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2008/01/12(土)に投稿された記事
夏美をこちょこちょ+コメへのご返事
投稿日時:22:59:28|コメント:0件|トラックバック:0件|》本文を開閉
息苦しさに驚いて、私は大きく咳き込むように息を飲み込んでしまう。
全身に感じる、生暖かい水の感触。
口や鼻からゴボゴボと息が漏れ出し、慌てて顔を上げる。
「ゴボッ……ぐ……ゴボッ」
何かをしゃべろうにも、口を開けると肺の中に水が流れ込んでしまいそうになる。
必死に口を閉じて、周囲を見回す私は、歪んだ水の向こう側に、何者かの姿を見た。
緑色で小さい……
ボ、ボケガエル!
「…ボゲッ……ゴボゴボッ…!」
思わず叫んでしまって、肺の中に一気に水が流れ込む。
それに咳き込み、より多くの水を吸い込んでしまう。
「…ゴボッ…ぐ……ぐるじいぃ……って、あれ?」
溺れてしまうのではないかと、全身をばたつかせ、肺の中に入り込んだ水の痛みの訪れを身を固くして待ちかまえていた私。
しかし、一向に痛みはなく、むしろ息苦しさすら感じない。
慌てて水の向こう側に立つ、あいつの顔を視線を送った。
「ちょ…ちょっと!ボケガエル!」
「夏美殿!気がついたでありますか!?」
早く出せと催促しようとした私。
しかし、そんな私の意に反して、あいつの顔が明るくなる。
「な……ちょ、ちょっと!早くここから出しなさいって!」
大きく足を蹴り出すと、つま先に固い感触。
続いて、ゴォーンという鈍い音が四方から響いてきた。
「な、夏美殿!暴れたらダメであります!」
両手を振り出して、慌てた調子で言うボケガエル。
どうやら、私は何かガラスケースのような物の中に入れられているらしい。
こうなったら、力ずくでも……と、思いっきり蹴り込もうと腰を回したところで、あいつの後ろから光が差し込むのが見えた。
「ねーちゃん!」
歪んだ水中から、その姿をはっきりと見ることはできなかったが、その声は冬樹のものだった。
「ふ、冬樹……」
冬樹が来たなら大丈夫、さっさと、ここから出してもらおう。
そう思い、彼に言葉をかけようとした、その時。
「ねーちゃん!もう大丈夫なんだね……!」
若干、涙声にも聞こえる冬樹の言葉に、私は何事かと、構えていた足を下ろして首を傾げる。
「ちょ…ちょっと……」
「ふっ、今回ばかりは、クルルに礼を言うんだな、夏美」
冬樹の横からギロロの声。
歪んだ赤く小さな影は、いつもと変わらず、腕組みをしているように見えた。
「な、何が……あったの…?」
訳が分からず、私はキョロキョロと周囲を見回してしまう。
私を取り囲んでいる、彼らの態度は、明らかにいつもと違っている。
まるで、私を助けてくれたみたい。
「……夏美、何も覚えていないのか…?」
幾ばくかの不安を混ぜたギロロの言葉。
しかし、彼の言葉を遮るようにして、どこからともなく、
「ちょびっと記憶をいじくらせてもらったぜ」
と、クルルの声。
「き、記憶って……私の記憶いじって、どうする気よ!」
「まあ、俺としては、覚えていた方が面白いと思ったんだがなぁ……」
そう言って、クククッと嫌らしい笑い声を上げる。
一体、何がどうなっているんだろう……?
「クルル……ありがとう」
冬樹の言葉。
なぜ、冬樹が……?
幾多の疑問が脳裏を駆けめぐり、その疑問が、さらに多くの疑問を生み出してしまう。
そう言えば、私は……ここて何日間眠っていたのだろう?
こんな、水の中で。
「ククッ……やめてくれ!」
それっきり、クルルの言葉は聞こえなくなる。
しばらくの静寂が包み込み、私は自分の体に目を落とした。
透明の液体の中、私は……白色の、水着のような物を着せられている。
胸と腰に巻き付けられた、ビニールのような布。
それは包帯のようでもあったが、明らかに布や綿とは違っていた。
まして、水着でもなく、下着とも違う。
何も履いていないような、私が普段身につけている下着のような違和感は感じられなかった。
「夏美殿、もうしばらくの辛抱であります」
静寂を破るようにボケガエルが口を開く。
「も、もうしばらくって……まだ出れないの!?」
思わず口調を荒くする私を、ギロロが静かにいさめた。
「夏美、今、そこを出れば、お前は死ぬ」
「し、死ぬって……」
「その培養液は、生体素を修復する、言うなれば薬のようなものなのであります!」
ボケガエルの言葉。
く、薬……?
「わ、私は……」
ポカンとして、水の向こう側を見つめる私に、冬樹が静かに言った。
「……ね、ねーちゃんは、怪我をしてたんだよ。それを、軍曹たちが治してくれたんだよ?」
怪我……私が?
どうして?
……その問いは、先ほどのクルルの言葉が説明してくれていたような気がする。
『記憶をいじくらせてもらったぜ』
「わ、私は……」
「――まあ、せいぜい、そこで体の治療を受けることだ」
プシューッと、空気が抜けるような音。
幾人かの足音を聞き、私はハッとして顔を上げた。
「え……?も、もう、みんな行っちゃうの……?」
たった一人、こんな場所に残されるなんて。
寂しさと不安が心に押し寄せる。
「大丈夫でありますよ?ケロン星の技術は伊達じゃないであります」
優しい……あいつの言葉。
はっとして、顔を上げた。
プシューッと再び空気が抜けるような音。
……あいつに借りを作るなんて。
そう思いながら、とても心が熱くなっている。
いつもは、どうしようもなくバカで、マヌケで。
でも、あいつは、部下のみんなから慕われているんだな……と、感じることがある。
本当に、ちょっとした小さなことだけど、あいつは、やっぱり隊長なんだなって思うことがある。
もしかしたら、あいつが本気になれば、こんな星なんて一瞬で制圧されてしまうのかもしれない。
だけど、あいつは……
ほんの少しだけ、目尻に熱いものが浮かぶが、それは水の中へ溶けるようにして流れて行ってしまった。