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2011/08/07(日)に投稿された記事
第2章-獣魔の街編- 第5話 樹海の街
投稿日時:20:27:20|コメント:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
俺、この後たまったメール処理したらくすぐり小説書くんだ・・・(フラグ)
これは戦争を経験した兵士達がよく語る内容であったが、ウェイブ達のそれは、少し事情が違った。
彼等は国の威信や名誉や存亡等という一個人には大きすぎる物を背負って闘った訳ではない。ただ単純に、自分の命を守る為に闘い、その日の生という貴重な物を勝ち取った。
しかし、動物ではなく人間であるが故に、闘いの中に何らかの打算を抱いていたため、それが得られなかった事に対して、闘いの無意味さを感じていたのである。
彼等にはこの樹海の中心部にあるだろうと思われる魔王縁の地へと向かう目的があった。だが、あるだろうという憶測だけであまりにも情報が不足しており、いうなれば樹海内をあてもなく徘徊している、あるいは遭難していると表現した方が正しい状況にあった。
そんな中で遭遇した得体の知れないモンスターマスターなる存在は、敵対者ではあっても、欲っしていた情報を得る格好の機会でもあった。
しかしそれは激戦の名の下に消え去り、一同の当てはぷっつりと途切れたのである。
(やっぱり二人同時じゃ無理があった)
河原に寝そべり、空を眺めてウェイブは思った。
今回の闘いでは傍観者的立場となって、二人の敵対者のどちらか一方でも捕虜に出来れば上出来だと考えていた彼は、タールとカレンが別行動を取った時、タールの側に残る選択をした。
カレンが自ら相手を誘ったのは目的があっての事だろうと判断し、何より彼女の単独戦闘は魔法攻撃が主体であったため、その巻き添えを恐れての事だった。
実際、直情的すぎるタールは、案の定苦戦を強いられた。ウェイブの存在が無言の牽制になっていなければ更なる苦戦となったのは想像に難くない。
その結果、カレンが野放しとなり、その行動を制止できなかったのだが、あの状況ではウェイブが彼女についていたとしても制止できたかは怪しく、同時に野放しになったタールは確実に相手を撲殺していたに違いない。
今回の事態の失敗を述べるとするなら、個人的感情が優先されて、三人の共通目的のための連携が疎かになった事だろう。
仲間の心情も理解でき、止められなかった自分にも非はある。そう思うからこそウェイブは済んでしまった事態を口にせず、今後の事に思いをよせていた。
タールとカレンに至っては、仕返しが果たせた事に満足感が先立ち、ウェイブほどの深刻な心情を抱いてはいなかったが、これからどうしようと言う思いはだけは抱いていた。
「二人とも、体力は回復したかい?」
空を見上げているのに飽きたウェイブが身を起こして仲間二人に視線を向ける。
「たいして疲れてもいない」
「出発するの?」
そうだ・・と、ウェイブは首を縦に振った。
「反対はしないが、方向とか決めてるのか?」
ゆっくりと立ち上がって問いかけるタール。本来なら彼も考えるべき問題であったが、思慮は得意でなかったため、そうした判断は他人任せにしている彼だった。
「もちろん。俺達が来た方とは違う方向だな」
「相変わらず、いい加減ね~」
ピシリと一方向を指さし、ウェイブが断言すると、カレンが呆れた声をあげた。
「戻っても仕方ないだろ?なら前進あるのみ。あてがあるとしたら、モンスターマスターの連中だな」
「どう言うこと?」
「俺達が連中と初めて遭遇した場所から大雑把にだけど、連中の来た方向を想定してみた。ひょっとしたら連中みたいなのが他にもいて、縄張りみたいなのを持っていたら、また遭遇できるかもしれないだろ。そうしたら今度はフレンドリーに接してみよう」
さり気なく、手がかりの損失にふれつつウェイブが抱いていた危惧をもらす。
「犬系のモンスターマスターがいて、仲間の血の臭いがするとか言い出したらどうする?」
カレンがそうした皮肉を少し意地悪い質問でかわすと、ウェイブは笑って彼女を見返した。
「いつも通り、自然の摂理に従おう」
「何?」
「弱肉強食!腕力に物を言わせるんだ。タールは賛成だる?」
「おうっ!」
振られた会話に意味なく腕を掲げてタールが応じた。
「まぁいいけど・・・・それで、どっちに進むの?」
「さっきも言ったけど、大雑把にあっちだ」
ウェイブは自分なりに推測していた方角を改めて指さした。
「なかなか良い読みだけど、平穏に行きたいならもう少し川沿いの方がいいわよ」
「「「!?」」」
それは彼等とは異なる四人目となる女の声だった。
ほとんど同時に三人が身構えると、視線の先である滝の脇に妙齢の少女が立っていた。
「君は・・・あの時の?」
その女に見覚えのあったウェイブが呟いた。
「あの時は逃げてごめんなさいね。まさかワーガゼル達を一掃できるとは思わなかったから・・・・時間稼ぎにしちゃった・・・・」
ウェイブが助け、邪な思惑に応じることもなく姿を消していた少女サナが、そこにいたのである。
「動かないで!」
彼女が立っていた場所から下に降りようとした矢先、それをカレンの鋭い声が制止させた。
「あなた、何者?」
カレンは左腕をサナに向け、その掌に魔法による光の玉を作り出して牽制した。
「それは私も尋ねたいわ。あの連中を退けられる貴方達こそ何者なの?」
「通りすがりの冒険者よ」
質問に対して返ってきた質問に、カレンが端的に答えた。
「こんな樹海の深部にまで?」
サナにしてみれば、周囲の環境の恐ろしさを知っているが故に、語られた真実は現実味を欠いていた。
「だから『冒険者』なのよ。それよりあなたよ」
警戒を解くことなく、問うカレン。
「私はこの近くにある街・・・・と言うより村だけど、そこの住人よ。モンスターマスターの仲間と疑っているのかもしれないけど、その逆の立場よ」
「住人?」
「そう、だからこそ、貴方達と接触を試みたのよ」
「何がだからこそよ!ただの街の住人が、この樹海にいられる訳ないじゃない」
「そうよ。だから貴方達に助けを求めに来たんじゃない。自然な流れでしょ」
屈託のないウィンクをして見せてサナは笑んだ。
「・・・事の始まりが思いっきり省略されてるけど、そのお願い応じた場合、見返りは期待できるのかい?」
「あてもない貴方達に、ここから最も近い街への案内と、闘った相手の情報・・・なんてのはいかが?」
その意味深は返答に、ウェイブは結構前から見ていたなと、悟るのだった。
「それで?何をさせるつもりかな?」
おそらくはモンスターマスターがらみと推測しながらも問うウェイブだったが、返ってきた返答は意外にもシンプルな物だった。
「案内するから、街まで私を守ってくれない?」
この依頼には何かあると考えながらも、樹海の無意味な徘徊も得策でないと感じた一同は、思うところがありながらもその要望を承諾する。
こうしてサナを加えた一行は、先頭をタール後方右にウェイブ、左にカレンの三角陣形で並び、その中央にサナを置いて、彼女の示す道を進んでいた。
「このまま、真っ直ぐでいいんだな?」
振り返り下方に視線を向けて先頭のタールが問うと、サナは躊躇することなく頷いた。
「ええ、この獣道にそって進めばじきに見えてくるわ」
「獣道ねぇ・・・・」
カレンは、自分では見分けのつかない進行方向を見て怪訝そうに呟く。
「罠に誘っていると思う?その可能性を考えるのは当然だけど、それでよく素直についてくるわね」
カレンの呟きを耳にしたサナが、からかうような口調で語りかけた。
「そのパターンは経験済みなのよ」
それは罠であっても対応できるだろうという自信の表れでもある。
「それに、自分からそうした話を持ち出す以上、その手の罠じゃないみたいだけどね」
「どうして判る?」
ウェイブの断言に、前を見たままタールがその根拠を問いかけた。
「騙そうとしている奴は、信じてもらおうと思うあまり、そうした考えて欲しくない話題は極力避けようとするものだからね」
「それも考慮した罠って可能性もあるんじゃない?」
更に意地悪くサナがいうが、それは彼等を躊躇させる材料にはならなかった。
「そう考えて疑いだしたらきりがないだろ。目撃者としては連中の仲間でないって話は信じれるし、罠なら罠でそれを食い破るつもりでもあるし・・・」
「ふ~ん、得体の知れない私を信じるの?」
「だから一緒にいる・・・と、言いたいけど、見返りにの方に目が眩んでいるのが本音かな」
「正直ね」
「藁にもすがってるんだよ」
遭難者と大差ない現状と本音を、事も無げにいうウェイブに、サナは思わず笑った。
酔狂にも、ろくな情報も持たないまま樹海の外からここまで来た彼等の心情や目的は把握し切れていなかったが、こうした心の余裕とも思える様子が彼等にはまだあり、その雰囲気がサナを信用させるに至ったのである。
「・・・・貴方達の目的は知らないけど、この辺りをうろつく限りは巻き込まれる可能性も少なくないでしょうし、偶発的に連中と遭遇してやっぱり罠だったって思われるのも嫌だから、先に情報を教えてあげるわ」
「それはもちろん、モンスターマスターに関してだよな?」
待ってましたといわんばかりにタールが反応した。
「もちろん・・・タールさん・・・だったかしら?貴方は連中をどう見る?」
「そうだな・・・・見る限りは単に猛獣使いが毛色を変えただけだな。もっとも、扱う猛獣の強さが並じゃないけどな」
その答えに、表現に間違ってないとウェイブも思い、補足の様に話をつなげ始めた。
「見事な程の連携ができるって点も特徴だよな。俺が闘った奴は軍を率いていたし、その連携は尋常じゃなかった。素人考えでも、よほどの訓練をしないとできない芸当だと思うな」
「でもそれが、2~3ヶ月前はただの人間・・・街の一般住人と言えば、信じられる?」
「にわかには信じられない・・・けど、事実なんだな?」
意味深な言い回しと笑みで語るサナの目を見てウェイブは思いのままを口にすると、彼女は少し不満げな表情をして頷いた。
「まぁ、そうなんだけど、少しは驚いたリアクションが欲しかったわね」
「会話の流れからして、嘘の出るタイミングじゃないわよ。疑ってほしかったのなら、滝での世間話の時に言うべきだったわね」
少々つっけんどんな言い方ではあったが、嫌な棘はないと感じたサナは、肩をすくめて話を進めた。
「それで、他に何か気づかなかった?」
「他?」
「闘ってて、連中とペアのモンスターって、似ていると思わなかった?」
「そう言えば・・・少なからずは・・・な。特に気にしていなかったけど、あれに理由があるのか?」
少し前の過去の出来事を思い起こして、指摘に間違いがないと感じたタールが逆に問い返す。
「理由じゃなくて必然よ。いきなり本題になるけど、あのモンスターマスター達は呪術によって産み出された存在なのよ」
「呪術?人とモンスターの混血でも作ったのか?」
基本的に実直なタールは、モンスターマスターの存在は訓練の類で誕生していたと思っていたのだが、全く異なる分野として事実が明らかにされた。
「少し違うわね。私も専門家じゃないから理論的な説明できないけど、あのモンスターマスターは、対象となるモンスターと体質的に相性の良い人間を見つけて、ある種の呪術儀式を行うの。そしてそれに成功すると、そのモンスターの特性を得た上に主従関係のような立場まで形成されるのよ」
「悪魔契約と似てるわね」
「モンスターが飼い主に似たんじゃなくて、飼い主がモンスターに似るのか・・・・」
今ひとつ漠然としたイメージであったが、この話で抱いた感想をカレンとウェイブは簡潔に口にしてもらした。
「そうなるわね。ただ、その儀式の成功率は低いみたいで、仮に成功しても人以上の身体能力を得るせいか、ほとんどの人が傲慢で好戦的になってしまうわ」
「見れば分かるよ」
「よくあるパターンだな」
タールとウェイブが目撃者として即同意したが、カレンは話の中に潜んでいた別の存在に気づいた。
「でも待って、ほとんどの人が・・・って事は、性格の変わらなかった良識人もいるのね?」
「ご明察。貴方達の闘った連中とは違う存在も、いるにはいるけどね」
よくぞ気づいたといった表情で応じたサナであったが、その口調は明らかに歯切れが悪かった。
「まだ何か裏がありそうだな?」
「ええ。でも、上手く説明するには、街に着いて直接見てもらった方が早いのよ」
「その街ってのはあれか?」
会話に割り込んだタールの発言に一同が反応した。
彼等の進行方向先の丘の頂に、人工の壁らしきものが、かすかに木々の間から確認できたのである。
「ええ、あれよ・・・獣魔の集いし街へようこそ・・・」
サナは少し皮肉っぽく笑って、街へ向けて歩を進めた。
安息は期待できそうにない・・・・
その笑みを見たウェイブ達一同は、言葉も視線も交わすこと無くそうした共通認識を抱くのであった。
壁はその距離を狭めるにつれ、大きな物である事が実感できた。この樹海に在る以上、モンスター襲来の危機は避けられるものではなく、そうした防衛目的のためには壁は当然の処置であり、決して不自然なものではい。
そして更に当然の事ながら、出入り口となる門の前には、屈強そうな門番が、不意の訪問者であるウェイブ達を早々に肉眼で捉え、睨みつけていた。
「おう、ご苦労さん。こんな所だと見張り役も大変だろ?」
「ども、初めまして・・・」
「怪しい者じゃないですよ~」
一行はそれぞれ思い思いの軽い挨拶をしたが、初めて会う者にとって、熊にもひけを取らない体格の男と、不気味な宗教の崇拝者を思わせる鎧に身を包む少女と、それと行動を共にしている男が普通の集団に見えるはずもなく、その上、モンスター以外の訪問者など考えられない環境にある以上、その存在を疑われて当然であった。
「・・・・・・」
門番は無言のまま、右手に所持していたハンドアックス(手斧)を構えた。
「!」
その敵対的行動に、素早く一行も反応して身構えると、その気迫を敏感に察知した門番は左腕を構え意識を集中する。
「!?」
三人は例外なく眼を見開いて驚いた。門番の左腕が瞬く間に変質し、肘から先がカニのハサミを思わせる形状へと変化したのである。
「こいつ、レア種のライカンスロープか?」
ライカンスロープは『獣人』と称されている点からしても、基本的には獣系の姿へと変貌するモンスターを示している。だが中には、昆虫や甲殻類の特性を持つ特別種も存在する事が知られている。そうした種類や、ワーウルフなどで有名な「満月の光を浴びる」といった特定条件でなくとも自力で変身できるタイプを、世間ではレア種と呼んでいる。
「いや違う・・・更に変わり種だ・・・」
全身に至るかと思っていた変貌が左腕だけに止まっているのを見て、ウェイブが言った。レア種あるいは古種と呼ばれる古代文明期に創造されたライカンスロープを含めたあらゆる獣人伝承・伝説・口伝・実話で、身体の一部だけを変身させる事ができるとされた存在など聞いたことがなく、眼にしている現象が、極めて特異な事である事を彼は悟った。
「あちら、やる気満々ね・・・」
明らかに街の人間と思われる存在と、さすがにいざこざを起こしたくないと考えるカレンは、慎重に相手の出方を窺い、それに即応し、かつ命に支障の生じない魔法を繰り出せるよう身構えた。
こうした不本意な一触即発な緊張感は、場違いな一声によって霧散する。
「ラーディごめん、私の悪ふざけよ」
不意に放たれたその声に、門番がピクリと身を震わせた。
「ラーディ?」
「この人の名前みたいね」
タールとカレンが見合って納得し、消えた緊張に応じて構えを解いた。
「ええ、実態を見てもらった方が早いって言ったでしょ・・・」
そういってサナは身を隠していたタールの背後から姿を現し、門番に向かって気さくに手を振った。
「サナ・・・・ボヴァ達に狙われて街から飛び出したと聞いていたぞ」
ラーディと呼ばれた門番は、驚きの表情でサナを見つめ、その無事な姿を確認すると、安堵の表情となった。
「街にいたら間違いなく見つかっちゃうから、一か八か外へ逃げたのよ」
「それは聞いていた。だが無茶だったな・・・仮に連中から逃げられてもモンスターという新たな危険がある」
「ええ、だからこの親切な人達に送ってもらったの・・・・」
背後の三人を示してサナは笑った。
「彼等は?」
奇妙な一行を改めて眺め、彼は問うた。
「樹海の外からここまで来た、通りすがりの怪しい冒険者御一行よ。成り行きだったけど、彼等のおかげで私の安全が確保されたから、招待がてらに戻ってきたのよ」
「安全が確保された?」
「倒したのよ、彼等を」
「倒した?連中を!?」
相手と自分の実力を知り、目の前の三人の実力を知らないが故に、その驚きは当然であった。
「ええ、だから通してくれるでしょ」
「ああ、もちろんだ」
サナが嘘を言っているとも脅されているいるとも思えなかったラーディは、腕の状態を元の人間のそれに戻すと、門を開いて中へと促した。
「さ、どうぞ」
サナが自宅に招き入れるかのようにして、先に進むと、一行も後に続いた。
「怪しい冒険者一行ですって・・・」
「ま、タールとカレンの外見で判断すればそう思われるよな」
ゲシッ!
カレンの不満げな呟きについ同意してしまったウェイブは、背後から二人の蹴りと拳の一撃を受けて、前のめりに倒れながら街へと入って行った。
中は何の変哲もない、人間の居住空間であり、街と称するにはやや活気に乏しく、村と称するには大きすぎる様相の空間となっていた。
産業や出店の少ない街・・・と表現するのが最も適切と思え、これは環境的要因が大きいと、すぐに理解できた。
状況的に近隣諸国の国交が不可能である以上、何らかの地元産業があったとしても、それが収益にはならず、大きな発展が出来ないのが事実であり、その日その日を協力して生きていく場所でしかなかったのである。
「宿屋・・・・なんて、存在しないよね?」
本来は早々に気づいておくべきであったが、街と聞いて期待していた設備がないだろう事に、ようやく気づいたウェイブが案内人に問いかけた。
「もちろんよ。宿どころか、『屋』なんて概念すらとうの昔になくなっているわ。ここでは共同生活が基本よ」
「それじゃ、私達みたいな来訪者はどうなるの?」
一番上等なベットで優雅な睡眠を密かに望んでいたカレンが不満をもらす。
「そうね、そんな存在も想定外だったから何とも言えないんだけど、ここの住人である私を助けてくれた実績があるから、客人として迎え入れてはもらえると思うけど、長期滞在だと村の生活に協力してもらうことになるわ」
「生活に協力?」
「例えば?」
「そうね、色々あるわよ。食料調達に街の開拓、ラーディみたいに門番したり・・・」
話題に彼の話が出たことで、街の事で忘れかけていた疑問が思い起こされ、ウェイブがサナに詰め寄った。
「そうそう彼の事だ。彼は何だ?アレが言ってた良識派のモンスターマスターか?」
「彼は違うわ」
首を横に振って否定するサナ。
「違う?」
「そう、違うの。事実をいうと『良識派のモンスターマスター』はいないわ。連中の言葉を借りていうと、彼は失敗作なのよ」
「失敗作?」
「モンスターマスターのかい?」
「そうよ・・・とにかく、立ち話も何だから、とりあえず私の家に行きましょう」
サナはウェイブとの問答を強引に区切り、返事を待つことなく一行を促して歩き始めた。
やはりこの街においてよそ者であるウェイブ達・・と、言うよりカレンとタールはかなり目立つ存在で、行き交う全ての住人の注目をあびていた。そうした好奇の視線は慣れていたが、さすがに今回は事情が異なり、彼等の素性を勘ぐる意志があからさまに感じ取れる視線ばかりが集中したが、ともあれ、サナの所有する小屋に辿り着いた一同は、促されるまま中に入り、やっと一息つける空間を手に入れた。
「ここじゃ、よそ者は目立ちすぎるからね、視線に疲れたでしょ?」
気を使い、カーテンを閉めながらサナが苦笑する。
「いやいや、二人とつきあってると、行く先々でこんな目に遭うよ」
ゲシッ!
再びカレンとタールの蹴りが横合いから繰り出され、椅子に腰掛けようとしていたウェイブを横倒しにする。
「俺達より、ここの話題にもどそうぜ、さっきの門番、失敗作って所からだ・・・」
さすがに彼女の家の椅子は、自分の体型に合わせた物ではなかった為、無造作に床に座り込んでタールは問うた。
「そうね・・・・色々と事情説明もいるけど、彼、ラーディは失敗作と言ったけど、貴方達の闘ったモンスターマスターも、それじゃないの」
「ん?どういう事だ?」
「本当のところ・・・・つまり『創造者』にしてみれば、ザイア達みたいなモンスターマスターも成功体とは言わないのよ」
「それって、あの三人も実は失敗作で、真のモンスターマスターみたいなのがいる・・・・と言うか研究されているって事?」
話の流れからして自然にわき上がる疑問を口にしたカレンを見て、サナは静かに頷いた。
「そうよ。呪術で・・・・って、ことは説明したでしょ。ザイア達は対象のモンスターの影響を受けた身体能力と、主従関係を構成したけど、その呪術が本当に成功したら、モンスターと人間は同化して、その特性を最大限発揮する一個体になるのよ」
「それって、いわゆるライカンスロープの一種みたいなものかい?」
ラーディの一件もあり、抱いていたイメージで問いかけるウェイブ。
「見た目はそう見えるかも知れないけど、モンスターマスターは柔軟性があるの。上手く説明出来ないけど・・・・人が獣化するんじゃなくて、獣が人の長所を取り入れたと言うか・・・」
「結局のところ、俺達の闘った相手は半端な成功者だったと言う事だな」
難しい話は無視し、行き着く結果をタールが確認すると、サナは遠慮なく首を縦に振ってそれを肯定した。
「話の流れで気になったんだけどね、ひょっとして結構多くの実験が行われてかなりのモンスターマスターが存在してないか?」
思い至った嫌な可能性を確かめるべく、ウェイブがサナに問いかけると、またも彼女は首を縦に振った。
「ええ、対象のモンスターとの相性さえ合えば、成功しやすいと言う事で、この町の大勢が実験台にされたわ」
「・・・・それで?」
「半分位は呪術に耐えられなくて死に至り、生きている人の大半はラーディみたいに身体の一部だけが変貌する失敗作に・・・・ラーディの左腕はあれでもまだましな方・・・中には目だけ、身体半分、片足だけと言った役に立たない人や、戻れない人もいるわ。そして、ザイアみたいな成功よりの者は、それで人を超越したと誤解して、力を与えた創造主の側についたの・・・・」
「それじゃ、良識派って言ってたのは全員・・・・」
微かながら協力者の存在を期待していたウェイブは、その希望の光が消えたのを感じた。
「ええ、失敗作に類する人達ばかり・・・・失敗したが故に、人のままでいられたって言う人もいたけどね」
「人を超越ねぇ・・・・人の限界がどの辺りにあるのかもはっきりしないのに、超越したって発想もいただけないな・・・・」
他から見れば、体格的には十分超越しているタールすらそう思っていたのは意外であったが、この場にその意見の異論者は存在しなかった。
「まったくだ。超越したって意気込んで、人間に負けてるんだから思想そのものが間違ってる」
「言っとくど、貴方達が特別なのよ。普通の人間では一対一で連中に太刀打ちするなんて、想定外なんだからね」
人に関する認識の意見そのものに文句はなかったが、聞いていると常識が変わってしまう気がしたサナは、一部の点において訂正を求めた。
「「「鍛えてますから・・・」」」
三人は揃って同じ台詞を口にして、サナを呆れさせた。
「その一言で全て済ませないでね。それでいいなら、人の道を踏み外すなんて発想はいらないんだから」
「人の考えはそれぞれだから置いておくとして、そう思い込んでいる連中を倒したんだからには、私達の事が知れたら、仲間達が誇りにかけて倒しに来るわね。きっと・・・」
その可能性は一同が感じていたものだった。
「プライドが高いが故にな・・・・」
「タールさんの言うとおりね。只の・・・とは言わないけど、人間に負けたとあっては、自分達の存在に疑問が生じる訳だから、連中は貴方達を倒す事を優先するはずよ」
「俺達の事がばれればね・・・・まだ事態が公になるにはもう少し時間がかかるだろ」
確証はない。だが、ウェイブはそう思っていた。
「それはそうだろうけど、あと一日か二日、あの三人が戻らないと判れば、捜索されるだろうし、死体も隠してないから、すぐに事態は発覚するわよ」
サナの指摘は可能性ではなく、確実に訪れる事実であった。
「そして、よそ者がマークされるって訳かい?」
視覚的にも際だち、隠しようもないタールが自覚したて言った。
「そうなるわね。実際、村の人員では勝ち目ないのは既に判ってる事だから、自然とそう言う結論に至るわ」
「ま、それはその時として、もう一つ疑問が・・・・」
「何?」
まだ多くの疑問が生じるだろうと思いつつも、ウェイブが人差し指を掲げて語り、サナの注意を引いた。
「その、モンスターマスターの製造というか、技術だけど、聞いた感じでは、ここ最近に確立されたみたいに聞こえるけど、何かきっかけでも?」
「それを説明するとなると、結構長くなるわよ?」
「結構、情報をくれるって話だっただろ。連中の諸事情が判るなら、徹夜になっても構わないさ」
「そんなに長いなら、俺は眠るぞ!」
「私も。ウェイブが聞いて、後日かいつまんで説明してよ」
「おい・・・・」
同僚の態度に 非難の目を向けるウェイブであったが、さすがにそこまで長くなるはずもなく、彼等は最後まで一緒にモンスターマスター事件の経緯を聞き知る事となる。
-そもそもの発端は、ここの立地条件であった-
樹海の、というより、モンスターの領域の真っ直中に存在するこの街は、日々外敵の襲撃の危機に直面していた。
遙かな昔、彼等の世界が結界で隔離されて間もない頃、閉じこめられた形となった世界では、局地的な暴動が散発的に生じていた。
そうした混乱の中で合流しだした人々が、それぞれの地域で独自の街や村を構築して、いつか結界が消える日を夢見て過ごすことを決心した。
サナの村は当時から周囲を森に覆われていたが、魔王の居城が比較的近くにあった事から、知能の低いモンスターの類はほとんど駆逐されており、意外にも平穏な地域であったのだ。そうした地理的情報を持っていた、魔王軍側の人員や戦傷者が集って出来たのがこの街というわけである。
だが、長い年月の経過に伴い、森は樹海へと変貌し、モンスターはその数を増やして活動範囲を広めていった。
その時点で逃げられる者は既に逃げだしていたが、体力的に新天地への旅が不可能な者も存在し、それを見捨てて行けなかった者達が残り、やがては脱出も困難な樹海に取り残された街となって、モンスターの攻防戦も日常茶飯事となりだしていた。
幾年と続く、モンスターとの生存競争は、人間達には不利な状況であった。
そんな中、一人の青年学者とその友人が、村に残されていた幾つもの書物の中に、魔王キーンに対抗する手段と銘打たれた技術の資料を発見する。
断片的だったそれをかき集めて独自に解析し始めた彼等は、その技術を用いて、モンスターマスターの技術を確立したのである。
当初は村を守るための純粋な思いであった。この技術を用いて村民の戦闘力の底上げを目指していただけであったが、研究が進むにつれ、強さを増す人間の変化に魅了され、より強い存在を造ろうという欲求に支配され、次々と人体実験を行いだしたという。
サナも、ある系統のモンスターとの相性が良いのが確認され、新たなモンスターマスターになるために試練(呪術処置)を受けるよう、指示されたのだが、それを拒否。
実力行使に来られる前に村を逃げ出したという訳である。
「・・・・・なるほど、その追っ手が連中だったって事か」
「そ、案の定捕まったけど、通りがかった不審者に助けられたってわけ」
「ふ、不審者って・・・・」
あまりの言い方にウェイブが絶句した。
「タイミング良すぎたもの・・・見計らってたでしょ?」
全てを見透かしたかのようなサナの視線を前に、やましい心のあったウェイブは思わず視線を背ける。
「・・・場を盛り上げたかったんだよ」
「被害者にはいい迷惑だったわ。好感度を上げるには即刻助けに入るべきだったわよ」
「盛り上げね・・・演出して何を得ようと思ってたの?」
話を聞き、だいたい状況が推測できたカレンが意地悪く詰め寄り、ウェイブの頬を指先でつついてからかう。
「もちろん・・・・・情報だ」
もはや信じてもらえないと知りつつ答えるウェイブ。
「今、少~し、言葉を選んだわね?」
「まぁいいわ。結果オーライ。最終的に私は連中にも捕まらずに戻って来れたのだからよしとしましょう」
「それにしてもな・・・・」
モンスターマスターの経緯を聞き、一人考え込んでいたタールは呟いた。
「その、モンスターマスターを造ってる奴は、何を考えてるんだ?」
「その点は想像がつくよ」
断言したウェイブに、一同の視線が集中した。
「モンスターマスターであろうと、キメラであろうと、その手の物を造る奴が抱く欲望は、大体共通しているもんだ」
「それは?」
「もちろん、最強の個体を造る・・・・だ。数多くの実験はそのための試行錯誤で、最終的には自分がそうなるつもりかもしれないけどね」
「そんなことに一体、何の意味がある?」
「発端は、対魔王の為の技術・・・・なんだろ?だったら、その技術の行き着くところは、魔王キーンを凌駕する存在なはずだ。世界が総出で隔離するしかなかった魔王より強くなるかも知れない可能性・・・・・少し血の気の多い奴なら、少しは惹かれると思わないか?」
椅子にもたれかかって何気なしに語られた発言であったが、微妙な重みを含んでいた。
「貴方達もそう?」
サナは思わず一同に問うた。
「私は違うわね・・・・」
真っ先に答えたのはカレンであった。
「既にこの世にいない人には永遠に勝てないものよ。現世に蘇ってくるならともかく、存在しない人物を越えようなんて目標は馬鹿げてるわ」
確固たる意志を持っていったカレンに、タールもうんうんと頷く。
「俺もだ。強くはなりたいが、人間捨ててまでなりたいとは思わない」
「タールは既に人間の範疇越えてるよ」
ゲシッ!
本日三度目の蹴りがウェイブを襲った。
「そう言う貴方は?」
床に突っ伏していたウェイブに視線を向けてサナは問いかける。
「究極の選択を強いられたら考えるかも知れないね」
「究極の選択?」
「とんでもない敵と闘って、このままでは死んでしまう。けど、その力を得られれば勝って生き残れる・・・・なんていう、命とかを天秤にした選択だよ」
おどけて見せたウェイブであったが、一同は内心なるほどと思った。確かにそうした状況であれば、そうした事に手を差し伸べる可能性はあると思ったのである。
「どういう経緯にしたって、自らその力を求めた者は、得た力を試したくなるもんだから、サナがいなくても通りがかりの俺達は襲われていた可能性はあるな」
「あんなのがまだいるなんて、考えるだけで疲れるわ」
「な~に言ってる。道中でも言ったが、毛色の違うモンスターと思えばいいだけじゃないか。モンスターマスターだろうが何だろうが、結局は生物だ。生物である以上、殺せるのが道理だろ」
タールにしては的を得ていた発言ではあった。
「そりゃ、自然の摂理だけど、俺達にできる事とは限らないよ」
「できるように、なればいいさ。そんなわけで、軽くつきあえ」
タールは今まで外していた現在の主武器である手袋を装着すると、ウェイブを外へと促した。
「こんなところでか?また注目されるぞ」
その意図を理解した彼は、乗り気のない態度をして見せた。
「いいじゃない、村の人達へのパフォーマンスよ」
「カレンもやるのか?」
「まさか、ここで私が加わったら、村に迷惑じゃない」
「そりゃそうだ・・・・」
言って頭を掻くと、ウェイブも立ち上がってタールと共に外へと向かう。
「ちょっ・・・どことへ?」
いきなり出かけようとする二人を追おうとするサナを、カレンが止めた。
「気にしないで、すぐ外で軽く模擬戦するだけだから」
「模擬戦?」
「暇なときにする特訓の一環よ。常に闘いの勘を忘れないようにって・・・」
「?」
タールとウェイブは外に出た途端、予想通り多くの視線に晒された。
余所者が来ているという話が伝わったためか、既にサナの家を取り囲むように何人かの人が集まっており、二人に好奇の目を向けていたのである。
「そんなに珍しいかな?」
「この村の人達にしてみれば、来訪者なんて生涯に一度もないだろうからな」
「それ以前に、タールが疑われているんじゃないか?モンスターかもって・・・」
「っ!」
無言のままタールが蹴りを繰り出したが、さすがに来ると判っていたウェイブは身を屈めてそれをかわし、本日四度目になる転倒を避け、身体を戻す勢いでジャンプして、間合いを広げた。
「ま、見せ物をやっていると思えばいいか」
腰から二本の剣を引き抜いて構えるウェイブ。
「んじゃ、始めようか」
拳を握りしめるタール。
そうして臨戦状態になったとき、その高まった二人の感覚が、周囲の人垣の中から違和感があるのを感じとった。
「「?」」
二人は同時に構えを解いて野次馬に視線を巡らせて、互いを見やる。
「タール?」
「ああ、なんて言うか・・・敵意みたいなのが混じってるな」
周囲に陣取る人々のどこかから殺気が生じているのを感じた二人は、その位置が特定できないかと再び視線を人垣の方へと向けた。
全員が同じ意志であればそれは容易く判ったであろう。だが、相手はごく一部あるいは少数であったらしく、紛れ込んでいる目標を特定できなかった。
「・・・・・・ウェイブ、分かるか?」
「よく分からないな。余所者に対する不信感なのか、あの連中なのか・・・」
「なら、誘ってみるか?」
「誘う?」
訳が判らないというウェイブをよそに、タールは一歩前に踏み出し、野次馬を見渡すと挑発的笑みを浮かべた。
「そこで隠れている奴!偵察か何か知らないが、いちいち調べなくても三人のモンスターマスターを殺ったのは俺達だってことを認めてやるよ。コソコソされたら鬱陶しいから消えろ」
途端に場がざわめいた。この村の住人であればモンスターマスターの存在を知らないはずがない。無論、その強さもである。それを三人も倒したという公言は現実的にいって信じがたい事であった。
「くっくっくっく・・・・」
そうした動揺の声の中で場違いな含み笑いがもれ、タール達と野次馬の視線がそこへ一斉に集中した。
「モンスターマスターを倒した・・・・冗談だろ」
笑っていたのは青年であった。先程の発言を誇張と受け取ったらしく、頭から信じず嘲る笑いを見せていた。
「冗談に聞こえるかい?」
ウェイブが注意深く青年を観察するが、表面上に何ら異常もなく、武装もしていないのは服装の様子からして間違いはなく、周囲の村人も必要以上に警戒していない事から、この村の住人である事は間違いなかった。
「ああ」
青年は当たり前だと言わんばかりに頷いた。
「やっぱり判るか。冗談だ」
「だろう。言うならもっと現実味の・・・・」
「殺したんだ」
青年の納得を遮り、覆すようにタールが言うと、彼は表情を強ばらせてタール達に視線を向けると、また不敵な笑みを浮かべた。
「倒したんじゃなくて殺した・・・・か?やっぱ、冗談だな・・・・・」
「何故そう言いきれる?」
「何故かって?モンスターマスターをやれるわけないじゃないか」
「いいや、できたんだよ」
「できないね!」
「現実に俺達は倒している。そしてサナを救ってここに来た。それが証拠だろ」
「証拠?あんな物が証拠になるか、そもそもあの連中は、本当のモンスターマスターじゃねぇよ!」
(当たりだ!)
タールとの会話を聞いて、確信を得たウェイブが剣を青年に向けて構えた。
「タールこいつだ!」
「ああ、そうみたいだな」
タールも拳を握りしめて相手を睨み付ける。
「ちょ、何やってるのよ!」
これまで家屋内で見ていたサナであったが、二人の矛先が村人に向いたのを見て、慌てて飛び出して来た。
「サナ、来るな。こいつは連中の側の人間だ」
「嘘・・・ピートが?」
その言葉の意味するところを知るサナは絶句した。
この村は大きくもなく、立地条件の性質上、共同生活が必須であるため面識のない者は存在しない。
ウェイブが敵と断言した青年ピートも、当然ながら知らない存在ではなく、歳が近いこともありある程度の交友もある人物であった。何より、村の中に敵がいないと思っていた現状が早々に崩れ去り、彼女は動揺した。
「悪いけど本当だよ。最初は緊張したけど、なってみるとすばらしいよ。この能力は」
悦に浸るように言って、青年は両手を軽く左右に広げると、瞬く間に身体が変化し、その光景に周囲の人垣が一気に崩れパニックを生じさせる。
何匹もの巨大ムカデが手足の先から頭を含む全身へと巻きつき、そこから更に同化したかの様に見える身体へと変貌し、シルエットだけは人間であったものの、もはや人と呼ぶにはあまりにもかけ離れた存在となった。
もちろん、ウェイブ達の過去の闘いにおいて一度も見たことのないその姿・光景は、異質以外の何者でもなかった。
「どうだい?適性生物との同化・融合能力・・・すばらしいだろ」
「第一印象的には異様だな」
左右対称にもなっていない姿に、タールは本気でそう思った。
「そんな姿になっても素晴らしいと思える感性に感服するな」
「得ないと分からない物もあるんだよ」
「ま、人それぞれだからね。満足しているのは分かったからお引き取り願おうか?ご近所も怯えているようだしね」
見た目も異質な上に能力も不明。更には人間の知識と理性も維持されたままのモンスターなど、可能な限り相手にしたくないと思ったウェイブは、相手の理性面に平和的判断を求めたが、やはりそれは無駄な行為であった。
「そうはいかないな。真のモンスターマスターとしては、モンスターマスターを倒した事があると誤った思いこみをしている者の認識を改めてもらわないと気が済まないんだよ!」
既に変化して、『口』もなくなっているものの、確かにそう言い放ってピートは駆けだした。
目標は体格差の大きいタール。彼に力の差を見せつける事で自分も満足感を得たいという意思が垣間見えた。
既に闘う気でいたタールは、そうした急襲に動揺はせず、むしろ望むところと言わんばかりに構えて、間合いを見計らって右拳を繰り出す。
ピートはひらりとタールの死角となる左側へ避けると、常人サイズで見れば十分にがら空きとなった彼の右脇腹に肘打ちを仕掛ける。
「!」
タールは咄嗟に身を傾けて鎧の装甲で受けたが、想像以上の衝撃が生じて思わずバランスを崩した。
そこへ追い打ちをかけようとするピートであったが、自分の背後にウェイブが回り込もうとしているの察知し、振り返りつつ、迫る剣筋を見極め二人から距離をとった。
「逃がすかっ!」
仕切直しとばかりにタールがピートを追い、ウェイブが一呼吸遅れて続き、タールの攻撃に応じた隙を狙おうと再び回り込みを開始する。
ピートは正面からバカ正直に迫る拳による攻撃を右に左にと器用にかわし、その巨体故に生じる隙を狙って幾つもの打撃を繰り出していたが、彼もモンスターマスターを名乗る者の攻撃力をその身で知っていたため、得意の気孔による肉体の防御力アップを用いてその攻撃に応じていた。
「こ、こいつ・・」
二人とはいえ、たかが人間が相手という事で余裕の闘いだろうと楽観視していたのは認めながらも、自分としては手を抜いていないはずの攻撃が有効打に至っていない事に、ピートは戸惑いを感じ始めていた。力試しとして村の外で何度かモンスターを相手し、タール以上の体格の相手を素手で仕留めた事のある彼にしてみれば、この状況はにわかには信じられなくて当然と言えた。
こうした互角に近い状況は、ピートのモンスターマスターとしてのプライドを傷つけ、その焦りから、只のデカブツと思っているタールを倒そうとむきになる程、周囲に対する注意が疎かになり、ウェイブの攻撃を受ける羽目となる。
何度か、その攻撃をかわしていたピートであったが、遂にウェイブの剣が彼の背を捉え、生まれ変わって初めてのダメージを受け、その痛みに思わず片膝をついた。
「きさっ・・・まら・・」
「真のモンスターマスター様でも、当たれば何とかなりそうだな」
自分の一撃がダメージに至った事を確認してウェイブは安堵する。
「だから言ってるだろ。毛色の違うモンスターと思えばいいだけだってな!!」
身を屈めていたピートに、タールの拳が掬い上げるように繰り出されて彼を捉えた。
「くっはっ!」
鈍器で殴られたような衝撃を受け、彼の身体は宙に浮き、後方の地面へと叩きつけられる。
(やっぱ、連携すれば手に負えない相手でもないか・・・・・)
単独では苦戦したモンスターマスターを相手に優位に事を運んでいる現状を見て、ウェイブはそう思いつつも、『真』のと銘打った相手に、まだ明かしていない何かしらが存在する危惧も抱いていた。
「人間風情が調子にのってると!」
ピートが唸って立ち上がり、左肩に右手を回して、何かを手に掴み、それを強引に引っ張った。
「うぉっ!?」
その光景にタールが思わず唸った。
彼は、腕に同化していた『ムカデ』の一匹を強引に引き剥がしたのである。そして剥がされたムカデは瞬時に細く・長く変化して、一振りの棘付鞭へと変化した。
「くらえっ!」
ピートが怒りに任せて鞭を振るうと、鞭は更にリーチを伸ばしてタールを直撃した。
「はおおっ!?」
鞭の棘が鎧を削り、生身の部分を抉り、彼に鋭い痛みを与えた。
「そらっそらっ!そぉっら!」
素早く手首を捻って断続的攻撃を繰り出すと、拳が武器のタールは、たちまち間合いの違いによって防戦一方となり、ウェイブもその間断無い動きに斬りかかるタイミングを掴めないでいた。
「ほら、どうした?少し本気になればもう相手にならないか?」
何度も鞭を振るってピートがせせら笑う。
それに反論の余地がないタールとウェイブだった。実際、鞭の動きは素早く、見切るのが困難な上に棘には少なからず毒があるのか、掠めて傷ついた部分が妙に熱っぽくなるのを感じており、このまま長期戦になれば不利になるのは目に見えていた。
「楽勝で終われるほど甘くは無かったな」
「何を今更っ!」
落胆したウェイブの声を耳にしたタールが怒鳴るが、その時既にウェイブは次の行動に入っていた。
「タール、川を見つけた時の闘いの再現をするぞ。隙を見て・・・・やれ!」
ウェイブが間合いを詰めて剣による攻撃を仕掛けようと動きを見せたその時、ピートが素早く反応して鞭を繰り出した。
僅かな動きで軌道を変化させる鞭は、ウェイブの顔面目指して飛来する。
「!」
たまらずウェイブは横合いに転がり、そうして相手の動きを制した事でピートは満足気になった。
だが、ウェイブはそこから素早く立ち上がって駆けだし、彼を驚かせたが、その方向は敵であるピートではなく、タールの方へと向かっていた。
「何を考えている」
その動きに不信を感じてピートが鞭を繰り出す。
「頼むぞタール」
相手の方には答えず、タールに一声かけてウェイブは彼の背に身を隠した。
「損な役回りだ!」
言いながらもタールが腕を横に突きだし、ウェイブを狙って迫っていた鞭と接触させた。
「っ!」
鞭の棘が彼の腕を傷つけたが、彼は構わず腕を振り回して、鞭が引き戻されるより早く腕に絡めて、相手の武器の動きを制した。
「いいぞ、行け!」
彼は棘が食い込むのを無視して鞭を掴むと、背後のウェイブに向かって叫んだ。
「おうっ!」
それを合図にウェイブが跳躍し、タールの肩を踏み台にしてピート向けて飛んだ。小さな弧を描く彼の身体は的確に目標に到達するコースを辿っていた。
「うくっ!?」
鞭を封じられて躊躇したピートは反応が遅れ、もはや回避は不可能であった。たまらず腕を掲げて身を庇った所に、ウェイブの二刀が振り下ろされた。
ピキィン!
「!?」
ウェイブに限らずピートにすら意外な異音が響き、幾つかの小さな鉄片が地面に散った。彼の剣の切っ先が砕け散ったのでる。
「何!?くはっ!!」
砕けた剣先を信じられないといった様相で見つめるウェイブの腹に、ピートの無造作な蹴りが加えられ、彼を突き飛ばす。
「ふ、ふは、ふははははははは!どうやら俺の表皮は想像以上に強化されている様だな。小細工も効を成さず、もうこれまでだな」
この現象にはピート自身も驚いており、彼は剣を受けてもほとんど傷のなかった腕をまじまじと見て、満足げに笑った。
「だったら、相棒の攻撃にも耐えてみせな」
よろよろと立ち上がったウェイブが、痛む腹を押さえて唸る。
「ふん、あんな体力馬鹿の一撃は耐えるなんて非効率な事をしなくても、十分に避けきれるさ」
ウェイブの背後で今だ鞭を掴んだままのタールを見据えてピートは言った。確かに彼の一撃は驚異ではあるが、この間合いであれば近づかれる前に十分迎撃も可能であり、あの拳の間合いに入る愚行も犯さない自信があった。
「なら、避けてみなよ」
「?」
この時ピートは、ウェイブの挑発的発言に何かがあるのを感じ取った。その破壊力からして、相棒とは、あの大男だと考えていたのだが、それを否定した一撃が横合いから彼を襲った。
「ぐぁああああ!!」
先程のウェイブの剣よりも遙かに速い速度で飛来した一本の光の矢が、ピートの脇腹に命中し、勢いよく彼を弾き飛ばした。
「「ナイス!カレン!」」
横合いの攻撃の主に対してタールとウェイブが親指を突きつけた。先程の短い指示も、タールに対してではなく、サナの家の陰にいたカレンに対しての物だったのだ。
「きさっ、貴様らぁ!」
「怒鳴っている暇があったら、逃げるか避けるか反撃するかしなさい」
カレンは冷たく言い放ち、魔法による炎を吹き上げている右の掌を相手に突きつけたかと思うと、間髪入れず追い打ちの火球を放つ。
放たれた炎の玉は、三つに分裂して矢のような棒状に変形してピートに襲いかかり、よろめく彼の右肩・左腹部・右腰に突き刺さった。
「あぁぁぁっっっ!」
身体を貫かれる痛みと傷口が焼かれる痛みが同時に襲いかかり、ピートはのたうちま回った。
「タール、任せるよ」
「喜んで!」
ガシンと拳同志をぶつけてタールが笑むと、目標に向かって歩き出す。
「くそぉぉっ!なめやがって!この俺の恐ろしさをっ」
「見せつけたかったのなら、はなっから全力で闘うべきだったな」
「!」
痛みに怒りに我を忘れたピートのすぐ間近でタールの声が返ってくると、彼は思わず身を強ばらせた。
「うらぁっ!!!!」
状況的に不可避であった。
渾身の力が込められたタールの右拳は、ピートの胸板に的確にヒットした。
素人目にも会心の一撃とわかる拳はピートの胸板に容赦なくめり込み、幾つかの骨を粉砕した。
「うぁぁぁっっ!馬鹿な!バカなぁ~~~!!」
致命打を受けたピートに異変が生じた。拳が叩きつけられた胸部と、炎の矢を受けた傷口が急速に炭化したように変質し、徐々に崩れだしたのである。
「俺はまだ闘う!闘えるっ!!くぁぁぁっっ!」
当人の意志とは無関係に、崩壊しだした身体は止まる事はなく、やがて彼は全身が炭化して、だだの灰の山へと変わり果てた。
「・・・・・?」
少なくともこの現象は物理攻撃のタールによる所業ではない。もう一つの心当たりに視線を向けるタールであったが、その心当たりであるカレンも首を振って、自分の魔法による効果ではない事を主張した。
「どうなってる?」
「さあ・・・・埋葬の手間は省けるけどね」
タールのもとに歩み寄り、灰の山の一部を軽く踏んで、ウェイブも当惑する。
「それが、成功したモンスターマスターの反動だよ」
「「?」」
事情を知ったような発言に思わず二人がその方向に振りむき、直後、大きな黒い影が襲いかかった。
それは大きな暴れ牛が、二人の間を強引に通過したような衝撃であった。不意を突かれた二人は派手に突き飛ばされて地面を転がった。
「新手!?」
その急な出来事に、すかさずカレンが飛び出し突如現れた、下半身が四足歩行生物になっている相手に対して魔法攻撃の準備に入った。
「ほぅ、もう一人は女か・・・・・」
起きあがる二人と呪文攻撃のタイミングを見計らっているカレンを見やって『彼』は言った。類似モンスターで説明するならば、『ケンタウロス』なる人馬モンスターが存在するが、それはシルエットだけに限り、下半身のサイズは像ほどもあり、上半身もサイズは人間と変わりなかったが、顔は鼻のない像の様であり、身体には不規則にサボテンのような棘が生え、腕部は肩から手の甲に至る外側に、剣先のような突起が並んでいた。
生物としても上下半身のバランスが悪い異形な存在を目の前にして、三人は揃ってそれがモンスターマスターの一員であろう事を悟った。
「やっぱ、お前達だろ?使いっ走りの三人を倒したのは?」
疑似エレファントタイプとも言うべき、モンスターマスターが確信めいて問いかける。
「いや、人違いだろ?」
他人・・・人間と類するには抵抗はあるが、人の言葉を扱う存在を見上げるという斬新な行為を体験しつつ、タールが応じた。
「とぼけるなよ。ピートの奴まで倒してシラを切る気か?そもそも村の連中では俺達の相手は役不足な上に、あんな場所まで意味なく行くはずもない。余所者の仕業というのは前提なんだよ」
「やっぱり埋めとくべきだったな・・・・思った以上にバレるのが早かった・・・・それで、第2ラウンドかい?」
面倒くささに死体を放置していた自分達の行為の迂闊さに後悔すると、気を取り直して溜息を一つ吐いて剣を構えるウェイブだったが、その切っ先が破損しているのを目の当たりにして、思わず舌打ちした。
「そうしても良いが、連戦はつらいだろ?」
エレファントタイプは余裕の様相で応えてウェイブに視線を向ける。
「いいや、ピートとやらでは物足りなかったからな、あいつの見せられなかったモンスターマスターの実力を見せてくれないか?」
拳をぶつけて金属音を響かせ、エレファントタイプの注意を呼び込み、タールは挑発的に言った。
「望むならそれもいいが、それならそれで、邪魔のない時にしようじゃないか」
そう言ってエレファントタイプは遠回りに様子を見ていた人垣の一角を促した。
そこには、村の自警団と思わしき集団が集まりだしており、個々に身体の一部を人間と異なる姿に変えて構えていた。
そうした集団の中には、先程村の入り口で出会ったラーディの姿もあった。
「逃げるのか?」
「むしろ猶予をやっていると言ってほしいな。数日の間に装備を調えて体調も万全にしておけよ」
言ってエレファントタイプは馬のように前半身を高々と上げたかと思うと、巨大な足で地響きを立てながら駆けだし、強引に人垣を追い払いながら去って行った。
「・・・・・すげぇな・・・」
「あんなのもいるんだな」
タールとウェイブは、街角に消えたエレファントタイプを見送って呟いた。
「大丈夫だったか?」
身体の武装を解除したラーディが駆け寄って、二人の様子を窺った。
「ああ、致命傷はない。毒鞭の効果も大した事はなさそうだが・・・すまない。ピートとかいう奴を殺してしまった」
ウェイブはまだ残っていた灰の山を促し、ラーディに詫びた。
「仕方ない。力に溺れて襲ってきた以上、彼は村の者ではなくなった。むしろ、我々と争うことがなくて・・・・正直、ほっとした」
ラーディは一瞬その発言を疑ったが、彼等が知らないはずのピートの名を出した事、示された場所に証拠となる灰の山があったことで事実だと納得した。
「そう言ってくれると助かるよ。それにしても、早速連中に俺達のことがばれたな」
「あいつ、どう出るかな?」
エレファントタイプの消えた方向を見て、タールは自問した。
「そうだな、あの大きなケンタウルスもどきは自分の余裕から数日の猶予を本当に与えてくれるとは思うけど、実質何日か・・・だな。それまでにこっちは準備や情報集めやら、色々やらないとな」
「準備?闘うつもりなのか?」
話を聞いて、ラーディが思わず問いかけた。
「俺達が拒んでも、向こうがね・・・・えらく興味を持たれてしまったからな」
あくまでも本意じゃない事を強調して見せて、ウェイブは苦笑する。
「今の一騒動で、モンスターマスターもピンキリだってのが分かったけど、アレは強いわよね?」
両手に蓄積されていた魔力を少しずつ解放しながらカレンも会話に参加する。
「多分ね。実際、あれが本来の基準だと思うよ。あのピートってのは、モンスターマスターになりたてで、自分の能力を使いこなせなかったばかりか、完全に把握すらしてなかったみたいだし」
「どうして、そう思う?」
「俺の剣が砕けた時だけど、あいつ自身も驚いていただろ。自分の限界とか把握していないような様子があった」
「そういや、闘いも素人っぽかったな。今思えば、慣れない武器を持て余した新米って感じもするし・・・」
自分との闘いを思い起こしてタールが不思議そうに呟く。
「だから勝てたって面もあるよ。ラーディ、ピートって奴は以前は戦闘の経験はなかったんだろ?」
ウェイブの確認に、ラーディはこくりと頷いた。
「やっぱりね。戦闘経験もモンスターマスターとしての経験も不足してたんだよ。もし彼が自分の能力を使いこなせていたら、もっと苦戦していたと思うよ」
ウェイブは使い物にならなくなった剣を眺めて思いを馳せた後、それをゆっくりと鞘に収めた。
「そうよね、あの時の攻撃で、まさかウェイブの剣が折れるなんて思わなかったもの」
「ん?ああ、これは違うよ」
「違う?」
「この剣、死んでたんだよ」
「死んでた?」
「今まで気がつかなかったけど、先だってのモンスターマスターとの闘いで剣に一撃受けててね、その時既に亀裂が入ってたらしい。だから誰と闘っててもいずれ折れてたよ」
ワーガゼルのモンスターマスター・ボヴァの膝蹴りの効果が今にしてようやく生じたと言うべきであろう。
「それじゃ、どうするの?タールはともかく、ウェイブは剣を失ったら戦力ダウンじゃない?」
「ああ、それなら・・・・」
わって入ったラーディの一言に一同が注目する。
「こういう村だ。武器なら豊富にある。好きな物を見てくれ」
「いいのか?」
降って沸いた提案に、ウェイブが思わず問い返す。
「闘える者に使ってもらわなくて、何のための武器だ。そっちの大男にも見合った物があるから是非見てくれ」
「俺のサイズに合う物?マジか?」
それにはさしものタールも驚いた。通常、彼が自分の武器を購入する際は、必ず事前に発注しなければならないのである。
「もちろん、貴女にも・・・・」
「私ぃ?」
これまた同様に驚くカレン。
「いいじゃないかカレン。好意は受けとこう。君もエストックを失ってるし、短剣だけじゃ、いざという時、心もとないだろ」
ウェイブはあえてミファールの武装には言及しなかった。この人垣の中にまだ他のモンスターマスターが正体を隠したまま潜んでいる可能性ある事を考慮し、彼女の奥の手を明かすことを避けたのである。
「そうね、掘り出し物があるかもしれないし、見せてもらうわ」
その意図を悟ったカレンは頷いて、彼等の好意を受け入れた。