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2008/12/07(日)に投稿された記事
涼宮ハルヒの青空(4)
投稿日時:23:07:15|コメント:1件|》本文を開閉
ディレクトリ:(未完成)涼宮ハルヒ - *涼宮ハルヒの青空
購買のメロンパンはやや甘すぎるような気がしないでもないが、甘い物が嫌いではない俺にはちょうどいい。
それに今日の会話には脳みそに糖分が不可欠だ。
「その不足する情報ってのは、何なんだ?」
もふもふとパンを食べながらの問いかけに、ウインナーを半分かじった長門は。
「物理的座標位置が不足している」
と言った。
全く分からないのは……俺が勉強不足なのだろうか。
「……つまり、何というか、幻想郷の位置……地図みたいなものか?」
「地図は理論的情報でしかない。物理的な幻想郷の位置を観測し、三次元空間に展開、現空間における位置関係を座標化した情報が必要」
「地図のような机上の空論ではない、実際に観測した結果が必要という事……か?」
「そう」
「しかし……そうなると、実際に幻想郷に行かなくてはいけないだろう?俺の夢なんかで、そんな場所は分かるものなのか?」
長門はウインナーをパクリと頬張ると噛んでいるのかどうかも伺わせないほどに表情を変えないまま、俺の目をじっと見つめて。
……コクンと飲み込んだ、噛んではいるようだな。
「可能。ただし、あなたの見る夢は短時間であるため、その限定的時間内での観測は不可能」
俺はメロンパンの残りを口に押し込むと、牛乳パックのストローに口をつける。
長門の咀嚼(そしゃく)の心配をしたばかりだが、十分に噛み終えない内にパンを喉へ無理矢理流し込むと。
「俺がもう少し長く夢を見ればいい……という事か」
「そう。ただし、それはあなたの意志によるコントロールではできない」
箸で今度は…卵焼きだろうか。
焦げ目1つない綺麗な卵焼きだ、さすがは長門というべきか。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「夢を安定的に長時間見る事は現実的ではない。そこで、夢ではなく幻想郷とのコネクト状態を安定的に接続した状態にする方式を提案する」
「それは……つまり、夢をずっと開いておく……違うな、幻想郷とのやり取りを開いたままにする、という事か?」
長門が目玉焼きをパクリと半分頬張る。
そして、コクリと飲み込んだ彼女は静かに口を開いた。
「そう。しかし、幻想郷とのチャンネルを長時間、安定して開いておくためには、非常に強力な次元操作が必要。しかし幸いにして、そのような能力を有する人材を、私たちは知っている」
「……涼宮ハルヒ、か」
涼宮ハルヒ、ハルヒよ、お前は自分で気づいていないようだがスゴイ奴だよまったく。
長門にしても古泉にしても、朝比奈さんにしたって最後に行き着く所には必ずお前がいるんだからな。
今回の事にしたって、お前が持っている……その不思議な力を使えば、幻想郷って所に行く方法が見つかるかも知れないんだ。
お前が事ある度に行きたい行きたいって言っていた異世界への鍵を、お前自身が握っているんだぜ?
もしお前がここにいて、俺と長門の話しを全て聞いていたとしたら泣いて喜ぶんだろうな。
「涼宮ハルヒの時空改変能力を利用し、幻想郷とあなたの夢、つまりこの世界との間に安定したパイプを通す事が可能。ただし、そのためには、あなたの安定した睡眠状態が続く事が必要」
つまり俺が夢を見ている間、幻想郷との間に通じる道が出来ている。
それを途絶えさせないためには、ハルヒの持っている能力が必要。
しかし大前提として、俺が夢を見続けている必要がある、という事なんだろうな。
「夢へのコンタクトは比較的簡単。しかし、幻想郷という空間は、現存空間に存在する場所ではない事が、前回の調査で分かっている」
「……げんぞん…空間…というのは何なんだ?」
「あなたが地球、あるいは宇宙と認識する世界の事」
「……つまり、俺たちがいる空間とは別の所……異世界のような場所にある、という事か?」
「そう。私たちがいる場所と異なる空間に、そこにおいても不可視かつ周囲との相互的関係を有する事なく存在しているものと思われる」
異世界の異世界……ロシアの民芸品であったよな、中から同じ人形がいくつも出てくる…そう、マトリョーシカみたいな話しだ。
まあ、よく考えると、異世界から見ればハルヒが造り出した閉鎖空間だって異世界の異世界なんだろうけどさ。
「そんな場所を探せるのか?」
いや、長門だったら探せるんだろうなと思いつつ、俺は念のため尋ねてみた。
「可能。まず、あなたの夢を通じて幻想郷という空間にコンタクトする。続いて、外部の空間内における幻想郷の座標を割り出し、同時に全次元空間に対してブロードキャストを発信する事で、現存空間の位置を特定する。後は、この経路を辿るだけ」
「……つまり、異世界を経由して、幻想郷に行く道筋を探す、という事か?」
「そう」
会話の最中も長門の箸は、機械的に弁当の中の惣菜をパクリパクリと口に送り続けていた。
俺と言えばメロンパンを食べ終えた所で、ピーナッツバターサンドを包装しているビニールに手をかけた状態で止まっていた。
食と思考の両立なんて芸当は俺にはできないな……
白米をパクリパクリと口に送り、弁当をすっかり空にした長門はパタリと蓋を閉じる。
彼女の食いっぷり…というか食べる速さには毎度の事ながら心底驚かされるが……俺は後々の、あの幽霊のお姫様が見せる食いっぷりを目の当たりにするなんて事は、この時は思いもしなかったんだよな。
「夢への再コンタクトは出来るだけ早い方が望ましい。可能であれば、本日行いたい」
俺の夢の安定化、幻想郷に行くための方法を探すためには、ハルヒの能力が必要なんだと言う事は分かっていた。
だけど、どうやって?
この時の俺を例えるとしたら、釣り場を知らないのに、釣り竿と疑似餌も全て揃えた釣り人のようなものだったのかも知れない。
「具体的に、どうするんだ?」
俺はこの後、長門の口から発せられた言葉に度肝を抜かれる事になる。
「あなたと涼宮ハルヒが、あなたの部屋で眠るだけ。あなたは心穏やかにして就寝するだけでいい」
「……へ」
キョトンとした瞳で、ハルヒは間の抜けた息を口から漏らしたような声を出した。
まぁ、そうだろうな、普通はそうなるよな。
仮にもハルヒだってうら若き女子高生、俺だってまだピュアなハートを忘れていない男子高校生なんだ。
だがな、分かってくれハルヒ……この言葉には裏なんてこれっぽっちも全くもって皆無なんだ、お前が俺の部屋で寝てくれるだけでいいんだ。
とは言え、長門よ……「俺の部屋に泊まりに来ないか?」はダイレクトすぎたんじゃないか?
「……キョン…の部屋…?」
ポツリとつぶやくような小さな声。
その言葉を合図にしたかのように、ハルヒがハッと顔を上げるとその顔は俺にも見て分かるぐらいに真っ赤に染まっていく。
「な、な…な、なん、何で……何であんたの部屋に泊まらなきゃいけないのよ!?」
だよな。だがなハルヒ安心しろ、俺にだって分からないんだ。
そりゃ確かに、幻想郷って場所に行くためにはハルヒの力が必要なのかも知れない。
でも、それにしたって俺の部屋にハルヒが泊まるって言うのはどうなんだ?
幻想郷に行くため、でも、幻想郷に行く事がそんなに大切な事なのかどうかは俺には分からない。
長門を前にして『行く』とは言ったけどさ、そんなハルヒと二人でお泊まり会と洒落込めるほど、俺だって衰えていないんだぜ……
当然、俺はその事を長門に話したさ。
さらにハルヒだけじゃなく、SOS団の全員参加も提案した。
みんなで泊まればハルヒにだって言い訳がし易いだろう?
しかし長門は、その凛とした表情を崩さないまま、それはそれは真っ直ぐな視線を俺に送りながら、『ノイズが混ざる可能性がある。あなたと涼宮ハルヒだけである必要がある』と言い放ったんだ。
長門はいつだって正しい、俺だって全幅の信頼を置いている。
でも、俺はどうハルヒに伝えて、どう言いくるめればいいんだ?
そして、長門のあの瞳……まるですがられているような感覚すら覚えた、あの強い眼差し。
俺に一体どうやって、あの長門の言葉に反論できたと思う?
「あ、あ…あんたの部屋に泊まるって……そ、それ……ど、どういう魂胆なわけ!?」
「ハルヒ、実は……」
俺は言いかけて口を閉じた。
実は……に続ける言葉が思いつかなかった。
どう言えばいい?
ハルヒを納得させる言葉なんてあるはずがないじゃないか。
実は、妹がハルヒに会いたがっている?
ダメだ、妹は小学校の夏合宿で明後日まで帰ってこない。
じゃあ両親にハルヒの話しをしたら会いたがっているとでも言うか?
それもダメだな、どうして俺の両親がハルヒに会いたがるんだ?
くそっ、万事休すじゃないか、誰か上手い文言があるなら俺に教えてくれ、そして俺の代わりにハルヒに説明してやってくれ。
そう思う一方で、俺はこうとも思っていた。
長門は俺を部室から送り出す時、こう言った。
『あなたの思うがままの、あなたの判断が、私の答え』
いつも長門は俺の判断に全てを委ねてくれる。
俺はそんなに心が広い聖人君子のような人格者でもなければ、全知全能の賢者なんてものでもない。
だが、ごく普通の男子学生の俺に、長門をはじめ古泉や朝比奈さんまでが、まさしく全人類の存亡をかけるような重要な判断を委ねて来る。
俺はいつだって正しいわけじゃないんだぜ?
間違う事だってあるし、そんなに思慮深いってわけでもないんだ。
でも……俺は思う。
どうしても俺は、あの長門のすがるような瞳を忘れられない。
いつも長門には世話になりっぱなしだからな、こういう時ぐらいには協力をしたいって思う。
でも、どうやって?
俺はそんなにウソが上手いわけでもないんだし、ハルヒを言いくるめられるほど饒舌(じょうぜつ)でもない。
「な、何よ……な、なんか理由があるの!?」
……ウソは無理だ、かと言って上手い言い訳なんて思いつかない。
正直に言うしかない、長門と幻想郷の話しは取り除いて、今朝までの俺が知っている事だけを話すんだ。
「実は、俺さ、ここ1週間ぐらいずっと同じ夢を見るんだ」
「ふ、ふーん……」
腕を組んで相づちを打ってくるハルヒ。
そうだ、俺はこのスーパー団長様であるハルヒの興味関心を十分に熟知しているじゃないか。
彼女の願望そのままにSOS団には宇宙人、未来人、超能力者が勢揃いし、そいつらと思いっきり遊ぶ事。
「その夢が不思議でな、親父とお袋にお願いをして部屋を変わってもらったら、二人して同じ夢を見るって言うんだ」
ここはウソだった、はっきり言って部屋で寝たら同じ夢を見るなんて事はあり得る事じゃない。
でも、そう言う他に方法なんてあるハズがないだろう?
「へぇ……」
腕を組みながら、未だに紅潮を隠せない顔だったがハルヒが興味ありげに顔を近づけて来る。
「ハルヒ、お前そういうのに詳しいだろ?しかも俺が現在進行形で体験している話しなんだ、俺はこの手の話しに疎くて、どうしたらいいものか分からないんだよ。だから出来ればハルヒに泊まってもらって、事の真相を探ってもらえればと思ったんだ」
ハルヒの事だ、こう言えばきっと『他の団員と一緒に泊まればいい』とか言い出すだろう。
そう身構えていると。
「あ、あたし一人じゃなくて……古泉くんや有希、みくるちゃんも呼べば……ぁ」
案の定の言葉を言いかけたハルヒは、途中で言葉を切って、何かを思い巡らせるような表情を浮かべた。
なんだ?
「……う、うん!わ、分かったわ!よし…うん、よし!キョンの不思議な夢、このSOS団団長の涼宮ハルヒが解決してやろうじゃないの!」
良かった……俺は安心していた。
ハルヒに他の団員の事を聞かれたら「全員都合が悪い」と返さなくてはいけない所だったからだ。
全員に確認済みとあってはハルヒも機嫌を損ねてしまうに違いない。
「悪いな」
そして、ふぅと一息ついた俺はズボンのポケットに手を突っ込んで汗を布地で拭った。
よし、これで長門先生ご用命の『ハルヒが俺の部屋で寝る』というシチュエーションは何とかなった。
後、問題は……
『あなたは心穏やかにして就寝するだけでいい』
いや、無理だろそれ……
一抹の不安を感じつつも、なぜか近年希に見るほどにご機嫌な様子のハルヒと肩を並べて教室へ戻る途中、俺は心の中で少なくとも10回はため息をついていた。
途中、1年生の教室前の廊下で長門とすれ違った。
まさに有頂天のりハルヒはスタスタと歩き去る長門に気づかなかったようだが、俺は彼女の顔に視線を送り、長門もその視線を俺に送ってくる。
すれ違った瞬間、彼女は「おみごと」と小さな声でつぶやいた。
……やれやれだ。
その後、何故か異様なほどに浮かれているハルヒのポジティブオーラを背後に受け続け、日焼けでもするんじゃないかと心配しながら午後の授業はあっという間に過ぎ去っていく。
いつもこうご機嫌ならいいんだがな、休み時間になる度に、授業の合間ですらハルヒは小声で『帰り途中にお菓子買って行くらかね』だの『やっぱり一度帰って着替え取ってくるから、公園集合よ』だのと騒がしい事限りない。
俺たちは遠足前日の小学生か?
そうこうしている間にも時は流れ、あっと言う間に終業のチャイムが響き渡る。
いつもだったら、俺は谷口国木田コンビと駄弁ったりするところだが、本日の我らが団長様は。
「いい!?公園に5時半集合よ!遅れたら死刑だからね!」
と満面の笑顔で俺に指差し、まさに疾風の如く、一歩間違えば髪の毛が金色に染まって舞空術で空へと舞い上がらんばかりの勢いで教室を走り去って行った。
5時半、一度家に戻って……近くのコンビニで買い物なんかを済ませたりを考えると、早々にご帰宅しないとマズそうだ。
いや、ハルヒの事だ。公園から俺の家へ向かう途中で買い物しようとか言い出すだろうから、そんなに急ぐ必要もないのかも知れない。
そうだ、俺たちはまるで遠足に行くような気持ちで、幻想郷へ向かう道筋を探していたんだ。
投稿日:2008/12/09(火) 08:24:49
やっぱり文章がうまいなあ、雰囲気出てて。
ここからどうくすぐりにもっていくかwktkしながら待っております。
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