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2011/03/05(土)に投稿された記事
くすぐりの塔 After Story -魔王の後継者達- 第1章-徘徊編-(2)
投稿日時:16:26:59|コメント:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
「たっ・・・助けて下さい」
そう言って現れた青年は、武器を構えたウェイブとタールの眼前でへたり込んだ。
タールは素早く周囲を警戒し、ウェイブは樹海を歩き回るには自殺行為とも思える、変哲のない普段着姿の青年男性の様子を伺った。
「・・・・・・・追っ手はなさそうだが?」
周囲の闇の中に敵対者らしき気配がない事を確認したタールは、剣を収めて青年を見やった。
「・・・・・・・・あんた・・・・人間じゃない・・よね」
しばらく様子を観察した後、ぽつりと語りかけられた一言に、男は顔を上げてウェイブの観察眼に対する驚きの表情を見せた。
「ど、どうして?」
「何となく・・・・かな、何となく雰囲気が人間のそれとは異なってる。ひょっとしてライカンスロープか?」
「い、いえ、そうではありません。確かに私は純正の人間ではありませんが・・・・私には僅かですがエルフ・・・・正確にはハーフエルフの血が混じっているそうです。曾祖父の母がそうだと聞いています」
男は血筋に負い目があるのか、どこかばつの悪そうに言った。
「ふ~ん・・・・」
ウェイブは納得したようなしなかったような曖昧な頷きをしたが、それ以上種族に対する無意味な追及は行わなかった。
「どうしたの?」
とりあえず本題に入ろうと、事の次第を相手に尋ねようとするよりも早く、ウェイブの背後でカレンの声がした。
今し方の騒ぎを聞きつけたのか、お愉しみが終わったのか、不満足が声に現れていないところを見る限りは後者のようであり、状況的にも良いタイミングと言えた。
「よくあるトラブルが飛び込んできただけさ」
不意な訪問者が視線を声の方向に向け、一瞬遅れてウェイブが振り向いた。
そこには黒地のハイレグレオタードを思わせるアンダーウェアのみを身に纏ったカレンが湯上がりの様にタオルを片手に立っていた。
ミファールのとの行為の直後であるため、その肌は上気してほのかに紅く染まり、所々に残っている粘液状の物体が更に艶やかさを強調していた。
ウェイブにとっては、この姿は見慣れた物だった。だが、初顔合わせとなる彼にとっては強烈な刺激となったらしく、頬を染め、呆けた表情でカレンを凝視していた。
身体のラインがはっきりと分かる完全密着・薄手のアンダーウェア一着のみの美少女を、何の予告もなしに目の当たりにすれば当然と言えるだろう。
「どういったトラブル?」
男の好奇の視線を意に介さず、彼女は問うた。
「まだ聞いてないが、流れ的にはよくあるパターンだ」
旅の途中の冒険者一行に、村人が助けを求める。構図から見れば、確かによく聞く出来事である。
「でも、よくあるトラブルって言っても、街道ならともかく、こんな樹海で村人Aが現れて助けを求めるなんて、不自然じゃない」
「それを聞こうとしていたところだ。とにかく彼の追手とかが来るかも知れないから、一応装備を着用してくれ」
「はいはい・・・」
言ってカレンは一旦後ろに退いた。その姿が闇と樹に隠されるまで、男はそれを目で追っていた。
カレンが装備を調えるまでに10分もかからなかった。もともと生きた鎧であるミファールは、カレンの意志で瞬時の脱着が可能であり、もっぱら自分の体液とミファールの粘液まみれとなっていたアンダーウェアを着替えるのに時間を要していた。
「それじゃ、事情を聞こうか?」
「は?」
先程のセクシー路線の着衣とうって変わって、悪趣味としか言いようのない生物的デザインのレザーアーマーらしき物を装備したカレンに意識を集中していた男は、急な問いかけに速答できなかった。
「助けてくれと言った理由と内容、そして状況だ。でなきゃ、俺達がどう動いていいのかさえ分からないだろ」
「ああっ・・・はい」
体格的に倍以上あるタールに詰め寄られ、男は怯えて頷いた。
男はフェイと名乗り、事のあらましを説明した。
彼はここからそう遠くない所にある、人間の住む隠れ里の一員であると言う。
彼等の里は、大昔の大戦で残されていたモンスター封じの封印の効果や武器に頼って、自分達のささやかな生活圏を守りながら、細々と暮らしていた。
そんなある日、封印の効力が突如として失われ、里はモンスターに襲われ人々はモンスターの娯楽の奴隷とされたと言う。
彼は、助けを求めるべく里から抜け出し、人里へと向かおうとしたところ、ウェイブ達のキャンプに気づいて近づいたのだと説明した。
「・・・・・・・・・それで、里を開放できた場合の報酬は?」
話が一段落し、内容が把握できた途端、唐突にタールが最終的結果を問うた。その露骨さにカレンとウェイブは無言のまま視線を投げつけるという非難を行ったが、当人はそれを平然と受け止めた。
「本来、こんな森の深層部への救助となると、雇われるのは間違いなく傭兵達になるだろ。しかもそこはモンスターの領域だ。こんな危険この上ない依頼に見合う見返りはあるのか?」
それは当然の意見だった。だが、状況を推測すれば確約できる報酬が準備できていての依頼とも思えない。ましてや、人間の生活圏とも離れた場所にある孤立地で準備できる報酬もたかがしれている事だろう。
「・・・・そうだな。俺達にも本来の目的がある以上、無駄な回り道は遠慮したいところだな」
そうした現実的状況を考え、ウェイブもタールに同調する意志を見せた。
「何言ってんのよ・・・・・」
「それなら・・・・」
カレンが仲間の非人情的発言に対する抗議をしようとした矢先、フェイが先に口を開いた。
「里の遺跡で時々出土する古代の武具を好きなだけお渡しする・・・・と言う条件が用意できています」
「「・・・・・・・マジ!?」」
何気ない発言であった。それ故、期待を抱かず聞き流すようにしか聞いていなかったタールとウェイブであったが、内容を正確に把握した途端、目の色を変えて同時に詰め寄った。
「え、ええ・・・・みんなを助けてもらって、出来れば安全な森の外の世界に脱出さえして頂ければ、我々には不用な物です・・・ですから・・・」
「「引き受けたぁ!」」
またも二人は同時に言い放った。
古代武具と分類される装備の大半が現在のそれより質が良いのは周知の事実であった。その為、どんな物であっても本物でさえあれば、その価値は非常に高く、自分達に合わない装備であっても、金銭的には莫大な額になるのは保証済み・・・・となっている。
基本的に冒険者・傭兵家業であった二人には、この条件はこれ以上ない破格な物だったのである。
「露骨ね・・・・・」
そんな中、カレンだけは冷ややかな目を二人に向けていた。武具に関して言えば現有品で満足しており、金銭に関してもかなり高価な宝石類をいくつも隠し持っていたため、そう言った条件に魅力を感じなかったのである。
「いいじゃないか、カレンも見捨てるのには反対なんだろ。結果的には・・・・」
「違うわよ」
ウェイブの反論を遮ると、カレンは彼に耳打ちした。
「こんな森に住んでいた連中なら、目的地の噂か何か知っているかもしれないでしょ。せっかくの情報収集のチャンスをふいにするつもり?・・・・って言いたかったのよ・・・・結果的には確かに望む形にはなったけど・・・・」
「あっ!」
言われてポンと手を叩くウェイブ。
『目的地』に関する情報収集は現地民から聞くのが良いだろうと言う基本方針は確かにあった。ただ、この樹海においては、それがモンスターばかりであったため、情報はモンスターから聞くものだという誤った解釈が生じていた上に、報酬そのものに目が眩み、その問題すら忘れていたのである。
「判った?」
「ああ・・・・すまん」
「あ、あの・・・・・・」
なにやらウェイブ達が相談事をしているのを見て、フェイが心配そうな視線を向ける。
「ああ、心配なく。依頼は俺達が受ける。明朝、その里とやらに向かって早速出発しよう」
「・・・・え?他の仲間はいらっしゃらないんですか?」
フェイは驚いた。彼はこの三人は、どこかの部隊の偵察隊だとばかり思っていたのである。
「ああ、俺達だけさ」
タールの当然と言わんばかりの態度は更にフェイを驚かせた。
「そんな、相手は・・・モンスターは多数多種存在するんですよ」
「心配するな。既にここまで、三人だけで来たんだ。闘い方にルールさえ設けなければ、一人で群の一つや二つは問題ない」
当たり前の様に言われた発言は、彼等以外の人間の平均基準からすればとんでもない物であった。一同がそろってずば抜けた実力の持ち主であるがための、常識基準のズレであった。
「・・・・・あの・・・・あの人もですか?」
自分と相手の解釈に大きな差があることを感じ取ったフェイは、この場で唯一の女性を気まずそうに指さし、抱いた疑問をウェイブに問うた。
「ん?カレンか?そうだよ」
本来とは全く反対になるであろう内容を、ウェイブは軽々と口にした。
「多対一と言う条件なら、彼女の方がよっぽど効率がいい闘いをするよ」
「効率?」
「彼女は魔法使いさ。基本戦術は『一気にまとめてドカン』ある意味、俺達剣士より質が悪いよ」
「そ、そうですか・・・・・」
どこまで本当なのか、フェイには容易に判断がつかなかった。だが、見る限りではそれを納得するしかないと彼は思う。
彼女の周囲には魔法使いお約束の、魔法発動の触媒とも言うべき宝玉付きの杖は無かった。冒険者向きとして、指輪型の発動体も存在するが、彼女の指には指輪の類は一切なかったものの、腰に装備している短剣の柄に宝玉が埋め込まれており、これが発動体となっているのだろう事がうかがえた。
また、彼女の腰には短剣だけでなく、ショートソード程の長さに切りつめられた細身の剣であるエストック(刺す事に重点をおいた剣)も装着されていたが、ウェイブやタールの剣と比べると、使い込まれた様子が少なく、あくまで予備的な装備であり別の攻撃手法、つまりは魔法の存在を物語っていた。
もとより、辺境の悪の魔女か、おとぎ話に出てくる大魔王の娘を思わせるような鎧を身に纏っていれば、黙っていても主攻撃は「魔法」といった偏見を抱かれるのも事実であった。
そう観察することで、体格などからしても彼女が近接戦闘向きの存在ではないと理解するフェイであった。
翌朝、危惧した追っ手の襲来もなく、無事に夜を明かす事の出来た一行は、日の出と共に出発し、フェイの案内に従い、森の中を確かな目的地に向かって歩いていた。
「・・・・・それじゃ、里に攻め入る前に皆を解放した方が良いって事だな」
道中、歩きながら作戦会議を行っていた一行は、フェイのもたらした情報から、モンスター達の構成を知った。それを吟味し、感じた必要性をウェイブが確認するように言った。「はい。数は多くても知能の高い個体の指示を受けている者がほとんどのようで、乱戦になってしまうと、理性的行動をとるとは思えません・・・・」
頷くフェイ。
「本来は群の頭を潰すのが基本的な手だが、それによって混乱して周囲の人間を手当たり次第に襲う可能性が高い・・・か」
「意外にやっかいなミッションになりそうだ」
ウェイブの推測にタールが面倒臭そうに表情をゆがめた。見かけ通り、彼は細かな行動が苦手であったのである。
「人質救出なんだから当然と言えば当然よ・・・・でも、実際どうしよう?」
カレンも妙案を出すことが出来ず、自他に向けての疑問形をなげかける。これまでに彼等が請け負った仕事の中にこうした依頼はなく、不慣れな内容に、成功の自信がまだなかったのである。
「全滅目的なら、奇襲って方法で手っ取り早く行けるんだけどな」
お気楽に言うタールではあるが、そうした内容に変更される可能性は全くない。
「その時、都合良く里の人達が一箇所に集められていたら、そこを死守するって事で、話がすんなり行くんだけど・・・・」
ウェイブは一応、タールの意見を実行した場合の成功パターンを想像して話を進めたが、これは実現性の低い楽観論でしかない事は、彼自身が自覚していた。
「そうそう上手い具合にはなってないでしょうね」
「だよな・・・・」
一同が思考に行き詰まり、足音だけが彼等の聴覚を刺激した。
「・・・・・削って行くしかないかな・・・・」
「削る?」
ぽつりと呟くウェイブに、タールが素早く反応した。
「効率は良くなさそうね?」
その言葉はカレンの耳にも届いており、口調からそれを察した彼女は、内容を確認するように問いかける。
「ああ、とにかく連中の前に姿を現して退く。当然来るだろう追っ手を始末して、増援を誘う・・・・これを繰り返して、里が維持できないほどに数を減らす。その上で、タールの望む全滅戦へと突入する」
「のった!」
熟考することなくタールが即答する。
「ちょっ・・・タール!今の案の意味判ってるの?すっごい手間なのよ」
「変に気を使って闘うよりは気楽でいい」
ふんっ!と、ガッツポーズで意気込みをアピールするタール。
「そりゃ、貴方はいいでしょうけど・・・」
カレンにしてみれば、タールは無限の体力を持っている様にも見える。必要であれば持久戦も仕方なしとは考えるものの、彼の基準に合わせて挑みたくないのが正直な思いであった。
「ねぇ、その案に改訂を何とかして加えられない?」
下手をすれば案なしという言う事で、そのまま勢いで実行されかねない危険を感じ、カレンは発案者に助けを求めた。
「・・・・そうだね・・・」
心情的には彼女と意見を同じにするウェイブは、不必要なリスクを回避すべく、追加事案を模索する。そうして一分ほど考えた後、彼は若干ながら手間を短縮する方法を考えつく。
「襲撃前に、里の前で派手な行動を起こして、最初っから大軍を誘き寄せるんだ」
「派手な事?」
嬉しそうにタールが言った。そしてその内容に興味を抱く。
「まぁ、手法は何でもいいけど、とにかく相手に大軍の襲来だと思わせるんだよ。理想としては里には最低限の守備兵だけが残って、あとは全モンスターが迎撃に出る・・・・って状況が理想なんだけど・・・・」
「それで一気に蹴散らすわけ?」
内容的には自分が作戦の要になるのかという確認の意味合いを含めてカレンが問う。
「いや、聞いた話で想像する数だと、いくら何でもカレンの広域魔法でも全滅は不可能だよ。逃げ戻った敵が里の人に対して報復行動に入る可能性もあるだうしね・・・・」
「それじゃぁ、どうするつもりよ?」
「だから、最初に誘き寄せるって言っただろ。そうやって大軍が里から離れた隙に、一人が反対側から里に侵入して里の人を助け出して安全を確保する。それが出来たら合図を送って、あとは思いっきり・・・やる」
「のった!」
またもタールが即答する。
「いや、だから・・・・」
「あの・・・」
タールの短絡思考をカレンがたしなめるより早く、忘れかけていた存在であるフェイが口を挟んだ。
「?」
「もしその案で行かれるのでしたら、私にも一つ提案・・・・と言うか情報が・・・・」
「「「情報?」」」
一同が揃ってフェイに視線を向ける。
「はい・・・・その・・混乱に乗じて里に侵入する件ですが、確実にモンスターの見張りに見つからずに潜入できる方法があります」
「何?」
思いもしなかった発言にウェイブが驚きの声をあげる。
「昨晩、里に遺跡がある事はお話したと思いますが、その時代の物と思われる抜け穴と言うか通路跡が幾つかありまして、それを使えば里の中まで辿り着く事ができるんです」
「確かかそれは?」
「はい・・・古く、大半は埋没した状態ですが、確認されている穴が幾つかあります。私もそれを使って里を抜け出したんです」
「・・・・・」
ウェイブはそれを聞いて思案した。里に侵入する者は、その役割の性質上、里に到達するまでは敵に見つからない事が望ましいのは確かであった。
万一、里に着く前に偶然にでもモンスターに遭遇し、連絡でもされれば、それでこの計画は失敗と言っても良いだろう。その危険性を回避できるならばそれに越したことはない。
だが実際には、この作戦が失敗しても、偶発的で必然性もない出来事でもあるため、彼等の心はそれ程痛まないが、魅力的な報酬があるからには成功した方が良いのは当然であり、万全を期したいと考えるのはごく普通の思考であろう。
「判った。その抜け穴を利用しよう・・・・と、その前に聞きたいが、あんた、その抜け穴の道案内出来るか?」
「え、ええ、もちろん」
「なら、手伝ってもらうぞ」
有無を言わさない口調でウェイブは言った。
「は、はい?」
「里を救うために協力してくれって、言ってるんだ。人手不足でもあるしな」
「あ、でも・・・・」
「闘いにまで参加しろとは言ってない。案内だけだ」
「わ、判りました・・・」
取りあえず身の安全が確認され、フェイは小さく頷いた。
「・・・・と、言う訳で、この案でいいか?面倒くささは変わらないが、上手く行けば以外に短時間で決着がつくが・・・」
「のったぁ!!」
タールが叫ぶが、彼に対してはもはや確認の必要もなかった。
「カレン?」
「いいわよ。それで、でもモンスター連中との会話のチャンスも忘れないでよ」
「数が多いんだ。それはカレンがやれ、俺は全力でやる!」
意気揚々とタールが剣を抜く。もはや彼の意志を遮ることは不可能である事は、誰も目にも明らかだった。
「なら、各員の役割分担だけど・・・・」
「俺は戦闘組だぞ!」
「言わなくても判ってるよ!決めるのは、私とウェイブのどちらが侵入担当になるかよ・・・」
「あの・・・それですが、出来ればカレンさんに同行していただきたいんですが・・・」
当事者と問題を本格的に検討するより先に、フェイが要望を述べた。
「そりゃまたどうして?個人的好み・・・・なんて答えだと即却下だが」
「そうではありません」
フェイは力強く否定する。
「里への抜け穴・・・・つまりは今回の侵入路ですが・・・・」
「何か問題でも?」
言いづらそうな様子からその事を察したウェイブが問うと、フェイは首を縦に振った。
「タールさんはもとより、ウェイブさんが通るのは不可能なんです」
「・・・・・狭いのか?」
一瞬、深刻な問題かと勘ぐったウェイブであったが、タールを比較対照とした発言で、その内容を悟った。
「はい。私でやっと・・・なので、ウェイブさんでは」
「成る程な・・・・」
ウェイブは自分とフェイの体格と装備を比較して納得した。身長に大差はないものの、職業の差が体格に現れていたのである。
「それに、カレンさんが最も多対一の広範囲の闘いに適している魔法使いと聞きました。ならば、里にさえ潜入できれば、皆を守りながらの闘いも可能かと・・・・」
「確かにな、目的である里の人の安全さえ確保できれば、残りの大量虐殺はカレンの方が遙かに上だ」
「ちょっと、人を悪魔みたいに言わないでよ」
事もあろうに、風体ならタールの方が相応しいだろう虐殺者と言う呼称を、その当人に言われ、カレンが不満をもらす。
(実際、似たようなもんだけど)
ウェイブもタールも彼女の否定的発言に思うところはあったが、無用な論戦を避けるために、実際に口にするという愚行は行わなかった。
結局、フェイの主張に対して大きく反対する要因が特になかったため、カレンとフェイが侵入組、タールとウェイブが揺動戦闘組として、里解放作戦が実行される事となった。
こうして基本方針が定まると、計画は即、実行された。
見張り担当となっていたリザードマン(トカゲ人間)の一隊は、今し方仕留めた獲物に貪りつき、小休止していた。
それは、この樹海ではありふれた光景だった。勝者の獲物は大きな猪二匹で、それに七匹のリザードマンが集っていた。
例え仲間との共同で仕留めた獲物でも、一同の中に「長」的立場の存在がいなかったため、食事も奪い合いとなっていた。
誰もが一番美味い部分を喰らおうと、より多くを腹に詰め込もうと躍起になっていた。意識が完璧に食欲に集中していたその時、突如、立ち並ぶ樹の中の、とりわけ大きな一本が前ぶれ無しに倒木し、猪を貪っていた1グループを下敷きにした。
「!?」
難を逃れたもう一方のグループ三匹は、唐突な出来事に硬直し、何が起きたかをすぐには理解できなかった。
だが、倒れた樹の根本に立っていた二人の人間、特に大柄な男がこれ見よがしに大きな剣で肩を叩いているのを見て、事態をおおよそ把握した。
(敵対者!)
彼等にはそういう判断だけで十分だった。
残った三匹は咆吼をあげ、棍棒・石槍と言った古めかしい武器で襲いかかったが、二匹がタールの剣の一閃でまとめて吹っ飛ばされ、残る一匹も突き出した矛先をウェイブに軽くいなされ、すれ違い様に抜き放たれた剣で横一文字に両断されていた。
「まるっきり雑魚だな」
「この手のモンスターは、群でいてこそ強敵だからね」
などと言うが、普通の人間からすればリザードマンの表皮の鱗は硬く、切り倒すのはそう容易い相手ではない。全ては彼等の力が抜きん出ている所以である。
「大きな騒動を起こしておびき寄せ・・・・って手はずだったが、こんな小グループをちまちま潰すんじゃ、最初の没案じゃないか」
緒戦のあまりの手応えの無さに、タールが不満をもらして剣を収める。
「いや・・・・・・・そうでもないみたい」
落胆していたタールをウェイブが否定した。彼は周囲の状況の変化にいち早く気づいていたのである。
「?」
タールがその言葉の意味を悟るより早く状況は変化した。周囲の木々の影や森の奥からモンスター達がぞろぞろと姿を現したのである。その数、目算でも軽く百匹を超えている。
全て、人間と動物類が合わさった様な系統のモンスターであり、動物特有の威嚇の唸り声をあげながら、手にした武器を構えている。
「こりゃまた・・・・・仲間の唸り声を聞きつけて来た他方面の偵察・・・・にしては大勢だな」
周囲を囲むモンスターを見回し、他人事のようにタールが言った。
「偵察じゃなく、明らかに討伐だよ」
速やかに訂正するウェイブにも、動揺は見られなかった。が、危惧する問題は生じていた。
「討伐?俺達の他に誰か来ているのか?」
「さぁ?数からして相当な集団が相手なのかもしれないけど、仮にこの連中が俺達を待っていたとしたら・・・・?」
大軍の対処を想定したように思えるこの数を見れば、自分達の知らないどこかに、目的を同じとする集団がいる可能性があるように思えたが、人間の生活圏からかけ離れた樹海の深部でそうしたケースが生じるのは皆無といえる。
これらは全ては並はずれた戦闘能力を持つ相手に、数で対抗するためのものであるとすれば、それは即ち、待ち伏せという罠でしかない。
この様に相手を待ち伏せ出来るのは、その行動が読めていたからに他ならず、その為には偵察による情報収集が常であるが、存在も知られていないはずの彼等に対して偵察が派遣されていたとは考えにくく、他にあるとすれば自分達の情報が事前に知られていた可能性があげられる。
そうした前提で考えると、それが可能なのは一人しかいない。
・・・・・それを示唆させるようにウェイブは言ったつもりだったが、相棒のタールにはその緊張感は伝わらなかった。
「好都合!」
雰囲気を盛り上げる問いかけに、誤った解答を示すタール。彼にとっては事の経緯と状況より、結果が当初の予定通りであれば問題はないようで、言うが早いか、彼は大剣を構えてモンスターの群れに突進していった。
「いや、そうじゃなくて・・・・・」
その背を見送ったウェイブが呆れ顔で呟くが、当然その声は彼には届かない。もうそれどころではなかったのである。ウェイブも腰に吊したもう片方の剣を抜くと、二刀流を持って混戦の中に突入していった。
「成る程・・・・確かにタールやウェイブじゃ無理ね」
フェイの案内のもと辿り着いた、獣の穴としか言いようのない抜け穴を四つん這いになって進んでいたカレンは、その狭さを肌で実感し、擦れる岩肌で鎧や服、そして髪が汚れるのを不快に思いつつ黙々と前進していた。
「で、あとどれくらい進むのかしら?」
彼女は背後に続くフェイに声をかけた。遭遇戦の可能性を考慮し、先頭は彼女が勤めていたのである。
「このペースなら15分位・・・・・かと思います」
やや疲れた声でフェイが応えた。
「ふぅ、結構あるわね」
愚痴るカレンであったが、既にこうして半分以上の距離を進んでいるとあっては、引き返す事も馬鹿げている上に、身体の向きを変えることもままならない穴の中では、後退は更なる体力消耗を意味していた。
更に言えば、この行為は目的達成のための必要条件である為、引き返すと言う選択が選べない以上、彼女はお尻にフェイの視線を感じながら前進するしかなかった。
そうして進むこと十数分。
進行方向から外部の光が射し込み、彼女達のハイハイ進行が終わりとなる事を告げた。
カレンは後方のフェイに手で合図すると同時に、視界確保用に発光させていた鎧の肩部の光を消し、そのまま前進して穴の終着点から外をそっと覗き込んだ。
そこは長い年月によって構築された天然の空洞となっており、壁面天井の各所が浸食で穴をあけ、外の光を取り入れていたため、闇で視界が覆われる事は無かった。
ちょっとした歌唱ホール程の広さがある空間となっており、今そこでは、人間にシルエットが近いモンスター達が主となって、人間の女性を玩ぶ宴が催されていた。
「はぅっ・・・・はくぅうふふふふふふ・・・うっ・・はぅっ!」
地面に打ち付けた杭に下着姿で後ろ手に縛られた上に、あぐらの姿勢で座らせられ、左右の足首を縛られた少女が、背後に立つ小柄でカエルの様な顔をしたモンスターに羽箒で玩ばれていた。
「ぅ・・・・く・・・・・はぅっくぅぁんっ」
モンスターは両手に持った羽箒をゆっくりと少女の太股に徘徊させていた。膝頭から脚の付け根付近を何度も行き来し、その柔らかい羽先が脚の付け根に近づく度に、彼女の脚がピクリと震え、加えられた刺激に歯を食いしばって堪えていた。
「ほれほれ、もうそろそろ限界かぁ?」
少女の背後でそうした必死に堪える様子を窺っていたモンスターは満足そうに笑むと、反応の著しい脚の付け根周辺に対する刺激を強めていった。
「はぁぁっ!・・・・あぁ・・・ひぁっ!」
付け根の下着ラインにそって羽先を這わせたり、周辺で何重もの円を描いたりと、羽箒の一動作の度に、少女は声をもらして身を捩る。
そのムズムズとした刺激から何とか逃れようと抗うが、足首をしっかりと拘束されているため、脚を閉じる事もかなわず、その敏感なポイントをさらけ出し続けた。
「んんっ!ん~~~~~~~~~!」
食いしばる口からどうしても漏れてしまう声を何とかしようと、必死に堪えながら気を紛らわそうと激しく首を振るが、その責めから逃げ出せない以上、そうした抵抗も無意味であり長続きはしない。
「ほ~れ、これには耐えられるか?」
浸水の様にどんどんとその量を増す刺激に少女は必死に抗い続けたが、穴を塞ぐことなく手で水を掻き出すかのごとき抵抗は長続きするはずもなく、その上、別の穴から新たな浸水が始まった。
「ひぁっ!あひっあひゃぁぁっ!あぁひゃぁっっっははははははははははは!!な、なぁひゃっっっははははははははあぁぁぁ!!!」
首を振って精神的抵抗に必死となっていた少女の両側に、新たなモンスターがそっと近づいて、全く意識していなかった脇腹を絶妙な力加減で揉みくすぐりだしたのである。
この全く予想外の刺激に、少女は左右に振っていた頭をいきなり仰け反らして拘束用の支柱に頭をぶつけたかと思うと、痛がる様子も見せずに今度は身体を前のめりにし、不自由な身体全体をくねらせて笑い悶えた。
「あはっあははははははあははっあひゃぁっっははははははっ!!そっそれぇやめぇっっっははははははははは!!」
前のめりにせよ、くねらせるにしろ、拘束状態の彼女の現状ではそれすらも満足に行えず、暴れ狂うことでくすぐったさを与える手から逃れる事さえも満足には行えなかった。
「ん?どうした?くすぐったいか?なら逃げ出せばいいだろ、ほれほれ」
「く、くるしっひゃっはははははははははは!あ~っっっっはははははははははは!やめ、やめ、やっ、やっ、やひゃはははははひゃひひひひひぁっっはははははは!!」
杭を折ろうとする意図があるのか、少女は全身を目一杯前屈みにしたまま身悶える。そうした必死の抵抗も、今責められている箇所を覆い隠すことは適わず、絶え間なく続くくすぐったさを緩和する事はない。
「ひぃっ!ひあぁっはははははあはははははは!はひっはっはひっ!あっあっああぁっっははははははっひっひぃっくぁっははっはははははは!」
息が詰まりながらも笑いを堪える事が出来ず、引きつり苦しみながらも笑い続ける少女を楽しそうに責めていた羽根箒を持ったモンスターは、一旦、脚への責めを止めると、その羽先を彼女の背後へと移動させた。
それを見た左右のモンスターは、脇腹への責めを若干緩和して、僅かながら彼女に余裕を持たせた。
「ふっうくぅっ・・・・はひっ・・・・・はぅっ・・・・」
少女にはその変化や意図を察するゆとりはなかった。だが緩まった責めに対する反応は身体が素直に反応し、狂うような笑いは治まりを見せる。
「さぁ、今度は・・・・」
そうしたタイミングを見計らって、羽根箒を持ったモンスターが、前のめりで全くの無防備状態となっていた背筋を、下から上へとおもむろに撫で上げた。
「はひぃっっ!!」
これまでと全く異なったポイントに不意打ちを受けた少女が反射的に身を仰け反らす。
「はっぅっ!あっ!ひゃっん!」
羽先が下から上へと何度も繰り返し這う度に、少女の身体は小さく弾け、仰け反らしたままの身を震わせる。そして同時に左右で手加減していたモンスターの脇腹揉み攻撃が再びその激しさを増した。
「きゃぁああああっ!!あっああぁぁっっははははははははははははははは!いやっっはははははははははは!!」
前と後ろ、脇腹と背筋を同時に責められた少女は再びけたたましい笑い声をあげながら、水揚げした魚のように身を前後にくねらせる。
「良い反応だぜ、でもよ、そんなに暴れるとヤバイんじゃないか?」
そうして執拗に責めながら、羽根箒のモンスターは片方の羽根箒を這わせながら、もう片方の羽根箒の柄で彼女のブラの留め具付近をグリグリと刺激する。
もともと彼女の身が激しく動き回っている事も手伝って、ブラジャーのホックが外れ胸の拘束が弱まり、均整のとれた美乳がこぼれ出た。
「やぁぁぁ!」
恥ずかしさに頬を染めた少女が身を捩る。本当は腕で露出した胸を隠そうと思ったのだが、後ろ手に縛られた手が自由を取り戻せずに、結果としてノーブラとなった胸を揺さぶるだけに止まった。
「へへへ、出た出た」
背後からその様子を覗き込んでいたモンスターが嬉しそうに言って、左手を回り込まして少女の左乳房を掴んで押さえると、もう一方の、羽根箒を持った右手を回り込ませて掴まれた乳房の先端にその羽先を触れるか触れないかのタッチで這わせた。
「はぁっ・・はぁぁぁん」
乱暴に掴まれ、苦痛に近い感覚を受けていた乳房の先で生じたソフトな感覚に、少女がたまらず甘い吐息を吐いた。このままこの手の刺激を続けていれば快楽に溺れさせる事も不可能ではなかったであろう。だが、このモンスター達はそうした趣向に興味を抱かなかった。
彼等は彼女が快感の方に意識が向いた瞬間に、一匹が半開き状態の脇の下へ、もう一匹が拘束状態の足裏に指を添え、それに少女が気づいたのと同時に、その指を淫靡に蠢かせた。
「はぁっっはははははははははははははは!!いやっはっはあはははははははは!!はぁっはぁぁぁんんん~~~ふぁやぁっはははっはははははははは!ひっひゃひっぃひひひひっへ、へぇやぁっひゃははははははははっ!だぁぁっ~~~~~」
胸の先の快楽と二箇所のくすぐったさの同時攻撃は彼女の感覚を翻弄した。微妙な快楽とくすぐったさは不規則に彼女の脳内を荒れ狂い、彼女の身体は反応するままに暴れたが、胸を掴むモンスターの手と、脇の下の潜り込んだモンスターの両手が暴れる身体を抑える役割も果たし、彼女のただでさえ狭い行動範囲は更に制限を受け、ほとんどの自由を失う形となっていた。
「へっへへへ、気持ちいいのか?くすぐったいのか?どっちだ、えぇ?」
羽根箒のモンスターは少女から手を離して前に回り込むと、他の二匹のモンスターに少し場所を譲って貰いながら、責められて艶やかな表情となった彼女の表情を眺めた。
もちろんその問いかけに答えられる状況の少女ではなかった。胸の刺激がなくなり、くすぐったさのみが身体を駆け抜け、それどころではなかったのである。
もちろんモンスターも返答を期待してはいなかったため、そうした反応に関わらず、手にした羽根箒を唯一の着衣部位に近づけた。
「ひゃひひひひひひっ!あひゃははははあぁっ!あ、そこはぁ・・・きひひひひ」
その羽がどこを目指しているかを悟った少女が身悶えながらも身を揺すり、逃避を試みるが、それは当然ながら適わぬ事だった。
「やひひっやぁっははははっ、だめ、そこっ・・あひっ!あくぅぅぅん」
モゾモゾと腰を揺るし少しでも羽から遠ざかろうとしていた股間に、遂に羽先が追いつきその敏感な箇所を布越しにそっと撫で上げると、突き上げる様に生じた感覚に身を貫かれ、たまらず少女は身を仰け反らした。
「いやっ、いやっははははっ!はひっ!きゃっははは~~あははははははっ!きひひひひはやはははぁぁぁん!」
先程の責めを上回る快楽と、それに混じって襲いかかるくすぐったさに翻弄され、少女がいやいやと首を振り乱し、懸命に沸き上がる感覚に耐えた。だが、終わりのないモンスターの責めの前に、その抵抗は無意味な行為でしかない。
少女の意志は必死に刺激に耐えようとするものの、その身体は敏感に反応を続ける。特に股間に対する刺激には堅調な反応が生じ、下着は汗と、それとは別の滲み出す物によって透け始めていた。
「へへへへ・・・・笑いながら感じ始めやがった」
羽根箒のモンスターは少女の羞恥を煽るように言うと、透け始めた割れ目に沿って、羽を添えると、ノコギリのようにそれを前後させた。
「はひっぃ!!はぁぁぁぁぁ~~~~~~~ん!!い、いっ、いやぁぁぁぁあひゃっっはははははははははは!!」
更に激しさを増した快感に悲鳴をあげる少女。だが、くすぐりを行っているモンスターも負けじと指の動きを激しくし、その身体を嬲り続ける。
その場から逃れる術のない少女は良いように快楽とくすぐったさに翻弄される。もはや精神的な抵抗も役にはたたず、螺旋を描いて同時に襲いかかるかのような二つの感覚に翻弄され続ける。
このままでも十分に陥落するだろう少女ではあったが、モンスター達はこれで妥協せず、更に辛辣な責めへと状況を進ませた。
羽根箒のモンスターがその手を休ませたかと思うと、両人差し指を付きだし、その鋭い爪を伸ばして、その切っ先を少女の最後の着衣であるパンティの両サイドへと引っかけた。
「やだっ!やははっははははははは!そ、そこおわぁっっははははははははは!駄目っ!いやぁぁぁぁ!!!」
何を意図しているか一目瞭然の状況を見て、少女が最後の羞恥心を絞り出して抵抗を試みるが、奇跡的脱出や慈悲は訪れなかった。
モンスターの爪は下着に引っかけられ僅かに引っ張られただけだったが、くすぐりに悶える彼女自身の身体がその目的を助けるかのようにして下着への負担を増長させ、程なくして下着の両サイドは切断され、遂に彼女の秘所をもさらけ出す結果へと至る。
「いやぁぁぁぁぁっっっ!!!」
羞恥にこれ以上なく頬を染め、不可能と分かりながらも脚を閉じようと足掻く少女。その無駄な抵抗を眺めて楽しみながらモンスター達はくすぐり、そして秘所への直接的な羽責めを続ける。
「!!!!!!!!!」
間もなくして、その圧倒的な刺激に直面した少女は息を詰まらせた状態のまま声にならない悲鳴をあげて、悶絶した。
そうした女性に対する凌辱はそうした趣向だけではなかった。
同じく地面に打ち付けた二本の杭の上に女性の足首を固定して素足にし、無防備な足裏、そして閉じることが困難となった股間を指先や爪や舌で嬲る者。
地面に直径1メートル程の穴を掘り、そこを粘液にまみれた蛇程のサイズのミミズ状生物で満たし、その直上に吊した女性を上げ下げして、穴に沈めたり上げたりを繰り返す者。
台座に女性を仰向けかつ手足を伸ばしきった状態で拘束した上に、身体にクリーム・蜜・果実を大量に塗して、それを箸のみならず舌や口で食して楽しむ者。
そうした女体を利用した宴が空洞内の各所で催され、責め側のモンスターの下品な笑い声と、責められ側の女性の悲痛とも艶やかとも大らかとも思える笑い声や悲鳴が反響し、合唱にも聞こえる様相を成していた。
「?」
そうした惨劇を、敗者の末路の典型的傾向だと冷静な目で見ていたカレンは、ふと違和感を抱いた。何となく・・・・何か腑に落ちないという思いが彼女の脳裏にこびり付き、その原因を思案しだす。
そして程なくして、彼女はその違和感の正体に、繰り広げられている状況の不自然さに気づいた。
周囲に無造作に散る武器や防具。特に防具はその形状とサイズで人間の物と判別できる。彼等の宴には不要な物として女性達から除装された物である事は一目瞭然であったが、使い込まれた様子がはっきりと見て取れたのである。
これまで結界によって安全を保っていたとされる里の人間の装備にはあり得ない事である以前に、武装している事自体があり得るのかと疑いたくなる状況であった。
そして何より、こうした宴が行われているこの場所が抜け穴の出口であるなら、フェイはどうやって抜け出したのか?こっそり・・・などという事は状況的に不可能でり、強行突破したにしても、この抜け穴の存在はモンスターに発覚していておかしくない。にもかかわらず、あまりにも無警戒であったのである。
この状況に不信感を感じたカレンが、当事者に事態を問おうとした矢先、彼女は後方から尻を押されて、穴から強制的に押し出された。
「きゃっ!」
唐突な事だっただけに、対処が遅れたカレンは急な斜面から転がり落ちた。素早くミファールが最低限の変形をして要所を覆った為、致命的打撲は回避したものの、地面に腹部をぶつけてしまったため、彼女は一瞬息が詰まった。
この窒息は長時間には至らなかったものの、それから回復する頃には彼女は周囲をモンスターに囲まれていた。
「・・・・・・!」
背後は転がり落ちてきた斜面。その上部では、自分を突き落としたフェイが抜け穴から顔を突き出し、嫌らしい笑みを浮かべて手にした短剣をちらつかせた。
その短剣にカレンは見覚えがある。魔法発動用の宝玉を柄に埋め込んだ自分の物で、突き落とした際にフェイが抜き取ったのである。
事前に彼女が魔法使いと知っての対処であろう。もう一本の武器であるエストックは彼女の手元にあったが、魔法使いの剣技など知れていると判断されたのか、モンスター達の態度には余裕さが見て取れた。
「ようこそ、お嬢さん。歓迎するぜ」
「お気遣い無用よっ!」
立ち上がるやいなや、カレンが腰のエストックを引き抜いて、声をかけたゴリラ型モンスターに襲いかかるが、相手は突き出された刀身を右手で掴んで制してしまう。突き用の武器であるため、刃がないからこそ出来る対応であった。
「そう邪険にするなよ。女は取って食うわけじゃないんだからよ」
この攻撃が最後の足掻きと判断したゴリラ型モンスターが下品な笑みを浮かべ、もう一方の腕で彼女を捕らえようと動き出す。だが彼女は、剣の柄を手にしたまま身体をモンスターの手が来る反対方向へと移動させる。
この際、カレンの移動に伴って、エストックの刀身がしなってモンスターの手に幾らかの力が加わると、彼は反動で刀身が弾けて手から逃げるのを妨げるため、その握力を更に強めた。
ピキィィン!
もともと突き攻撃を目的とした武器である故に細い作りとなっている刀身は、カレンとモンスターによる横の荷重に耐えきれず、モンスターの掴んでいる部分から折れてしまう結果となった。
これで、この女の抵抗の手段は消え去った・・・・・と、モンスター一同は思ったが、その判断は若干速かった。
カレンは短くなりながらも自由を取り戻したエストックを棄てようともせず、逆に構えたまま素早くゴリラ型モンスターの喉元に突き立ててから、ようやくにして柄を手放して離れた。
「!?」
最初、当事者たるゴリラ型モンスターは何が起きたか理解できなかった。
だが、眼下にエストックが柄元まで突き刺さっているのを見て、自分がダメージを被ったことを理解した。それと同時に血が気管を逆流して口から溢れると、彼は前のめりに倒れ、自らの血に溺れて絶命した。
「次はっ!」
「おっとっとっとっと!カレンさん、過激な真似はそこまでにして貰おう!」
素手のまま次のステップに入ろうとした彼女を、フェイの声が制止した。
忌々しげに声の方向に視線を向けると、この場で玩ばれていた少女の一人を引きずり、その喉元にカレンから奪った短剣をちらつかせたフェイが、そこにいた。
「これ以上、抵抗したら、この娘達で報復するぜ」
ウェイブが危惧したパターンがそこに生じていた。
「あなた、モンスター側についたの?自分の仲間を降伏の材料にするなんて、正気じゃないわね」
「いやいやいやいや、そうじゃない。俺はもともとこちら側の存在さ」
そう言うと、お世辞にも美形ではなかったフェイの顔が変貌し、たちまち緑色の皮膚をしたカメレオン人間とも言うべき、本来のモンスターとしての姿へと戻った。もともとそうした能力しかないのだろう。体型に劇的変化はなく、みすぼらしい村人を思わせる着衣はそのままのため、お面をかぶっただけの人にも見える、アンバランスな様相になっていた。
「エルフの血が混じってるとかいう話だったけど、これは冒涜ね」
基本的にカレンを始め、出会った事がない者は、エルフに対して美しい容姿というイメージが定着している。それを考えれば、ファイがあの姿でエルフの血縁者を語るのは、美化したイメージを抱く者には許せない発言であったに違いない。
「そう言うなって、モンスターの血よりエルフの血って言った方が人間の受けが良いんだから仕方ないだろ」
そうした非難を意に介さず、慣れ事のようにフェイは言った。
「そうして相手を油断させて陥れてたのね」
「そう言う事だ。獲物は罠への、邪魔者は地獄への道へと導くのが俺の役割さ。気づいているとは思うが、ここにいる女連中も、俺が誘いだして捕らえたのさ。愉しむためにね」
「おいおい、フェイさんよ。自慢話も結構だが、今回はその獲物は一人かよ」
そうした会話の中に、数に関する不満を抱いていたモンスターの一人が割って入ってきた。
「だがモノは上玉だろう。だいたい、この密林で獲物を見つけて予定通りに誘導するだけでも凄い事だってのを理解して欲しいね」
「上玉ぁ?じゃじゃ馬どころか、狂犬の類じゃねぇか」
仲間の死骸を指さし、モンスターの一匹が吠えた。
「馬鹿言え、お前はモノの本質を見る事が下手すぎるんだよ。彼女は間違いなく上の上だ」
「光栄ね!」
まるっきり本心からではない発言で、カレンは応じる。
「そこでだ、上の上たるあんたを無理矢理に・・・・ってのも、気がひけるんで、どうだ?ここは自らの意志で俺達の玩具になってはくれないかな?」
「面白くもない、下品極まる御提案ね」
冷ややかで、殺気の隠った目でフェイを見据えるカレン。
「それじゃ、仕方ない。多少仕込ませて貰うとするか・・・・」
「仕込む?何にしても、素直に従うと・・・・」
「思ってるんだな、これが・・・・・この女の命と引き替え・・・って、条件つけりゃ、人間ってのはたいがい指示に従うモノだ」
人質にしていた少女の眼前で短剣を左右に振って、陳腐な交渉をフェイは行った。
「・・・・・」
カレンは周囲を見回す。もともと限られた数の少女達と愉しむための場でもあったため、モンスターの数はそう多くはないが、その性質故に人間とモンスターが混在した状態となっており、カレンお得意の「一網打尽」が出来ない状態となっていた。
もう少し人間が一部に片寄っていればと思う彼女であったが、それを要望して叶えて貰えるはずもなく、現状での有効的な即断が出来ずにいた。
その沈黙が、苦渋の了承と判断したフェイは、指である方向を促した。
「?」
そこは、大広間とも言えるこの空間の一角にある扉で、フェイの合図で重い扉が開かれていた。
「準備が整うまで、あの中に入って待ってて貰おう。無論、嫌とは言わないよな」
「除装はしなくて良いのかしら?」
「ああ、後で楽しむ素材にもなるからな」
この時フェイが、現在のカレンの唯一の装備となっていたミファールの実態を知っていれば、有効カードの人質を用いて除装させていたことだろう。
それに彼女が従うか否かは別問題ではあったが、周囲の圧倒的優位な状況が、彼を慢心させたのは言うまでもない。
「ねぇ、フェイ・・・・で、いいのかしら?」
カレンは他人から見れば不愉快極まる笑みを浮かべるカメレオン人間に問うた。
「ん?ああ、名前までは偽っちゃいないさ」
「あなた、その変身能力でどれだけの騙したの?」
「さぁな?少なくとも、この場にいる人間の数以上であるのは確実だ」
「そう・・・」
「何だってそんな事を聞く?」
「気になる?貴方はモンスターだから知らないようだけど・・・・・」
「ん?」
「女を騙すと、後が大変よ・・・・」
冷ややかに笑んでカレンは言った。この時、彼女の心情はある方向へと決していた。
「ほぉ、それは初耳だ。だが、俺はまだその大変な事には直面していないがな・・・」
「機会が来たら教えてあげる。約束よ・・・・」
そう言い残してカレンはモンスター達が示す扉の奥へと入って行った。