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2011/03/05(土)に投稿された記事
くすぐりの塔 After Story -魔王の後継者達- 第1章-徘徊編-(3)
投稿日時:16:31:44|コメント:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
カレンの押し込められた・・・と言うより、自ら入った部屋は、広間と同様に自然の浸食による窪みに扉を設置した単純な構造で、まさしく牢獄の名に相応しい物だった。
自然による構築物で広間の様な広い空間でもないため、天窓に類する様な穴も生じておらず、自然的な明るさが期待できないため、壁に設置された数ヶ所の松明が光源となって、中を薄暗く照らし、最低限の活動は許していた。
カレンはそうした陰湿な空間の中に、自分以外に数人の少女が押し込められているのを確認したが、全員既に絶望しているのか、新入りの彼女には関心を示さず、その場を動く気配が無かった。
「次の宴の素材・・・あるいは予備かしらね・・・・・」
冷静にカレンは観察する。さすがに広間の様なお楽しみを昼夜問わずに敢行すれば、女性の心身が保たないのは簡単に推測できる。
それを考慮した上で交代で彼女達を使い、長く愉しむつもりなのだろうと彼女が考えている間に、背後で扉が閉じられ、光量が少なくなり辺りが更に薄暗くなった。
カレンは、上玉と評価した自分に対する待遇の悪さに不満を抱いたが、それを言葉にして無駄な抗議をすることはせず、まずは手頃な場所を確保しようと奥へ進んだ。
そうしているうちに徐々に目が慣れ、室内の状況を正確に把握すると、先客の彼女達は絶望してカレンに関心を抱かなかった訳ではなかく、それどころではなかったという事に気づいた。
カレンはとりあえず、更に状況を詳しく知るため、最も近くの人影の方へと近づいて行った。
その少女は、井戸のような形状の水溜場の中に下半身を浸しており、その両腕と両肩は背もたれのように位置する岩に縛り付けられ、自分の意志で動き回る事が出来ない状況となっていた。
そうした状態の中、その少女はモジモジと腰を振り、首を不規則に左右に振って、唸り声をもらしていた。
更に近づいてカレンは理解する。少女は望んで唸り声を出している訳ではなかった。彼女の半身が浸っている水溜には、全長10センチに満たない小さな魚が無数に泳いでおり、水の中の露出した半身に群がり突っついていたのである。
おそらくは皮膚に付着した老廃物などを餌にする類の魚なのだろうが、水の中の下半身全体に一斉に群がれては、その刺激はかなりのくすぐったさとなって襲いかかることだろう。
それは彼女の腰と首の動きが物語っていたが、それを言葉で表現するための口にギャグボールが噛ませられており、満足に笑い声あるいは喘ぎ声を放つことも出来ず、唸り声をもらして悶えるしか出来なかったのである。
「ふぅ、ふぐっ、ふぅぅぅぐぅうう~~~~」
近づいてきた相手がモンスターではなく、悪趣味な鎧を装備しただけの人間女性と知った少女は、懇願の眼差しをカレンに向けて唸った。
カレンにも言葉はなくとも、相手の様子が助けを求める類のものであることを理解できてはいたが、そうした唸り声が周囲から複数放たれている事を聞き取り、周囲を改めて見回してみると、そうした水溜場に身を浸らせた状態で拘束されている少女が数人いるのが確認できた。
膝から下だけを浸されている者、逆に首から下という身体の大半を浸されている者や、小さな水溜場にお尻だけを突っ込んでいる様な一見笑いを誘うような姿勢にされている少女もいた。
それら全てが身を震わせ、口にしたギャグボールから苦しげな声をもらしている事から、眼前の少女と同様の、魚による悪戯が行われているのは明白であった。
「お休み中も完全な休息は与えず、身体を作っておこうって魂胆ね・・・・」
いわゆる準備運動の類だろうと、カレンは解釈した。これだけでもモンスターの辛辣さが伺い知れたが、一連の見回し行為でもう一つ彼女の興味を引く物が視界に入っていた。
それは遠目には膝立ち体勢で仰け反っている女性に見えた。これが何を意味するのか好奇心を抱いたカレンは、眼前の少女の水溜場を力一杯蹴って石組みを崩して漏水させて水位を低下させる。これで水中でしか生息できない魚の行動範囲も下がり、とりあえずは苦しみから解放される。
これを他の水溜場の少女達にも施したが、解放まではしなかった。解放し下手に室内を動き回られたり話しかけられたりして、モンスター達の関心を集めたくないと言う意図があっての事だったが、本心としては、これから行う予定の行動にパニックを起こされては困るという思いが本音であった。
そうした中途半端な人助けを行った後、カレンは関心を抱いた少女の元へと歩み寄る。
そこで行われていた事も、自然を利用したモンスターの悪戯であった。
その少女は全裸状態で膝立ちにされ、背後にある手頃なサイズの岩を支えにするようにして身を仰け反らす姿勢のまま拘束をされ、程良い形とサイズの胸を突き出して頂にするかのようなポーズを維持させられていた。
「ふっ・・ふぅぅん・・・・うっぐぅううん・・ぅぅうう~~~~~!!」
少女の口には他の者同様に、発言を妨げるゴム製の猿轡が巻かれており、満足に発声出来ないまま顔を上気させ、首を仰け反らし、目から涙を溢れさせて身悶えていた。
その原因は天井から不規則に滴りおちる水滴であった。あえて多い場所に拘束されている事も要因ではあったが、こうした洞穴や鍾乳洞には当たり前の現象ともいえる水の滴が、その下の女体を刺激していたのである。
自然現象であるため、落下位置やタイミングは決して一定とはいえず、薄暗い空間で落ちてくる小さな水滴は、いつ何処に当たるかも見極める事も困難であり、彼女は見えない指のソフトな突っつきにも似た刺激を絶えず受け続ける事になり、悶えていたのである。
また、身体で弾けた水滴の一部は散り散りとなりながらも皮膚の上で残り、これが繰り返される事で容量を増し、自重に耐えきれなくなった水滴が身体のラインに沿って滑るように流れ、また異なる刺激を与えて彼女を震わせる。
余程身体が敏感なのか、自由のない少女の身体は滴の直撃を受ける都度、悩ましげにくねり、その動きによって水滴の流れを誘発させては、その刺激で身を跳ねさせる。
その様相は淫靡なダンスにも見え、大半の異性を欲情させるに十分な物があった。幸いにして、その場に欲情に狂う異性はいなかったが、カレンすら反応が良すぎるという感想を抱かざるを得なかった。
「ちょっ・・・あなた、大丈夫?」
過剰とも言える反応に、カレンは思わず少女の猿轡をずらしてその口を解放した。
「た・・・・たす、ぅっ、たすけてぇ・・・はぁぁん」
少女は潤みきった瞳でカレンを見据え、とてつもなく甘ったるい吐息を漏らしながら懇願しつつ、その身に生じる刺激に打ち震えた。
「あなた、過敏体質なの?そのくらいの刺激で・・・」
「ちがっ・・・ちがいまっ、はぁっはぅぅん、違います」
会話が長引きそうだと危惧したカレンが、ミファールの背面部面積を広げさせ自らを持って滴の傘代わりになることで、ようやくにして断続的刺激から解放された少女は、余韻に悶えながら話を始めた。
彼女はサティアといい、樹海に近い街に雇われた傭兵達の一員で、生活圏確保のため街に面した樹海内のモンスター退治を行っていたところにフェイが現れ、物の見事に騙され、ここに連行されたのだという。
男性仲間は食事を兼用した処刑に処せられ、女性達はこうしてここで、モンスターの玩具にされているのだという。
特にサティアは、反抗的な態度が目立つと言う名目で、今し方まで行われていたこの特殊な処罰を受けさせられていたのだ。
実はここから滴る水滴は、浸透してきた岩石にそうした特殊なものがあるのか、ある種の媚薬効果が含まれており、飲用しなくても、人の皮膚からでも徐々に浸透して効果を発揮するらしく、効果としては興奮作用と同時に肌を敏感にさせる成分も含まれており、全身にまんべんなく塗りつければ、全身が性感帯級に敏感になってしまう程で、モンスター達はその水滴が多く降り注ぐ場所に、彼女を全裸にして拘束し、身体を興奮状態かつ敏感状態にした挙げ句、水滴という中途半端な刺激しか得られない状態で放置して、最終的な精神の屈服を狙っていたのだという。
その目論見が、殆ど達成間近と言って良い状態になっていた所で、カレンが現れたのである。
「成る程・・・・・さっき言ってた、仕込みって、多分これね・・・・いい趣味してるわ」
カレンは納得し、もし現実に自分がこれをされた場合、どのくらい耐えられるだろう、どのくらい感じるのだろうと興味を抱いたが、モンスター達にそれを証明して見せたくはないとも思った。
「あ、あの、できたら解いてはくれませんか?」
水滴から身を守ってもらってはいたものの、拘束状態からは解放されていなかったサティアが、身を捩らせて拘束状態が持続していることを訴えた。
拘束具に触れた際の仕掛けの類を警戒していたカレンであったが、話を聞いた限りでは、それは杞憂であるように思えた。
だが、要望に応じて素直に解放しようとする意志が、この時何故か彼女には欠如していた。
これは、大半がミファールによってガードされていたものの、幾らか飛散した僅かな滴がカレンの皮膚に付着~浸透し、軽い興奮状態にしたためかもしれない。
加えて、自由を奪われ、まるで虐めて下さいといわんばかりにフェロモンやオーラを撒き散らしている若い娘が眼前にいる状況であれば、性別に関わらずS属性が刺激されたとしても、なんら不思議ではないだろう。
・・・・・などと、思い至ったカレンは、内面から沸き上がる欲望が抑えきれず、おもむろにずらしていたサティアの猿轡を元に戻してしまった。
「あぐっぅ?」
「ねぇ、サティアって今、苦しいんじゃない?」
「んぐぅ?」
顔を近づけて問いかけるカレンに、サティアはその意味がすぐには理解できなかった。こういう状況なのである、苦しくないはずがない。
「その猿轡の事じゃないわよ。身体の・・・女としてのもどかしさ・・・・を聞いてるのよ」
カレンが、全てお見通しと言わんばかりの妖しい笑みを浮かべると、サティアはたちまち頬を赤く染めた。
「隠さなくていいのよ。同じ女同士、心中お察しするわ・・・・水滴の・・・・媚薬の成分が分からないから解毒は不可能だけど、別の方法でその苦しみから解放してあげる」
「んんんっ!?」
その言葉の意味するところを悟ってサティアが目が大きく見開かれた。つまりは、狂いそうな欲求不満状態を満足させてしまおうと言うのである。
「そんなに怖がらないでよ。私はソフト趣向なんだから・・・・・」
そう言ってカレンはサティアの臍回りを軽く指先で撫でた。
「ふぅっくぅぅ!!」
特に技巧の凝らされた行為ではなかったが、その軽い刺激を受けただけでサティアは呻き声を漏らして身を震わせた。
「へぇ、ホントに敏感なんだぁ」
「んん~~~~~~~」
その反応を確かめるように眺めたカレンは、楽しい玩具を得た子供のような笑みを浮かべ、サティアはその笑みに潜む意図を察知してある種の恐怖感を抱き、何とか脱出しようとその身を捩った。
しかし、水滴の焦らし責めを受けていたときから試み、成功しなかった事がこの瞬間に成功するはずもなく、彼女のそうした怯えの様子を見たカレンは更に悪戯心が刺激された。
「ミファール」
カレンが命じると、その意志に従って彼女の身を覆っていた鎧が主から離脱して浮遊する一個の巨大クラゲのようになったかと思うと、そのまま天井に貼り付いて滴る水滴を塞き止める。
こうして媚薬の雨に自らも理性を失う心配が無くなったカレンは、しなやかに蠢かせた指先を、サティアの形の良い胸にそっと添えた。
「ふひぅっ」
まるで反射反応の様にサティアがピクリと反応し、カレンはそれを楽しむように、ゆっくりじわじわと添えた指先を徐々に広げてゆき、胸の付け根まで辿り着くと、今度はその指先を右回り左回りと、交互に滑らして付け根周りを刺激する。
「ふぅぅっ、はひぃっ」
胸回りを這う指の刺激に、サティアの身が小刻みに震えた。仰け反った姿勢での拘束であるため、身を捩る事も満足に行えず、襲いかかるもどかしい快感に成す統べなく翻弄される。
やや治まりを見せていた身体にたちまち新たな火が灯り、くすぶっていた感覚を呼び起こす。
素直な乳房の先端がたちまち隆起してカレンの掌に触れて体の状態を誇示すると、彼女は掌全体で小さな円を描くような動きも加えてサティアの両胸を揺すり、揺れる動きを利用して敏感な胸の先端を掌で擦って刺激した。
「ふぐっ!うぐぅう!うっうぅぅ~~~~!!」
カレンの手がサティアの胸を揺する度、彼女の乳首に耐え難い快楽が生じ、不自由な口から切なげな声がもれる。猿轡が無ければ欲情的な喘ぎが堪能できたであろうが、おそらくは大きな声になるだろう事と、それを聞きつけたモンスター達に踏み込まれるのを面白くないと考え、カレンはその口を封じたのである。
同時にサティアが自分の意志を伝えられないと言う弊害もあったが、それはそれで悪辣な悪戯の一環にもなっていたため、カレンには、それを外すなどという考えは微塵もなかった。
そうして、切ない悲鳴と視線による懇願を無視したまま、彼女はソフトタッチによる胸責めを堪能すると、指先を胸の下部、俗に下乳と言われるポイントに集結させ、彼女の回復の暇も与えず、再び指を蠢かせた。
「はぅぅ、ひふぐぅ・・ふっふっふぁふぉっふぉふぉ~~」
コソコソとまとまった指先が乳房の下乳を刺激し続け、サティアは予期しなかった刺激にプルプルと胸を揺すってくぐもった笑い声をもらす。
しかし笑っていられたのも最初だけで、カレンが指を胸の両サイドへと移動させ、胸の付け根を人差し指から小指までの四本の指で強めに、引っ掻くように刺激しつつ親指の腹で乳首を転がすと、下乳のくすぐったさはたちまち痒みに似た感覚を帯びた快感に変化して彼女を翻弄する。
「ほうぅっあうぅぅっ~~~~」
もどかしい快楽を補いたいと、サティアの腕が必死に足掻くが、拘束具から解き放たれる事はなかく、意味のない動きを続ける。あと少し強めの快楽を求める彼女は、それこそ必死になって身体を揺すり続ける。
そうした心情を痛いほど理解できる同性のカレンではあったが、虐める事に悦びを見出している状態であるため、そうすんなりと同情することはなかった。
彼女は人差し指と親指で、勃った乳首を摘み、そして擦るようにして刺激を加えつつ軽く引っ張ぱる。
肉体的限界に近づいていたサティアはたちまち強い性的快感に襲われ、前兆もなく軽い絶頂を味わった。だが、その瞬間、カレンは彼女から手を離して刺激を途絶えさせてしまったため、味わっていた感覚との相乗効果で得るはずだった本命的な快楽を得ることが出来ず、不完全燃焼状態で終わってしまった。
「あぅおぅぁぁぁ~~~~~!!」
あと一歩で、心身のもどかしさから解放されるはずだった彼女は、身体が先程より更に刺激を求めているのを自覚しつつ、最後まで自分を導いてくれなかった相手に非難と懇願の入り交じった視線を向けた。
「もっと激しくして欲しいの?」
もはや誰が見ても一目瞭然の問いかけに、激しく首を縦に振るサティア。
「それじゃぁ・・・・これはどう!」
そう言ってカレンは今までにない激しい刺激を彼女に加えた。だがそれは、当事者が望んでいた様な甘美な物ではなく、完全無防備にさらけ出されている脇腹に対する、強めの揉みくすぐり攻撃であった。
「~~~~~っ!!!んぁ、うぼぉ、んぐふぁふぉふぉふぉぐぅぅっ~~~~!」
全く想定外の刺激を受けたサティアは、猿轡に息を詰まらせながら笑い悶えた。カレンの指は指圧を行っているかのように両脇腹に食い込み、凝った肩を揉みほぐすかのような激しい動きをしていたが、媚薬成分と実際の焦らし責めによって、かなり敏感状態となっていた身体は、そうした刺激にも痛いとは感じることは無く、逆に強めであったが故に、くすぐったさに繋がったといえた。
「どう、気持ちいい?」
「ひがっ!ひがっ、ひふふふふふふふふぁっっひひひひひひひひひっ!」
分かっていながら意地悪くカレンが問うと、サティアは止められぬ笑いに苦しみ、猿轡の隙間から涎を垂らしながら否定の意味を込めて首を左右に激しく振るが、それでも彼女を苦しめる指の動きは止まるところを知らないかの様に動き続けた。
「ふふ、そんなに悶えるくらいに気持ちが良いのね。それじゃ、ここはどうかしら?」
カレンは物言えぬサティアの必死の様子に対して、わざと違う解釈を行うと、激しく両脇腹を揉み回していた指を今度は両腋の下へと潜り込ませ、人差し指から薬指までをまとめた指先を突き立て、腋の下をグリグリとこね回した。
「っっっぶぉっっほほほほほほっほぁっふぁひゃひひひひひひっぐぅぅぅ~~~~ふぉふぉふぉふぉふぉっっ~~~~~!!」
唐突なくすぐり箇所の変化に、これまでになく激しく身体が跳ねたかと思うと、苦悶しているかの様な笑い声をもらすサティア。
猿轡状態での強制的笑いは呼吸を著しく乱し、彼女を苦しめたが、それでも笑いを止める事ができず、送り込まれる刺激に身悶える以外に選択は無かった。
こうして強めの刺激によるくすぐりで相手を翻弄し続けたカレンは、彼女が限界寸前に達する頃合いを目敏く見抜き、意識を失う直前、その責めの力加減を弱めた。
「ほぅ・・・おぉ・・・はひぃ・・・ふぅ・・・」
サティアはくすぐったさが弱まった事で、ようやく落ち着きを取り戻し、不自由ながらも呼吸を整えようと喘いだ。
だが、カレンの指の動き事態が停止したわけではなく、くすぐったさが治まると今度は、くすぐったさの陰に潜んでいたかのようにムズムズとした感覚が生じ、それはたちまち心地よい感覚へと発展して行った。
「ちょっと指が疲れたからから、インターバルするわね・・・」
カレンが意地悪く言った。彼女は揉み責めと比べれば、労力をさほど必要としない撫でるという行為を用いて責めを持続させていた。
両手十本の指先は、サティアの乳房周りを何度も撫で回していたかと思うと、不意にコースを変えて腹から下腹部を不規則に滑りって存分にピクッピクッとした反応を楽しむと、今度はいきなり腋の下に移動して、突き立てた指先を腰の方までじわ~っと滑らせる。
「ほぅっ、ほぁっ、んはぁぁぁっ!!」
その指先の一滑り事に、くすぐったさに押し流されていた快感が呼び戻され、気が狂いそうなまでの焦れったさが甦る。
意地悪な指先は体中を虫の様に這い回り、執拗にサティアの感性を玩び、どうする事も出来ない彼女はただ身悶え、もはや無駄と分かりつつも懇願の呻き声をあげ続けるしかなかった。
そうした切羽詰まった悲鳴を聞きいて尚、カレンの指は慈悲を与えず、その指先は執拗さを増した。太股を撫でていた指先が小さな円を描きながら上へと移動し始めた時、サティアはその刺激に激しくのたうちながらも、最も爆発力のある箇所への刺激を期待した。
あと僅かに強い快楽で、既に出来上がっている身体は絶頂を迎える事が出来る。そうした自覚があり、待ち望んでいたそれが寸前に迫っている。
だが、そうした心情を見透かし、更に絶望に追い込もうと意図があってか、指先は最も肝心な部分を避け、脚の付け根やヘア周辺を撫でるに止まり、止まる事のない微妙な快感と共に絶望感を与えた。
「んっんんんんぐぅぅっっ~~~~~~~~~!!!」
未だ得られない終着を求めて、これ以上ない呻き声をもらすサティア。存分に焦らされていた股間からは女としての涎が溢れて拘束台代わりの岩に滴り、その下に天井から滴る水とは異なる水溜まりを形成させていた。
「もう限界?」
「うぅっ」
「もうイキたい?」
「うぅっ」
「もう少し耐えてみない?」
「んんん~~~」
わざとらしいカレンの質問に、サティアは必死になって首を振り、その心情を表し、その様相は素人目にも相当切羽詰まっている事が伺えた。
「本当に限界みたいね」
「うぅっ、うぅっ」
その独り言に、そうだと言わんばかりに首を何度も縦に振るサティア。
「それじゃぁ・・・・・」
悪意に満ちた目を輝かせ、カレンが動く。
「ぐふぉぉ~~~~~~~~~~~~~~!うぉっ、うぉっ、うぅっふぉふぉふぉふぉ~~~~!!!」
「強めの刺激で冷ましてあげるわ」
再び責めの趣向がくすぐり責めとなってサティアを襲い、彼女は不意に切り替わった感覚に堪える間もなく悲鳴を上げて悶えた。
こうしてカレンは力加減の調節によって、快楽とくすぐったさを交互に送り込み、それぞれの感覚が限界に近づく度、刺激の種類を切り替え、異なる限界地獄を何度も味わわせた。
女にとっての地獄の一つとも思えるそれが、しばらく続けられると、サティアはあらゆる意味で限界に近づき、刺激に反応しながらもその表情は虚ろなものとなっていた。
(そろそろ、ホントに限界のようね・・・・)
彼女にとっての不幸は、責め手となった相手が同性であるカレンであった事だろう。もしこの相手が人間にしろモンスターにしろ異性であれば、こうした状況に至る前に、彼女の身悶える姿に欲情して、己の性的欲求を果たすと同時に彼女をも絶頂に導いていたに違いないのである。
だがそうした不幸もようやく終わりを告げる。
「ミファール、いらっしゃい」
カレンが天井の僕に命じると、天井に張り付いていたそれが、いきなり落下してカレンを包み込んだ。まるでスライムが獲物に襲いかかった様な光景は一瞬で終わり、主の身体に接した不定形物体は瞬時に形を変え、彼女の身を守る鎧へと変貌した。
が、全てが離脱前の状態に戻っていたわけではなかった。
肩と胸の装甲から指先ほどの太さの触手が何本も突き出ており、カレンの指に並ぶように構えていた。
もちろん変形の失敗では無い。これからのためにカレン自身が望んだ形態である。
「それじゃ、今度こそ本当に終わりにしてあげる」
カレンが囁いたが、もはやサティアにそれをまともに聞き入る余力もなく、目の前に立つ彼女の姿に関しても、目には見えていても事態を認識できていなかった。
そうした状況に関わらず、カレンは宣言したことを実行した。
「はひぃ!ふぉはぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
たちまちサティアが悲鳴を上げた。カレンの指が突き出されていた胸をソフトに揉みだし、それに呼応したミファールの触手も一斉に群がったのである。
胸部の触手はカレンの指に従うように胸の周辺から腹部をソフトに撫で回し、肩の触手は、腋の下に先端を付き入れグリグリと踊り狂うものと、人間の指先を真似たような形状になって脇腹を強く揉み回すものに分化し、更に余った触手は、硬化させた先端でもって足の裏を撫で回したり、各々に空いたポイントに分散して撫でたり突いたりの刺激を送り込み、やや太めとなった残りの一本は、表面に幾つものイボイボを浮き上がらせ、それでもって敏感な箇所を何度も擦りあげ、彼女が最も望んでいた刺激を与えた。
何故こうした刺激が来るのか、今のサティアには理解できていない。ただ、凄まじいくすぐったさと快感が同時に生じ、一気に身体を駆けめぐったのである。とても耐えられるものではなかった。
「ぬぁっ!ん!!んん!んんぐぁぅ~~~~~~!!」
これまでどちらか一方の感覚がもう一方の感覚を押しのけていた現象が、突然に協力しだし、これまで以上の勢いを持って押し寄せて来たのである。
この二つの流れは相殺することなく、共に助長するかのように快楽がくすぐったさに、くすぐったさが快楽へと入れ替わるような感覚を与えていたが、そうした感覚の束の間の事で、その二つの感覚は一本の大きなうねりとなってサティアの全身を駆けめぐった。
「~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」
くすぐりと快楽の限界を同時に味わった彼女は、数秒間、まるで電撃を受けたかの様に激しく身体を痙攣させたかと思うとがっくりと項垂れ、そのまま意識を失った。
しばらく間、小刻みに打ち震えるサティアの身体を眺めていたカレンは、一呼吸入れるとミファールの触手に思考で指示し、彼女の拘束具を全て破壊させると、天井からの滴の落ちない場所に彼女を移動させて横たわらせた。
まだ目を覚まさない彼女の身体は余韻に打ち震え、全身がほんのりと上気していた。
「堪能したかしら?」
特に返事を期待したわけではない。独り言の様に呟くとミファールは展開していた触手を戻して元の形態へと戻った。
これでカレンの軽いお楽しみと、それに便乗したミファールの「食事」は終了となった。
ちょっとした脱線であったが、リフレッシュしたしたカレンは扉の前に歩み寄ると、つま先で軽く扉を叩く。
その音に、外にいた見張り役のゴブリンが覗き窓の蓋を開き、顔の一部を見せた。
「何やってやがる、そんなヤワな身体でこの扉がどうにか出来るとでも思ってるのか?それとも、もう相手して欲しくなったか?」
ゴブリンはカレンの頬が少し上気している事に気づき、下品な笑みを浮かべた。恐らくは洞穴の滴に触れての事だろうと思いこみ、早々に楽しむチャンスが来るだろうと妄想していた。
「思いっきりタイプじゃないわ。美形に生まれ変わってからいらっしゃい」
「へっ、強がってろ!すぐに俺達に遊ばれたくてたまらなくなるからよ!」
高慢な小娘を屈服させる事を楽しみに思いつつ、ゴブリンは覗き窓の蓋を閉じた。
「なめられたものね~あんた達のテクニックじゃ、私の独り遊びの時の100分の1も愉しめないわよ」
カレンは扉の向こうにいるだろう、モンスター共に対して悪態をつくと、目の前の頑丈そうな扉の表面に軽く触れた。
「材質はただの鉄・・・・自然に出来た窪みに扉をはめ込んで、楔を打ち付けただけってところかしら・・・・」
カレンは扉を軽く叩いて感触を確認する。そのノックに対し、反対側から荒々しい音が返る。ゴブリンの仕業である。
その音は、そのまま扉の重厚さを伺わせ、枠も太い楔が無数に打ち付けられている事から、この中の少女達全員どころか屈強の戦士数人がかりでも突き破るのは不可能だろう事は素人目にも判断できた。
しかし、カレンの意志を挫くには今ひとつ重みが足りなかった。
「この程度の扉なら、魔法でなくても・・・・」
見た目の派手さで相手の混乱を誘うには、魔法による破壊行為が最も都合が良かったのだが、この密室では後ろの少女達にも被害が及ぶ可能性が高いと判断したカレンは、最も得意な手法での脱出をあっさり諦めるともう一つの脱出案を選択した。
彼女は軽く屈伸運動を行って身体の準備を整えると、軽く息を吐き、おもむろに右拳を腰の位置に構えて、その拳に気を集中させた。
「・・・・私のささやかな気でも十分よっ!」
カレンが吼え、思い切り引いていた拳を前面の扉に叩きつける。
ドガンッ!
彼女の体格からは想像も出来ない力が発揮され、頑丈なはずの鉄扉に大きな凹みが生じた。
「「!!!?」」
これに驚いたのは、中で様子を見ていた少女達だけではなかった。見張りとして突っ立っていたゴブリンは、ハンマーで叩きつけたかの様な轟音にビクリと身を震わせ、扉の変形を見て思わず飛び退き、信じられない物を見ているような表情となった。
宴に興じていたモンスター達も、その物音に驚き、何事かと集まりだす。
そこへ三度、同様の衝撃が加わり扉を更に変形させる。
「な、中に何が居るんだ!?」
その部屋の所有者であるはずのモンスター達が思わず疑問を抱いたが、扉を叩く物音は四発目以降ピタリと止んだ。
「?」
しばらく周囲が硬直したように動きを止め、一分ほどが経過すると、その間に耐えられなくなった見張り役のゴブリンがそっと扉に近づき、耳をあてた。
だが、彼の聴力は中の様子を推察できるほどの音を聞き取ることは出来ず、それならば直接目で確かめようと、覗き窓へと顔を移動させる。
その様子を周囲の仲間達が固唾を呑んで見つめていた瞬間、ひときわ大きい衝撃が扉を叩き、遂に負荷に耐えかねた扉がひしゃげ、弾け飛んだ。
不運にも見張りのゴブリンは、その吹っ飛んだ扉に巻き込まれる形となってしまった。戦闘向きでなく体格的にも強靱とは言えなかったゴブリンは、鉄の塊の衝突と落下の下敷きとなって、いともあっさり絶命した。
そんな幸薄いモンスターには目もくれずに牢屋を出たカレンは、周囲を見回しモンスターの数を確認すると、わざとらしく後ずさって怯えのポーズをしてみせた。
「やぁだぁ~、今ので隠していた魔法をストックしていた魔法石が壊れちゃったぁ」
彼女と言う存在を知る人物であれば、それが大嘘であると瞬時に気づいたであろう。
だが、彼女と出会って間もないモンスターは、その発言を真に受けた。魔法でも使わなければ、女の細腕であの扉を破壊できるはずがないという先入観。そして今、相手はその切り札を行使する手段も失ったと発言した。
(チャンス!!)
その場のモンスター達の脳裏に浮かんだのは、その一文字だった。
準備完了、つまりは彼女の仲間を討伐に出た連中が戻るまではお預けという事だったが、こうした反抗的行為が生じた以上、それを口実にしたお仕置きと言う名の愉しみが行使できる。
新しい玩具カレンと愉しめる降って湧いた機会に、その場にいたモンスター達は競うように彼女に迫った。
美女と戯れるチャンスがいきなり出来たからと言っても、彼等はこの時に気づくべきであった。我先にと殺到するモンスター達を前にして、攻撃手段の無いはずの獲物が、一歩たりとも退く素振りを見せていない理由を。
「お馬鹿さん・・・・」
カレンが笑んだ。勝利を確信した者が見せる独特の表情で・・・・
彼女のそうした意志に呼応し、ミファールが脈動した。鎧として彼女の身体を覆う装甲部の至る所に紅い魚眼の様な物体が浮かび上がり、方々から迫るモンスター達を睨んだ。
「!?」
それと視線を合わせたモンスター達は、たちまち額を貫かれて絶命し、地面に崩れ落ちた。魚眼部分から光の矢が放たれ、次々にモンスターを仕留め始める。
「なっ・・・」
カレンの鎧の能力を知ったモンスターも、次の瞬間には餌食となって思考を停止し、その場にいたモンスター達は、欲望に任せて殺到した事が仇となって、ほんの数秒で全滅となった。
「はい、作戦第一段階成功!」
一人嬉しそうに言うと、カレンは宴の間の出口へと歩み出す。
「貴女達は後ろの牢屋に隠れていて」
ここに突き落とされる前に確認した女達の人数と、今この場にいる女の人数が一致している事を確認したカレンは、その場の生き残り達に指示した。
今この空間はカレンの支配下にある。その奥の牢獄スペースにでも隠れてもらえば、あとはここを守るだけで、彼女の任務は完遂できると考えたのである。
彼女の戦闘スタイルを考えれば当然ではあったが、彼女の本質を知らない少女達には、外ではなく奥に行く事を進めるカレンに戸惑いを隠せないでいた。
「早くして。でないと、作戦が失敗するわ!」
有無を言わせない口調で言い張ると、少女達は顔を見合わせて指示に従った。ろくな装備もなく裸同然でモンスター達の中を突っ切るより、カレンの言った「作戦」に頼るしかないと判断しての事であったが、もしそれが失敗としても、彼女に騒ぎの責任を負わせて自分達は協力していないと懇願しようとする打算も少なからずあったのも哀しき事実だった。
しかしそれは杞憂に終わる。
少女達が奥へと向かうのを横目で見送ると、カレンは広間の出入り口に向かい、先程の部屋よりも頑丈そうな大扉を前にして不敵な笑みをもらす。
「さて、作戦第二段階と行きましょうか・・・・」
彼女には、この扉をも破壊できる確たる自信があった。
「封魔・・・」
カレンが小さく呟き、両手を頭上に掲げる、突き出した両手の人差し指に淡い光が灯り、その指先が彼女の頭上で接触して光量を増す。
カレンは意識を集中して腕を左右に開き、弧を描いて下の方で再び指先を接触させて光の円を構築させる。
「・・・解放」
彼女の呟きに、空間に描かれた光の円が反応して文字を浮かび上がらせ、魔法陣と化す。その光が白から赤へと変化すると、カレンは魔法陣に触れるかのように右手を添えると、正面の扉を見据えて叫んだ。
「劫火炎!」
キーワード詠唱と共に魔法陣が更に輝きを増し、大扉めがけてドラゴンが吐く炎の息の様な凄まじい火炎が発生した。その炎は瞬く間に正面の扉を融解させ、その先へと伸びて行く。
瞬時に発生した熱気が広間に充満し、伸びた炎は直線上にいた何匹かのモンスターを瞬時に焼死させた事だろう。それを示すかの様に、穴の開いた扉の向こうでは、モンスター達の様々な悲鳴が生じていた。
封魔解放。
カレンがそう呼ぶこれは、上級魔法使いが行う魔法のストック法で、魔法を何らかの魔法触媒に封じておき、必要に応じて放つ事が出来るというものである。
術者本人しか扱えないと言う欠点もあったが、事前に準備しておけば、基本的には杖・指輪といった発動触媒が無くとも、キーワードの詠唱等のみで魔法の行使が可能である利点があった。
ちなみに彼女が利用している封入触媒は、特殊な処置を施したマニキュアで、計10種の魔法が彼女の爪に隠されている事になる。
更に言えば、カレンは魔法用の杖や、短剣に仕込んだ発動体が無くとも、自身の魔力やミファールの助力によって魔法の行使は可能ではあったが、これから行う闘いの為にその力を温存したのである。
少しの間をあけ、熱によって融解した鉄扉が冷えるのを待ってから、カレンは悠々と広間の外へと、その身を晒した。
不意な出来事に混乱するモンスターの群は、火元である場所からカレンが出てきたのを見て瞬時に事態を把握して、殺気だった視線を集中させた。
宴の間の扉が、予期せぬ轟音と共に破壊されたのを聞きつけたフェイが、手近な仲間達と共に現場へ駆けつけた時、捉えたはずのカレンが、洞穴の出入り口のすぐ前で、倒したばかりのワーウルフを足蹴にしている所に出くわした。
「お、お前、どうやって?」
魔法による戦闘が彼女の戦闘能力の根元と判断し、その手段を奪ったと確信していた彼は、閉じこめたはずの場所から出ているカレンを見て露骨に驚いた。
「さぁ?どうやってかしらね」
早々に目的の人物と対面できたカレンは、不敵な笑みを浮かべる。
「フェ~イ、約束だったわよね。女を騙したら、どうなるか・・・・・今、教えてあげるわ」
明らかに攻撃的な口調に、騒動を知って集まっていた周囲のモンスター達が一斉に身構え、懐から奇妙な紋様が刻まれた円盤に紐を通した物を首に下げた。
「?」
「気になるかい?これは対魔の護符さ。偶然見つけた物だが、攻撃魔法の効果を激減させる優れものさ。この辺は結構遺跡が多くてな、これの他にもこうした掘り出し物が数多く見つかったおかげで、人間達を誘い込む餌が用意でき・・・・・・」
「雷光招来っ!」
フェイが自慢げにアイテム自慢をする最中、カレンが再び封魔解放を用いて電撃を放った。
彼女の突き出された左の中指を中心に形成された光の逆三角形の陣から、おびただしい数の雷撃が放たれ、彼とその近辺にいた集団の一角を襲った。
直撃を受けた集団から幾つもの悲鳴があがり。一人残らず地に伏したが、護符が効力を発揮し、絶命に至った者はいなかったものの、すぐに闘える状況という訳でもなかった。
「あら、本当。今ので消し炭にならないなんて凄いわね」
相手の自慢するアイテムの効果が本物か否か、最も単純かつ過激な方法で試したカレンが、冷ややかながらも賞賛の言葉を贈った。
たった一人で半包囲された状況にも関わらず、笑顔で強力な攻撃魔法を躊躇無く放ったカレンに、一同は戦慄を覚えた。彼女の装備する鎧の風体も手伝い、あたかも悪魔の落とし子の様なインパクトを与えていた。
「う、狼狽えるな。どこかに魔法の発動体を隠していた様だが、すぐに限界になるはずだ。一斉にかかって取り押さえろ」
たった一人の小娘に屈するわけにはいかない。彼女に関しては関係者でもあるフェイが辛うじて立ち直り周囲に指示すると、モンスター達は自分達の圧倒的優位さを思い出し、既に勝利を得たかの様子で陣を組み、雷撃によって生じた間隙を埋めてカレンの逃走の道を遮ると、徐々にその半円の包囲を縮めて行った。
「魔法は致命傷には至らない・・・確かにその様ね。でも、私の取り柄は魔法だけじゃないのよ」
言ってカレンは自分の両腰に装着されていた鎧の一部であるポーチ状の物体に手をそえた。
彼女の意志に感応し、閉ざされていたポーチの表層がスライドして開き、その内容物を露わにする。
それは肉塊と思わしき物体で、よく見ると醜悪な生き物の顔のようにも見え、しかもそれは臓物のように脈動していた。
それがふわりとポーチから離脱し、カレンの掌で覆われた空間で静止する。
「な、何だ?あれも魔法の類か?」
物体が宙に浮き静止する。その様子からフェイはそう判断したが、それは誤りであった。この浮遊現象はカレンの魔法によるものではなく、物体そのものの能力によるものだった。
それは魔鎧ミファールの一部であり、主武装としての能力を担う分体と言うべき存在。
「魔鞭擬装!」
叫び声と共に、カレンは両掌の中で浮遊していた二つの肉塊を頭上でぶつけ合わせた。
衝突した肉塊は一つに融合すると、長さ30センチ程の棒状となって高速回転を始め、一方が急速に伸び始め、あたかも護っているかのように彼女の周りで螺旋を描きながら高速回転を続ける。
やがてカレンの頭上で回転していた棒状の物体が減速し停止すると、それは自然に彼女の手の中へと収まり、『鞭』の形状へと変貌していた。
しかもただの鞭ではない。先端が醜悪な蛇を思わせる形状となっており、全体に不規則な棘が付着していたのである。
それは獰猛な魔獣の長い尾、あるいは魔界の蛇がそのまま彼女の手に収まったようにも見える光景であった。
「・・・・・・・!!」
見たこともない現象に動揺するより先に、その鞭自体が放つ、言いようのない威圧感に耐えかね、数匹の低級なモンスターが我を失ってカレンに襲いかかった。
「はっ!」
軽く息を吐いてカレンが柄を振るうと、螺旋状に垂れていた鞭が大きく弾け、近づこうとしていたモンスター達をまとめて薙ぎ払う。その鞭のスピードと棘により、襲いかかった全てのモンスターが切り刻まれ五体満足ではなくなっていた。
「さぁ!私の鞭は凶悪よ!!」
先の一撃で切り刻まれたモンスター達の肉片が全て地に着くよりも早く、カレンがグリップを軽くひねると、次の一閃が鋭く走った。
「っ!」
鞭の先端が向かって来た事を認識した直後、フェイは自分の身体に小さな衝撃が走った事に気づき、その途端、身体から力が失せ、手にしていた武器が地に転がった。
「・・・・・・?」
自身の異変に違和感を感じたと同時に彼は、鞭の先端が自分の胸板を貫通していた事を認識した。しかも貫通した鞭の先端は背後で彼の心臓をくわえ喰らっていたのである。
「う・・・ぁ・・・」
フェイはまともに声を発する事も出来ないまま地に伏せ、そのまま事切れた。これが女を・・・カレンを騙した代償だと認識できたとすれば、彼はどの様な感想を述べたであろうか?今となっては確認は不可能であった。
「さぁ、まだまだ鞭は飢えてるわよ」
そこはもう、カレンの独り舞台となっていた。
彼女が鞭を振るえば、存分に伸びた鞭が鋼以上の強度を保ちながら細い糸のサイズになって、通過する全ての物を寸断、あるいは切り刻み、放てば、その生きた先端が目標に向かって突進し、どんなに避けようと飛来コースを変えて追いすがり食らいつく。
鞭の一振り毎に死体が増産され、里に居残ったモンスターが全滅するのに、さほどの時間を必要としなかった。