐々に全身に広めつつあった。
キャシーは身悶えるレイラなどお構いなしに忌避剤の塗りたくられている太股を舐め続ける。その様子は喉を乾かした犬が、ようやく得た水に貪りついているのに酷似している。それは彼女の、スライムによるくすがり責めから開放されたい思いを如実に現していると言える。
解放を求めて一心不乱に舐め続けるキャシー。その度にレイラは身体を駆けめぐる刺激に吐息をもらし続けたが、彼女にとっての地獄は、まだ始まりにも至っていなかった。
もともと『仲間達』という連帯感で耐えていたはずの四人の少女達は、一人の脱落によって、雪崩式に崩れる事となる。
彼女でさえ耐えきれなかったのだから・・・彼女に耐えられない物が自分に耐えられるわけがない・・・そんな自己弁護的な思考が彼女達の心を生じ始め、目の前に用意された解放の手段が、彼女達の精神的防壁を浸食し、崩壊させていく事となる。
一旦そうした思いが生じると、今なお続くくすぐったさという苦しみから脱する事を望む自己保身が優先してしまい、結局彼女達はこぞって床を這い、レイラの肢体に塗りつけられている自由への鍵を求めた。
「はぁぁぁぁん・・み、みんな・・・やめ、やめて!」
レイラの懇願も無意味な物だった。我が身を優先した少女達には、上司としての、そして仲間としての悲痛な声も、全く届かなかったのである。
「あっ・・・あっ・・・ああぁ~~~~~!!!や、やめ、はぁぁあん!」
四つの舌は全裸であるレイラの身体を思い思いに舐め回した。今まで出来うる限り声を噛み殺していた彼女も、四倍になった刺激には全く耐えきれず、大きく仰け反った。
「やはぁぁ~ん、あっ、あはははぁ・・・く、くすぐったい・・・やぁ~~~ん」
忌避剤を求める舌が無遠慮に脇腹・脇の下に達し、そのくすぐったさにレイラは身悶えたが、単純なくすぐったさのみによる反応だけではなかった。
仲間達の自由に動けないぎこちなさから来る刺激が、過敏体質のレイラには、くすぐったさより快感として感じ始めたのである。
絶え間なく各所から送り込まれる甘美な刺激は彼女の感性を翻弄し、ある方向へと強制的に導いていく。
流されては駄目だと思ってはいるものの、レイラにそれを抑える術はない。身体が大きく仰け反り、腰が自然と浮き、乳首が固くなり、ほんの僅かな理性も限界に達する寸前となった時、それを見計らったように、四人の少女達にまとわりついて刺激を与えていたスライムが急に活動を停止し、いそいそと身体から離れていった。
忌避剤の服用の効果が現れ、彼女達の身体から流れる汗に混じって忌避成分が滲み出てきたのである。
スライム達は体内に取り込んでしまった忌避剤を吐き出すかのような苦しげな動きを見せた後、やがて落ち着きを取り戻し、気を取り直して再び少女達に襲いかかろうとしたが、もはや彼女達はスライム達の触れられる存在ではなかった。
スライムにとっては死活問題となる成分を含んだ汗が少女達の全身を覆い、例えうっすらとした発汗であっても触れる事は適わなかったのだ。
結局、接触を諦めたスライムであったが、すぐに新たな獲物を見つける事となる。ベットに拘束された敏感少女レイラである。
スライムは競争するかのように、こぞって移動を始める。ただ単純に相手に取りつき、くすぐる事だけが本能であるスライムに、それ以外の行動はあり得なかった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!いやぁ!」
ベットに這い上がってくるスライムを見て、レイラが悲鳴を上げた。これに対する唯一の防壁も、仲間達の舌によって殆どが失われ、もはや彼女をスライムから守ってくれる物は無かった。一分後の状況が容易に予想され、事実となりつつある現実に彼女は恐怖した。
「お願い、もう止めて!な、何でもする、するから、くすぐりだけはもうやめてぇ~!」
彼女は自分を助ける事の出来る最後の存在、すなわちモンスターに懇願した。四人の仲間はあてには出来ない。彼女達も囚われの身である上、自分が今、必至でそう願っているように、くすぐりから逃れるために自分の身体から忌避剤を舐め取ったのである。
だが、モンスター達にもレイラを助ける義理はない。それどころか、これから起きる彼女にとっての悲劇の到来を望んでいるとも言えた。
もちろんこれは彼女に限ったことではない。この塔内にて囚われの身となっている少女達に紳士的な取り扱いなどあるはずもなく、このフロアでは娯楽のための存在であり、他のフロアでは更に非人道的ともいえる処遇となっている。
そんなわけで当然、この懇願が特別に受け入れられるはずもなく、レイラにとっては無慈悲な現実が訪れた。
「あっ!ああぁぁぁぁ!!!」
レイラが艶やかさを含めた悲鳴を発した。
遂にスライムが身体に達し、まるで浸透するかのように身体に広がり、貼り付いて行ったのである。その接触面ではスライムの身体が脈動し、人間の指では到底再現不可能な刺激を与え続けている。
「ぎゃっははははははは!!!!きゃああっははははははははははははは!!あははははははははは!きゃははははははははは!!あっ!あっ!ああっ!!ああああっ~~~!!いやっははははははははは!!だ、だめ、きゃはははははははは!」
少女は狂ったように笑い悶え、身を激しく捩り続ける。その間に二匹目、三匹目が辿り着き、遠慮なく貼り付き同様にくすぐりだし、四匹目の到達によって、彼女はほぼ全身がスライムに覆われてしまった。
「だめ!!あっあはぁ・・・くひひひひひひひひひ・・・!!いやっ!いやっ!っひ!ひひゃっっはははははははははははは!!あきゃはあっはははっははははははっはは!」
拘束具が切れるのではないかと思われるほどの勢いでレイラは悶え狂った。全身を覆い、一体化したかにも見えるスライムであったが、一匹一匹によってくすぐり方が異なり、決してパターン化した動きを見せなかった。
貼り付く事により、どんなに藻掻こうと全く隙を見せないくすぐりは、まさに地獄であり、レイラの精神力をあっという間に消耗させていく。
「もうだめぇ!!本当に!!あっははははは!!ひゃはははははは!!本当に死んじゃうってぇ~っっっっ!きゃははははっはーーー!!あっあっあっあっ・・・あああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
激しい悲鳴と共に、大きく身を仰け反らせてレイラは気を失った。それでもスライムの動きは止まることを知らず、少女の身体は脈動に反応するかのように不規則に震え続けていた。
司会役はレイラが完全に気を失ったことを確認し、その視線を周囲の少女達に向けた。
我が身の安全を優先し、仲間を裏切ってしまった罪悪感からか、彼女達は俯き、あるいは背けて、上司を正視してはいなかった。
司会役はそんな心情を理解していた。と、言うより、この見せ物の発案者であるキーンが事態を想定し、何通りのかの予想を伝えており、それは見事、想定範囲内に納まっていたのである。
「さすがはミラー様、大したものだ」
司会役は事が発案者の計画通りに進んだ事に感心した。あとは、この結果を口実に、最後の観客サービスを行うのみであった。
「さて皆さん、如何でしたでしょうか?大義名分・自己犠牲を口にしている彼女達も、こうなると結局は我が身を優先する物である事を目の当たりにし、楽しんでもらえたと思います」
辛辣な言葉であった。ほとんど選択の余地のない状況に追い込んでの結果ではあったが、実際にレイラを見捨ててしまったのは彼女達である以上、強気な反論が出来るはずもなかった。
「次のグループを準備するまで若干の時間を要するため、皆様には退場していただきますが、退場ルートには仲間を見捨てた彼女達を吊しておきますので、お客様の手で仲間を見捨てた『お仕置き』を与えてやって下さい」
「「「「!!?」」」」
「おおおおぉっ!」
この司会役の予期せぬ発言に、少女達は目を見開き、観客達は喜びの呻き声を上げた。「その方がそちらの罪悪感も薄れるというものだろ」
勝手な解釈を少女達に押し付けながら、更に司会役は言葉を続けた。
「それと言い忘れたんだが、さっきの忌避剤だが、服用するのが本来の使用法とは言ったが、その場合、副作用もあってな、忌避成分が皮膚から汗となって流れる過程で皮膚を過敏にしてしまってな。そろそろその効果が現れだして・・・・だいたい二日間は風が軽く吹き付けるだけでもかなりのくすぐったさを感じてしまうんだ」
これを聞いた少女達は、これ以上ないくらい仰天した。そんな状態で観客の『お仕置き』を受けては、場合によっては発狂しかねない。
もちろん、こんな大事な事を司会役が言い忘れるなどあり得なかった。全ては仕組まれてであり、絶対に助かる術を与えないという、このフロアの催しに沿っての企画であった。 少女達はこれからの事に恐怖し、無駄に足掻いた。
だが、黒子役のモンスターにあっさりと取り押さえられ、それでも暴れる者は身体を軽く撫でて躾を行った。
副作用が現れだした彼女等は、そんな僅かな刺激だけで激しく反応し、以降の抵抗を諦めてしまう。
結局の所、抵抗してもしなくても行きつく結果は同じである。彼女達は程なくして、帰路に沿う位置に順に吊され、退場していく全てのモンスターに、くすぐられて行く事となる。
一匹一匹の所要時間は、通り間際の僅かな物で、些細ではあるが、全体の数と身体の状態が並ではないため、言いようのない地獄を味わう事は目に見えていた。
その後、彼女達の性感がどの様に変化するか、見送るキーンの最も興味深い点だった。
「・・・・・ま、こんな物だな」
最後にもう一イベントあるとは言え、事実上終了となった催しを、そんな一言で自己評価するキーン。
「お見事です」
役目の終わった司会役が戻ってきて、端的な評価を述べた。
「いきなりの企画だったが、そこそこ上手く行ったな」
「御謙遜を・・・後発の催しとしては好評です。それに内容も斬新な物でした」
「そう言ってもらえると助かる。内心は不評だったらどうしようかと心配していたんだが、これで、企画者としての義務は果たせたな」
「有り難うございます」
司会役は深々と頭を下げた。一度成功すればあとはキーンの立ち会いは不要であった。
彼はモンスターに軽く別れを告げると、その場を満たされた表情で去って行くのであった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、満たされてどうするぅ!!!!」
唐突に事態を振り返ったキーンの、自己批判が通路に響き渡った。
あとがき
まるでオムニバスのように、小ネタが多いエピソードです。
あるわけないですが、アニメ化とか企画された場合、カットされる可能性の高い部分ですね。
更に加えて、ちょい役ですが、女モンスター「メデューサ」が登場しました。
塔シリーズ全体で見ても、女モンスターはレア種ですよね。あとはトラセナくらいか・・・・あ、ドライアードのね、念のため(笑)
あと、メインである各催し物ネタですが、若かりし頃の私ならば簡単にひねり出せたのですが、最近は、歳(涙)なのか、一苦労です。
他の方が色々な案を出しているから、それとは異なる物を・・・・と、焦る気持ちもあるからかもしれませんね。
まだ十年は、頑張りたいところです。
まるでオムニバスのように、小ネタが多いエピソードです。
あるわけないですが、アニメ化とか企画された場合、カットされる可能性の高い部分ですね。
更に加えて、ちょい役ですが、女モンスター「メデューサ」が登場しました。
塔シリーズ全体で見ても、女モンスターはレア種ですよね。あとはトラセナくらいか・・・・あ、ドライアードのね、念のため(笑)
あと、メインである各催し物ネタですが、若かりし頃の私ならば簡単にひねり出せたのですが、最近は、歳(涙)なのか、一苦労です。
他の方が色々な案を出しているから、それとは異なる物を・・・・と、焦る気持ちもあるからかもしれませんね。
まだ十年は、頑張りたいところです。