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2011/07/25(月)に投稿された記事
第2章-獣魔の街編- 第2話 遭遇戦
投稿日時:21:23:27|コメント:1件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
彼女は今、ワーガゼル達によって祭壇の生贄に等しい状況に追いやられていた。
各ワーガゼル達は、自分達が標準武装として手にしていた、同族の角を先端にした二股の槍の柄に彼女の腕を縛り付け、かかしの様な体勢にして両端を抱え、主であるボヴァの前へと差し出していた。
「さて、これで君には拒否権はなくなったわけだが、出来るなら同意を得たいと思っているんだが、素直に戻ると言ってくれないかな?」
「言えるわけがないでしょ!」
抵抗はしたものの、結局はこのような状況へと至ったサナではあったが、屈辱的ともいえる要望を素直に応じられるはずもなく、怒りをあらわに怒鳴った。
「そう言うな。全てを受け入れれば、あんたも俺達と同じ力を手に入れられるんだ。光栄だと思うべきだ」
ボヴァは周囲に従わせているワーガゼル達を誇示させて、自分の信じている力の素晴らしさを強調した。
「私が望んだ事じゃないわ、ほっといて!」
「そうもいかない。嫌がって勝手に逃げた者など、俺はどうでもいいんだが、あの御方の御指示である以上、やる気のない人間でも連れ戻すしかないんだ。どうせ逃げられはしないんだ。諦めて受け入れた方が賢い選択だと思うんだがな」
「どう言われようと嫌よ!」
きっぱりとサナは自分の意志を示した。
「意志は固いか・・・・・・」
「当たり前よ!」
「では、その強固さを試させて貰おうかな」
意味ありげにボヴァが笑むと、その意をくんで二体のワーガゼルが動いた。前後から僅かな時間差でサナの間近までジャンプした二体は、素早く手を繰り出しすと、前方の一体が彼女の衣服を、後方の一体がその下の下着を掴んで力任せに引っ張り、引きちぎった。
「!!・・・いやぁぁぁ!!!!」
靴以外の着用物を一気に剥ぎ取られ、サナが羞恥に悲鳴を上げた。反射的に手が身を隠そうと反応するものの、縛られた腕は思うように動かせず、その肢体を周囲にさらけ出す。
「ほぉ、なかなか見事な身体をしてるじゃないか」
「う、うるさい!!」
半ば羞恥心を煽るように、半ば本当に関心するようにボヴァが言うと、頬を真っ赤に染めたサナが、せめての抵抗とばかりに自由だった足を繰り出すが、それは僅かに彼の顔面には届かず空しく空を切るに止まった。
晒し者となったサナはどうにかして身体を隠そうと足をモジモジとさせていたが、それで各要所を隠すことなどできるはずもなく、身をくねらせるその姿が逆に相手の被虐心を煽った。
「くくく、そんな姿見せられたら、ちょ~っと、悪戯心が疼いてしまうよな」
妖しげな笑みを浮かべるボヴァを見て、サナは本能的な身の危険を感じた。
「な、何を・・・・」
と言う問いかけは無用だった。そう、問いかけようとした矢先、彼女の背筋を例えようのないムズムズとした感覚が駆け抜け、息を詰まらせた。
「はひぃっ・・・・・・はぅっ・・・・・・っな、なに?」
サナが感覚の正体を確認しようと、首を目一杯に傾けて背後を見ると、眼前に鳥の羽があった。いつの間に用意したのか、ワーガゼルの一体が自分の槍の柄の反対側に羽を結わえた物で彼女の背筋を撫で上げたのである。
羽棒を持ったワーガゼルは、もう一度背筋を責めようと羽先を下の方へと移動させると、先程の感覚を思い出してしまった彼女は、思わず身を捩らせてしまった。
「やっ・・・やめっ・・・」
尻に近づく羽先を何とかかわそうと身をくねらせるサナ。無駄な足掻きであると判りながらも近づく羽に意識を集中したその時、全く予期していなかった両腰付近から両脇の下にかけてを別の羽が這い上がり、またも不意を付かれた彼女は、反射的に仰け反っていた身体をビクリと震わせてくねらせた。
「ひゃぁぁっぁあん!?」
見ると、眼下には背後のワーガゼルと同様、槍の柄に羽を結わえた二体のワーガゼルが立っており、今し方の刺激の正体だと言わんばかりに、その羽を揺らしていた。
「ぅ・・・ぁ・・・・・」
向き直ったサナは全身に鳥肌が立つのを感じた。前後の三匹だけではない。周囲にいるワーガゼルの全てが羽棒を持ち、それを見せつけるように揺らし、ゆっくりと彼女に近づいていたのである。
「うぁ・・・・ちょっ・・・待って・・・」
前後左右から迫る羽に、サナが恐怖して身を捩るが、そんな反応を心地よく感じたボヴァは無慈悲な指示を配下に下す。
「やれ」
「・・・・・・!!!!」
瞬間の間もなく、周囲の羽が一斉にサナの無防備な肢体に群がった。
首筋・うなじ・背筋・腕・脇の下・脇腹・胸・腹・腰・下腹部・尻・脚・・・ここに至っても統制の取れたワーガゼル達は、重複することなくありとあらゆるポイントを、見事な連携で責め立てた。
「~~~~~~~っはひっ・・はぅっ・・あっぁぁっ!あひゃあぁっっははははははははいやっははははっははははははははははははは!」
先程の様なムズムズとした微妙な感じは一瞬であった。羽の一本一本の動きは一撫で程度のものであったが、体中から送り込まれてくる刺激は断続的で休まる所が無く、立て続けに全身を駆けめぐるムズ痒さは、たちまちにして堪えきれないくすぐったさへと変貌し、サナを笑い地獄へと陥れた。
「やめっやぁっっははははははははははっははははははは!あはっあはっ、やぁめてぇっっははははっはははははははは!!」
サナは必死になって首を振り乱し、自由な脚をばたつかせたが、その程度でこの窮地を脱する事ができるはずもなく、せいぜい足回りの羽を一時的に追い払う程度しか出来きず、その程度では腰から上に群がる羽の感触を緩和する事はとうてい出来ず、逆に体力を消耗するだけの結果となっていた。
「いやはははははははははは!あ~っっっははははははははははあっははははは!!」
いいように羽に嬲られ、狂ったように笑い続けるサナ。その肢体は程良く紅潮し、その色っぽさを増すばかりか、くすぐったさに反応し身悶える都度、露出したバランスの良い美乳が淫靡な揺れを見せつけていた。
「はぅっ・・くっ・・はははははは、はぁんくひひゃっっはははっはあははははは、あぁん」
時折、その艶めかしい動きにつられてか、数本の羽が彼女の乳房に集まりその先端で小刻みに揺れて、くすぐったさとは異なる感覚を送り込む。
そうした刺激を受ける都度、彼女は敏感に女として反応したが、その感覚に意識が傾きそうになると、心地よさに酔う事を許すまいと他の羽も活発に蠢いて、彼女をもとのくすぐり地獄へと引き落とす。
そうしたくすぐったさと心地よさの不規則な波に煽られるせいで、彼女の感覚は慣れも落ち着きも得ることがなかなか出来ず、いいように翻弄され続けた。
「どうかな、少しは考えが変わったかな?」
自分が望む返答などあり得ない、あっても本意でない事が明白な問いかけをボヴァは行ったが、当のサナは、もはやそれどころではなかった。
「いやっいやっっはははははははっははははははは!ぜっはっははははははははは!ぜったぁぁはははははっっっっっはははっははははははは!!いやいやいやぁひぁっははははは!!」
拒絶の言葉すら満足に声にすることも出来ず、ただひたすら笑って首を横に振りまくるサナ。その様子から、まだ心が折れていない事を洞察したボヴァは、更なる責めを配下に指示した。
「はひひひひひひはぁっ!?」
絶え間なく笑い続けていたサナは、突如脚の自由も失う事態になって驚いた。つい先程まで全身に生じるくすぐったさを緩和させようと、空を闇雲に蹴っていた脚が、二体のワーガゼルによって掴まれ押さえ込まれてしまったのである。
「まだまだ元気そうだから、下も積極的に責めてみような」
嫌らしい笑みを浮かべると、今まで暴れる脚に遠慮していた羽が、動きを止めた下半身の方にも移動し始めた。
「やっ、やっ、やぁぁ~~~~~~~!!」
サナは悲鳴を上げて身を捩るが、脚まで押さえ込まれてしまった以上、下半身も先程の様な激しい動きは不可能であった。
そうして、逃げる術を失った彼女の脚に、羽の洗礼が訪れる。
「あっ、あっ、あひぃひゃっっはははははっはははは!!いやっっはははっはあははっはははははははは!!」
羽は暴れていて今まで的確に責められなかった内股・膝・膝裏・脚の付け根を執拗に責め立て、これまでになかったくすぐったさをサナに与えた。その新鮮な感覚に再び彼女はけたたましい笑い声と共に悶え狂った。
彼女は今度こそ本当に、全身を羽に蹂躙された。瞬間的に生じるくすぐったさは、どこのポイントにどのタイミングで生じるか予測不能であり、どんなに堪えようとしても必ず不意を突かれる形となって、僅かな堪えも難しい状況となっていた。
「はひっ・・・はぁんんぁっっはははははははははっははははは!い、いやぁぁぁぁははははぁぁぁ~~~ん!いひゃっっはははははははは!!」
脚も制された事によって、羽は下半身の敏感な部分に対する責めも可能となった。双方の脚を掴んだワーガゼルは、悪意を持ってお互いの間合いを広げ、彼女を開脚状態へと導いていく。そうしてさらけ出された彼女の秘部に、柔らかい羽先が無慈悲に襲いかかる。
「あぁっ!あっ!はぁぁぁ~~~~~っっ!!」
予期できたものの、堪えきれなかった甘美な刺激が股間を中心に爆発的に広がり、たまらずサナは喘ぎ声を上げた。
股間の前から後ろ、後ろから前と、羽は断続的に秘部を掠めるように動いて、彼女を身悶えさせる。
どうしても抑えきれなかった官能が、彼女の下半身から涎を溢れさせ、この刺激に対する素直な感想を現し始めていた。
しかし、悪意ある羽の群は、胸の時と同様に、彼女が快感の波に漂うことを許さなかった。
彼女の感覚が快感に浸り始めると、股間の羽は若干その動きを緩慢にさせて彼女を焦らしたかと思うと、逆に他の羽が一斉に動きを活発化させて、くすぐったく感じるポイントに対する刺激のみに集中した。
「はひっひゃっっっぁっっはっはははははっはははははははっはは!あははっはははは!!いやぁぁぁぁぁ~~~~~っっはははははは!!」
腕を拘束する縄が食い込む痛さも忘れてサナは笑い悶えた。絶え間なく続く羽の微妙な感覚は、彼女の肌を徐々に敏感にさせ、そのくすぐったく感じるポイントをジワジワと広げてゆく。
股間と尻、そして胸への刺激によって高まっていたその性感は、圧倒的なくすぐったさの前に強制的に鎮められ、そのくすぐったさがピークに達してしばらくすると、また股間や乳房に対する性感責めが強まって彼女を責め立てる。
くすぐったさと快楽のシーソー責め。決してどちらかに落ち着かない辛辣な責めが彼女を揺さぶり続け、その精神を疲弊させてゆく。
「さぁ、俺の配下のご奉仕はどんな感じだ?気が変わってくれたか?イエスと言ってくれるまで、納得行くまでご奉仕して愉しんでもらうからな」
「そんなっ!そんなぁ~~~っっはっははははっははっははははあはははは!いやぁ~~~~も、もうやめてぇぇぇ~~~~ひゃぁ~~~っっはははっははははははは!!」
ボヴァの発言は、悪辣極まる宣言であった。彼にしてみれば、そうした同意をわざわざ求めなくても、捕縛した時点で強制的に連れ帰れば良かったのである。こうして彼女をくすぐりと快楽で揺さぶっているのは、彼自身の愉しみでしかない。
この場において、彼女がどの様に返答しようと、彼が満足しない限り現状からの解放はあり得ないのが現実であった。
「まだまだ、こんなおもてなしもあるんだ・・・」
ボヴァが視線を送ると彼女の脚を押さえ込んでいたワーガゼルが、彼女の唯一の着用物であった靴を取り去り、有無を言わさずむき出しとなった足裏を適度な力加減で引っ掻いた。
「きぃぃ~~~やぁっっっはははははははっはははは!だめっ!やぁっっははははっははっはははははは!!だめだめ~~~っ!!」
その刺激はこれまでとは異なる、ムズムズとした物から徐々に明確になって行くのではなく、最初から強烈なくすぐったさとして、いきなり彼女の脳を直撃した。
しっかりと押さえ込まれた両脚裏を、ワーガゼルの二本の指先が交互の上下して、間断ない刺激を送り続けると、彼女は水揚げされたエビのように激しく身を跳ねらせた。
「だめぇよぉ~~~~いやっっはははっはははははは!!い、い、い、いぃやぁだっっていやっっはははははっはははははははは~~~~~!!!」
サナはこれ以上なく脚に力を入れて、現在、最もくすぐったく感じる足裏の解放を試みた。
だが、彼女の最も力の入る部位であるはずの脚部でさえも、小脇に抱えるようにしてしっかり押さえつけられた状況下では、脱出は許されなかった。
ワーガゼル達の責めは足裏で終息を見せようとはせず、わざとその力加減をゆるめて羽でのくすぐりや快楽責めに主導権を移させたかと思うと、また絶妙のタイミングで再開するといった事を繰り返し、不規則な責めの変化を持って、彼女を翻弄した。
「はひっ・・・も、もぅ・・・くひゃひひゃっっはははは・・・・・」
こうしたくすぐりと快楽による焦らし責めが続けられ、さすがにサナの体力そのものが限界に近づいて疲弊が色濃くなったその時、彼等の頭上からようやく助けの手が訪れた。
ヒュッ!
女性を嬲る事に夢中になっていた者達に向けて飛来した六本の投擲ナイフは、二本がサナをかかし状態にしている槍の柄に命中し、その両手首を拘束している縄を切断した。そして同時に四本のナイフが、その槍を左右から掲げていた二体と、彼女の脚を掴んでいた二体の脳天に的確に命中し、その命を奪った。
四体のワーガゼルが同時に倒れ込み、サナも地に倒れた。彼女は生きてはいたが疲弊が激しく、すぐに立ち上がる事が出来なかった。
「誰だ!」
ボヴァは捕らえた獲物が解放された事よりも、不意の襲撃者に注意を向けた。現状の彼女ならばこの場で逃しても、逃げ切ることなど不可能と判断しての事である。
その襲撃者は不意打ちのあとに身を隠す事はしてはおらず、ナイフの投擲にベストに近いポジションであった樹の枝の上から飛び降り、着地したところであった。
「何者だ!」
ボヴァが謎の敵対者を睨み付け、残った八体のワーガゼル達が左右に散って相手を半包囲した。
「お決まりの質問に格好良く答える身分がないのが悔しいところだが、見てのとおり通りすがりの冒険者だよ」
先程のナイフとは異なる、完全に投擲用のニードル三本を右手に持ったウェイブが、異質な集団の囲いにあって、唯一会話が可能なボヴァに向かっていった。
「事情はあるだろうけど、あんたの行為はどう見ても悪役に見えたから、人道的判断で邪魔するよ」
事情からすれば女性の側が罪人である可能性もある。だがウェイブは自分の主観で物事を判断し、結果的には正しいものとなっていた。
「通りすがりの冒険者?何にしても馬鹿かお前?一人で俺を相手にする気か?」
ボヴァはこの森の深部にあって、本来あり得ない通りすがりの登場に少なからず驚いたものの、相手の無知故の無謀さを鼻で笑った。
「一人はゲスな人間だが、結局はモンスターの群だろ。良くある事だ」
ウェイブの見立ては誤りではない。ただ、その群の質が極めて高いというだけである。
無論、そうした予測は彼もしている。数そのものに絶対的な差がある以上、自分の劣性は必至であるのは当然であり、相手は当然油断している。まずはそこに付け入るのが彼にとっての常策であった。
「ただの冒険者風情が、この俺を甘く見るなよ!」
「冒険者風情なもんで、地元民の噂には疎いんだよ。高名そうな悪人さんを、俺は何と呼べばいいのかな?」
「モンスターマスター!それを最後の知識として死ね!」
ウェイブとしては挑発目的の発言であったが、ボヴァは彼が聞き慣れない呼称を語ると、指を鳴らして二体のワーガゼルをけしかけた。
完璧に意志が疎通しているのか、合図に同調して群の両端にいた二体が角の槍を構えて突進をかけ、急速にその間合いを詰めていく。
「速っ!?」
ウェイブはニードルを手にしたまま両手で剣を抜いて振り下ろし、左右から迫る槍の突きを下方向へと払った。
軌道のそれた矛先は彼の足下の地面に突き刺さり、それが引き抜かれるより早く、ウェイブがそれを踏みつけると同時に剣を手放し、槍を封じられて一瞬反応が遅れたワーガゼルの顔面に、両掌に作り出した気孔弾を叩きつけた。
頭をまるごと吹き飛ばされた二体のワーガゼルは脱力して地面に倒れた。
「なっ・・・に?」
ボヴァは一瞬我が目を疑った。自慢の配下二体が同時に葬られたのである。彼のモンスターマスターとしての短い人生では、始めての事であり、またある意味屈では辱的出来事であった。
もちろんこれは、向こうの油断によるところが大きい。自分が優れていると思い、更には数の絶対的優位な立場から相手を過小評価し、持ち前の能力を十分に用いることなく仕掛けた結果、ウェイブの逆撃を受けたのである。
「これは・・・驚いた。まさかこいつ等を倒せる程の実力者とはな・・・・」
ボヴァの声には先程の様な動揺の色はなかった。どちらかと言えば、相手の健闘をたたえると言った余裕の様相が滲んでいた。
「だが、もう油断はなしだ。この俺と六体の配下・・・・お前を倒すには十分以上な数だからな」
「五体だよ」
冷ややかに言ってウェイブが、向かって右端の一体を指さした。
「!?」
ボヴァが見ると、指摘された一体がガクリと膝をついて仰向けに倒れた。眉間・喉・胸の三ヶ所にニードルが突き刺さっており。それが致命傷となったのは明白であった。
それはウェイブが手にして物であった。彼は先程、剣を抜いて初手の槍を払う際に、手にしていたニードルを投擲し、傍観していたワーガゼルをも仕留めていたのである。
「貴様!」
更に不意を突かれていた事にボヴァは怒りの矛先を当事者に向けたが、その時既にウェイブは位置を変えていた。
彼はボヴァの注意が倒れた配下に向いた瞬間、手放していた剣を拾い、反対側へと駆け出していた。狙いは左端のワーガゼル。
ボヴァと同様に、仲間の予想外の死に注意が行っていたワーガゼルも反応が遅れ、一気に間合いを詰めて繰り出したウェイブの剣撃を避けきれずに致命傷を受け、倒れ込む。
「あと四体!」
倒れた死体を片足で踏みつけ、不適に笑うウェイブであったが、この時彼は、隣に立つもう一体もまとめて葬るつもりでいた。だが、ワーガゼルの反応は予想以上に早く、咄嗟に退くことで二体まとめて切り払おうとした彼の目論見は失敗に終わった。
5対1・・・これ以上の油断が期待できない状況において、ウェイブの不利は今だ覆ってはいない。
「貴様・・・調子に乗るなよ!」
手にしていた兜を装着してボヴァが唸る。
「乗りたくてもそうはさせてくれないだろ」
苦笑して語るウェイブの見立ては正しかった。
奢りと侮りを捨てたボヴァの一派は、その数を半数以下に減らして尚、強敵であった。彼等の連携攻撃は実に洗練された動きで、さながらサーカスの演舞の様にも見えた。だがその演舞には隠しようもない殺気が込められており、ウェイブの命を奪うべく一致団結していた。
只でさえ素早いワーガゼルは、ウェイブの間合いの外から一気に攻め込んで来ては離れるといった行動を繰り返しながら攻撃を仕掛けていた。
その攻撃自体は直線的で、彼にも対処できない事もなかったのだが、相手は最低でも二体以上で攻撃を仕掛けるため、一体に対応できても別方向からの攻撃にはほとんど無防備となるため、防戦一方となり、徐々に鎧と肉体を傷つけられて行った。
最初のやりとりで、真っ向勝負は不利と判断していたウェイブは、徐々にではあるが、闘いの場を木々の多い方へと移動させていた。
逃げるためか、相手の連携を少しでも乱すためか、その判断は容易には判別できかねたが、ボヴァは場が動いている事を無論察知していた。
「どうした、さっきまでの威勢は?逃げてばかりじゃないか。それとも、あの女から遠ざけて時間稼ぎでもしようという魂胆か?」
事の発端であった安っぽい正義感を指摘してボヴァはそれを嘲笑った。中途半端な冷やかしではない。相手が意外にもしぶとく持ちこたえている事実を認め、少しでも守勢のバランスを崩させようと狙っての揺さぶりであった。が、その返答はボヴァの予想には無いものだった。
「いいや、勝つための算段をしているんだよ」
「何だと!」
あくまでも勝つつもりでいるウェイブの姿勢は、彼の勘に障った。
「人間風情がどうやっても勝てるわけがないだろう。ここまで来て、まだそれが判らないか!」
傷だらけのウェイブを指さし、ボヴァが怒鳴る。
「あんただって、その人間風情だ。モンスターをペットにしているだけのな!」
「違う!俺はモンスターマスター!選ばれた存在だ!」
その立場にプライドを持つ彼は、怒りの感情を激しく表して手にしていた槍を投げつけた。
ウェイブは身を捻って飛来する槍をかわしたが、それが彼等の総攻撃の合図であった。彼が槍をかわしたその瞬間、二体のワーガゼルが左右から突進し、彼の前方で交差した。殆ど反射的に剣を振ったウェイブであったが、ワーガゼルは間合いの僅かに外側を移動しており、その剣は空を斬った。
「!」
ウェイブが面食らったのはその次の瞬間であった。交差したワーガゼルの背後から別の二体が正面から迫り槍を突き出して来たのである。思わず身を退いたものの、速度に勝るワーガゼルが容易く追いすがり、槍の先端が右肩口と左脇腹を掠めた。
「っつ!」
鎧のおかげで深刻なダメージには至らなかったものの、これによってウェイブは大きくバランスを崩すことになる。更にそこへボヴァが間合いを詰め、よろめく彼の頭を両手で掴んだ。
(やばっ!)
この体勢にウェイブは本能的危険を感じた。これに身体が反射的に反応し、手首を傾けて両手にしていた剣の切っ先を自分の顎の下へと移動させる。
ガキィッ!
その瞬間、彼の予期した通り、ボヴァの痛烈な膝蹴りがウェイブの顎を捉えた。
「あぐっ!」
その勢いに飛ばされ、ウェイブの身体が後方へと仰け反った。が、彼はすぐさま脚を繰り出してボヴァの肩を軽く蹴って勢いをつけると、弧を描くバック転で少し離れた位置で着地した。
「何だと?あれを喰らって無傷!?」
「無傷な訳あるかっ!」
左手の剣を地面に突き立て、痛々しく顎をさするウェイブ。
「今ので顎の骨にひびの一つも入ったさ・・・」
ボヴァの身体で最も優れている脚力から繰り出す膝蹴りは、ウェイト差が圧倒的であるサイクロプス級の大型モンスターであっても一撃で倒す威力を本来秘めている。だが、ウェイブが咄嗟に行った行為、二本の剣先で顎をガードする事が致命傷となるのを止めたのである。
ただ剣二枚程度の鋼が間に入った程度で、衝撃力が主体の膝蹴りの威力を緩和する事はほとんど出来ない。が、膝を繰り出すポイントに刃がある・・・と言う事実が、僅かではあるがボヴァを怯ませ、インパクトの瞬間を鈍らせ本来の威力を発揮できずに終わったのである。
全ては一瞬の出来事ではあったが、このおかげでウェイブは顎を砕かれるまでには至らずに済み、技を受けた直後の勢いを利用して間合いと距離を稼ぐことに成功したのである。
「さぁ、今度は俺の反撃かな?」
顎の痛みを堪えて、ウェイブが左手に剣を持ち直す。
「は、舐めるな!あの攻撃を耐えた事は誉めてやるが、しょせん人間。どう足掻いたところで、野生の力を持つ我等に勝てるはずはない」
「なめるなケダモノ!人間はその分、知恵を使って今も生き残ってきてるんだ!」
事ここに至って尚、敗北を認めない姿勢にあるウェイブのその態度は、自分が優位・・・と信じているボヴァを更に不快にさせた。
「貴様っ・・・なら、その知恵とやらで俺に勝って見せろ」
主の苛立ちを解消しようと、ワーガゼルの二体が時間差で地を蹴った。
「当然!」
ウェイブは一方のワーガゼルに右の剣とニードル数本を素早く投げつけ、完璧な連携のタイミングを狂わせると、迫るもう1体の繰り出す槍を寸前でかわしてやり過ごす。
仲間の見え透いた攻撃に対する回避行動の瞬間を狙っていた他の面々は、ウェイブがその場をほとんど動かなかった事で、本命の攻撃を繰り出す事に失敗した。
タイミングを狂わされたワーガゼルが槍を突き出すものの、それは横に構えられた剣によって、二股の先端の中央部で受け止められてしまう。
かわされた方のワーガゼルが、体勢を立て直そうと脚で地面を擦って減速した際、落ち葉に隠されていた木と石で組まれたある『仕掛け』に触れた。
ウェイブに集中していたワーガゼルは、自分の脚が触れた物、そしてそれによって束ねられていたツタが弾けた事に気づかず、再攻撃のタイミングを狙ってその場で脚に力をため込んだ。
その直後、そのワーガゼルの上に丸太が落下し、脳天を直撃した。
「!?」
それはあまりにも唐突であり、予想外の出来事であった。ボヴァ一派がそれに気を取られたとしても無理からぬことであろう。
だがこの場でただ一人、この事態を把握していたウェイブだけは違った。彼はこの瞬間を最大の好機とすべく一気に攻勢に入った。
ウェイブは剣を横から縦に捻ってワーガゼルから槍を奪い取り、至近距離から気孔弾を放って頭を吹き飛ばすと、更にもう一発気孔弾を放ち、自らはそれとは違う方向へと駆けだした。
放たれた気孔弾は弧を描いて丸太の下敷きになったワーガゼルを直撃してとどめを刺す。その光景を確認する事なく彼は、急な事態に棒立ち状態となったボヴァに上段から斬りかかった。
「ぬぁっ!?」
これに反応したのはボヴァではなく、ワーガゼルであった。
主の危機を察した一体のワーガゼルは、ボヴァの前に移動して主の盾としてウェイブの前に立ちはだかると、振り下ろされる剣に対して、槍を掲げて受け止めに入った。
「主人思いな奴め」
すかさずウェイブは振り下ろしていた剣を途中で手放すと、腰から2本のダガーナイフを引き抜いて、ほとんど体当たり同然にぶつかりながら、そのナイフを突き立てた。
この瞬間、ワーガゼルには五分五分で回避するチャンスがあった。だが、この時の『彼』の背後には守るべき主が存在し、自然にその選択肢は消滅していた。更に不運だったのは、もともと自身の身体能力を活かすため、鎧の装甲が厚くなかった事である。この為、ウェイブのナイフを止める事ができず、二本の刃は内蔵にまで達して致命傷に至った。
小さな呻き声と手応えで、その一撃が致命傷に至ったと察したウェイブは、ナイフを引き抜いて正面の肉壁を押しのけると、間髪入れず数発の気孔弾を放つ。
このときボヴァは、一体の献身的行動により体勢を取り戻しつつあり、もう一体のワーガゼルと共に間合いを広げようとしている所であった。
そこへ追撃の気孔弾が迫ったが、彼等は同時に左右に分かれてそれを回避した。右と左、双方の動きを目で追ったウェイブは、その位置を確認すると、向かって右側にいたボヴァへ向かって駆けだした。
結局相手は独り。こうなった場合、逃げる選択を選ばなければどちらか一方を追うしかない事は当然の出来事であった。
今し方の予期せぬアクシデントで配下三体を一瞬で失いはしたものの、彼にはまだ一体のワーガゼルが残っていた。一体でも連携されては不利と判断したため、一方の・・・指令塔である自分に狙いを定めたのだろう・・・と、ボヴァはウェイブの思考をそう読んでいた。
確かに、人間としてはウェイブは強い部類である事は認めざるをえなかった。1対1では万一の可能性もあるという恐怖も拭いきれない。だが、ほんの少し相手の攻撃を退ける事さえ出来れば、ワーガゼルが追いつき有利な状況に持ち直す事ができる・・・・はずだった。
ボヴァの目論見が定まったその時、重々しい悲鳴が彼の耳に届いた。
「何!?」
それは聞き慣れたワーガゼルの物だった。
そのワーガゼルは退避した先で想定もしていなかった落とし穴に落ち込み、同時に飛び出した木製の棘によって自慢の脚を貫かれたのである。
その経緯を見ていたわけではない。だが、棘付きの落とし穴が自然に構築されたと考えるほど楽観論とも無縁なボヴァは、先の落下丸太を含めたそれが、偶然ではなくウェイブによって仕掛けられた物だろうという事を悟った。
「こ、小賢しい!」
前後の挟撃を想定していたボヴァは、戦法の変更を余儀なくされ、咄嗟に跳躍して手頃な木の枝に飛び乗った。
一気に乱れた体勢を取り戻すべく、容易に仕掛けられないポジションを選択したつもりであったが、直後、彼の背を連続した衝撃が襲った。
「ぐぁっはぁっ!?」
先刻ウェイブが放った気孔弾が、術者である彼の意志に従ってブーメランのように弧を描いて反転し、彼の背後を直撃したのである。
ハンマーで叩きつけた様な痛みが一瞬の間に数回生じ、たまらず彼はよろめいてバランスを崩し、たまらず立っていた枝から落下した。
「!?」
ボヴァは充血した目を見開いて驚きの表情をもらした。その落下地点にウェイブが待ち構えていたのである。
「これが人間の知恵だよ!」
「きさっまっっ!!!」
宙にあっては自慢の脚力も意味を成さず、刹那、きらめいた短い刃の二筋の光がボヴァが最後に見た光景となった。
彼は大地に激突して小さくバウンドし、二度と動くことはなかった。最後に残ったワーガゼルも、脚を負傷していてはもはや敵とはならない。ただ、他の群を呼ばれる危険性を考慮し、手早くとどめの一撃を与えたウェイブは、放置した剣を回収し鞘に納めた。
「・・・・・・今回は、運だったな・・・」
周囲に無秩序に倒れる死体を一瞥し、完全に動きが無いことを再確認すると、ウェイブは溜息をついた。
勝負の行方を決定づけた原始的な罠は、ボヴァが最後に悟った通り、ウェイブの仕掛けたものであった。
それは決してこの闘いの為に用意していた物ではなく、決められた役割として仕掛けていた物であり、幾つかはこの樹海の大型動物も考慮した罠であった事が結果として制作者である彼の命を救った。
戦闘の序盤でボヴァ達の連携攻撃の手強さを悟った彼は、その連携を崩すしか勝機はないと判断し、大型トラップを設置したこの場所へと戦場を移動させたのである。そして、一体がそれに巻き込まれた隙を突いて間断ない攻撃を加え、戦力を削ぐと同時に自分に注意を引き戻した。
ボヴァ達は、罠の存在は認識したものの、確実に命を狙ってくるウェイブの攻撃に気を取られ、その対応を最優先としてしまい、結果、第二の罠にも引っかかり、完全に戦力を分断される事となる。
罠による僅かな混乱時に、ウェイブが体勢を立て直す選択をするか、あと一匹ワーガゼルがいたら・・・・そして何より、受けた膝蹴りのダメージがもう少し深刻であったら、彼の勝利は危うい物だったであろう。
綱渡り的な勝負に賭け、辛うじて得た勝利だという事は彼自身が理解していた。
「・・・・・・・」
俯いてそうした思いと顎の痛みを噛み締めていたウェイブは、しばらくして顔を上げると、場違いと思える程の笑みを満面に浮かべて、ある一方に向かって疾走を開始する。
「さぁぁ~~~~って、待望の勝利イベントぉ~~~~!!」
顎の痛みも、闘いの疲労も忘れたかのように、ウェイブは軽快なステップで森を駆け抜け、遭遇戦が勃発した場所、即ちサナが嬲られていた場所へと駆け戻った。
「お嬢さ~ん!無事か~い・・・・・・・って、いねぇぇ!!!?」
目的地に着いた矢先、ウェイブは悲壮な声を上げた。本来、自分の帰還を祝福し、生死を賭けた闘いに挑んで危機を救ってくれた恩人に対し、ささやかながらも最高の『お礼』を施してくれるはずの女性が影も形もなかったのである。
その場に残っていたのは、彼女が拘束されていた槍と、あの時に彼が切断した縄の切れ端のみであり、薄情な少女が現実の存在である事を暗に物語り、そのあまりにも非情な結末に、ウェイブは打ちのめされた。
「そんな・・・・・ここに来てこれかよぉ~・・・俺、どこかで選択肢を間違えたか?闘い損かよ~」
彼にしてみればお礼という見返りを期待しての行動であり、想像以上に苦しい闘いであっただけに、その目論見が妄想で終わったショックは大きいといえる。
そうして嘆く彼を、慰める者は、今この場には存在しなかった。
投稿日:2011/07/26(火) 22:34:05
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