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「くすぐりの塔」はキャンサーさんから作品が届き次第、ちゃんと更新していきます!
(今は公開させていただいた作品が手元に届いているすべてです)
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2010/11/18(木)に投稿された記事
くすぐりの塔R -第4話- 『僧侶ミア』
となった事態は、メルフィメール城内に驚きと動揺を招くのに十分な材料であ
った。
ここに来て王宮の兵士達は、魔王には目撃された従者以外にも、かなりの兵
力が追加投入されている事を認識し、彼の行動力と組織力を過小評価していた
事を認めざるをえなかった。
クレア達は決して弱いパーティではない。王宮の誰もが認めるこの事実と結
末が、帰還した主力兵達が眉唾とも思っていた魔王という存在そのものの情報
が、虚偽ではないという事を示してしまったと言える。
雑魚ながら、襲撃当初には存在しなかったモンスターの増兵が行われた情報
から、静観や放置は敵の勢力を増大させるだけだという意見が大半を占め、彼
女達は先の失敗を踏まえた選考の結果、新たな討伐チームとして、戦士キャシ
ー・戦士シャリア・技師サラ・魔法使いタニア・僧侶ミアの五人を新たに編成
し、塔の攻略を再開するのだった。
唯一の生き残りからもたらされた僅かながらの情報は、確かに塔の規模に比
較すると微々たる物ではあったが、トラップの存在を知り得たことは有益だっ
た。
いかに実力者揃いでも、トラップによって消耗してしまえば敗北してしまう
恐れもあり、大戦力で臨んだ場合い、最悪のケースとして一網打尽になる恐れ
すらあるのだ。
目標の敵と対峙する時には常に最善のコンディションであるべきが常識の
中、それを実現させるため、今回のメンバーには技師であるサラが加えられた
のだ。
こうして今また、小さな騒ぎが塔内で起きようとしていた。
「爆裂魔球!!」
タニアの呪文詠唱と共に数個の光球が横一文字に飛んだ。
光球は敵フロアガーディアンを直接狙ったものではなく、その進行方向の床
部分を直撃し、次々にその威力を発揮して爆発の壁を形成する。
強固な防御力を持つガーディアンも衝撃波の前にはさすがに、前進を中断せ
ざるをえない。
「今だ!」
隙をうかがっていた二人の戦士が一気に間合いを詰めて勝負に入った。
キャシーはガーディアンの左肩口に、先端が幅広い異風な剣を振り下ろし
た。
-グオオオオオオオオオオォ-
痛みか怒りかを感じているのか、ガーディアンが石の擦れあった様な唸り声
を上げる。
そして次の瞬間、一呼吸遅れてシャリアのバトルアックスが、ガーディアン
の頭諸共、埋め込まれていた制御宝玉を砕いて決着がついた。
戦士達はガーディアンの強さを想定し、物理的ダメージをより大きく与える
事の出来る武器を選び、それをタニアの魔法により、更に強化させていたので
ある。
「ふぅ、何とか行けそうね。こいつらも倒せない敵じゃないわ」
ただの岩の塊になり果てたガーディアンの破片に食い込んだバトルアックス
を引き抜き、満足げにシャリアは言った。
「要は戦い方ね」
キャシーも剣を鞘に収めて頷く。
ガーディアンを倒した事により一同は、前パーティが進行を阻まれた関門を
突破できたという事実を実感し、同じ失敗はしていないと満足げに頷き合っ
た。
「でも、下のモンスターがあれだけ弱ければ油断もするわ」
タニアは今し方まで、自分達に苦戦を強いていた物体の成れの果てを杖でつ
つきながら、ここまでの戦いを思い起こした。
「それも罠の一つでしょうね。上の階の罠にかかりやすくするためのね・・・
・」
サラは早速、ガーディアンが護っていた奥の扉へと近づき、自分の仕事を行
っていた。
「ただ、これだけのガーディアンが作れるのに、何でトラップなんて非効率な
物も使ってるかが判らないのよね~」
喋りながら扉の鍵を解除する手を休めることなくサラは言う。
「侵入者に対する処置じゃないの?」
物珍しそうにサラの作業を覗き込むミア。
「だったら、1階に罠やガーディアンを配置した方が良いじゃない?まぁ、こ
れは一般的な盗掘者対策だけど・・・・」
サラはミアに対し、この手の作業中は自分から離れていてほしいなと思っ
た。万が一、ガス関係のトラップが作動しては二人共に被害が出てしまう。
だが、調べたところ、その手のトラップでは無いと分かっていたので、あえ
て口にはしなかった。
「で、専門家のサラはどう考える?それを・・・・・」
ふと、キャシーが尋ねた。
「さぁね、私はあの魔王じゃないから、考えは判らないけど、フロア毎に配下
のモンスターの強さを変えているって事は、私達で遊んでいるかじゃない?」
「遊ぶ?どうしてそう思う?」
「やってる事が無駄だらけじゃない。単に無策なのかもしれないけど、侵入を
阻む事を本気で考えているのなら、さっきも言った通り、門前にガーディアン
を配置したり、1階に噂の配下モンスターを待機させて当然じゃない・・・・
・だから、私達がどの程度闘えるのか?フロア毎にモンスターのレベルを変え
て、それを推し量って楽しんでるんじゃないかって思ったのよ。もっとも、本
当に遊んでいるとして、その目的は分からないけど」
「なら、当人に聞けばいいじゃない」
タニアの意見は楽観論そのものだったが、非難する者はいなかった。全員、
敵に勝てる前提で訪れており、この塔の真意を魔王から問い質す事は、自然な
流れとして行き着くはずであり、そこまで到達する自信が彼女達にはあった。
「まぁ、そこいらの雑魚に聞くよりかは確実でしょうけど・・・・・・・は~
い、OKよ」
使用していた幾つもの工具を懐にしまったサラが扉を押すと、重々しく閉ざ
されていた扉は難なく左右に開いていった。
「お見事」
自分とは全く違う分野の手並みにシャリアは素直に感心した。
「それじゃ、行くわよ」
キャシーの言葉に全員が頷いた
彼女達の踏み込んだ未知なる空間は、雰囲気的には今までと何ら変わる物で
はなかった。
だが、エリアが変わる度にモンスターの強さを変えて魔王が遊んでいるとい
う仮説が心に残っていた彼女等は、慎重に一本道となっていた通路を歩き続け
た。
単調な道程ではあったが、罠の存在する可能性が今もある以上、気楽には進
めない。
しばらく何の障害もなく進む彼女達だったが、ある程度まで来たところで、
シャリアがはたと立ち止まり、罠の有無を確認しつつ進む先頭のサラを引き留
めた。
「待ってサラ・・・・」
「ん?何?モンスターの気配でもした?」
「妙よ・・・・・ここに来てめっきり敵との遭遇が無いわ」
「あなたもそう思う?それにこの道、いやに単調だわ」
キャシーも違和感を感じていたらしく、神妙な表情で同意した。
「う~ん、そうね、可能性としてはこの通路自体が罠の可能性もあるわね」
「何それ?」
思わずサラに詰め寄るタニア。
「えっとね、罠っていうより、罠への一本道ね。この道の行き着く先がガーデ
ィアンってパターンもあるって事よ」
「ガーディアンなら問題ないわ。倒せるもの」
タニアは豪語するが、あくまでもそれは、先程と同種のガーディアンである
という仮定でのことである。
「でも、このまま行くのも考えものよね・・・!!!?」
キャシーがサラの意見を考慮して前進か後退かを考えた直後、タニアとミア
は自分達の頭上で何らかの魔力が発生するのを同時に感じ取っていた。
「!!」
反射的に見上げた二人が見た物は、頭上の空間に発生した奇妙な黒い穴から
姿を現した小柄なモンスターと、その縮小版のような更に小さいモンスターだ
った。
「危ない!」
ミアはなりふり構わずとっさに避けたが、タニアが逃げ遅れ、一番大きなモ
ンスターに背中から抱きつかれるような形で捕まってしまった。
そして小モンスター達は身軽に着地すると同時に、戦闘態勢を取りつつある
キャシー・シャリア・ミア・サラ四人の牽制的位置に立った。
「は、離しなさい!」
タニアは自力でモンスターを引き剥がそうとするが、もともと戦士ではない
彼女は非力で、相手もがっしりとしがみついている為、成功する事はなかっ
た。
「くっ!」
彼女はやむなく呪文の詠唱に入った。
全身からの放出系魔法により、相手を吹っ飛ばそうという目論見だった。も
っとも、接触している相手が対象だと、自らもダメージを受けるのは確実だっ
たが、この美的感覚に乏しいモンスターにしがみつかれる事と比べれば、多少
の怪我などは苦にもならなかった。
だが、モンスターの方はダメージを受ける事を好まなかった。
魔力の波動で、相手が魔法を放とうとしているのを悟ったモンスターは、そ
うはさせじと、抱きついたまま指をウニウニと蠢かせた。
「ひゃああああああああ!!」
突然、腹周りにくすぐったさが生じ、その感覚にタニアは思わず身を捩って
悲鳴を上げ、呪文詠唱は中断されてしまった。
「は・・はふっ・・やめ、くふふふ、止めなさい」
タニアは身を激しく振り回し、モンスターを振り落とそうと懸命になった
が、モンスターはしっかりと抱きついたまま、離れようとしなかった。
「あふっ・・この・・・・あははははは・・・・け、汚らわしい」
タニアは時折悶えながらもモンスターを振り落とそうと身を揺さぶり続け
た。
激しいツイスト運動に、さすがにモンスターもしがみついているのに疲れた
のか、腕の力が弱まり、体が僅かにずれだした。
(いける!)
タニアはそう思った。だが、この状況は彼女にとって成功面よりも失敗面の
方が大きかった。
体がずれたと同時に、蠢いていた指の位置もずれ、それが偶然にも腹部にあ
る彼女のくすぐったさの「つぼ」に入ってしまったのである。
「あっ・・・・!あ~~っははははははははは!!や、やめて~!」
突如として、大きな笑い声を上げるタニア。体の反応も、身悶えるというよ
りも、既にのたうち回るという方が正しかった。
しかし今回は、双方の成功が失敗に繋がるものらしく、無我夢中で体を捩っ
ていたタニアがついにバランスを崩し、モンスターを下敷きにして転倒してし
まった。
どちらがより大きいダメージを被ったか、一目瞭然であろう。
「ぐえっ!」
さすがに床石と人間に挟まれた衝撃には耐えられようもなく、モンスターは
短い唸り声をあげると共に、タニアを捕らえていた腕を放してしまった。
「し、しまった」
思わぬ失態に退こうとしたモンスターであったが、それを彼女等が見逃すは
ずもなかった。
「逃がさないわ!」
タニアの手のひらから小さな衝撃波がほとばしる。呪文詠唱を必要としない
単語レベルの攻撃魔法と言うより、魔力放出だった。
当然、威力はさほどでもないが、彼女も相手を殺すつもりが無かったのであ
る。
魔法は的確に命中し、逃げるところを後ろから突き飛ばされる形となったモ
ンスターは、バランスを崩し、もんどりうって倒れた。
「キィィ!?」
今まで他のメンバーを相手していた小モンスター達は、それを見て一斉に動
揺した。
この一瞬が決め手となった。
相手の隙を見逃さなかった戦士達は、ほんの一呼吸のタイミングで一気に小
モンスター達を切り払い、蹴散らした。
ただ一匹生き残ったモンスターは、正座させられた姿勢で縛りつけられてい
た。
先程のごたごたの際、人の言葉を口にしたのをタニアが聞き逃さず、尋問す
ることを提案したためであった。
「貴方、名前は?」
キャシーが剣を突き出し、問いかけた。
「知ってどうすね、お嬢さん方。そんな情報は何の役にもならんだろ」
不敵にモンスターは応えた。
「そうね、なら質問を変えるわ・・・・『魔獣』と『秘宝』それを魔王は何に
使うの?そもそも一体何なのそれは?」
「ほう、お国の王女様も知らない事を知ってどうするね?独占欲にでも駆られ
たかい?」
「話しなさい!」
キャシーは純粋に知りたかっただけだった。存在の噂しか知らない魔獣と秘
宝。今回の騒動の中心である存在に対し、自分達はあまりにも無知であること
は否定できなかった。
どの様な物であれ情報が欲しいと彼女は考え、場合によっては自分達のみな
らず、国全体の行動方針を変える必要もあるかもしれないと思ったためであ
る。
「我々が・・・・いや、我が主が有効に・・・いやいや、本来あるべき使い方
をする・・・それだけだ。仮にお嬢さん方の手に両方が在ったとしても、行き
着く結果は同じだよ」
「どういう意味よ?」
剣の切っ先が更に迫り、モンスターの体に触れた。
「我が主のおっしゃったお言葉だ・・・・・正直なところ、下っ端の私には詳
しい事情は語られてはいない。その辺りはお嬢さん方と同じだな」
モンスターの自嘲が偽りないものと悟ったキャシーは、無意味な時間を費や
すのを避け、もう一つ抱いていた疑問を口にした。
「もう一つ問うわ・・・・クレア達、前のメンバーはどうしたの?」
その答えは苦もなく得られる。
「我々も我々で聞きたい事があって、『尋問』させてもらった。今は全員、と
ある目的の為に役だってもらっているよ」
「こ、この!」
その返答に、シャリアは思わずバトルアックスを振り下ろしかけたが、それ
はキャシーによって制された。
「落ち着きなさい。まだ聞きたい事が残ってるわ」
キャシーは再びモンスターに視線を戻すと相手の意図を考えながら口を開い
た。
「秘宝も魔獣も伝説上の、存在そのものが疑われていたような物よ。その二つ
は関連があるの?」
「・・・・・・・・・ある意味においては、と言う話です」
「!?ミア、貴方、知ってるの?」
予期しなかった者からの予想外の発言に、一同の視線が一斉にミアに集中し
た。
「はい・・・・と言っても、司教様に代々伝えられた口伝ですけど」
その言葉に、モンスターが意味ありげな笑みを浮かべ、目に怪しい光を宿し
たが、ミアに気を取られてしまった彼女等がそれに気づくことはなかった。
「曰く、『秘宝』は財宝にあらず。先史王国の所有物にして、我等を邪なる世
界へ誘い堕落させる物であり、支配者の象徴となる物・・・・と」
「そんな口伝が在るなんて知らなかった」
初めて聞く内容に、サラは戸惑いの声を漏らす。
「じゃあ、魔獣は?何か知らされてる?」
その質問にミアは首を横に振った。
「魔獣・・・・今では正式な呼称すらも忘れられたそれは、誰も知らない方が
良いと、当時の人々が言い伝えるのも控えたそうです。それが過去に存在した
という最低限の情報のみが伝えられているだけです。そして、この二つの共通
点は、私達・・・・メルフィメールの存亡に及ぶとの事です」
一同は少なからず衝撃を受けた。ミア自身も初めてこの話を聞かされた時は
同様だった。
国の『秘宝』と称される故に、自分達の力になるだろうという先入観があっ
ただけに、決して良き力にならないという事実が、そのショックに拍車をかけ
ていた。
「まぁ、聞いた話では、魔獣も秘宝と同じ説明で良いようなものだがね」
一同のショックをよそに、モンスターが軽口を叩いた。
「そう言えば、魔王は魔獣に関する情報を持ってるのよね?貴方は他にどんな
話を知っているのかしら?答えて貰うわよ」
再びキャシーの剣の切っ先がモンスターに突きつけられた。
「貴方の知る限りの情報を聞かせてもらうわよ!」
「残念だが断る。今、口にした以上の情報を持っているわけでもないし、期待
を裏切るだけだ。それに、答えていいとのはここまで・・・なのでね」
「ここまで?」
発言に疑問を感じた瞬間、不意にモンスターの座っている床下に黒い穴が現
れたかと思うと、モンスターは縛られた格好のまま、その中へと落ちていっ
た。
「ま、待て!」
逃がすまいと剣を振るうキャシーであったが、構えた僅かのロスタイムが明
暗を分け、寸前の差で刃は空しく空を切り、モンスターはまんまと逃げおおせ
た。身体の全てが黒い空間に消え去る瞬間、彼女は見た。その意味ありげな笑
みを。
「くっ・・・・あいつ、いつでも逃げ出せたんだ」
「わざと捕まったのね・・・・・でもどうして?」
サラの疑問は一同のそれであったが、今、この場にそれに答えられる者は存
在しなかった。
「どうします?私としては一度戻って、魔獣と秘宝の事を調べ直す必要がある
と思いますけど」
事態を重く感じたミアが発言する。
「そうね・・・・・私達が守ろうとしている物の正体を、もう少し詳しく知っ
ておくべきかもしれないわね」
「多分、教会の地下書庫か王宮の資料館になら何かしらの情報があると思いま
す」
「・・・・・・そうね、王女に判断を仰ぎましょう」
結局、本来の使命より、事の重大さを選んだ一行は、取り敢えず引き返す選
択をし、今来た道を引き返していった。
しばらくして、進行していた道を黙々と戻っていた一行は、その一歩一歩と
進むに連れ違和感を増大させていった。
「・・・・・・・・変ね・・・・・・・」
心中の疑惑の念を真っ先に表したのはシャリアだった。
「貴方もそう思う?」
抱いていた疑惑が自分だけでない事を知ったタニアも、同意を求めるように
問いかけた。
「ええ、なんとなくね」
「そうね、そろそろ、さっきのガーディアンのいた大広間のはずなんだけど・
・・・」
最後尾のシャリアが呟く。が、通路は依然一本道が続いている。
ふと辺りを見回すシャリア。そして、ある一点を凝視すると、小さく頷い
た。
「そういう事か・・・・・」
次の瞬間、シャリアは大きく振りかぶり、バトルアックスを力一杯、壁に叩
きつける。
『キシャァァァァァァァ!』
その行為の意味を仲間が問うよりも先に、突如、辺りから悲鳴が沸き起こ
り、肉厚の刃が食い込んだ壁から鮮血がほとばしった。
「!?」
アックスが引き抜かれると同時に、壁は崩れ、それに呼応するかのように周
りの壁も次々にその結合力を失っていく。
「な、何よ、どうしたの?」
強力な一撃であったとしても、この現象は異常だった。初めて遭遇する出来
事に、サラは戸惑いを隠せなかった。
「こういう事よ」
シャリアは手近にあった無傷のブロックを無造作に蹴る。
『ピキィィィ!』
小さな悲鳴があがったかと思うと、ブロックから申し訳程度の二本の手と四
本の足が生え、おまけに二つの目がぎょろりと開いた。
「なっ!」
想像もしなかった生物の存在に、サラが思わず後ずさる。
「ブロッカーモンスターってヤツの変種よ。こいつらが集まって壁に擬態して
惑わしていたのよ。本来はダンジョンで人を迷わせて楽しむ悪戯者だけど、こ
いつは多分、私達を罠に誘い込むつもりだったのよ」
「こんなのがいるんだ・・・・・でもどうして分かったの?」
「その昔、この手の連中の悪戯に遭った経験者だからよ。それにほら、ミアの
足元の床、傷があるでしょ。そこ、さっきのガーディアンとの戦いで私がつけ
た物なのよ。それを思い出したから、この壁が偽物だって分かったのよ」
「以前、同じ目に遭ったの?」
「ええ、遠征隊の所属だった時に、ダンジョンで迷ったあげく、いらついて壁
を壊したら・・・・」
「こうなったのね」
一同は辺りを見回した。
個々の存在となったブロッカーモンスターは、数的には圧倒的に多かったに
も関わらず、元来臆病なのか、あたふたと辺りを走り回り、挙げ句に一目散に
逃げ出してしまった。
「直接には害にはならないんだけどね・・・・」
「でも、あんなのがいるんじゃ、今まで作った地図は役に立たないわね」
自分が今まで記録していた道順を、残念そうに眺めサラが言った。
「魔法式の専用マーカーが必要って事ね」
「もしくは、フロア単位で完全制圧していくか・・・・」
またも新たな問題に直面した一行が、今後の解決策を思考していた時、異様
な気配を感じたキャシーが、反射的に剣を抜き、身構えた。
「何か来るわ、複数よ!」
シャリアがバトルアックスを構え、タニアが呪文詠唱の準備にかかる。
相手は堂々と、ごく普通に通路の影から同時に現れた。その数、全部で十
五。
体型は人とほとんど大差ない。しかし、その体は毛に覆われ、頭も人のそれ
とは違っていた。
「ワーウルフ(狼人間)!」
緊張した面もちでキャシーが言った。
「・・・じゃないみたい。ちょっと違うわ」
思わず、へっ?っとなり、注意深く見ると、確かに違っていた。どう違うか
というと、ひとえに迫力というものが欠けている。ウルフ(狼)と言われるだけ
の野性さと言うか凄みが感じられないのである。
「・・・・・・ひょっとして、ワードック(犬人間)とか言わない?」
タニアの問いかけに、相手は一斉に頷いて見せた。
「・・・・・・・あんた達、帰りなさい・・・」
冷ややかにシャリアが言う。おおよそ相手にするのもめんどくさいと言った
表情である。
「我々を甘く見ると後悔するぞ」
ワードックの一匹が言ったが、はっきり言って彼女達に個々の差を区別する
事は出来なかった。
「やってみなさいよ!」
おきまりの台詞と共に戦いは始まった。
「聖なる光よ、我に集いて魔を伏せ」
タニアが短詠唱の魔法で、小さな魔法の矢を複数放った。
突進中のワードック二匹が、顔面に矢を受け倒れたが、残りはかわすか堪え
るかして、依然突進を止めない。
シャリアとキャシーは比較的動きの遅くなった相手に迫り、それぞれの武器
を大きく横振りし、数匹をまとめてなぎ払うが、それでもワードック達は怯ん
だ様子を見せず、各々の間合いで迫ってくる。
シャリアはバトルアックスを更に振るったが、重量型の武器はその反応を鈍
らせモーションを大きくさせる欠点がある。相手はその短所を狙っていたかの
ように、身をかがめてそれをかわすと、彼女もろともひっくり返る覚悟で、全
身で体当たりをしかけて来た。
「しまっ・・・・」
転倒したシャリアは舌打ちして体勢を立て直そうとするが、新たなワードッ
ク二匹がその上に群がり、彼女を押し倒す。
「シャリア!」
仲間の窮地を知り、駆けつけようとしたキャシーだったが、俊敏さに勝るワ
ードックは、その隙をついて背後から組み付き、彼女をも押し倒した。
「キャシー!シャリア!」
格闘は得意ではないタニア・サラ・ミアが援護に回ろうとした時、突如、床
の一部が隆起し、あっという間に壁となった。
「な、何?ブ、ブロッカーモンスター!?まだいたの?」
それは戦士達を隔てただけではなかった。気がつくと、各員がそれぞれブロ
ッカーモンスターの壁によって、分断されてしまっていた。
「しまった!」
壁に直面し絶句するミア。その背後で声がした。
「さて、お前さんの相手は我々だよ」
ミアは敗北を感じつつも、振り向きざまに魔法の衝撃波を放っていた。
「ぐわっ!」
一匹のワ-ドックが、まともに衝撃波を受け吹っ飛ぶ。
相手がこの一匹であれば彼女にも勝機はあっただろう。しかし、彼女の相手
は三匹存在した。
残る二匹は素早く左右に散ってミアを翻弄すると、あっという間に間合いを
詰めて彼女を取り押さえ、そのまま床に押し倒した。
「さて、おしまいだ」
二匹のワードックは、片手で彼女の左右の腕を押さえつけながら、もう片方
の腕と爪で器用に彼女の装備を奪っていった。
唯一の防具である胸当てが引き剥がされ、僧侶であることを示す法衣が引き
ちぎられ、魔法補助のアイテムさえ奪われた彼女は、法衣のアンダーウェアで
ある深いV字カットの水着のような布だけの姿となっていた。
「さぁ、丁重にもてなしてやるよ」
ミアの眼前に新たなワードックが現れた。いや、最初に彼女の攻撃を受けた
者である。外見からはほとんどダメージが無いように見えるが、それは全身の
毛によって隠されてるだけで、実際は痣などが数ヶ所は出来てはいた。
「何をするつもり?拷問?」
ミアは気丈に振る舞ってみせる。
「とんでもない。女は丁重に扱えとの、あの方の仰せだからな」
「あの方って・・・・・・・あっ、い、いやぁ~!」
ミアは質問を最後まで口にすることが出来なかった。最初のワードックが、
閉じられていた彼女の股間に長い舌をこじ入れ、布越しに舐め始めたのであ
る。
「はぁ、いや、や、やめて!」
両脚を振って抵抗を試みるミアであったが、それは簡単に取り押さえられた
あげく大きく開脚され、そのガードを奪われる結果となった。
無防備な股間をワードックの舌が激しく責め上げる。
「はっ・・・あ、あふっ・・・こ、こんな・・・・あ、こんな事で・・・」
悶える様相が説得力を奪っていたが、ともかくもミアは抵抗の意志を示し
た。
「もちろん、この程度で終わらせないさ。これからが本番だ」
「な、何・・・?きゃ!きゃ~っははははははは!!」
ミアは突如身震いしたかと思うと、けたたましく笑い声を上げた。
股間を舐めていたワードックが、そのまま彼女の両膝を、犬と人の中間のよ
うな指でくすぐりだしたのである。
それだけではない、左右の腕を押さえていた二匹のワードックも、舌と片手
で無防備な彼女の体をくすぐり始めていた。
快感とくすぐったさのミックスされた責めであったが、この場合、相手の力
加減もあって、くすぐったさの方が遙かに勝っていた。
「あ~ははははははは、や、やめ、やめなさい・・・・・いやっははははは
は!!」
ミアは必死に体を捩るが、腕は全く自由にならず、その一方で脚は簡単に自
由になるのだが、足をばたつかせて膝責めから逃れても、それならばとワード
ックの指は別のポイントをくすぐりにかかるため、何の解決にもならなかっ
た。
「どうかな、気に入ってもらえたかな?我々一族の舌技とくすぐり・・・絶品
だろう?」
「そんな、そんな、くははははははははは!い、いいわけ、やはははははは
は!ないでしょう、はははははは、や、やめてよ~!」
ミアが必死に訴えたとき、本当にくすぐりと舌責めが止まった。
急な解放に疑問を感じる前に、激しく呼吸を整えるミア。いまだに腕の自由
は奪われており、若干身体が舌責めによる女の火照りを感じていたが、今の彼
女にそれを自覚するゆとりはなかった。
「やはり同時はきつすぎた様だな」
「ならば順に慣らして行こうではないか」
「そうだな」
ワードック達だけによる申し合わせた会話の後、右腕を押さえていたワード
ックが、ミアにその顔を近づけて言った。
「なぁ、あんた、さっきのくすぐりと舌責め、どっちが良かった?」
とても答えられる質問ではないので、ミアは押し黙った。
「あれだけ喜んでいたのだから、くすぐりかな?」
そう言って、片手をわきわきさせ、ゆっくりと脇の下に伸ばしていく。
「はぁ、あっ、あっ、駄目、いや、くすぐらないで」
ミアは少しでも指から遠ざかろうと体を捩るが、押さえつけられては結果は
大差ない。
「ふむ、さっきも苦しそうだったしな。ではやはりこちらか・・・・」
「あっ、ああぁ~!!」
ミアが再び艶やかな声を上げた。
仲間の台詞に合わせ、股間に位置していたワードックが、再び彼女の敏感な
部分を容赦なく舐めまわし始めたのである。
そして左右の二匹も舌を伸ばし、布の隙間から乳房そして乳首を各々思いの
ままに舐めまわした。
もともとくすぐりによって、精神の抵抗が低下していたミアにとって、この
甘美な刺激は抵抗しがたい物だった。
堪えようとしても、刺激の度に体がビクリと跳ね、望みもしない声が意志に
反してもれてしまう。
人間では到底不可能な舌の動きに、ミアは不本意にも絶頂に突き上げられそ
うになる。屈辱的だと判っていて堪える事も出来ず、彼女は流されるまま、あ
っという間に絶頂へと達してしまった。
「はあっ!あっ、あっ・・・・」
今までに経験したことのない勢いの絶頂感に、ミアは体を仰け反らせ、ピク
ピクと痙攣を続けた。
だが、その絶頂がおさまり、余韻となる一瞬の間も与えず、今度はワードッ
クのくすぐり責めが始まった。
「ああああ~っはははははあはははは!!」
ミアは肺から全ての息を吐き出すかの勢いで吹き出した。無理もない。絶頂
時の最も精神の無防備状態を狙われたのだ。とても耐えられるものではない。
「きゃはははははは!いやっははははは!もうだめ、は~っははははははは!
も、もう、許して~っひゃはははははは!!」
ミアが必死に絞り出した懇願空しく、責めは続く。
大きくばたつかせていた両脚は、股間を責めたワードックに両脇で抱え込む
ように押さえられ、その指は両膝の裏をじっくりと撫でくすぐっており、長い
舌は膝を中心に太股の上をナメクジのように這い回った。
左右のワードックは、ミアの両腕を伸ばしきった状態から少し余裕を持たせ
る位置に移動させ、上半身の捩り具合に若干の余裕を持たせた。
ミア自身はそれに気づかず、必死にくすぐりから逃れようと体を捩り続けた
が、それを楽しむように、逃げる先々にワードックの指か舌が待ち受けてい
た。
左の責めに反応して右に体を捩ると、待ってましたと言わんばかりに右脇腹
をくすぐられ、左に逃げると、伸びきった右脇の窪みを長い舌が舐めまわす。
そんなやりとりが延々と続くのだ。
「ひゃはははははははは!あ~っははははははは!やめ、ど、どうして、はふ
ぁははははははははは!こ、こんな、こんな、あ~っはははははははは
は!!」
「もうだめ!あはっ!あはっ!許して、いひひひひひひひひひ!へ、へんに、
変になっちゃうわよ~~っほほほほほ!!」
しばらくの後、体を捩る体力も失ったミアは、それこそ絞り出すような笑い
声を上げて微かに悶えるだけとなった。
そして目が虚ろとなり魂が抜けたかのようになったかと思うと、力を失った
その肢体が大きく仰け反り、彼女はそのまま失神した。失神してなお小刻みに
震えるのは、夢の中でもくすぐられている証だろうか?
そんな様子を見て、ワードック達はにやりと満足げに笑った。と、同時に、
まるでそれを見ていたかのようなタイミングで、突如、三匹の頭の中に重々し
い声が響いた。
<そちらはどうだ?>
「はっ、今し方、終わりました」
姿を見せない相手に一匹のワードックが虚空に答えた。その表情は緊張で強
張っている。
<他の者も終わっている。そいつも予定通り例の場所へ送れ>
「承知しました。しかし、今回は御命令通り、全員を捕らえましたがよろしい
ので?」
常に生存者を出し、さらなる相手を呼び込む・・・・という方針に合ってな
い事を遠回しに問いかけるワードック。
<心配するな。お前達が担当したのが今回の侵入者の全てではない>
「左様でしたか・・・・」
それは彼等の察していない別働隊の存在を示唆していた。例え彼等ワードッ
クの感覚にも感じ取れなくても、声の主がそう言うのであれば間違いはない。
<アレを目覚めさせるには、まだまだ足りん。当面、このままの方針で生贄の
訪問を待ち続ける>
「承知しました」
返礼の後、ワードックの心にのしかかった威圧感が途切れると、ワードック
達は開放感にため息を吐き、無言のままミアを抱え、与えられた指示を遂行す
べく通路の影に溶け込むように姿を消して行った。
作品を書いてらっしゃる方々は、オリジナル・キャラの名前をどの様に考え、
決定しているのでしょうか?
私は結構悩みます。脳裏に思い浮かぶ名は多々あるのですが、既存キャラの名
前だったり、自分がどこかで聞いたことのある名前であったりして、それとイ
メージかぶったりしたりします。
特に塔では、1度きりのキャラが多いので、名前作りは難儀します。
まぁ時には、その名を持つ既存キャラをイメージしてる場合もありますが・・
・・・
そう言った意味では、既存キャラを使う方が、イメージも出来上がってるの
で、その点は扱いやすいですね。
また機会を見つけて、既存キャラを餌食にしたいものです・・・・