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2008/04/06(日)に投稿された記事
情報統合思念体のエロエロドカン!
投稿日時:18:00:49|コメント:1件|トラックバック:0件|》本文を開閉
ディレクトリ:(未完成)涼宮ハルヒ - *エロエロドカン!
まどろむようにして流れていく時間の中、真冬の室内を暖めてくれる石油ストーブの上のヤカンが相変わらずコトコトと音を立てていた。
冬の夕暮れは足早に訪れて、足早に過ぎ去ってしまう。
窓辺のパイプ椅子に腰掛けて分厚い本を膝の上に乗せた彼女は、珍しくページを開く事もせずに、ぼんやりと曇ったガラスに流れた水滴の跡の向こう側。
赤く染まった校舎を眺めている。
足早に訪れる夕陽に後押しされるように生徒達の多くが帰宅の途についてしまったからだろうか、人の気配もまばらにしか感じられない。
いつもなら、微かにカタカタと響いてくるコンピュータ研究会のキーパンチの音も聞こえてこない。
長門はぼんやりと景色に視線を向けているようでいて、その内心は穏やかではなかった。
それは、彼女が先日体感した、今までに類を見ない不可思議な感覚と関係している。
(涼宮ハルヒの手が、私の……)
そう思い、ふとあの時の感覚を思い出す。
足の裏を愛撫するように刺激され、自分の内部から沸き起こった感覚。
制服の裾から差し込まれた、ハルヒの指先が自分の体を這い上がってくる感触。
自分のデータベースの中にも、情報統合思念体のデータベースの中にも存在しなかった『くすぐったい』という感情は、十数分の間ではあったが『笑いたい』という抑えきれない気持ちを彼女に与え続けた。
『笑い』という感情を無視し続けていた長門にとっても驚きだったが、情報統合思念体にとっても、それは大きな驚きを持って迎えられた。
ハルヒの細い指先が、自分の腋の下に触れ動き回る感触。
思い出すだけで背中がゾクリとして、それでいて心の中に靄(もや)がかかるようないい知れない陶酔感が全身を支配していく。
なるべく外の景色にだけ意識を集中してみるが、彼女の心に穏やかさは戻らない。
ドクドクと心音ばかりが耳につき、胸が締め付けられるように痛くなる。
それは、先日体感した感覚と関係している事は明らかだったか、原因は他にもう1つ。
すでに部室棟からは人の気配は消え去り、オレンジ色の夕焼けの日差しも浅い残光を残すばかりとなっている。
蛍光灯の明かりは青白く室内を照らしているが、その内の1本は両端が黒く変色して、今にもパタパタと点滅を始めようとしていた。
その浅い明かりの中、部室の中央に置かれた長テーブルの上。
「……」
背中にカーディガンを乗せて、深い寝息を立てているハルヒの姿。
肩に掛けられた焦げ茶色のカーディガンは、朝比奈が帰り際に被せていった物。
その姿に視線を移した長門は、神妙な面持ちになりながら、必死に頬が紅潮しそうになるのを抑え込む。
部室には自分とハルヒの二人だけ。
もしかしたら、この静寂の限りでは部室棟には、すでに二人だけしか残っていないのかもしれない。
そう思うだけで心音が高鳴るのが分かった。
今までに感じた事がない、いくつもの不思議な感情が、この数日の間だけでも幾度となく去来している。
「……なぜ?」
ポツリとつぶやく。
その問いかけは、誰にともなく、まして自分への問いかけでもない。
答えなど期待はしていないが、どうしても尋ねたくて仕方がない疑問の言葉。
朝倉涼子と喜緑江美里に与えられて、自分には与えられなかった『感情』という要素。
涼宮ハルヒに気に入られるために設定された人格。
ここにいる理由も、ただ涼宮ハルヒを『観測する』事のためだけ。
不要な要素は何も与えられず、必要な要素だけを与えられて作られた有機体。
脳の構造も、人体の構造も、ほぼ人と変わらないように設計された自分に欠落していた『感情』という不確定要素が、最近になって一気に増大している。
かつては無かったものが溢れかえる感覚は、正常とは言えないかも知れないが、決して不快ではなかった。
「……」
ただ、彼女は知りたい。
どうして当初は与えられなかった、不要なものと判断されていたものが、こうして自分を悩ませているのだろう。
焦りを感じたり、戸惑いを感じる事もなければ、正しい答えを導き出すために必要な措置を的確に講じられるはず。
なぜ、有機知性体は、こんな不確定で矛盾に満ちた感覚を持ちながら、進化を続ける事ができるのだろう。
しかし、その疑問に対しての答えは、実はそれほど深淵の真理を探らなくても、すでに彼女の心の中にある事を知っている。
長門の頭の中に、言語では表しきれない言葉の波が訪れる。
窓の外に視線を向けていた彼女は顔を上げると、その情報を解析する。
もし言語化したとしたら、
『――関心、涼宮ハルヒに対する行為の実施。要求、有機体が持つ得意な感覚に対してアプローチ。結果、情報の小規模フレアの観測を期待』
という様な情報が突如として、長門の心の中に広がっていった。
(/当該要求/アプローチ方法@行為[0])
長門は突然の指示に慌てる事もなく、情報統合思念体に自分への指示の明瞭化を依頼する。
『自分で考えなさい』
ガタン!
(……え?……え?)
長門は思わず椅子を蹴り立ち上がってしまう。
慌ててハルヒの姿を見るが、よほど熟睡しているのだろうか今の音にも身じろぎ1つしていない。
ほっとしたのもつかの間、長門は情報統合思念体からレスポンスされた回答の真意を解きほぐそうと、必死に思考を働かせる。
よもや……と思いつつ、あるいはクラックされている可能性も考えて、情報統合思念体にもう一度リクエストを送信する。
(/当該要求/アプローチ方法@行為[0])
続けて
(先のレスポンスに疑問がある。再度返答を)
という情報を送ってみる。
即座にレスポンスされた回答に、長門は再びビクッと肩を跳ね上がらせた。
『台所の納戸に隠された本について』
脈略のないレスポンスに唖然としてから、ジワジワと長門の脳裏に『なんで知ってるの?』『どうして知ってるの?』という数多くのクエスチョンが浮かんでは消え、それに続けて顔に暗い縦筋が下っていく。
(か、回答になっていない。先のレスポンスについて……)
『百合本。同人誌。セキュリティモードで読んでいても丸見え』
(うっ……)
深夜、情報統合思念体に情報を送信しないように組み上げたセキュリティ領域の中。
インターネットで購入した本を読んでいる自分を思い出し、思わず頬が熱くなるのを感じた。
『情報統合思念体は、有機知性体の感情に左右される情報伝達に対して関心を寄せている。当初の想定を超えて感情と呼べる精神情報を獲得し、自律的行動を選択した事は誤算であり、同時に自律進化への糸口になり得る可能性を秘めていると推測』
(……)
長門の顔に明らかな驚きと戸惑いの表情が浮かぶ。
それは細微な変化に気づける人物と言えば、彼女が知る限り一人しかいない。
しかし、そんな小さな表情の裏側では、心中をグルグルと渦巻き続ける恥ずかしさとも切なさとも知れない感情で満たされつつあった。
それは、つい出来心だった。
誰もいない部室で一人パソコンの前に座る。
インターネットで、いつも通りにSOS団のサイトを見た後、某巨大掲示板のログを巡回し異質な情報が紛れ込んでいないかチェックする。
その中で得た、2つの言葉。
『百合』『同人誌』
検索エンジンで検索し、トップにヒットしたサイトで販売されていた同人誌。
ハルヒに愛撫された体、あの細く冷たい指先の感触に震える皮膚の感覚が鮮明に蘇る。
サンプルを1つ2つ見た時、長門の心の中には強い決意が生まれていた。
……何も見なかった振りで、ディスプレイの斜め横に視線を寄せながら[購入]ボタンをクリックした翌日。
その同人誌は綺麗に箱へ梱包されて届けられていた。
『当該情報を論理的に解釈する事は困難。しかし、『百合』という行為を経験すると言う希少な体験をし、当該情報の蓄積を自己判断で行った功績は大きい。よって、適任者として認定し、当該活動を涼宮ハルヒの個体に対して秘密裏に行う事を要請』
(それは無理)
長門は即答した。
(涼宮ハルヒは観測対象。また、涼宮ハルヒがその行為を望むとは限らない。それに、その行為によって情報爆発が発生した場合、世界の消滅の可能性も考えられる)
『懸念はない。情報統合知性体は綿密に涼宮ハルヒの行動を確認した。涼宮ハルヒは、長門有希という個体との、該当行為を望んでいる』
(……は…?)
思わず間抜けな言葉が漏れ出し、思わず机に伏して寝息を立てているハルヒの姿を見てしまう。
しな垂れかかるようにしてセミロングの髪の毛がハルヒの寝顔を隠しているが、その隙間から覗く唇は小さな呼吸を繰り返していた。
その横顔がひどく幼く見えてドキリとした。
『なお、当該行為に関しては情報統合知性体は、物理変数への改ざんに対してもある程度の寛容さを持って観察するに留まる。情報統合思念体は、当該惑星の知性体文明を取り入れる事が自律進化の閉塞状態への打開策と期待している』
(……りょ、了解した)
弱々しい回答を返すだけで精一杯の長門。
どこか、情報統合思念体が喜々としているように感じられるのは錯覚なのだろうか。
『成功を期待している(>▽・)d』
(か、顔文字!?)
微妙な顔文字を残して、情報統合思念体からのメッセージは終了する。
早速、当該惑星の知性体文明をピンポイントに取り入れたらしい統合思念体の行く末を危惧しつつ長門は未だに眠り続けているハルヒを見つめた。
投稿日:2008/04/06(日) 18:54:25
話の分かる思念体ですね。友達になれそうです。
この後の百合百合展開に期待してます。
それと、遅ればせながらこちらからもリンクを貼らせていただきました。
今後ともどうぞよろしくお願いします(>▽・)d
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