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2014/02/02(日)に投稿された記事
第2章 ウェイブ編 1-4 -夜這いシルディ-
投稿日時:10:22:06|コメント:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:くすぐりの塔AF -魔王の後継者達-
最新作!
激しく弾けていた湯面が急に穏やかになった事で、アニィが水死体になりかけている事をようやくにして知ったウェイブは、慌てて彼女を湯船から引き上げ、浴室の床に横たわせた。
「おいアニィ、アニィ!」
ウェイブは意識を失った彼女の頬を軽く叩いて呼び戻そうと試みたが、閉じられた瞼は開くことなく無反応に終わると、口元に耳を、腹部には手を押しあてて呼吸を確認し、残念ながら人工呼吸の必要性が無いことを確認して、ひとまずは安堵した。
だがそれで済ませるわけにもいかず、彼は腰にタオルを巻いて脱衣場へと向かい、そこを通り越して廊下へと飛び出しすと、雑務中だった館のメイドに声をかけ、自分の姿で驚かせてしまった後に、緊急事態を告げて更に驚かせた。
さすがに事態の顛末を詳しく語ると非難の目が痛いため、はしゃいでのぼせた様だと説明したところ、駆けつけた執事とメイドは状況を見てそれに納得し、すぐに彼女は自室へと運び出されていった。
彼女がメイド達によって自室に運び込まれるのを見届け、そうした騒動がようやくにして落ち着きを取り戻すと、ウェイブは浴室に戻り、冷えた身体を湯で再び温めなおした。
今度こそ静かに入浴を満喫して浴室から出たところで、彼は待っていた執事と出会い、アニィは問題なく眠っていると報告されると同時に、寝泊まりする部屋へと案内された。
ウェイブに用意されたその部屋は二階にある一室で、元来からの来客用の部屋では無いことが一見して判る部屋であった。
棚には無数の本が並び、角に追いやられた机にはカバーがかけられており、誰かの私室を転用したのが明白であったのだ。
相手がそうした疑問を抱くのが当然だと把握していた執事は、ウェイブが疑問を口にする前に、その諸事情を語った。
「こちらのお部屋は主の仕事の助手殿の仮眠室を兼ねた作業場ですが、ここをお使い下さい」
執事はこの様な部屋しか用意できずと申し訳なさそうにしていたが、冒険者であるウェイブにしてみればまともな屋根に寝具があるだけで十分に贅沢な環境と言えた。
「無理に部屋を用意していただいたみたいで申し訳ない」
「いえ、この部屋を使っておりました者は現在、腰痛を患って長期休養中なのでご心配には及びません」
「有り難うございます」
事情はどうあれ、部屋をあてがってくれた好意に素直に頭を下げるウェイブ。
「それでは、お休み前に何かお飲物でもご入り用であれば用意いたしますが・・・・」
「あ、水でいいです」
「かしこまりました」
ウェイブの要望に特に何の感想も疑問の様子も示さず、執事は一礼して退室する。
彼は野外生活が多い。それに比例して野宿も多く、その大半は夜行性の野生生物やモンスターの驚異にさらされた空間であった。その為、常にある程度の緊張感と警戒心が必要であり、飲酒でくつろぐなどといった時間は皆無であり、寝る前の飲酒という行為が習慣になっていなかったのである。
執事の方も、そんな生活の違いを察しているからこそ、無理に薦めようとはせずに済ませたのであった。
部屋に一人となったウェイブは、室内をぐるりと見回った。
端に追いやられた机の上のシートを好奇心でどけてみると、どこかで採取された様々な石の標本と、それの確認に使うのだろう拡大鏡・筆・小型のノミと鎚等が並べられていた。そして本棚には例の遺跡の調査記録の写本が年度別に整理されて大量に並べられている。
その幾つかを手にして目を通したウェイブは、書き込まれた調査内容の細かさに驚かされた。
調査箇所へ至る行程から始まり、その時に起きた出来事、現場の各調査手法と結果。各員の意見と考察。その際に生じた疑問の追求と結論と隅々に至り、発見したり起動したトラップに対しても、その内容や目的の考察、今後の対策などといった書き込みが成され、まさにあの遺跡の全てを極めんとする意気込みが感じられた。
その中で、モラレス一家を落胆させてしまった、例の場所の記述を見つけたウェイブは、書き込まれた文面を見て、その度合いを始めて理解した気がした。
言葉でイメージした以上に彼等は、あの場所を調べ、眠れる秘宝の目覚めを長い時間
多くの手法を用いて模索していたのである。
そして結果は、他の項目にはほとんど見られない、調査未完了という記述で締めくくられていた。だが補足項目には、公式には終了扱いされているものの、他所で何らかの発見があった場合はそのケースを当てはめ考察すること・・・・と、されており、いまだに解明の意欲が失われていないことを臭わせていた。
『お飲物です』
ウェイブがモラレス一家の意気込みを把握したその時、軽いノックと共に、執事がトレイに水差しとコップのセットを乗せて入って来た。
「有り難うございます」
軽く頭を下げて再び本に目を向けるウェイブを、執事はトレイをテーブルの上に置きつつ眺めていたかと思うと、ふと声をかけてきた。
「何か気にとまる調査報告でもありましたか?」
「いえ、報告内容がどうのと言うより、自分の迷い込んだ遺跡がどんなところか知らなかったんで、興味があって・・・・でも、凄い量ですね。ここまで熱心に研究されている対象も稀ですよ」
並ぶ資料写本の背表紙をさっと撫で、その数の多さを指摘する。
「遺跡は過去を語っている。その中から何かの手がかりを掴む・・・というのが、主のひいてはこの街の学会の方針ですので」
「何十年も続き、そして続いていく、未来のための研究という訳ですね」
大勢の賛同者の協力があって初めて実現可能な計画であり、殆どその日暮らしと言ってもよいウェイブには到底出来ない行動だと自覚する。
「左様です。蓄積された資料はいずれ未来に役立つ。そう信じているからこそ、この地の人々は調査に没頭できるのです」
客人の指摘に執事が熱の籠もった口調で語る。主の仕事に誇りを持っている証とも言えたが、少し感情が出すぎたと察した彼は、軽く咳払いして本来の自分に戻った。
「これは・・・・少々熱が入ってしまった様で申し訳ありません。では、お休みなさいませ」
「どうも」
退室する執事を見送った後、ウェイブは先程の言葉を反芻した。
「未来の為・・・・か、あの人の残したアレも、そんな思いが込められていたのかな?」 ウェイブは自分達の行く道の一端を作り出してくれたキーンの心情をふと想像した。
自分の個人的な渇望で世界を敵に回し、挙げ句に拒絶された世界によって隔離された時、思い抱いたのは目的達成の道が大きく遠のいた事に対する絶望か、それとも道連れにしてしまった無関係者に対する罪悪感か・・・・
短い時間ながら、実際に会って、文字通り命をぶつけた会話も少なからず交わした事もあるため、文献よりは正確な実像を掴めはするものの、こうした心情に対してはやはり想像の域をでない。
己の願望の為に、常識では考えられない手段に手を染めたキーンが、実際どう思いを寄せて、他人の為の『希望』を残したのか?
贖罪とも思え、または自分自身の為、更には本当に気まぐれな的な行為とも考えられるそれは、やはり当事者しかその真意は分からないだろうと感じた。
(根本的に思考回路が違った気がするもんな・・・・こんな疑問も、あの人が心情をつづった日記でも残していて、それが発掘でもされれば明るみになるんだろうけど・・・)
などと考えはしたものの、どう見ても日記を書き留めるタイプの人間に見えない上に、彼の生涯分の日記となると、どれ程の量に達するか想像するのも気が滅入りそうであったため、彼はこれ以上の過去の人物に対する無駄な思考を中断した。
「ん?こいつは・・・・」
手にしていた本を閉じ、本棚に戻す際、彼は棚の端に追いやられていた本のタイトルにに目が止まった。
その背表紙には『シドレ・レイス争乱』と書かれており、現状も相成ってウェイブの関心を掴み、彼は自然にそれを手にしていた。
内容はシドレの素性から始まり、その経歴と争乱の起きた経緯へと続き、彼の起こした事件とその被害報告などが、順に記載されていた。
それは単純に言って局地の戦史と大差なく一部は聞き知った内容もあっため、ウェイブは内容を飛ばして巻末の方のページを開いてみると、決戦時の様子をつづったページに行き着いた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
そこには真新しい記述などは存在しなかった。
当時の人々は、強大なシドレに対し、団結力で挑んで不足分を補い、凌駕し、彼を魔王の再来という立場から引きずり下ろしたのである。
だがここで彼は一つの疑問を抱く。
シドレに関する本でありながら、これにはアニィとシルディの記述が全く無かったのである。
遺跡に関して事細かに記載している他の本の構成を考えると、この部分は意図的に記載を避けているようにも思えた。
(クライマーみたいな輩を配慮してかな?あるいは、別紙に記載があるのか?)
悪党の血族というだけで忌み嫌われる事は珍しくはない。必ずしもそうではないが、子が親の意思を継ぐという話も珍しくはなく、そうした未来の恐怖を勝手に想像した結果、人民による迫害という悪意が生じてしまう事もある。
親の顔も知らないアニィとシルディが将来、危惧される道に及ぶ可能性は低く、必要以上の混乱を生じさせない為、彼女等の存在を記載しなかったとしても分からない話ではない。
それでも、事実は隠し通せなかったのだろう。
クライマーは二人をつけ狙い、当人すら自覚していない血を求めている。
シドレなどと比べても小物だとは思うものの、クライマーは、このまま放置しておいてよい類の人間でもないと考えるウェイブは、彼に関しても何らかの相談や対策が必要だろうと考える。
どちらかというと明日に向かう現場より、この件の方が深刻だろうと思い始めた彼は、明日必ずモラレスに相談して対応を確定させようと思い至ると、水差しの水を軽く一杯飲んで喉を潤すと、ランプの火の量を落として小さくし、眠りにつくために用意してもらったベットへと潜り込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「何してる?」
「ウェイブさんの寝顔を拝見してます」
ベットに横たわり、布団を被った早々、隣に自分以外の存在が在った事にウェイブは冷静さを維持したまま驚いた。
そこにはワンピース型の寝間着姿のシルディが身を縮めて横たわり、枕を並べた体勢を維持してウェイブを見つめ、至極当然の疑問にしれっとした表情で答えた。
「いや、今現在の事じゃなく、それ以前の事を聞いてるんだけど」
「お布団を暖めておきました」
これまた真顔で、本気とは思えない内容を口にするシルディ。
その様子は、これまでの彼女のイメージを覆すのに十分であり、実はアニィが化けているのではと思いたくなるような変貌ぶりであった。
だが、残念な事に、あり得そうな憶測は憶測に止まり、奇異な事実が眼前に鎮座していた。
「頼んでないよ。だいたい、いつの間にこの部屋に?案内された時には間違いなくいなかったよな?」
この場にいる理由云々よりも、そちらの方が気になったウェイブは、その答えの推測を全く行わず、目の前の当事者に答えを求めた。
「はい、ウェイブさんが読書に夢中になっている隙に潜り込みました」
告げられた内容に、本当かと彼はその話を疑った。
それが事実なら、執事が水を持ってきてくれた件もあるため、彼がシドレの本を読んでいた間しか、そのチャンスはない事になる。
確かに気になる記述があった事で、意識がそちらに集中していたとはいえ、すぐ近くに自分がいる環境で、気づかれずに部屋に忍び込み、更にはベットに潜り込まれたなど、通常は有り得ない出来事である。
「お前、本当にシルディか?」
再びアニィ変装説を信じたくなったウェイブはまじまじとベットの中の彼女を見やった。
「女には秘密がいっぱいなんですよ。それとも、夜は人格が変わるって言った方が納得してくれますか?」
くすくすとウェイブの狼狽えぶりを見て笑んだシルディは、実に意外性があったが、逆にアニィの異母姉妹と納得してしまう一面もあった。
しかしそれだけで納得できないウェイブがいた。
「ふざけてないで・・・そもそも、何でシルディがここにいる?」
ここはアニィの邸宅である。言うなれば部外者のシルディが寝間着姿でうろついている事自体が不可思議な現象なのだが、それは彼女の次の一言であっさりと覆される。
「昼間の一件もありましたから、今日は泊まって行きなさいってモラレスさんの気遣いです」
「その寝間着は?」
「私、よくこちらでお泊まりする事が多いんで、衣服を預けてあるんです」
「・・・なら、布団も暖まったから、自分の寝室に戻ってくれ、また明日な」
アニィ一人でもペースが狂わされる状況で、シルディまでアニィ化されては心労になると感じたウェイブは、夜の一時を平和に過ごしたい一心で彼女を追い出そうとする。
「え~一人で寝るのは怖いです。一緒に寝てくれませんか?」
状況さえ適切であれば、実に美味しいお願いをするシルディであったが、その口調はどこか悪戯っぽく、本気で言っているとは到底思えなかった。
「アニィがいるだろ、アニィが」
からかわれている。そう思った彼は、こうした場の本来の役割であろう者の名を出した。
「アニィさんはあれからまだ目を覚ましてません。だから、ウェイブさんのところに来ました」
これまたあっさりと切り返される。彼女の中では既に筋書きが出来上がっている様であった。
「だから、じゃないだろ。それにアニィが目覚めてないって、大丈夫なのか?」
成り行きで出てきたアニィの現状に、事の原因であるウェイブが少し心配となって詳細を問う。
「ただ眠っているだけですよ。浴槽で結構体力を消耗したみたいですね」
「少し含みある発言だな。アニィとは問題ある行為はなかったぞ」
「でも、お肌のスキンシップはありましたよね?」
「お肌のって・・・」
確信めいて語るシルディに、経緯を察していると確信するウェイブ。一応は否認するものの、心に一部にやましいところがあるため、その口調には勢いがなかった。
「ありましたよね。だから今度は私の番です」
「私の番?番って何?」
「命の恩人様へのお礼です」
何やら様子がおかしくってきた事に戸惑いを感じるウェイブをよそに、シルディは彼に抱きつき、浴槽でアニィが語った内容を口にした。
この時、ウェイブは思いあたる節を感じて戸惑いの表情を消した。
「シルディ、君も」
「え?」
言葉の続きをシルディが待った瞬間、ウェイブは彼女の片手を掴んで引き寄せバランスを崩させてベットに前のめりにさせると、自分はその身を起こして倒れた相手の太股辺りに腰を下ろし、俯せ状態で起きあがれない体勢に持ち込んだ。
「君もブラッド・ストーン目当てか」
「え、あ、あのっ・・・」
いきなり確信を突かれ、根が正直なシルディは言い詰まる事で肯定してしまう。
「アニィだけかと思ったら・・・二人して、何を企んでる?」
「そんな、企むだなんて、せめて一目でいいので、伝説のアイテムを・・・」
「それ、アニィが言った。さぁ、正直に話してごらん。やっぱり胸の小ささを補いたいのか?」
浴室での出来事を、場所を変えて再開したような状況だと感じたウェイブは、その時アニィが否定した仮説をシルディにぶつけてみた。
血筋という訳ではないだろうが、彼女の胸も残念ながら平均には至っていなかった。それどころか、外見からの目算でもアニィよりも小さいと判断できるほどの『貧』っぷりが、身を捩ってウェイブを見る姿勢で生じた寝間着の隙間から垣間見えた。
それにコンプレックスを持っていたとすれば、神話級のアイテムに頼りたいと考える心情も理解できる範囲の動機だと、ウェイブは考えていた。
「ち、違いますって!で、でも、出来ることなら・・・いえ、それでも、そうじゃないです」
ちらほらと胸の一件に対する指摘を認めつつも、悪事の存在は否定するアニィ。だが、そんな言葉をすんなり信じられるウェイブでもなかった。
「ふ~ん、それじゃアニィと同じく、身体に確認を取ってみようか」
「かくに・・・ひぐぅっ・・・・ぅぁ、ぅくくくっ・・・・」
発言の意味を問いただそうとした瞬間、シルディは脇腹に生じた刺激に声を詰まらせ、顔を枕に埋めて呻き声をもらし始めた。
ウェイブが俯せ状態で逃げられない彼女の両脇腹に手を差し伸べ、その柔肉に指先を突き立て、小刻みに蠢かせたのである。
その微妙な刺激を受けて彼女は呼吸を乱し、こみ上げる衝動に身を震わせながら必死に堪えたが、指先の動きが僅かに強くなると、限界に近かった許容量が一気にオーバーして吹き出し、枕から顔を上げて可愛らしい笑い声をあげた。
「あっ、あははははははははははは!や、やめっ、やめて下さい~あっあははははははははははは!」
シルディは身体を捩って藻掻くものの、太股から抑え込まれた状況では振り向くことも適わず、背後からの脇腹責めを受け続けるしかなかった。
「ほんとにっ、ほんっ~~いやっははははははははははははは、くすっ、くすぐったぃです、ほ、ほっ、ほぁっひゃっっははははははははは、あははははっははははは」
彼女は必死に笑いの原因となる脇腹に両手を差し向け、ウェイブの手首を掴んで引き剥がしにかかったが、基本的な力の差がありすぎる上にくすぐったさで力も入らず、取り省く事ができないまま耐え難い刺激を受け続ける。
「ほ~らほら、本当のところはどうなのかな?」
「ほんとっ、ほんとぅ、ほ、ほ、ほん、ふひゃははっはははははははははは、だめぇ~~~!!」
たまらないくすぐったさに、まともに話も出来ないまま笑い悶えるシルディは、何とか身体の刺激を緩和させようと彼の指と身体の間に自分の手を無理矢理割り込ませてガードしてみせる。
一見すれば、責めをしのいだかに見えたそれは、実のところ要所のほんの一部を守っただけでしかない。
「おっ、抵抗したな?やっぱり、いけない企みがあると見た」
独善的解釈で口実を作り上げたウェイブは、ガードされた箇所への責めには執着せず、脇腹を早々に放棄すると、腰に両手を差し伸べた事によって自然に無防備状態となっている脇の下へと狙いを変えた。
「ひぃやぁぁ!」
俯せの姿勢のまま責められているため、相手の腕の動きが確認できず、どうしても対応が遅れてしまうシルディは、両脇の下の窪みに指先が潜り込んだ感触を受けてようやく、相手の感心が別に向いた事を悟って反射的に脇を閉じたが、その時点でもう手遅れであった。
脇の下に突き立てられた人差し指から薬指までの三本の指が揃って蠢くと、彼女は先程よりも激しいくすぐったさに脳天を貫かれた。
「!!!!あひゃっ、あぁ~~~っっはははははっははははははは!あひゃひゃひゃひゃっっははははははははは、いひゃぁぁ~~~~~~」
甲高い笑い声、そして枕に顔を突っ伏しての痙攣するかのような笑い悶え。脇腹より上位の弱点をこね回された刺激は、普段は大人しく清楚なシルディとは思えない乱れっぷりを披露させた。
「くぅっ、ふふふふふふふふふふうぅぅ~~~~~」
喉の奥と枕越しに引きつった様な声をもらしながら、彼女は脇の下を目一杯閉じて、その中で暴れる指を押さえ込もうと努力するが、押さえつけて尚、指は動きを止めず、必死の抵抗を無駄に終わらせた。
「いやっははははははは!!駄目です!だめぇ~~~っっははあははははははは!だ、だめぇぇぇ!!」
シルディが渾身の力を込めたかのように大声で悶える。それはいわゆる緊急手段だった。大声を張り上げ、この部屋以外の周囲に助けを求めようとしたのである。
「こら、近所迷惑だろ」
今は就寝時刻である。シルディの悲鳴が聞きつけられれば事態を知らない者達の大半は緊急事態と判断するだろう。
彼女の意図を察知したウェイブは、咄嗟に左手を脇の下から引き抜き、その手を口へとあてがって発声を阻止した。
「うむっ!?」
相手の声を封じた彼は、同時に上半身を倒して彼女の身体半分に覆い被さるような体勢を作り出し、その動きを更に制すると、右手を脇の下から離して腹部へと回し、抱くような体勢で前後から抑え込む状況を完成させた。
そして腹部とベットの間に潜り込んだ右手の指を蠢かせて、新たな箇所へ刺激を送り込む。
「むぅぅ~~~ふっ、ふっ、ふぉぉぉぉ~~~~~~」
新たな刺激にまたも敏感に反応するシルディ。だが、口を押さえられ、その声はまともな笑い声にもならず、微かな唸り声しか出せずに終わる。
それでもくすぐったさの度合いが落ちたわけではなく、彼女の身体は激しく足掻いたものの、ウェイブの身体という重しをはね除けられず脱出は適わなかった。
「ふぉ、ふぐぅっ。ぅふふふふふぅぉぉぉ~~~~~」
シルディは口元と腹部、どちらか一方の行為だけでも何とか出来ないかと藻掻き続けるがその全てが徒労として終わる。
「ほらほら、観念して本当のことを話した方が身のためだよ~」
抵抗も、そして話すことすら出来ない状況を良いことに、ウェイブはシルディをくすぐり続ける。この状態をもう暫く続けて心身を消耗させれば、事実を語る。そう考えていたのだが、実際には彼の考えより彼女の消耗は早かった。
「ふぐっ、ぉふぉぅぉ~~~~~~、う、ふふふふぉふぉぉ~~」
口を塞がれてのくすぐり責めは、ただでさえ激しい身体の抵抗によって消耗した酸素を補給するのにはあまりにも効率が悪かったのだ。身体の求める酸素量に比して、それを大量に吸い込むことの出来る口は殆ど使えず、鼻だけの呼吸では追いつく事は適わず、呼吸困難になるのはそう難しい事ではなかった。
更には、背後からの責めにより、ウェイブには相手の様子がいまいち確認できない状況だった事も手伝って、シルディは程なくして事実を口にせず、あるいは口にすることもできないまま失神に至り、その責め苦から逃れる事ができた。
「・・・・・・・・またやっちまった」
激しく身悶えていたシルディの身体が糸が切れた人形ようにパタリと動きを止めたのを見て、ウェイブは己のミスを悟る。
体勢さえ間違わなければ情報は得られたはずと思うものの、それは後の祭りでしかなく、以後はアニィの時と同じであった。
ただ、他人に頼れる状況ではないため、ウェイブはシルディを抱きかかえて静かに部屋を出ると、先の騒動で知る事となったアニィの部屋へと赴いた。
可能な限り物音を立てずに部屋に入った彼は、いまだに眠ったままのアニィの隣にシルディを横たわらせて布団を被せ、一目散に退散する。
目撃者の一人でもいれば夜這い騒ぎになって然りの状況であったが、冒険者としての夜間行動経験が役にたったのか、そうした最悪の事態への発展には至らず、彼は無事に自室への帰還を果たす。
「どうしたってんだろうな~」
役得もあったものの、冷静に考えれば二人の様子はおかしかった。その行動の目的がブラッド・ストーンである事はほぼ間違いなさそうであったが、その動機が分からずじまいとなった彼は、明日、二人に真面目に話を聞いてみようと決めた。
就寝前、改めてベットの中、その周囲をチェックし、今度こそ誰もいないと確認したウェイブは、出入り口に鞘を立てかけ即席の警報にすると、剣の本体を枕元に立てかけ、今度こそ本当に眠りにつくのだった。
あとがき
アニィ&シルディは、間違いなく受難キャラです。
今後も何かにつけて、ウェイブに弄ばれる機会が数多く訪れます。
トラップにはまり・・・・
モンスターに襲われ・・・
訓練にかこつけて・・・・
本日の総括と称して・・・
もはやセクハラ上司ですが、羨ましくもあり、そんな地位と、その権限を行使できる環境に、一度なってみたいと思いますね・・・