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「くすぐりの塔」はキャンサーさんから作品が届き次第、ちゃんと更新していきます!
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2009/02/13(金)に投稿された記事
藍×紫 紫様のくすぐりエクセキューション・ラビリンス その1
しんとした闇の中には延々と星ばかりが続く空に覆われて、すべての生き物が押し黙ってしまったように物音一つ聞こえてこない。
いつも聞こえてくるはずの虫の音も、庭先に置かれた鹿威し(ししおどし)も、風が吹く微かな物音すら、静寂に隠されてしまっていた。
それもそのはずだった。
ここは、誰もいない世界。
正確に言うとしたら、私と、紫様しかいない世界なのだから。
青白い明かりに包まれた客室、浮かび上がる床の間のお香入れ。
お香は焚いていないはずなのに微かに薫る甘い香りに、私は先ほどから酔いしれてばかりいる。
「……ら、藍…」
畳の上に敷かれた白い敷き布団、その上に横になっている紫様が弱々しい視線で私を見上げる。
消え入れそうな声、その瞳に鮮明に浮かび上がるのは不安の色。
「藍……ここ……ここどこ…?」
紫様が辺りをキョロキョロと見回す度に金色の髪の毛がサワリサワリと小さな音を立てる。
いつもの凛々しい顔立ちはどこへやら、辺りに視線を飛ばす様はまるで悪夢に怯える子供のようだ。
「紫様……ご安心ください。ここは私が作り出したエチケット空間。略してエチ間です」
「ら、藍が作り出した空間……」
心底驚いた様子で紫様が私の顔を見上げる。
金色の髪を敷き布団の上に広げて、恐怖に怯えたような表情を浮かべる紫様。
私の中にわき起こる不純な気持ち、しかし、それを押し黙らせるようにして私はゆっくりとしゃがみ込む。
「紫様、ここには私と紫様以外の誰もいません。この部屋の外には何もありません。……紫様がどれだけ大声で叫ばれても、誰も助けに来ないのですよ……」
「ら、藍……?」
この空間はひどく狭い。
虫の音が聞こえなかったのは、この部屋の外には何もないから。
星空が延々と続いているのは、外には文字通り星空が延々と続く虚無な空間が広がっているから。
鹿威しも、庭木も、幻想郷すらも、この空間には存在しない。
ここにあるのは、私と紫様の二人だけ。
そう……ここは、紫様と私の秘密の時間を作り上げるためだけの世界。
「ふふ……紫様。まず、ご自分がお召しになっている衣類をご覧ください」
そう言った私は紫様の耳元に指先を近づけて。
紫様は肩を小さく弾ませて、慌てて自分の体を起こそうとした。
「……う、動けなっ…ら、藍!動けない!」
それもそのはずだった。
紫様の体は白い敷き布団の上に仰向けに横たわり、その四肢は……
「紫様、横になっていてはご自分の姿が分からないと思いますが、ご安心ください。あなたの両手足は、スキマを用いて別の場所に移動させてあります」
そう言いながら、指先を紫様の首もとにそっと触れさせる。
仄かに汗ばんだ肌、そこに髪の毛を指で絡めるようにして指先をなぞらせた。
「…ひっ!」
紫様の口から可愛らしい嬌声が漏れる。
首を縮こまらせて、しかしその目は私の顔をじっと見つめていた。
驚いたような顔をしている。
目を大きく見開いて、口は半開きにして。
それがとても可愛らしく思えて、私は首筋に触れさせた指先をゆっくりと、うなじへと滑らせていく。
「くっ…!ら、藍っ!ら……」
紫様は途中で言葉を失ったように言葉を喉の奥に詰まらせた。
どうやら自分の周囲に浮かんでいる「それ」に気づいたようだ。
「ふふ……紫様の手足……正確に言うと、紫様の体のすべての部位周辺に広がっている空間だけを、スキマで移動したものが、こちらです」
紫様が驚くのも無理はなかった。
空中に浮かぶ「それ」は、紫様そのものだったのだから。
紫様の体周辺に広がっている空間、さらに言えば、紫様の体に触れている空間の全てをスキマで取り出して反映したモノ。
紫様がポカンと空中を凝視すれば、それもポカンとして自分自身を見つめて来る。
紫様の正面に、私の頭上に浮かぶそれをしばらく見つめていた紫様は、はっとしたように顔を上げた。
「ら、藍!あ、あれ……」
「良く見えるでしょう?これから、とても楽しい事が始まります。そのとき、私だけが紫様の笑顔を見るのは、どうにも気が引けまして。そこで、このように事に」
紫様の顔に、さらに色濃く不安が陰を落とした。