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2012/12/21(金)に投稿された記事
第2章 カレン編 1-4 -クレイシア-
投稿日時:13:58:10|コメント:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
パラダイスて。
ところで、11月末から12月中旬まで、ボクは肺炎を患っていました。
うわ、風邪ひいた! 放置しちゃえっ! ってやったら、またたく間に肺炎ですよ。
みんなも風邪ひいたら、ちゃんと病院に行こう!
ちなみに、その肺炎ですが、まだ治りきっていません。
マイコプラズマじゃないからって肺炎も放置すると結構長引くから、みんな!注意してくれ!
彼女も、久々に屋根の下での就寝を堪能できると喜んで好意を受けたのだが、その翌日、早々に出立する意志を伝えて関係者一同を大いに驚かせた。
当然のごとく、もう数日滞在してはどうかという意見が幾人から出たが、彼女はその意志を曲げることはなかった。
無論、滞在が嫌という訳ではない。
基本的に平穏であるマグノトの村は誰から見ても居心地がよかった。だが、だからこそ彼女は、早期の出発を決めたのである。
平和に暮らす目的であれば、彼女はここを選んだかもしれない。だが、彼女の目的は、旅は、まだ始まったばかりであり、同じ目的で方々に散った仲間達と比べても地理的状況で大きなハンデがあり、そうした面から見ると、滞在は望ましくなかったのである。
彼女等の目的地であるポイント五箇所は、正確にそして等間隔に、正五角形の頂点を形成するように存在し、距離的な問題で言えば不公平な点はない。
だがそれは、あくまでも『距離的問題』に限定されている。カレンにも確固たる証拠はないものの、彼女のクリアしたポイントから見て、最短に位置する両隣のポイントは、既に仲間二人がチェックしている可能性がかなり高く、彼女はもう一つ隣のポイントへ向かわなければならなかったのである。
正五角形の二つ隣の頂点といえば、ほぼ隔離世界の向かい側と言って過言ではなく、彼女等の住む世界を横断するに等しい行程なのである。
両隣のポイントをスタート地点とするタールとウェイブのそうした距離的な差を考えれば、どんなに迅速に行動しても追いつく事はほとんど不可能に近いと言わざるをえない。
が、負けず嫌いな面もあるカレンは、仲間内で負けたくないという思いを勝手に抱き、追いつき追い越すことは不可能と察しながらも、せめて「遅かったな」と言われたくないために、早めの行動を選択したのである。
そして何より、人情味ある好意に甘えて滞在を長引かせれば、その分、出立が辛くなる事を知っていたのだ。
装備や食料、単独行動は危険などと、色々心配して準備が万全になるまでは・・・と、考え直す事を勧めていたが、もともと彼女が明確な目的地を持った旅人である事を知っていたデックスは、その決意が変わらないことを悟ると、これ以上の説得は逆に彼女を困らせる行為になると判断して相手の意思を尊重すると、その代わりに一晩で用意できるだけの保存携帯食を作り、それを選別にと手渡したのだった。
「ありがと。また縁があったら会いましょ」
実にさっぱりとした別れの言葉を最後に、マグノトを後にしたカレンは、程なくして村道を行き交う人々の話から、向かうべき二つの目的地の方向の一つと、この地域の騒動の中心となっているクレイシアが、ほぼ同じ方向にあることを知るり、一目、騒動の中心舞台を見ていこうかなという好奇心にとらわれ、その欲求に素直に従ってしまう。
方向の一致という状況も原因だったが、反対意見を出して独走を抑制する仲間がいない事も、この行動の大きな原因となっており、彼女はこの選択により、予期しなかった騒動の渦中に飛び込む事となる。
「あれがクレイシアの街・・・ね。さすがに結構な大きさね~」
カレンは今、街を眼下におさめる事の出来る岩山頂上に腰を下ろし、権力欲にまみれているだろう地を眺めていた。
恵まれた環境の中にある街は、遠目に見ても平穏さが伺え、外敵の驚異が皆無である事を示していた。
「こんなのどかな場所で、わざわざ火種を作る必要なんてないのにね~」
自由な両脚をプラプラと振って、一人カレンは呟いた。権力にまるで執着がない彼女にしてみれば、平和な地で自ら騒動を起こす連中の気が知れなかったのだ。
理解不能な世界に思いを巡りし、呆れ顔だったカレンであったが、思考が進むにつれ、その表情も徐々に変化し、やがてしかめっ面となって、規則的に揺れていた脚もその動きを止める。
(そんな当事者の問題は当事者に任せるべきなのよね・・・・・)
ぼ~っと街を眺めたままカレンは思った。好奇心に従って目的である騒ぎの地を見たまではいい。だが彼女はここで、行動の選択に迷ってい始めていたのだ。
そこは直接的に何ら関わりのない場所である。これまでは、『事』の中心が自分達であったため、望む望まないを考える以前に、事態が進んでしまい否応無しの状況に至る事が大半だったのだが、今回はこうして『素通り』しても、後悔や後味の悪さなどが残る要素の少ないという、これまでには無かった選択肢の幅広さがあり、そんな自由が在ったが故に、彼女は戸惑っていたのだ。
彼女の本来の目的を考えれば、素通りは至極当然であった。だが、心の中で小さくない気がかりがあるのも自覚しており、そうした直感を大切だと思う彼女は、せめてその『わだかまり』とも言うべき気がかりの正体が知りたいと思っていた。
あの街の問題に関われば、その疑問が解消されるという保証などもない条件下で、行くべきか、行かざるべきかの両極端な二択に対する結論は、ことのほか早くに訪れる。
それはカレンが、自分の旅の長期的な行程を思案した時に生じた。
彼女の本来の使命、この世界の五箇所に配置されているブラッド・ストーンの起動のために、次なる地へと向かう・・・・その目的地の途方もない距離をじっくり考えると、競争意識からなる性急さが、一瞬で霧散してしまったのだ。
どう考えても一ヶ月や二ヶ月の行程では済むはずもない旅路。距離的な問題に加え、その進路上には強力な魔獣の類が徘徊する樹海も生い茂っており、安全性を優先した場合、迂回はやむなしであり、未知なる地で起こるであろう各種トラブルの事もふまえると、行程の厳密な予想や予定など、実際にはできるはずもなく、また遵守できるはずもない。
そう思い至ると、あとはもう一方の選択が一気に優勢となり、心の中にある気がかりの原因を解決するため、多少の滞在は良しとすべき。否、対象の遅延で仲間達との差が大きく開くとも思えない。この世界は全体的に自然的な驚異に満ち溢れており、安全・楽な行程などありはしないのだ・・・・
などと思考が進み、結果、初志を早々に変更する事とあいなった。
「よしっ、とりあえず町に入ってみよう」
(何も進展が無ければ諦めて出発すればいい)
そう決断したカレンは、立ち上がるや否や地面を蹴って、岩山から一気に飛び降りるのだった。
勢力争いのために各組織が腕自慢を募っているという話は既にデックスに聞き及んでいたカレンだったが、その当事者達の熱意を、彼女は軽視していた。
彼女はクレイシアに至る道中だけで、片手ではきかない数のスカウトに遭遇し、しつこい勧誘を受けてしまったのだ。
ミファールを装備した姿が周囲の目と関心を引きつけたのは言うまでもなく、派手な鎧をこれ見よがしに装備している以上、腕に覚えのある者で、自分を売りに来た傭兵の類だろうと言う先方の勝手な解釈も加わったがための結果であった。
もっとも、ミファールを装備していなくとも、冒険者の風体をしていれば、ほぼ間違いなく声をかけられてしまうのがクレイシアの現状ではあった。
しかも同じ組織と思われる者達から勧誘を受ける事から、仲間内でもノルマが課せられているのか、シビアな争奪戦までもが展開されている様相をかもしだしていたのである。
「よう、そのこ姉さん。ここの傭兵集めに応募しに来たんだろ、見りゃわかるさ。だったら俺達クレイシア自警団に入りなよ。条件・・・・」
なれなれしく手慣れた様子でカレンに声をかけた勧誘男は、その決まり文句の全てを言いきる前に息を詰まらせ硬直した。
威嚇として彼女が指先から放った小さな光の矢が、男の頬を掠め、背後に積んであった空樽の山を粉砕して見せたのだ。
「その待遇が私の期待よりも悪かったら、貴方がこうなるけど・・・・・いい?」
「いや・・・・その・・・・」
男は冷や汗を流して後ずさる。彼の言葉はいってみれば営業トークであり、待遇に関しての詳細は別の人物の責任なのである。
従って、カレンと彼の間で約束事が交わされても、それが正式に履行される保証は実のところない。全ては人事担当が相手の実力を確認してからであるため、ここで適当な事を言って了承を得ても、その後の、自分の関与できない事項で不満を抱かれては命が危ういと感じた男は、スカウトを断念して足早にその場をあとにするのだった。
「ふん、本気で人員集めしたいんなら、責任を持つ人が直接動きなさいよね」
カレンはこうして、自分の一存では全てを決定できないスカウトマン達を追い払いながら、何かしらの進展がないものかと目立った姿のまま、町を見物がてらに歩き続ける。
先のやりとりから少し進んで、十字路に行き着いたカレンは、冒険者の習性で左へと向きを変えたところで、その進行方向に意味深に立つ男達三人を見て、ふとその足を止めた。
「?」
「お見事な手並みでした」
三人の先頭に立っていた男は、芝居がかった軽い拍手をしながらカレンにゆっくりと近づいてきた。
「下らぬ使いっぱしりには、あの手の威嚇が実に効果的。アレでスカウトする側の質も判ろうというものです」
手前まで歩み寄った男は、これまた芝居がかった一例をしてカレンの右手を取り、その甲にキスの挨拶をしようとしたが、これは軽く彼女にスルーされ、苦笑して深追いはしなかった。
「お話からすると、貴方もスカウトみたいね」
「ええ、私はクレイシア正当自治武会のランジェラと申します」
「正当自治武会・・・・ねぇ」
相手の所属組織名を聞いたカレンは少し呆れた。あからさまに自分達に正義があると示した様な呼称は、部外者から見れば子供の主張に等しいのである。
「おっしゃりたい事は判るつもりです。私も決して響きある呼称とは思っていませんが、大衆に正義を示すためにはこうした看板が必要なのですよ」
表情からその心情を見抜いたランジェラは、苦笑して見せてカレンと同じ想いである事をアピールする。
「ですが、真に必要なのは己の正義を貫き通す幾多の力なのです。既にこの地の事情は把握されている事かと思います。是非、貴女の力を我々にお貸し願えませんか?」
丁寧に頭を下げてランジェラは頼んだ。そうした形式でのスカウトはこれまでで初めてであり、カレンは少なからず斬新さと好感を持った。これまでのスカウトは、全てカレンが志願しに来た存在という前提で勝手に話を進め、機嫌を損ねていたのである。
「そうは言うけど、私の力がどれ程のものか・・・・判ってるの?こんな出で立ちだけど、見かけ倒しの期待はずれ・・・・って、考えないのかしら?」
それなりの実力は実際にあるものの、初見の相手にそうと断定された事に、やはりと言うべきかスカウトの口説き文句を感じ取ったカレンは、本来相手が持つべき疑問を代弁した。
「私も見る目はあるつもりです。その鎧に負けない堂々とした態度に、先刻来からのスカウトマン達とのやりとりを見れば、只者ではないのは明白というもの」
どうやらランジェラは、かなり前からカレンに注目していたらしく、一連の行動から既に実力の一端を推測していた、
「お上手ね。でも私は貴方達の縄張り争いに荷担するために来たわけでも、売り込みに来たわけでもないの。ただ、通りがかっただけの旅人なのよ」
お世辞の礼に助力するつもりはないカレンは、素直に自分の状況を説明する。単に断れば、既に敵対者側の人間となっている。あるいはそうさせまいと、極端な行動に入る輩が控えている可能性もあると考えての事だった。
「ならば、そちらの時間の許す限りで結構です。旅に必要なアイテムも報酬とは別に用意しますし、ご一考願えませんか?」
やはりこの男は他のスカウトとは違うとカレンは思う。返答を急がせず、考える時間を与える事で、他のスカウトの様な貪欲さが無いように思わせる事に成功したのである。
「待遇に関しましては・・・・」
「それは、まだいいわ」
更に好感を持たせる材料として口にしようとした言葉をカレンが遮った。
「もう少し考えさせてもらって、興味がわいたら改めて伺うわ」
「分かりました。私は大抵、この先の酒場のテラスにいますので、いつでも声をかけて下さい。できれば、良い返事がいいですが・・・」
最後に本音の一端をもらして一礼すると、ランジェラはしつこさを見せないよう計算してカレンに背を向けて歩き出す。
それに合わせて背後で寡黙に控えていた二人の男達も愛想笑いを浮かべて一礼し、彼の後を追った。
「でも結局、意味の無い縄張り争いに荷担する気はないんだけどね」
遠ざかるランジェラの背に向かってペロッと舌を出して、カレンは反対方向の路地へと歩を進めた。
特に目的地のなかったカレンは、何気なしに冒険者としての癖で街全体を歩き回り、気が付けば街外れの裏路地に行き着き、その時になってようやく、街全体の様子など把握する必要が根本的にない事に気づくのだった。
「あ~私ってば、何してるんだろ」
結局、街を見て回っても真新しい何かがあったわけでもなく、あちこちで人員の勧誘・小競り合い・組織の正当性の主張や相手側の非難をしているばかりで、全く事情の判らない第三者からすれば、耳にする内容もどっちもどっちとしか思えず、やはり荷担する気にはなれなかった。
(もし三人で来てたらどうなってたかしらね?)
ふと、かつての仲間といた頃を思い起こすカレン。多分二人も事の無意味さを非難しながらも、ウェイブは報酬、タールは世辞に乗せられて敵味方に分かれて事態を楽しみそうだと考える。確かにそれも一興ではあったが、生憎、気心の知れた仲間は遠い地であったため、そうした楽しみ方も不可能であった。
腕試し・まだ見ぬ強豪を求めての参入などという発想も根底にない彼女は、あてのない街の散歩の中で、自分が立ち寄ってみようと思い立った動機となった心の中のに生じた気がかりを解明するような何かと出くわさないかと、僅かな期待を抱いていたのだが、そんなモノが都合良く見つかるはずもなく、『組織』の利権ばかりを求める人々の意志の蔓延に嫌気が増すばかりで、心のベクトルは滞在から出立へと早々に傾き始めていた。
「もうこのまま、出ていこうかしらね~・・・・・・・!?」
本気でそう考え始めた矢先、彼女の聴覚がこれまでと異なる類の声を聞きつけた。
「これって・・・・やっぱり・・・・」
微かに聞こえる声の質に聞き覚えと察しがついたカレンは、声の聞こえる方向へ身体を向けていた。
「ここね」
辿り着いた場所は雰囲気や独特の臭いから、山羊や羊用の家畜小屋である事が明白な小さな小屋で、発声源はこの中からと確信を持っていた彼女はその壁に耳をあてて中の様子を伺った。
(いやっいやっっははははははははははは!そっそっそれっそれわぁっははははははは!)
それは若い女と推される苦しげな笑い声であり、それだけで何が起きているか、おおよその見当がつくカレンであったが、その推測を確実なものとするため、彼女は古びた板張りの壁を軽く見回し、手頃な位置に生じた隙間を見つけ、そこから中を覗き込んだ。
「もうだめっ、もうだめだってばぁ~~~~~~っっひゃっっははっははははははっはははははははっはははははは! きゃぁぁぁ~~~~~~!!」
小屋の中では声から推察された通り、一人の女性が二人の男に自由を奪われ、一方的なくすぐり責めにあっていた。
小屋の本来の住人であるはずの家畜達が一匹も居ない中、魔法使いと思わしき衣服を見に纏っていた女は、家畜と通路を分別する柵に腹部を預けるような体勢で身を前のめりに屈め、尻を男達に突き出すような姿勢をとっていた。
勿論それは彼女の意志によるものでなく、腹部と柵には細い紐が二重に巻き付けられていて離れることが適わないようにされており、両手は揃えた状態で手首を縛られ、身体を伸ばすように前面に突き出された上で、引き戻せないように向かいに位置する柱に縛り付けられていた。そして両足も柵の支柱に足首を縛り付けられ、肩幅より少し開いた状態で固定されていたのである。
そうして抵抗・逃亡の手段のない女の肢体を、二人の男が左右の後方から楽しそうにくすぐり回していたのである。
「よし、それじゃ、もう一度脇の下いっとくか」
「やっ、やだったら・・・・だめっ!だっ・・・あっいやぁ~~~~~いやっはははははははははきゃ~~~っっはははははは!ホントっ本当にぃひゃっっはははははは、ほんとぉにぃっひゃははははははは!!!」
女は人差し指と中指をまとめた指先を脇の下にあてがわれてこね回され、悶絶するように笑い悶えた。衣服の上からではあったが、彼女には十分に効果的な刺激で、縛られた両腕が必死に脇の下をガードしようと藻掻くが、それを阻止する縄の拘束力を断ち切る事は出来ず、さらけ出され続ける弱点の一角をいいように蹂躙され続けた。
「へへ、やっぱ、ここを責めると反応が違うよな」
グリグリ、クリクリと不規則に強弱をつけて腋の下を刺激し、それに敏感に反応する様子を愉しむ男が言うと、相方もうんうんと頷いて同意する。
「ああ、でもこの女、ここも結構おもしろいぜ」
言ってもう一人の男は両手で彼女の左太股を小刻みに揉み回す。
「ふふぁぁっ!!」
太めの指から送り込まれる強引な振動は、太股の筋肉に隠れたくすぐったさを感じるポイントを刺激し、脇とは全く異なった感覚による不意打ちを生じさせた。
「そこもだめっ、だめだっ、いひゃ、っっはははははははははははは!」
女は反射的にその刺激からも逃れようと、またも藻掻くが、腰と足首が固定されている状況ではそれも適うはずもなく、両膝を小刻みに振ることしかできなかった。
この、ささやかな脚の抵抗に対し、男は不規則・交互に責めると言う手法を用いだす。
これまで左太股に集中していた手を不意に右太股に移して同様に揉みくすぐったかと思うと、また左に戻り軽く揉むと再度右へと行き交う。
柵の板によって女からは太股の状態が目視できず、彼女はリズムもパターンも一定でない太股の刺激に翻弄され続ける。
「あはっ、あ~っっははははははっっははははははは!はっ、はひゃっ、ひはは・・・や、やめてっ、もう、もう、止めてぇ!」
激しく喘ぎながらも笑いを抑えきれない女が、その責め苦に耐えきれず首を激しく振り乱し懇願する。
「なら、考えが変わったって事か?」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに男の一人が問いかけるが、その指の勢いは衰えを見せなかった。
「わかった、分かったから、あな、あなた達の、ひき、ひきゃっはははあははあははは!ひはははひゃっっははは、貴方達に協力するっ!だから、だからぁぁぁ~~~~~っっはははははははははははやぁぁぁっははっははははははは!」
狂ったように笑いながら、女はこうした状況に陥る以前に受けた要望を受託する意思を示す。つまりこれは、この男達流の、受ければ一つの答えしか有り得ない拷問的勧誘だったのだ。
「よぉ、聞いたか?」
「ああ、彼女もようやく俺達の説得に応じてくれたな」
ずいぶんと前、おそらくはこの責め苦が始まる前から答えを予期していた男達は顔を見合わせて本来の目的の達成を喜んだ。
「やはっやっっははははははははは!きょ、協力するって、い、言った、言ったのにっひゃっひゃっっはははははははははは!あ~~~~~~~っっっひひゃっっはははははは!何で止めてくれないのぉ~~~」
女は不本意であったものの、絞り出した返答によって、ようやくこの苦しみから解放されると思っていたにも関わらず、いまだに身体を這い回る指に悶えながら困惑した。
「いや何、ちょっと、最終確認もしたくてな」
女の切羽詰まった心情を知りながらも男は意地悪く言った。
「な、なに、なぁははははははははははは、はっ、はやっはやううくぅ~~ぅあひゃはははははは!」
「お前は俺達の組織のために、どんな事にでも協力してくれるんだよな?」
「そ、そぅ、そうよぉぉひゃっははははははははっはっはははは!だからだからぁ~!」「誓えるよな?」
「誓う!誓う!ちがぅがらぁ~~~~くひゃほひゃっっははははははははは!」
確認の為という口実のもと、激しいくすぐりを弱める事なく実にゆっくりと質問を行う男達に対し、既に限界域に突入して、一刻も早く助かりたい女は、その出口である各種の問いかけに、笑い悶えながら即答していく。
そして数度、しつこい程の確認に必死になって肯定の意思を示し続けた女は、ようやくにしてその責め苦から解放された。
「よし、それじゃ・・・・・」
女は責め苦からは解放されたものの、拘束は解かれていなかったため変わらぬ姿勢のままだったものの、ようやくにして得た解放に、脱力したまま激しい呼吸を繰り返していた。
そんな彼女の耳元で、男の一人が囁いた。
「早速その誓いを守ってもらおうかな」
「え・・・・何・・・・?」
この状態・コンデションでいきなり仕事を押しつけられるのかと、女は困惑するが、彼等からもたらされた要望は、おおよそ『組織』とは無縁の物であった。
「いや、何、お前さんがあまりに悩ましく尻を振って挑発するもんだから、俺達二人、ちょっと興奮しちまって、それを静めさせてもらおうと思ってな」
当然、女に挑発の意思などない。単純に、くすぐられた事により身悶え続けた結果であるのだが、無論そうした理屈は男達にも理解している。理解している上での、強引な口実とされたのである。
「や、そ、そんな・・・・だ、だめ」
男達の求めた内容の真意を悟って女は青ざめる。だが、逃げようにも、身体は今だ拘束されたままであり、拒否の意思が尊重されるような要素は、この場のどこにも存在しなかった。
「あぁ、何だぁ?今さっきの約束を破棄するってのか?」
そうした否定の意思が当然生じると想定していた男は、新たな口実の誕生に内心喜んで、いやらしい笑みを浮かべて女を見やった。
「やっぱりあれかな、説得が足りなかったのかな?」
もう一人の男も、女に見える位置で指をワキワキと蠢かせてわざとらしい疑問を口にする。
「いや、確かにこいつは承知したんだ。それをすぐに覆すなんてとんでもない奴だ」
厳正に吟味すれば、男達の主張など認められるはずもなかったが、この場は三人だけの世界であり、少数派である女は理不尽な要求とその屁理屈の犠牲とならざるを得なかった。
「ひょっとして、俺達が舐められてると」
「そうだな、そんな態度をとる奴は、きついお仕置きが必要だよな」
「ああ、そうだな」
勝手に話を進めていた男達の視線が女に向くと、彼女は自身の身に何が起きるかを想像して身震いする。
「いや・・・・そんな」
女は逃げだしたい衝動に駆られて身を揺するが、当然それも無駄な抵抗でしかない。
恐怖に身悶える身体に、再び二十本の指先が迫った。
「大した勧誘だこと」
一連の行為を覗き見していたカレンが、いったん目を離して呆れた口調と共に溜息をはく。目的の為に手段を選んでいない連中の姿を見て、この街の覇権争いの裏・・・と言うより実態を見た気になったカレンは、完璧にやる気を失った。
「この地に何か在るから支配権の争奪戦をしているのかとも思ったけど、こんな程度の低い戦力集めをしているようじゃ、それも知れてるわね」
そうしてカレンの意思がほぼ決まった最中、壁の向こうでは、公約破棄を口実にしたお仕置きという名目の激しいくすぐりを受けた女が、発狂寸前の笑いに翻弄されていた。
「くりゅっちゃう、ほ、ほひゃっははははははは、ほ、ほんとに狂っちゃう、狂っちゃうからぁ~~~いあひゃはははははははははは!!」
「ああ、構わないさ」
拘束を引き千切らん勢いで身悶える女の反応を実に楽しげに眺めていた男が、冷酷な事を平然と口にした。
「なんで、なんでぇぇぇ~~~~~!」
許される可能性がなくなる危機を感じて、女は悲鳴を上げる。
「狂ったら狂ったらで別の使い道もあるって事だ」
「例えば、呪血の材料とかな・・・」
男達は顔を見合わせ、残忍な笑みを浮かべてた。
その直後、ドンッという小さな破壊音と衝撃が彼等の背後で生じ、古い壁板の破片が彼等の元へと飛び散った。
「な、なんだぁ!?」
男達二人は素っ頓狂な声を上げて振り向き、事態を確認した。
「ねぇ、今、なんて言った?」
舞い上がった埃の中に浮かび上がった影から殺気の含まった若い女の声がした。外から様子を伺っていたカレンである。彼女は目を離した際に、壁越しから微かに聞こえた言葉に殆ど反射的とも言える過剰反応を示したのである。
「何だ、この女?」
「ねぇ、貴方達、今、彼女をどうするって言ったのかしら?」
いまだに両者の姿を覆う埃を鬱陶しく思ったカレンは、小規模な風の魔法を用いて周囲の埃を吹き飛ばし、その姿を晒すと、再度問いかけたが、彼女の出で立ちを見た男達は相手の異様な風体に思わず絶句していた。
最初、魔獣と人間の女が一体化した存在に見えた男達だったが、よくよく見てそれが鎧の一種であること気づくと、途端に威勢を取り戻し、責めていた女を放置してカレンの方へと歩み寄る。
「お前、この女の仲間か?なら丁度良い、まとめて呪血に使ってやろうか?」
男の一人が威嚇の為にと、腰の剣に手を差し伸べたその時、カレンが素早く反応して手にしていた六牙の杖を突き出した。
「痛っ!」
杖の鋭利な先端は男の着込んでいた皮鎧の貫き、その奥の胸板に到達したが、肉体に深々と刺さる事はなく、軽い痛みを与えるだけに止まった。
「へっ、非力だな」
与えられた痛みよりも、先手を取られながらも致命傷に至らなかったという状況に、自身の肉体的防御力が相手の攻撃力を凌駕したという優越感を感じた男は、負ける要素はないと判断し、助けに現れた正義のヒロインを返り討ちにするという妄想をして、不適な笑みを浮かべた。
相手の、一歩も二歩も引きたくなるような格好に一瞬気圧された男だったが、その中身は先程愉しんでいた女よりも上玉と判断し、降って湧いたような機会に感謝しつつ、わざわざ飛び込んできた獲物の、新たな陵辱方法を早々に模索し始めた。
だが、脳内だけのささやかな至福の想像は、傷口からもたらされた衝撃によって、全ての思考ごとかき消された。
「はおっ!!!!」
男は小さな悲鳴と共に身をビクリと一度震わせたかと思うと、いきなり脱力して地面に倒れこんだ。刺さった杖の先端から電撃系の魔法が放たれたのである。
「お、おい?」
事態が把握できなかったもう一人が駆け寄って倒れた仲間を揺さぶったが、瞬時に全身を駆けめぐった電撃は、男の身体の主要器官に致命的なダメージを与えており、二度と動くことはなかった。
「て、てめぇ! ・・・・・・っ!」
仲間を殺られた男が、感情にまかせてカレンに殴りかかろうとしたが、立ち上がろうとした眼前に、六牙の杖の先端が突きつけられ、その動きを制された。
「貴方、呪血を精製しているの?」
先程よりも激しい殺気の含まれた口調が彼女の様相と相成って、大きな威圧感を男に与えた。
「答えなさい。答えないなら、永遠に喋る必要もない存在にするわよ」
「待て待て待て、話すから待ってくれ」
怯えきった男が両手を上げて抵抗の意志がないことを示すと、カレンも杖を僅かに引いて命の安全を少しだけ保証した。
「あんな呪術が俺等ごときに扱えるわけないだろ。俺達は・・・・いうなれば、材料提供者にすぎないんだよ」
「材料提供ね・・・・・」
カレンは人を物扱いする発言に不快感を感じた。
「ああ、俺達は材料と資金を提供して『完成品』を作ってもらうだけだ」
「そんな物、何に使うつもり?」
「そ、そりゃ、あの効力だぜ、敵対者とか女を嬲るのにだな・・・・」
そこまで言って男はビクリと身を震わせ、絶句した。目の前にいるカレンが、とても妙齢の女性とは思えない憤怒の形相をしている事に気づいたためである。
「そんな事の為に、死者の魂を冒涜しているの・・・・」
その一言で男は悟った。相手は魔に属するような鎧を身に纏ってはいるが、その中身は僧侶のように死者を敬う類の人間である事を。そして同時に、見かけでは想像できないほど多くの戦場を闘って生き延びてきた修羅である事を・・・・・
「ま、待て、待ってくれ、作ってるのは俺じゃない。さっきも言っただろ?俺は・・・俺は単に材料を集めて加工された物を使うだけだ。呪血ってのも、つい最近まで名前も知らない液体アイテムでしかなかったんだからよ」
呪血に対してカレンが激しい嫌悪感を抱いている事を肌で感じた男は、大慌てで自己弁護する。内容はとても頷けるものではなかったが、とにかく主犯ではないことを必死になって説明した。
「それ、誰が精製してるの?貴方の所属組織の誰か?」
人を材料と表現した男を侮蔑するように見やって彼女は事の大元の存在を問うた。
「し、知らねぇ・・・・・ほ、本当だって、俺達は上に材料を渡すだけで、精製者にまで届ける事はしないんだよ」
当然だろうとカレンは思う。
「上に・・・・って事は、貴方の組織の方に呪血精製を行う術者はいるのね?」
「た、多分・・・・」
「貴方の組織の名前は・・・・」
「・・・・・・・・・」
「やっぱり永眠したいのかしら?」
「ク、クレイシア・・・・正当自治武会」
「・・・・・そう、ありがと」
謝意などまるで含まれていないと判る口調で、礼の言葉を口にしたカレンは、六牙の杖を下げ、男に背を向け立ち去ろうとする。
と、そこへ、邪な考えが抜けきれていなかった、あるいは、女に気圧されたままで引き下がれない。といったプライドに突き動かされた男が彼女の背に向かって駆け出して組み付き、背後から羽交い締めにした。
「・・・・何のつもり?」
足を少し宙に浮かせた状態となったカレンが、首を捻って背後を見やり、態度を一変させた男を見やった。
「状況を見て理解できないのかよ」
「私の理解と貴方の理解が一致していればいいんだけど」
「強がるな!魔法の腕に多少の覚えがあっても、この状態じゃ無意味だろ。純粋な力比べなら俺がお前なんかに負けっ・・・・・・!」
逆転勝利を確信していた男の笑みは、不意に全身を駆けめぐった激痛によって驚愕と戸惑いの入り混じった物へと急変した。
彼にはその痛みの理由と原因がまるで理解できなかった。来ることも予期できなかった苦痛に、思考がついてゆけず身体から力が抜けて行く事実も信じられずにいた。
だが、事態は確実に男の望まぬ方向へと進み、やがて、カレンを抑える事も、その身体を支えにして立っていることも出来なくなり、彼女から手を離してよろよろと離れていく。
「!?」
それによって男はようやくにして、自身に起きた事態を把握した。
カレンの鎧の背面部分から、レイピアの刀身のような鋭利な突起が何本も生えだしていたのである。主のささやかな危機に対し、魔鎧ミファールが適切な防御反応を示し、その針に男は胸部と腹部を重点的に貫かれたのである。
もちろん、その幾つかは心臓を初めとした主要器官を貫いており、男が存命する事を許さなかった。
「な・・・・これ・・・・」
身体のいたるところから滲む血を手に取って見て、男は呆然とカレンを見やった。
「おやすみ」
カレンは愚かな男に一言無症状に告げると、二度と振り返ることなくその場で唯一生き残った、女のもとへと歩み寄る。
「・・・・・・・」
地獄の責め苦から解放された直後の女にとって、何が起きたかは二の次であり、その時ばかりは一心不乱に息を吸って、乱れた呼吸を落ち着ける事に専念していた。
事は女の死角で進められた結果、何が起きたかははっきりと目撃できなかったものの、会話と様子で想像する事は可能であり、それは決して難しい内容でもなかった。
突如現れ、男二人を軽く始末してしまった謎の女が近づいて来る事を察知し、女は逃げられない姿勢のまま身を強張らせる。
「あなた、ここの縄張り争いに参加するつもりの人?」
背後から声をかけられると、謎の女カレンの接近に緊張していた彼女は思いっきり身震いして首を左右に振った。
「ち、違います・・・」
「そう、懸命ね。それで、この街の住人なの?」
「違います。隣村外れの者です。たまたま用事で訪れたら、彼等に捕まって、しつこく勧誘を・・・受けたんです」
「そう、災難だったわね」
同情の言葉と共に風が奔り、女を柵に縛り付けていた縄が一斉に切断される。
「今すぐ帰りなさい。そしてしばらくこの街に来ないこと。余計な騒ぎで怪我をしたくなければね」
「はい・・・・ありが・・・」
自由を取り戻した女は、手首をさすりながら振り返って、命の恩人とも言うべき女性に一言礼を告げようとして・・・・・失敗した。
想像とは大きく異なる相手の姿に、やはり思考が一時停止をしてしまったのである。
「礼なんていいわよ」
早く行けとカレンが手を振ると、女は何とか思考力を回復させ、乱れた衣服を整え、カレンが開けた壁の破壊跡から外へと出て行った。
名も聞かなかった女の後ろ姿を見送った後、カレンは再び怒気が体内から沸き上がるのを感じ取り、自身が抱いていた気がかりの正体が何かを悟った。
呪血の存在だったのだ。
呪血・・・それは、死者の魂にすら安らぎを与えない、呪いによって作り出される魂の縛鎖。
呪術によって作り出されるレア・アイテムに分類でありながら、比較的精製が容易なそれは、今のカレンにとっては最大級の禁忌と言っても過言ではない。
この地に転移して早々、彼女はそれに遭遇する。敵対したグループによる軽々しい使用という状況で・・・
彼女はそれを使った相手を過激に一蹴すると同時に、使った者達=精製者ではないだろうと悟っていた。精製者が他にいる・・・という疑問はその時からあったのだが、本来の目的をクリアする課題があった他、忌々しい出来事を忘れたかった心情が相成って、呪血の件は早々に彼女の記憶の片隅に追いやられたのである。
だが、やはりタブー的アイテムを軽々しく作り出し、簡単に手に入るようにしている者がいると言う彼女の危惧が、気がかりという形で心に引っかかっていたのである。
何もなければ、呪血の件は思い出されず、カレンは街を後にしていたかもしれなかったが、市場への出回り率が良すぎた為、名もない組織の下っ端の口からカレンの耳へと届き、結果、彼女は求めていた答えを見つけだしたのだが、同時に見過ごすわけには行かないという個人的使命感を背負ってしまったのである。
(あ~あ、結局はここの騒ぎに参加するしかないのか・・・・)
自分の価値観を貫き通す為には、無意味と論じたこの街のトラブルに首を突っ込む必要性がでてきた事に、カレンは現実の皮肉を痛感せずにはいられなかった。
あとがき
散った三人の目的は、円内の世界の五頂点、正五角形の位置に点在するブラッドストーンとの接触ですが、作中にもある通り、カレンには位置的環境にて大きなハンデがあります。
つまり、タールとウェイブは、次のポイントは隣接する最短距離で済みますが、カレンの隣接ポイントは、既に二人が済ませているため、単純に言って、倍近い距離を進まなければなりません。
最短距離を選択しようものなら、第一部の舞台である樹海に突入する事は避けられません。彼等の最初のポイント選択は、リアルに適当であり、現在のようなポジションになった事に、何の思慮も含まれてません。
後で思えば、彼女の位置は、ウェイブこそが適任だったなぁ・・・と
こうして時折、考え無しに決めてしまって、余計な苦労というか行程を考える必要性を生じさせてしまう私です。