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2008/04/30(水)に投稿された記事
球体その5
投稿日時:17:49:52|コメント:0件|トラックバック:0件|》本文を開閉
湾曲した壁の向こう側から聞こえてくる無機質な音。
先ほどまで、こなたの笑い声が響いていた空間には静寂に混じって相変わらずの機械的な音だけがこだましている。
「……」
こなたは、未だに放心したような顔で床にペタリと腰を落としたまま天井を見つめるばかり。
つかさは球の壁づたいに足を運ばせて、ペタペタと白い壁を触り続けている。
私はこの無意味な装置が備え付けられた謎の球体の中からの脱出方法を考えていた……が、考えれば考えるほどに絶望的な答えばかりが脳裏を支配していくだけ。
何も考えないで、ここでぼんやりとしていない気持ちで一杯ではあったが、ここでまんじりともせず幾晩も過ごす事などできるはずもない。
1つだけ分かった事は、球体の上下に出入り口がある事だけ。
さらに、その出入り口を開くためには、私たちが「スイッチ」と呼ぶ銀色の筒状の物体を床へ押し込まなくてはならない。
この筒状の物体を押し込んだ人物には何らかのトラップが作動し、その餌食になる……
私たちがこの空間に閉じ込められてから数時間が経った今、私たちが知りうる全ての情報はそれだけだった。
「……出るためには下へ行くしかない」
ポツリと言うと、呆けたように頭上を見上げていたこなたが、ぼんやりと私に視線を向けて来る。
得体の知れない物質に全身をいじり回され、さらに私たちの目の前で失禁という醜態まだ晒す事になった彼女。
不思議な事に失禁によって汚れてしまったのではないかと思っていた下着は、水のような液体に濡らされているだけ。
特有のアンモニア臭も、ほんの僅かにすら感じられない。
私は思っていた。
隙間すらない壁から透明なガラス板のような物が現れて、それが液体になって溶けるように無くなってしまう様な事が現実問題としてあり得るのだろうか?
論より証拠、私たちはそれを目の当たりとしているが、現代科学であんな水のように溶ける頑丈なガラス板を作れるものなのだろうか?
「……行くわよ」
歯を強く噛み合わせて立ち上がった。
こなたは、苦笑いのような表情を浮かべてコクリと頷くだけ。
つかさは私の方を振り返ると「う、うん……」と、あまり乗り気ではない様子の返事を返してくる。
当然だ、下に行くためには「スイッチ」を押さなくてはならない。
そして、スイッチを押した人間には、不気味なトラップが待ち受けているのだから……
こなたに甚大な被害を及ぼした代償として現れた階段へ足をかける。
この階段を降りる度に思う事だが、球体と球体をつなぐ通路のつなぎ目は10センチも厚さがない。
この薄っぺらい空間のどこに、この階段は隠されているのだろう?
そんな事を思ってから苦笑した。
そうだ、そんな事を尋ねたところで、この球体の中では常識らしい常識が通用しないのだ。
下の階に降り立った私たちは、とりあえずスイッチを探している。
今まで2つの球の中には、その球の一番下の頂点辺りにスイッチが禍々しく鎮座していたが、ここの球の中にはスイッチとおぼしき物が見当たらない。
一方通行の袋小路などという事もあるはずもなく、かと言って私たちに「スイッチ」と認識できない形をしている可能性も否めない。
私たちは目を皿のようにして、じっくりと慎重にスイッチを壁づたいに這うように探していた。
それにしても、この球体の壁は触れてみる度に思う事だったが、ザラザラとしているのに鉄のような冷たさがある。
まるで“せともの”と鉄の中間、セラミックスとは異なる異質な感触。
ここの空間の事を世の機械工学研究者が見たら感嘆の声を漏らすに違いないな、と一人思いつつスイッチを探し続ける。
ふと壁の中に……手の平の形なのだろうか?
7本の指を有した手の平の様な模様が浮き出ているのを見つけて、私はハッとする。
「スイッチ……みたいなのあったわよ」
「スイッチあったよ!」
「スイッチっぽいのあった!」
三人が同時に同じような言葉を吐き出し、お互いにびっくりして振り返る。
こなたは口元を引きつらせながら小首を傾げ、つかさは「?」と言った様子の表情できょとんとしている。
かく言う私も驚きを隠せず、もう一度、自分が発見したスイッチ……とおぼしき物を見つめてしまう。
「……か、かがみ…そっちにも…あるの?」
こなたが恐る恐ると言った調子で弱々しい声を吐き出してくる。
私はただコクリと頷く事しかできず、その驚愕の表情のままでつかさに視線を飛ばした。
「つかさのトコにも……スイッチあるのよね…?」
つかさは相変わらず小首を傾げたまま、微妙な笑みを浮かべていた。
これは一体どういう事なのだろう……?
導くべき答えは1つのような気がしないでもないが、それでも私は考えてみる。
スイッチが3つ、こなたとつかさが見つけたスイッチの形は分からないが、私が見つけたスイッチは7本指の不思議な手の形をしている。
実はこれはスイッチではなく、誰かのメッセージという事はあり得ないだろうか?
あるいは、誰かの悪戯書き。
もしかしたら、偶然に手の形に見えるだけで実はただの模様でしかないのではないか?
様々な可能性を脳裏に巡らせてみるが、それどれよりも現実的な答えが存在している。
それは私が一番至りたくない答え。
『3人が同時にスイッチを押さないと、下の階へ降りられない』
そう言えば、昨日の今頃、私は何をしていたのだろう?
学校が終わり、こなたと一緒に確かガシャポンをするために駅に向かって……
帰り道にハンバーガーを買い食いし、そのまま帰路に着いて。
夕ご飯は醤油のピラフとシーザーサラダ、ちょっとだけ味噌汁がしょっぱかった。
「……行くわよ」
スイッチの前に手をかざして言った。
感傷的になりそうになる心を押し殺すようにして、ただスイッチを押す事だけに集中する。
三人同時に押さないといけない。
一つ一つのボタンを押して回ってみたり、駆け足でボタンを素早く押してみたり、ボタンを押す順番の組み合わせを全て試してみたりという徒労の果てに出た結論は、恐るべき現実として厚壁の如くそびえ立っている。
三人が同時に押さないと作動しない仕掛けなのか、あるいは、内1つだけの『当たり』のスイッチなのかは分からない。
ただ1つだけ分かる事は、今までのスイッチとは明らかに仕組みが異なる、という事だけだ。
「いっせーの!」
私のかけ声を背に受けながら、こなたとつかさがスイッチに手を触れるのを視界の隅で確認する。
こなたの見つけたスイッチ、つかさが見つけたスイッチ共に7本の指を有した手の平の形をしている。
先ほども考えた事ではあるが、この7本の指を持った人物は、私たちを閉じ込めて一体何をしようと思っているのだろう?
疑問と疑惑の念は三人が同時にスイッチを押した直後に起こった『変化』の前に、その影を薄くしてしまった。
私たちが手を触れている壁、その至る所に幾何学模様の様な光りの亀裂が走る。
何かが吹き出してくるのかと壁から一歩退いた私は、背後でベチャベチャと水っぽい音を聞き慌てて振り返る。
そこには……
白い天井からダラダラと音を立てながら赤黒い液体が滴り落ちている。
どこから染み出してきたのだろうかというほど大量の液体が、球体内の至る所に滴り落ち、そして。
ドプン、と巨大な水風船を破裂させたとしたらこんな音がするのだろうと思うような液体が弾む音を耳にした瞬間。
「ひっ……ふぎゃぁぁッッ…!?」
こなたの悲鳴を聞いた私は、彼女が立っていた方向に視線を飛ばし、思わず目を背けそうになった。
赤黒い、まるで血液を透明にした様な大量の液体。
それが床にプルプルと震えながらジュルジュルと不快な音を立てている。
壁とその赤黒い明らかに粘性を持ったドロドロの液体に挟まれる形で、こなたが倒れ込んでいたのだ。
「こ、こなたッ!!」
白い床に飛び散った赤黒い液体は、まるでこなたの体から流れ出す血液のように見える。
直視するのもはばかられるほどの凄惨さと見まごうばかりの光景に、自然と涙腺がゆるみ涙が溢れ出してしまう。
つかさはガクガクと両足を震わせて、おそらく、こなたの頭上へ落下して来たと思われる赤黒い液体の塊を見つめていたが、
「こなちゃん!!」
こなたに駆け寄る私を追うようにして、床に押し倒されている彼女の元へ走り寄ってくる。
こなたの側に駆け寄った私は、肩の下まで液体にのし掛かられた彼女の肩に触れて、強く揺さぶってみた。
「こなた!ちょっと!こなたってば!」
この液体、正体は今のところ分からないが強い酸であったり、有害な物質である可能性も否定はできない。
ここが異常な空間である事を知っている私たちは、慌ててこなたの両腕を掴むと、その液体から彼女の体を引きずり出そうとする。
「……かがみぃ…っ……つかさぁ……っ……」
頬をペタリと床に付けたまま、こなたの肩が僅かに震えていた。
私たちの名前を呼ぶ言葉の端々には嗚咽を混ぜるような涙声。
「大丈夫よ!すぐ引っ張り出してあげるから!」
そう言いながら、私は左腕を。
つかさも彼女の右腕を掴んで懸命に引っ張り出そうとする。
「助けて……重いよぉ…っ……ううっ……助けてぇ……」
長い髪の毛が白い床にしなだれるように散らばっている。
その隙間から見えるこなたの横顔、その大きな瞳からは涙がポロポロと流れ出していた。
まるで日頃とは異なる弱々しさで助けを請う彼女を眼中に見つめながら、私はあらん限りの力で彼女の腕を引っ張り続ける。
「大丈夫!?こなた!痛くない!?」
引っ張っても、ただ彼女の腕がキリキリと軋むばかり。
腕を引っ張る度に、髪の毛の隙間から覗く顔には苦痛の表情が浮かんでいる。
「……かがみぃ……つかさぁ……離さないで……手を…っ……っ……怖いよぉ……」
肩を震わせいよいよ嗚咽すら漏らし始めるこなた。
しかし、両腕をどんなに引っ張っても、まるで彼女の体に吸い付いたように離れない液体の下からその小さな体を引きずり出す事すら叶わない。
か細い木の枝のような腕を握る指の下の皮膚が、赤みを帯びているのに気づいた私は手に込めていた力を弱める。
これ以上、腕を引っ張れば肩の関節が外れてしまうかも知れない。
こなたの小さな手を両手で包み込むようにして握ると、その手の甲を優しく撫でながら私は……
「こなた!大丈夫、絶対に離さないからね!絶対に……絶対だから!」
瞳から涙が流れ出してくるのを必死に堪えるが、どうしても頬に熱い物が伝ってしまう。
私たちは非力だ。
こんな訳の分からない場所に放り込まれて、たった三人きりで脱出を試みなくてはならない。
たった三人だけの仲間、まがりなりにも親友という言葉で間柄を説明できるはずの三人。
それなのに、いざと言う時には助ける事もできない。
それが切なくて、悔しくて、激昂が心をむさぼり食わんばかりに渦を巻いていく。
落ち着けと理性が金切り声を上げているが、心は落ち着きを取り戻す事もできず、小さな体を床に横たえて肩を震わせているこなたの手を握る事しかできずにいる。
「あっ……かがみ……うっ……つか…さ……うぐっ!」
今まで力なく右頬を床に付けてぐったりとしていたこなた。
その頭がグイと持ち上がり、その狭い肩がビクッビクッと跳ねるように震え始める。
一体何が起きたのか状況が掴めない私、横のつかさを見ると目を真っ赤にしてポロポロと大粒の涙を零していた。
「こなた!…痛い?痛いの…!?」
聞いてどうすると言うのか、私はそんな質問を投げかけてしまう。
しかし、こなたは必死に持ち上げた頭をブンブンと横に振り、そして……
「はっ…!も、揉まれ…てぇッ!……ふっ…ふぎぃッ!」
顔を上げたこなたの顔は両方の瞳から涙が伝い、額には前髪は貼り付き、苦しげに口をパクパクと動かしている。
彼女の肩下までを飲み込む形でのし掛かっている赤黒い透明の液体が、しきりにチャプッチャプッと音を立てて揺れていた。
「…むぐぅぅッ!…はぁっ!ぎひッ!?」
透明な液体の中に目を凝らすと、制服に包まれた彼女の体を見る事ができる。
その制服の至る所に、何か半透明の塊のような物が貼り付き、それが布地をグニグニと揉み回しているように見えた。
「くはッ!?……お願いぃ……うひっ!…て、手をッ……手を離さない…でぇッ…!はっ……くひぃッ!?」
制服の上から液体の塊の様な物が至る所でグニグニと動き回っている。
布地の上からそれらが彼女の体を揉み回している。
「こ、こなた……!」
顔を真っ赤にしてイヤイヤをするように頭を振り回すこなた。
苦痛のようでもあり、笑いも混ざったような口許は引きつり、目は強く閉じられている。
「ひぎィッ!……はひゃぁっ!く、く、くすぐったッ……くふふッ!」
液体の中、こなたの両足が重たそうにブンブンと振り回されている。
素肌の露出した両足、その太ももにもいくつもの半透明の塊が食い込んでいる様子が伺えた。
やや色黒の肌の上にいくつもの凹みが生まれ、それが太もも全体をグニグニと揉み回している。
「はがぁッ…!むぐぅッ……!」
こなたの顔に明らかな『笑い』が浮かび始める。
眉間にシワを寄せて、頭をブンブンと振り回し、しっかりと閉じられた目尻に涙を零しながら。
必死に自分の体に与えられる刺激に耐えている様がいじらしいほどだった。
「こなちゃん……!」
つかさが彼女の名前を叫ぶようにして呼ぶが、こなたはその言葉に返事を返す余裕もなく、どす黒い液体の中で体をくねらせるのに精一杯。
何とかして無数の刺激から逃れようとしている様子だったが、それをあざ笑うようにして液体は彼女の体をグニグニと揉み遊んでいる。
「……くひゃぁッ!むぐぅぅぅぅぅッ……!あっ…あひひっ!?ふひゃぁぁッ!!ふ、服の中にぃッッ!?」
こなたの叫びに液体の中を見ると、こなたの制服の裾がヒラヒラと舞い上がるような動きを見せている。
背中の裾を持ち上げた液体が、布地の上からの刺激に飽き足りず制服の中に侵入したのだろうか。
液体の中で起きている事をはっきりと見て取る事はできないが、途端にこなたの反応が激しさを増していく。
「…くひゃぁぁぁッ!あっ……ダメだって!ダメ……ぐひぃッ!?あっ……ひゃぎゃッ!?」
こなたの両手に力が入り、私の手をギュッと掴む。
痛いほどの力、その指先は激しい刺激のためなのだろうかブルブルと震えている。
頭をブンブンと振り回しながら、時折、頬を床に付けて「くふふふふふッ……!」と耐え難い刺激に笑いを漏らし、再び頭をブンブンと振り回す。
「くひひッ!無理ぃぃぃぃッ!!ダメだってぇぇぇぇッ!!無理!無理ぃぃ!!無理だよ!!くくくくくくくッ!!あひひッ!?無理だってばぁぁぁッッ!」
私はこなたの手をギュッと握る。
激しい刺激に体中をいじり回されて、のたうち回るこなたの体。
私たちはただ、その狂宴が一秒でも早く終わる事を願い、ひたすらにこなたの手を握り続ける事しかできない。
「こなた……!…ぜ、絶対に手離さないよ!こなた!」
私は決意にも似た強い意志で叫ぶと、ギュッと彼女の手を握った。
一瞬の隙が出来たら、すぐにでも彼女の体を引っ張り出そうとグイッと腕を引っ張る。
つかさもハッとしたように顔を上げると私に習った。
しかし……
しかし、次の瞬間、こなたの口から吐き出された信じられない言葉に、私たちは驚きを隠す事ができなかった。
「うひゃぁぁッ!!かがみぃッ!つかさぁッ!手ぇぇ……ひぎゃぁぁッ!?手を離してぇぇッ……!」